「カラーミーショップ」が「Amazon Pay」と「WordPress」の月額利用料を無料化【GMOペパボのEC事業部長が語る】
GMOペパボが提供するネットショップ作成サービス「カラーミーショップ」は、10月2日(月)から「Amazon Pay」の月額固定費、「WordPress」オプションの月額費用を無料化した。EC事業者の新規顧客獲得や流通額の増加、独自コンテンツの発信を支援することが背景にある。
ID決済利用の増加、導入店舗で流通額の拡大を受け無料化を決断
これまで「カラーミーショップ」利用店舗がID決済「Amazon Pay」を利用する場合、決済代行会社GMOイプシロンの「カラーミー ペイメント」での審査・契約後、月額固定費2200円(税込)と決済手数料3.9%(物販の場合)を支払う必要があった。10月2日以降は月額固定費が0円となり、EC事業者は決済手数料のみを負担する。
また、これまでは「Amazon Pay」の導入は法人企業のみが対象だが、「カラーミーショップ」においては、10月2日以降は個人事業主も「Amazon Pay」を導入できるようにした。
「Amazon Pay」の月額固定費無料化に踏み切った背景には、「カラーミーショップ」利用店舗におけるID決済の増加がある。「カラーミーショップ」では複数のID決済が利用できるが、そのなかでも「Amazon Pay」は他の決済ID決済よりも大きく伸長しているという。
ID決済が増加した背景について、寺井氏は「コロナ禍による『置き配』の普及で代引きが減少、ネットショップで買い物をする機会が増えるなか、何らかのマーケットプレイスのIDを利用して決済することが拡大した」と話す。
GMOペパボ EC事業部 部長 寺井秀明氏
EC事業者の新規顧客獲得、決済フローのコスト削減
フリープランを含む「カラーミーショップ」を利用する約5万店舗のうち、「Amazon Pay」導入数は約3900店舗(2023年9月6日時点)、割合としては10%ほどだ。
「Amazon Pay」月額固定費無料化に踏み切った背景には、導入店舗でプラスの効果が表れていることもあげられる。
導入店舗から寄せられるのは「自社ECサイトに『Amazon』のロゴが掲載できることで信頼感が増す」「初回購入率が上がる」といった声。特に初回購入者は、クレジットカードや代引きではなく、「Amazon Pay」で決済して購入に至るケースが多い。新規顧客の購入率が導入前と比べて5%増加した事例もある。
結果として新規顧客獲得につながり、販促的なマーケティング視点からも効果を実感できる店舗が多いという。
「Amazon Pay」導入店舗の流通額の事例(画像は「カラーミーショップ」サイトからキャプチャ)
また、決済手続きにおけるサポートが発生するケースが非常に少ないという声もあがっている。
「Amazon Pay」はAmazonアカウントに紐付いた情報を利用するため、クレジットカード情報や配送先の入力が不要。そのため「パスワードがわからない」「エラーが出たらどうすればよいか」といった問い合わせが大幅に減少、サポートコストの抑制にもつながっているという。
注文完了までのステップが少ないため、ユーザーがSNSで見て気になった商品を「ほしい」という熱量を保ったまま購入できることで、購買機会損失防止にもつなげられる。
一方で、未導入店舗からは「月額固定費がネックになる」という意見が多く、導入に踏み切れない店舗もいた。
こうした状況を受け、GMOペパボとアマゾンジャパンは協議を行い、月額固定費の無料化を決めた。無料化後は、GMOイプシロンと契約している店舗は基本的に、標準機能として「Amazon Pay」を導入することとなり、2023年中には導入店舗数が約2万店舗に拡大する見込みだ。
初めてECサイトに来たお客さまに購入してもらう機会を増やすことで、結果としてショップ全体の流通が伸びているという数字は出ている。ハードルとなっている月額固定費を無料化することで、より多くの店舗さまに導入していただけるのではないか。
今回の取り組みがEC事業の成長の一助になればと思っている。年末商戦に向け、事業の柱を伸ばしていってもらえたら嬉しい。(寺井氏)
EC事業者のコンテンツ発信による差別化を支援
「Amazon Pay」月額固定費無料化と同時に、これまでは月額利用費として5500円(税込)発生していた「WordPress(ワードプレス)」オプションの月額費用も無料化した。対象は「カラーミーショップ」の「レギュラープラン」以上を利用している店舗。
