EC運営者の多くが「リピーターを獲得したい」と考えているのではないでしょうか。しかし、リピーターを獲得するためのポイントや、リピーターになる理由を理解していない場合、リピーターを増やすのは容易ではありません。
この記事では、リピーターを増やすポイントや、リピーターになる理由、企業の成功事例を紹介します。リピーターを獲得したいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
リピーター獲得の重要性とは?
事業や店舗の売り上げを拡大するうえで、リピーターの獲得は重要です。なぜなら新規顧客を獲得するよりも購買に導くためのハードルが低いからです。新規顧客の場合は、広告やマーケティング施策によって発見してもらう必要があります。
一方で、一度購買した顧客は、ECサイト上でメールアドレスやLINE IDをはじめとした個人情報を記載していることが多いです。そのためメルマガなどのマーケティング施策を実行しやすくなります。その結果、新規顧客獲得より低コストで購買まで導けるのが特徴です。
リピーター獲得のゴールは優良客化
顧客は購入頻度に応じて一般客(新規顧客含む)、流行客、優良客などに区別されます。
一般客は購入頻度が低い顧客全般を指し、新規顧客も含まれます。流行客はセールやキャンペーンなどのタイミングで利用することが多い顧客で、購入頻度が低く、利益を上げるのが難しい傾向があります。優良客はブランドの熱心なファンであり、購入し続ける傾向にあります。
一般客や流行客に対してリピートしてもらいながら「優良客」になってもらうことがリピーター獲得のゴールであるといえます。その結果、売り上げ・利益が最大化されます。
リピーターを獲得する4つのメリット
ここからは、リピーターを獲得するメリットを4つ紹介します。
1.売り上げが安定する
事業を継続的に成長させるには単なる収益の増加だけでなく、安定性も求められます。収益が大幅に減らないよう、リピーターの獲得による安定的な収益基盤の構築が重要です。
優良客であるリピーターは、定期的な購入により収益の安定的な支柱となっているケースが多いです。これがリピーターの大きな強みといえます。
新規顧客獲得だけに依存すると、マーケティングコストが無限にかかってしまい、利益が伸びにくいです。リピーターの存在は、収益の堅実な基盤として、事業の持続的な発展を支えてくれます。
2.口コミによる新規顧客の獲得につながる
リピートを繰り返して優良顧客になったユーザーは、商品、サービス、店舗に対する好意を持っているだけでなく、口コミやレビューなどで周囲に拡散してくれます。
リピーターが店舗やサービスの魅力を拡散することで、口コミによって新規顧客を獲得できます。また、オンラインビジネスに関しては、顧客のレビューが信頼を形成する重要な要素です。リピーターは収益を安定させるだけでなく、企業のブランディングにおいても重要な存在といえます。
3.LTV(顧客生涯価値)が向上する
LTV(顧客生涯価値)は、1人の顧客が企業や店舗で消費する総額を示す重要な指標です。LTVの向上は売上の安定に直結します。また、高いLTVを持つ顧客層を獲得できれば、経営の安定と成長が促進されるため、リピーターを獲得して、LTVを高める施策が重要です。リピーターを増やすことでLTVの平均が高まります。
4.「1:5の法則」の観点でも重要
「1:5の法則」は、新規顧客獲得のコストと既存顧客の維持コストとの間の関係を示すものです。具体的には、新規顧客を獲得するためのコストは、既存顧客を維持するのに比べて約5倍のコストがかかるとされています。
EC運営を開始した直後は、新規顧客獲得にコストをかける必要がありますが、ある程度の顧客数を獲得した段階で既存顧客の維持にシフトしなければ、利益率の向上は難しくなります。
新規獲得から既存獲得にシフトするタイミング
事業の初期段階では新規顧客の獲得に注力すべきです。しかし、月商が一定の基準を超えたり広告の効果が低下したりすると、戦略を既存顧客へシフトする必要があります。
先述した通り、ある程度の顧客がいる状態にできたあとは事業の安定性の観点を取り入れるべきです。そのために顧客獲得のコストをなるべくおさえる必要があります。リピーター獲得への切り替えによって、事業の利益最大化を達成できます。
顧客がリピーターになる主な3つの理由
ではどうやってリピーターを増やせばいいのでしょうか。ここからは、顧客がリピーターになる主な理由を3つ紹介します。
