EC事業が思うように伸びない原因の1つには「EC事業を成長させるための知識」が不足していることがあげられます。ECの成長に役立つテクノロジーとソリューションの進化に対し、「自社独自のECマーケティングノウハウ」の確立に至るまで「運営サイクル」を回し続けられない事業者も少なくありません。
前回のコラムでは全5回の4回目として「EC運用力」の大項目、「販売スケジュール作り」「商品企画」「集客・認知拡大・広告活用」の3つの中項目と10個の小項目について解説しました。今回は「EC運用力」の残り5つの中項目をご紹介します。
「EC運用力」は成長するための基礎力
EC運用力は「販売スケジュール作り」「商品企画」「集客・認知拡大・広告活用」「SNS活用」「ページ作り」「客単価対策」「CVR対策」「バックオフィス」の8つの中項目から成ります。
EC運営は土台に「組織と人材」があってこそ成り立つもの。「EC組織力」「EC人材力」の土台が整っていることで、「EC運用力」が生み出す成果が大きく変わります。
EC運用力のチェックポイント
- SNS活用
- SNSを活用した定期的な情報発信を行い、お客さまとの接触頻度を上げているか
- 自社のブランドについて発信してくれているフォロワー(ファン)を把握できているか
- 定期的なリアルイベントを開催し、フォロワー(ファン)とのエンゲージメント強化ができているか
- ページ作り
- ヘッダー、フッター、サイドナビについて、売れ筋商品や関連商品への回遊性を意識してデザインしているか
- 新商品紹介、「What‘s New」の更新、レビュー掲載など、店舗が動いている“ライブ感”を出しているか
- スマホ版の商品ページでは、決済情報や配送情報といった店舗情報も網羅的に掲載できているか
- 客単価対策
- 「初めてセット」や「スターターパック」を企画し、間接的なまとめ買いを促進しているか
- 商品購入における送料無料ラインを設定し、買い物カゴの客単価アップを促進しているか
- CVR対策
- 累計の販売実績や表彰・ランキング掲載など、お客さまに数値的な実績をページ上で提案しているか
- 専門家の意見や調査データ結果をページ上で提案し、商品の付加価値を上げることができているか
- 「正規取扱店」や「優良代理店」など、業界内での立ち位置や信頼性をお客さまに伝えているか
- バックオフィス
- カスタマーサポートに寄せられたお客さまの要望や改善項目を、漏れなくマーケティング定例会議で取り上げているか
- 月1回、商品別の在庫金額データを作成し、在庫対策を検討・実施できているか
SNS活用①:SNSを活用した定期的な情報発信を行い、お客さまとの接触頻度を上げているか
インターネットに情報があふれているなかで、「お客さまの時間」をいかに押さえるかがポイント。SNSで定期的に情報を発信し、お客さまとの接触頻度を上げましょう。前日知った情報を今日にはすでに忘れている時代、継続的な刷り込みが大切です。
SNS活用②:自社のブランドについて発信してくれているフォロワー(ファン)を把握できているか
従来のマーケティングでは、ロイヤルカスタマーといえばショップでの購入回数や購入金額が多いお客さまを指していました。しかし、現在では「購入回数は多くないが、好意的な情報発信をしてくれるお客さま」をロイヤルカスタマーの条件に加えることが大切です。
SNS活用③:定期的なリアルイベントを開催し、フォロワー(ファン)とのエンゲージメント強化ができているか
SNS上のつながりをリアルのイベントでより強固なものにし、さらなるSNS上での交流につなげていく。これが現代のマーケティングの基本です。SNSでのつながりが強いお客さまにリアルの場を提供することで、ブランドへのエンゲージメントを強化することができます。
ページ作り①:ヘッダー、フッター、サイドナビについて、売れ筋商品や関連商品への回遊性を意識してデザインしているか
ECサイトのヘッダー、フッター、サイドナビにはネットショップにより長く滞在してもらうための工夫が必要になります。売れ筋商品や関連商品の導線など、より良い回遊性を意識してサイトを設計しているかが大切です。
ページ作り②:新商品紹介、「What's New」の更新、レビュー掲載など、店舗が動いている“ライブ感”を出しているか