無料化に至った背景には、ECサイトをカジュアルに始める事業者が急増したことがある。実店舗を構えて自社ブランドをきちんと発信するなかで自社ECサイトを開設し、2軸で事業を進めている企業も増えてきた。寺井氏も「SNSや自社サイトでメッセージを発信して、顧客を獲得している事業者が増えてきていると感じる」と話す。
当然ながら、EC事業を始めても集客できなければ商品を購入してもらえない。そうしたなか、「カラーミーショップ」では、「WordPress」を活用してユーザーの興味・関心を引く情報を発信するコンテンツなどを作成、検索結果やSNSからの着地点として活用している企業が売り上げを伸ばしているケースが増えてきているという。
「WordPress」機能を活用し、鹿児島の地域情報・生産者情報、セール・キャンペーン情報などを発信している「かごしまぐるり」。発信を始めたことでアクセス数が増加した(画像は「かごしまぐるり」のサイトからキャプチャ)
情報発信の手段として「WordPress」を利用してもらいたいと考えているが、固定費がネックになるという店舗さまもいる。
サーバーやドメインを別途契約しなくても、ECサイトと同じドメイン(URL)に「WordPress」を開設できるため、SEOとしての効果やブランドを1つのサイトで表現できるというメリットがある。深掘りしたコンテンツ作成・発信を行い、ショップや商品の魅力を伝えることで新たな顧客獲得につなげてほしい。(寺井)
ECサイトと同じドメインに作成して質の高いコンテンツを蓄積することで、検索エンジンの評価アップにつながる(画像は「カラーミーショップ」のサイトからキャプチャ)
制作代行会社からの提案の選択肢を増やしたい
無料化した理由としてもう1つ、制作代行会社からの声がある。
「カラーミーショップ」は「制作代行サービス」を提供しており、提携している制作代行企業から「店舗にヒアリングした結果、『WordPress』を提案することが多い」という声が多数寄せられていた。
「カラーミーショップ」の「制作代行サービス」(画像は「カラーミーショップ」サイトからキャプチャ)
制作代行企業に「『カラーミーショップ』なら『WordPress』を無料で導入できる」という認知を広げたいと話す。「『WordPress』の固定費がなくなることで、制作会社としては『WordPress』を含めたデザインの提案がしやすくなり、よりデザイン面で真価を発揮できるのではないかと考えている」(寺井氏)。
「安芸の島の実」さん、「ハリコオンライン」さんなど「カラーミーショップ大賞」受賞店舗でも「WordPress」を活用して、深掘りしたコンテンツを制作・発信している店舗は多い。「WordPress」を活用することでお客さまにとって魅力的なコンテンツをどうやったら作れるのか、活用方法、制作代行企業への認知拡大を積極的に行っていきたい。(寺井氏)
決済面、コンテンツ制作面での支援を強化。システムを活用した生産性向上支援もめざす
今回の施策に対して寺井氏は「決済面と集客面の新たな提案として無料化の施策を組み合わせ、店舗さまの成長に合わせてプロダクトをより成長させていきたい」と話す。
「『カラーミーショップ』で制作したECサイトのコンバージョンが一番高い」「『カラーミーショップ』を使って作ったECサイトだから買いやすくなった」と言っていただけるようになることをめざしたい。(寺井)
また、今回の施策だけに留まらず、今後は少人数でECサイトを運営している事業者への支援強化も進めていく方針だ。
1つ目はAIを活用した商品説明文の作成など、システム面での生産性向上。2つ目はEC事業者同士のつながりを作る場を提供するため、オンラインセミナーや「カラーミーショップ」主催のユーザーコミュニティ「Carty(カーティ)」を継続して開催していく予定だ。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:「カラーミーショップ」が「Amazon Pay」と「WordPress」の月額利用料を無料化、その理由は?【GMOペパボのEC事業部長に聞いた】
Copyright (C) IMPRESS CORPORATION, an Impress Group company. All rights reserved.