1.商品やサービスに魅力がある
商品やサービスの質が高いほど、顧客は価値を感じ、繰り返し利用したくなるのが自然です。質の高い商品やサービスは、顧客の期待を上回る体験を提供し、リピーターを獲得する力を持っています。
顧客の要求を適切に判断し、その期待に応える商品やサービスを常に提供することが重要です。まずは積極的に顧客のニーズを吸収して、商品・サービスに生かしましょう。
2.インプレッションの回数が多い
リピーターを増やすには、頻繁に商品やサービスを思い出してもらうことが鍵です。これは「ザイオンス効果」と呼ばれる現象で、繰り返し何かと接触することで好感度が上がるとされています。
営業担当者が繰り返し訪問を行うのと同様に、Webサイトや店舗も、ニュースレター、SNS、キャンペーンなどを活用して、顧客との接触機会を増やすことが大切です。
ただしニーズのない顧客に対して何度も接触するのは、ネガティブな印象を抱かせてしまうため逆効果です。そのため、顧客ニーズをスコアなどで可視化するなどして、「プッシュすべき顧客」と「引くべき顧客」を分けましょう。
3.パーソナライズされたキャンペーンなどにメリットを感じる
リピーターの獲得に効果を発揮する方法として、パーソナライズされたキャンペーンを実施するという方法があります。
特定の顧客にキャンペーンの案内やクーポンを配布することで、顧客は特別感を得ます。その結果、商品やサービスの利用を促す効果があります。たとえば「初回購入を達成した顧客」「前回購入から3か月の間が空いた顧客」などで区切ってキャンペーンを実施しましょう。
顧客がリピーターにならない4つの主な理由
ここからは、反対に顧客がリピーターにならない主な理由を4つ紹介します。
1.サービスに不満がある
リピーターを獲得するためには、商品やサービスの質だけでなく、全体の顧客体験が重要です。顧客がリピーターにならない理由は、製品自体の問題だけでなく、スタッフの対応や配送や、支払いなどの要素も要因になっています。
顧客のニーズや声をしっかりと受け止め、サービスの改善に努めることでリピーターの獲得が期待できます。
2.商品やサービスを忘れている
商品やサービスの品質が高いだけでは、リピーターを獲得するのは難しいです。なぜなら、一度満足して購入したとしても、時間の経過によって存在を忘れる可能性が高いためです。
顧客から忘れられないためには、メルマガやSNSなどのツールを利用し、顧客との接点を定期的に持つことが重要です。そうすることで、定期的に商品やサービスを思い出してもらうことができます。
3.一度の購入でニーズが満たされた
商品やサービスによっては、リピーター獲得が難しい場合もあります。たとえば、自動車や不動産などの高額なものは、頻繁に買い替えることがないため、一度の購入で顧客のニーズが満たされるためです。
このような商材を取り扱う場合は、リピーターの獲得よりも、利用者による良い口コミの拡散を狙う方が効果的であるといえます。
4.そもそもリピーター獲得の施策をおこなっていない
リピーター顧客の獲得には、積極的なコミュニケーションが欠かせません。しかし、メルマガなどのコミュニケーションツールは軽視されている傾向にあります。
まずは、顧客とのコミュニケーションの機会を増やすために、コミュニケーションツールの特徴を理解したうえで効果的な施策を講じて、顧客との関係性を高めていくことがリピーター獲得につながります。
リピーターを獲得するための6つのポイント
ここからは、リピーターを獲得するための6つのポイントを紹介します。
1.顧客から共感を得る
新規顧客と深いつながりを持つためには、商品やサービスだけでなく、その根底にあるコンセプトや企業理念に共感を持ってもらうことが大切です。
たとえばオーガニックコットンを使ったタオルがある場合、あえて「高品質なタオル」として売り出すより、「肌に優しいオーガニックコットンを使用しています」というこだわりを伝えることで、敏感肌の人から共感を得ることができます。
また、企業が求める理念やミッションに共感することで、一回の購入ではなく長期的な信頼関係を築くことが期待できます。
2.SNSで顧客との接触回数を増やす
多くの人々が日常的にSNSを利用している現代において、企業もこれを積極的に活用することで顧客とのコミュニケーションを深化させるチャンスがあります。SNSによってはコメントやダイレクトメッセージで直接顧客からのフィードバックを受け取ることができ、商品やサービスの改善に役立ちます。