お客さまからはECサイトのスタッフさんたちが見えません。新商品の紹介や「What's New」の更新が滞ると、お客さまは店舗が動いていないように感じてしまいます。販売実績やレビュー掲載により「人が集まっていること」をお客さまに伝え、店舗が動いている“ライブ感”を感じてもらいましょう。
ページ作り③:スマホ版の商品ページでは、決済情報や配送情報といった店舗情報も網羅的に掲載できているか
10年以上前から、多くのECサイトはスマホからのアクセスの方がパソコンより多い状態です。しかし私たちはEC運営業務をパソコンで行っている、ここが盲点です。あくまでスマホを使うお客さまの視点でページを作れているかがポイントになります。
客単価対策①:「初めてセット」や「スターターパック」を企画し、間接的なまとめ買いを促進しているか
特に商品数が多いショップでは、不慣れなお客さまが「まず何を買えばいいのか」迷ってしまいます。「初めてセット」や「スターターパック」を企画・提案することで、もっとも自信のある商品にお客さまを誘導できるほか、間接的なまとめ買いによる客単価アップにもつながります。
客単価対策②:商品購入における送料無料ラインを設定し、買い物カゴの客単価アップを促進しているか
送料無料ラインはお客さまが「もう一品」を探す理由を作り出してくれます。もちろん、送料無料ラインの設定は利益との関係性で決められるべきですが、設定した場合、現状の客単価と送料無料ラインの「購入金額ギャップを埋める」商品を用意してください。
CVR対策①:累計の販売実績や表彰・ランキング掲載など、お客さまに数値的な実績をページ上で提案しているか
ネットの特性として、実店舗のような「人気(ひとけ)」を感じにくい・わかりにくい点があります。商品の販売実績や表彰履歴などをサイトに掲載することで、お客さまからの信用度を上げることができます。ECサイト、商品ページの両面で有効です。
CVR対策②:専門家の意見や調査データ結果をページ上で提案し、商品の付加価値を上げることができているか
自社発信のデータだけではなく、第三者である専門家の意見や調査データ(いわゆるエビデンス)を商品ページに掲載しましょう。商品の付加価値を上げることが、よりお客さまの購入意欲を刺激してくれるはずです。
CVR対策③:「正規取扱店」や「優良代理店」など、業界内での立ち位置や信頼性をお客さまに伝えているか
特に実店舗がある会社、長く事業を行っている会社に有効な手段が、「業界内での立ち位置」「信頼性」をECサイトでもお客さまに伝えることです。事業の「実体性」をアピールすることで、お客さまの購入ハードルを下げることができます。
バックオフィス①:カスタマーサポートに寄せられたお客さまの要望や改善項目を、漏れなくマーケティング定例会議で取り上げているか
「EC人材力」の項でもあげた通り、お客さまの定性データは次のマーケティングのヒントになります。カスタマーサポートに寄せられる小さな意見や質問が大きな改善施策につながる可能性もあります特に「●●(主にメディア名)で見たのですが……」といった声はマーケティング活動に大きなヒントを与えてくれるはずです。
バックオフィス②:月1回、商品別の在庫金額データを作成し、在庫対策を検討・実施できているか
EC事業成長の課題で切っても切り離せないのが在庫問題です。必ずルーチンとして月1回は商品別の在庫金額データを作成すること。在庫対策を検討・実施し、その成果を翌月の会議で必ず確認してください。定期的な倉庫見学(在庫の目視)も在庫を意識するために有効です。
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今回は「EC事業の運営サイクル強化のためのチェックシート」における「EC運用力」について13個のチェックポイントをご紹介しました。このシリーズは今回で最終回となります。ぜひECマーケティング人財育成のWebサイトから資料請求をしていただき、「自社の運営サイクルレベル」を図るために定期的な進捗をチェックしてみてください。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:売上アップに直結する「EC運用力」の向上に必要な13ポイント。SNS活用、ページ作り、CVR、客単価、バックオフィスの視点で解説 | 強いEC会社を支えるネットショップ担当者を作る人財育成講座
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