最新テクノロジーやビジネスモデルなどさまざまなテーマで議論するイベント「Shoptalk(ショップトーク) 2023」に集まった小売事業者のリーダーらは、人工知能(AI)、ライブ動画、中古品市場など、今後潜在的な成長が期待できるテーマについて議論しました。それぞれのテーマについて、議論された内容、市場の現状、活用事例を解説します。
記事のポイント
- 3月下旬に米国・ラスベガスで開催されたイベント「Shoptalk 2023」に、小売事業者やマーケットプレイス運営者が集結。
- イベントでは人工知能が話題となり、参加した小売事業者たちは、この技術を今までにどのように活用し、次に何を計画しているかについて共有した。
- このほか、ライブ動画の成長や中古品の販売に市場拡大の可能性を感じているブランドも見られた。
小売業界の識者は「AI」「動画活用」「中古品市場」に着目
「Shoptalk」の2023年大会(2022年3月27日~30日の4日間)では、小売事業者らが数百社、1万人以上が参加。参加した経営者やコンサルタントはEコマースに注目していました。
「Shoptalk 2023」の開催概要ページ(画像は編集部がサイトからキャプチャ)
『Digital Commerce 360』が提供する北米最大のEコマース小売企業データベース「北米EC事業 トップ1000社データベース 2022年版」にランクインしている企業から登壇したスピーカーたちが、AI、利便性、持続可能性、オムニチャネルショッピングなどの将来について講演しました。
2023年の「Shoptalk」で話題に上った注目のトレンドをご紹介します。
AIはもはや“必須”
人工知能は、プレゼンターやパネリストの間で最も人気のあるトピックでした。企業のトップや登壇者たちは、AIが小売業をどのように変革するかについて、イベントの参加者から何十もの質問を受けました。
Lowe's(米国の住宅リフォーム・生活家電チェーン)のシーマンチニ・ゴドボール氏(エグゼクティブ・バイスプレジデント兼チーフ・デジタル&インフォメーション・オフィサー)は、AIの応用可能性を示す例として、アプリの活用例を解説。
アプリを使うと、部屋の面積を測ったり、家電の収まり具合を確認したりすることができます。
これらの機能は「あったらいいな」ではなく、もはや「必須」だ。(ゴドボール氏)
他の小売事業者は「人工知能を利用して、消費者により良い提案をしたい」と話していました。たとえば、次のようなことです。
ThredUp(米国の中古品衣料プラットフォーム大手)のノエル・サドラー氏(CMO)は、中古品の再販会社がAIを活用して顧客に類似商品を提案する方法について説明しました。
ThredUp CMO ノエル・サドラー氏
ThredUpが運営する中古品衣料プラットフォームのトップページ(画像はサイトから編集部がキャプチャ)
また、Shein(中国発祥のファストファッションブランド)のピーター・パーノット・デイ氏(グローバル戦略・企業責任者)は『Digital Commerce 360』に対して、「SheinもAIを活用して消費者にレコメンドしている」と明かしました。
Sheinは、顧客の好みに関する情報を利用して、わずか数日で顧客に合わせた商品の提案をすることができるそうです。
動画活用はさらなる拡大が期待
ライブストリーム動画によるショッピングは、米国市場ではまだ大きなうねりにはなっていませんが、「Shoptalk」では複数の小売事業者やマーケットプレイスが可能性について説明しました。
ファッション専門のEコマースマーケットプレイス「Verishop(ベリショップ)」を運営するVerishop社は、顧客が動画を活用したプロモーションに強く反応することに気付きました。
「Verishop」では、クリエイターのライブストリームを自動化して、商品ページに掲載できるエバーグリーンコンテンツ(長期的に有益な価値を提供するコンテンツ)に変換しています。
Verishopのイムラン・カーン氏(共同設立者兼CEO)は「動画レビューがある商品は、そうでない商品と比較してコンバージョン率が40%以上向上した」と述べています。
「Verishop」はYouTubeでもチャンネルを持ち、動画を配信している(画像はYouTubeチャンネルトップページを編集部がキャプチャ)
フレグランス会社のNestは、異なるアプローチを採用、アンドレア・ムーア氏(最高デジタル責任者)は次のように話しています。
ライブ動画はもはや、フレグランスなど消費者が「実際に見てみたい」と思っている商品を販売するための手段だ。(ムーア氏)
Nestは動画を活用して、フレグランスの世界での信頼性を確立し、消費者の質問に答え、商品のお披露目会を開催し、限定キャンペーン企画の開催を消費者に告知しているそうです。
中古市場は小売全体の“16倍”の速さで成長中⁉
中古販売については、多くの小売事業者が議論を交わしていました。ThredUpのアンソニー・マリオ社長は、中古品再販企業のパネルディスカッションで「中古衣料は“手垢のついた不人気なもの”から、“ステータス”になった」と指摘しました。
ThredUpは「Shoptalk 2023」でプレゼンテーションやパネルディスカッションを行った
ThredUpは現在、米国の衣料品チェーンJ.Crew、Gap、Abercrombie and Fitchなど20社と連携し、再販ビジネスを展開しています。
ThredUpのデータによると、衣料品の再販市場は、小売市場全体と比べると16倍の速さで成長しています。消費者の半数以上が過去1年間に中古の衣類を購入しているそうです。
中古家具のマーケットプレイス「AptDeco(アプトデコ)」のリーハム・ファギリ氏(共同設立者兼CEO)は、中古家具について同様の話をしました。
中古家具の再販市場は、家具全体の約3倍のスピードで成長している。(ファギリ氏)
ThredUpとAptDecoの両社は、中古市場の成長の理由を、利便性と持続可能性に対する顧客の期待の高まりだと考えています。
両社は「元の価格帯では購入しないような新しい顧客を呼び込むことができる」と強調しました。
キッチン用品販売のAptDecoはWilliams-Sonomaと提携し、返品された家具や少し傷んだ家具を出品し、中古品の価格設定に関するデータを同社に提供しています。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:次のECトレンドは「AI」「動画」「中古品市場」。米国市場に学ぶ成長期待と活用事例 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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