顧客からの生の声を真摯に受け止め、それを改善に活かすことで、顧客はその商品やサービスにさらに期待と信頼を寄せるようになるといえます。
3.メルマガを活用する
メルマガは、顧客が一度登録すればリピーター獲得につながる有効な手段となります。「ステップメールで顧客の検討段階に合わせたコンテンツを提供する」「閲覧率を分析して顧客が何に興味を持っているかを探る」など、ただメルマガを送信するのではなく、背景に戦術を考えることが重要です。
またメールだけでなく、LINEをはじめとしたSNSを活用するのも手段の1つです。SNSは現在、主流のコミュニケーションツールとなり、メールの利用率は下がっています。「どのツールで配信するか」は、ターゲット像や商材の特徴に応じて柔軟に調整する必要があります。
4.リピーター限定の特典を用意する
リピーター限定のサービスを導入することで、顧客は「リピーターになる特典がある」と感じ、商品やサービスを再利用する動機づけになります。
たとえば、「5回以上の購入でポイントが2倍になる」「10回購入するごとにオリジナルのノベルティがもらえる」といった施策を実施することで、継続的な購入への関心が高まります。
5.ECサイトを改善する
ECサイトのリピーター獲得には、使い勝手の良いUI(ユーザーインターフェース)が非常に重要です。大手ECサイトのように、購入手続きを簡単にし、ページの読み込み速度を速くするなど、ユーザーがストレスなく操作できる環境を整えることが、次回以降もそのサイトを訪れたいと感じさせる鍵となります。
この点は「顧客育成」とも密接に関連しています。顧客体験の向上がその中心であり、高いレベルの顧客サービスや独自の付加価値を提供することで、顧客がサイトに訪問し続ける可能性が考えられるのです。
6.同梱物の配布
顧客が商品を受け取った瞬間は、最も気持ちが昂った瞬間です。この時、段ボールの中にお礼の手紙や限定のクーポンなどの配布物を同梱することで、印象を深く残すことができます。
ECサイトは画面を通じたオンラインコミュニケーションが中心ですが、商品の到着というオフラインの瞬間は、特別なコミュニケーションのチャンスとなります。
リピーター獲得の成功事例8選
ここからは、リピーター獲得に成功した企業の事例を8選紹介します。
1.UNIQLO
ユニクロは顧客の声を大切にすることで、常に商品やサービスの改善を追求しています。1995年に「ユニクロの悪口言って100万円」という挑戦的な広告を打ち出し、1万通以上の貴重なフィードバックを受け取ったことは、その姿勢の証しです。
この取り組みにより、ブランドは顧客ニーズにさらに応えるための改善点を明確にし、成功を収めました。その後も、ユニクロは顧客からのフィードバックを活用して新しい商品を開発しています。
たとえば、白のインナーの透け感に不満を持つ男性からの声を受けて、ベージュ色のインナーを追加するなど、ユニクロは顧客の声を直接商品開発に反映させることで、市場に適応し続けているのです。
2.スターバックスコーヒー
スターバックスコーヒーは、ただコーヒーを提供する場所以上の価値を持つブランドとして多くの人々に支持されています。店内の雰囲気は、訪れるたびに安らぎを感じられるようにデザインされており、居心地の良い座席や無料Wi-Fiは、顧客が長く滞在するための配慮の1つです。
このような環境は、顧客のリピート来店を助ける取り組みとなっております。季節限定のメニューやイベントは、顧客に常に新しい驚きや楽しみを提供するための工夫であり、そのためスターバックスは季節ごとに新商品を提供しています。
スターバックスは独自のカスタマーエクスペリエンスを形成しており、世界中の多くの人々から愛されています。
3.ファンケル
ファンケルは、オムニチャネル戦略の実践、ユーザー中心のショッピング体験を提供しています。経営上の課題に対応するため、複数のシステムの再構築に取り組み、顧客情報の一元管理を実現しました。
これにより、ユーザーは店舗とWebを横断して自身の購入履歴を確認したり、Webと店舗で共通のクーポンが使えたりとシームレスな顧客体験が可能です。
また、店舗でも顧客のWeb購入履歴やカウンセリング情報を即時に確認できるため、より顧客に寄り添った接客につながっています。
4.塚田農場
塚田農場は、全国的な居酒屋チェーンでありながら、リピート率が6割以上という非常に高い数値を誇っています。塚田農場の高いリピート率には、独自のポイントカードシステムが関係しています。
