帝国データバンク(TDB)が実施した価格転嫁に関する企業調査によると、コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率」は43.6%だった。コストが100円上昇した場合に43.6円しか販売価格に反映できていないことを示している。
コストが100円上昇した場合に43.6円しか販売価格に反映できていない
「価格転嫁率」は2022年12月に実施した前回調査(39.9%)より3.7円転嫁が進んだが、依然6割弱のコストを企業が負担する状態が続いている。
自社の主な商品・サービスで、コストの上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているかと聞いたところ、コスト上昇分に対して「多少なりとも価格転嫁できている」は74.5%だった。
価格転嫁率は43.6% 2022年12月から3.7ポイントの改善にとどまる
その内訳は「5割以上8割未満」が19.8%で最多。「2割未満」(19.0%)「2割以上5割未満」(16.8%)「8割以上」(14.4%)と続き、「10割すべて転嫁できている」は4.5%だった。
価格転嫁の状況と価格転嫁率
一方、「全く価格転嫁できない」は12.9%。前回調査(2022年12月)より3.0ポイント低下した。ただ、現時点でも価格転嫁が全くできていない企業が1割を超えている。
業種別に見ると、価格転嫁率が高い業種は「紙類・文具・書籍卸売」が65.7%でトップ。「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(64.3%)「化学品卸売」(63.1%)が続いた。価格転嫁率が6割を超えたのはいずれも卸売業。
価格転嫁率が低い業種は、一般病院や老人福祉事業といった「医療・福祉・保健衛生」(15.2%)が最も低く、映画・ビデオ制作業やパチンコホールなどを含む「娯楽サービス」(21.6%)や「リース・賃貸」(24.8%)、「農・林・水産」(25.6%)が続いている。
主な業種別の価格転嫁率
競合他社が多く価格が上げにくい業界では、自社の商品・サービスの価格値上げによって、「取引企業や最終消費者の顧客離れを危惧し価格転嫁に踏み切れない」「値上げ交渉自体が行えない」「むしろ値下げを要求された」といった声もあがった。
一方、独自性のある商品販売により競合他社が少なく、価格転嫁しやすいと回答した企業もあるものの、企業にはより付加価値の高い商品・サービスを提供するための取り組みが必要と言える。
TDBの集計では、価格転嫁を取引先から拒絶されたり、わずかな値上げしか認めてもらえず結果的に経営破綻を余儀なくされた「値上げ難型」の物価高倒産は少なくとも23件(2023年1-7月)ある。前年同期の12件に比べて倍増ペースで推移しており、価格転嫁が厳しい企業の倒産が目立っている。
調査概要
- 調査期間:2023年7月18~31日
- 調査対象:2万7768社
- 有効回答:1万1265社(回答率40.6%)
- 調査機関:帝国データバンク
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:「価格転嫁できない」企業は12.9%。価格転嫁率は43.6%、コスト100円上昇で売価反映は43.6円
Copyright (C) IMPRESS CORPORATION, an Impress Group company. All rights reserved.