このポイントカードは、名刺のようなデザインになっており、来店回数に応じて「主任」「課長」「部長」など、順次昇進していくシステムです。このユニークな昇進システムは、顧客重視の楽しさや達成感を生む要素となっており、来店の動機付けとなっています。
5.セブンイレブン
セブンイレブンは、駅や住宅街といったアクセスの良い場所に店舗を展開し、24時間営業によって顧客の利用が非常に容易です。食品から日用品までの多岐にわたる商品ラインナップや、独自のオリジナル商品も人々の注目を集め、リピート購入につながっています。
また、「nanaco」カードをはじめとしたポイントサービスや、時折実施されるキャンペーンやセールは、顧客にとっての付加価値を高め、セブンイレブンを選び続ける動機となっています。これらの戦略により、セブンイレブンは日常の生活に密接に注目したブランドとして多くの人々に支持されているのです。
6.プラスワンインターナショナル
プラスワンインターナショナルは、オリジナルのTシャツやユニフォーム制作の分野でリピート率90%という圧倒的な成果を上げている企業です。この高いリピート率を支えているのは、同社の効果的なメールマーケティングです。
具体的には、メールマガジンを活用して、受注につながる見積依頼を促進しています。さらに、オリジナルTシャツの需要が高まるシーズンに向けてのキャンペーンを実施するなど、顧客の関心を引きつけ、継続的なビジネスチャンスを生み出しています。
7.星野リゾート
星野リゾートは、リゾート総合運営の先駆者として顧客満足とリピーター獲得に関心が高い企業です。施設ごとに定量的な顧客満足度調査を行うことで、サービス品質の向上を図っています。
さらに、2022年には新たにポイント会員プログラムやサブスクリプションサービスを開始し、アフターコロナの時代に向け、リピーターを確保して顧客ロイヤルティを高める戦略を進めています。
このような総合的なアプローチによって、星野リゾートは業界内での競争力を高めつつ、持続可能な成長をめざしているのです。
8.姫ラボ
姫ラボは玉造温泉の温泉成分をさまざまな視点で研究し、温泉コスメとして販売しているメーカーです。姫ラボがリピーターを獲得している背景には、商品購入時に同梱されている手書きメッセージの存在があります。
デジタルの時代において、手書きで書かれたメッセージは温かみがあり、利用者に商品以上の価値を提供し、多くのファンを獲得しています。
リピーター獲得でよくある3つの質問
ここからは、リピーター獲得でよくある質問を3つ紹介します。
質問①リピーター獲得のための施策で注意すべきポイントは?
リピーター獲得の施策として、リピーターと新規顧客向けの情報発信チャネルは、明確に区別することが必要です。さらに、リピーターは新規顧客よりも接点が多いため、情報の発信頻度や内容にも気を配るべきです。
ビジネスの持続的な成長のためには、リピーター獲得だけに偏らず、新規顧客の獲得もバランス良く行うことが重要だといえます。リピーター獲得のためには、情報発信チャネルを使い分け、リピーターに上手にサービスを訴求できるように心がけてください。
質問②リピート率の算出方法は?
リピート率の算出は以下の数式によって算出することができます。
リピート率 = リピーター ÷ 総顧客数 × 100
たとえば、あるECサイトの1週間の顧客数が200人で、そのうち2回以上商品を購入した顧客数が20人の場合、(20人÷200人)×100=10%という計算になります。
質問③リピーター獲得で重視すべき数字は?
重視する指標として「F2転換率」があげられます。これは、1回目の購入から2回目の購入に至るまでの転換率を示しており、顧客を繰り返し購入へ導くための重要な指標です。
特に、2回目の購入が成功すると、3回目以降のリピート率も上昇傾向にあるため、このF2移行率は非常に重要とされています。
まとめ
この記事ではリピーター獲得の重要性や、リピーター獲得のためのポイントについて照会しました。リピーターを獲得するためには、同梱物にお礼の手紙を入れたり、限定キャンペーンの案内などを出したりすることで、魅力あるサービスを提供することが重要です。
また、リピーターの獲得にはメルマガの活用がおすすめです。メルマガの場合、低いコストで誰でも気軽に発行できるメリットがあり、ブランディングの向上も期待できます。
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