少し前の話になりますが、2021年11月のブラックフライデー、サイバーマンデー期間に、10日間のWeb表示スピード調査を実施しました。2回目となる2021年の調査では「コアウェブバイタル」をあわせて計測。Amazonや日本のECサイトはどのようなWeb表示スピード性能だったのでしょうか? (この記事はPCでの閲覧をおすすめいたします)
今回の調査目的は次の2つです。
- 「売れているシーズン」で計測を実施する
- 「売れているタイミング」でのリーダーサイトの内容を明らかにする
ブラックフライデー、サイバーマンデーの時期は、世界でもっとも販売量、取り扱い額が動くタイミングです。感謝祭(2021年は11月26日)の翌日にセールが行われるのが「ブラックフライデー」、その週末を挟んでオンラインでセールを開始するのが「サイバーマンデー」で、サイバーマンデーは2000年以降に定着し始めました。
元々米国でその年のクリスマス商戦の動向を予測する上で重要な数値として注目され、日本では2016年頃から始まり、現在では馴染みのあるセールになりました。
今回の調査では、Web表示スピードの指標に加えて、Googleの新しいUX指標である「CoreWebVitals(コアウェブバイタル)」も計測しました。
2021年のブラックフライデー、サーバーマンデーの米Amazon販売額は過去最高を記録
計測結果の前に、2021年のブラックフライデー、サイバーマンデーを振り返ってみます。
2021年12月1日、米Amazonは年末商戦におけるEC上での販売が過去最高になったと発表しました。2021年11月26日のブラックフライデーから11月29日のサイバーマンデーまでの販売は過去最高を更新し、この期間における全体売上の半分以上は、出品事業者の販売によるものでした。
また、「Shopify」も全世界の「Shopify」利用企業の流通総額が前年比21%増の約29億ドル(約3293億円)となり、過去最高に達したと公表しています。
国内認知は向上しているが、実施は3割程度
一方、米Adobeが2021年11月30日に発表したレポートによると、サイバーマンデー期間の米国オンラインでの売上高は107億ドル(約1兆2100億円)で、前年比1.4%減となりました。
ブラックフライデーのオンライン小売売上高は89億ドル(約1兆100億円)で前年比1%減となり、いずれも2012年に集計を始めて以降、米CNBCなどの報道によると前年実績を下回るのは初めてのケース。Adobeではホリデーショッピングの開始時期が早すぎたことにあると分析しています。
日本ではどうでしょうか。電子チラシサービス「Shufoo!」によると、ブラックフライデーという言葉の認知は3年連続75%以上と高く定着しています。一方、事業者58社への調査では、67.2%が「この時期の集客施策は実施しない」と回答。ブラックフライデーセールはまだ3割程度の一部企業が実施しているイベントのようです。
だからこそ、本調査ではリーダーサイトのWebサイト状況を分析し、ベンチマークとして捉えたいと考えています。
1位は「Amazon」、2位の「Nordstrom(ノードストローム)」は大幅躍進
2020年と同じく1位は「Amazon」でした。しかし、ホリデーシーズンはさらに高速化したものの、ブラックフライデーでは0.16秒ほど前年よりもスピードを下げてしまいました。
2位は前回9位だった「Nordstorm(米)」で、1.14秒も短縮していました。一方、上位の中間層では「トイザらス」「楽天市場」「Qoo10」「イオン」など、遅くなってしまったサイトも見られました。
2020年の調査では、SpeedIndex2秒以下は5サイトでしたが、2021年には4サイトに減っていました。しかし、ランキングの全体傾向として、さらに高速化が進んでいるというトレンドが見えます。
サイト名 SpeedIndex(秒) 差 2021 2020 1 Amazon(ホリデーセール) 1.49 1.53 -0.04 2 Nordstorm(US) 1.50 2.64 -1.14 3 Amazon(BlackFriday) 1.53 1.37 0.16 4 GoogleStore 1.86 1.99 -0.14 5 トイザらス 2.02 1.78 0.24 6 楽天市場 2.72 1.79 0.93 7 Qoo10 2.87 2.63 0.24 8 ユニクロ(誕生感謝祭) 3.04 計測せず - 9 Macy's(US) 3.15 2.02 1.13 10 イオン 3.70 3.14 0.56 11 ディズニーストア 3.87 2.51 1.36 12 イトーヨーカドー 3.89 計測せず - 13 GAP 4.89 5.89 -1.00
SpeedIndexの比較、2020年と2021年の違い
2020年と2021年を比較して、表示速度が遅くなった傾向があるのが「楽天市場」「Macy’s」「イオン」「ディズニーストア」です。2020年の「ユニクロ」と「イトーヨーカドー」は計測対象外(単位・秒)
BFCM時の主要表示スピードの指標は?
Speed
Index
順位 サイト名 Speed
Index
(秒)① Backend
(秒)② Start
Render
(秒) ③ Size
(MB)④ Request⑤ 1 Amazon(ホリデーセール) 1.49 0.54 1.05 14.82 149.00 2 Nordstrom(US) 1.50 0.61 1.00 4.36 682.00 3 Amazon(BlackFriday) 1.53 0.55 1.05 6.28 160.50 4 GoogleStore 1.86 0.69 1.60 1.28 53.50 5 トイザらス 2.02 0.35 1.10 3.62 243.50 6 楽天市場 2.72 0.58 1.50 2.50 213.50 7 Qoo10 2.87 0.98 2.15 3.83 313.00 8 ユニクロ(誕生感謝祭) 3.04 0.41 0.70 2.88 185.50 9 Macy's(US) 3.15 0.56 1.20 3.97 302.50 10 イオン 3.70 1.55 2.90 2.59 204.50 11 ディズニーストア 3.87 0.71 1.60 6.31 150.50 12 イトーヨーカドー 3.89 0.60 3.20 5.99 302.25 13 GAP 4.89 0.54 2.25 4.93 286.00
※各数字はトップと商品詳細ページの合算の平均値で表しています。(US)以外は日本のサイトです。
各指標の説明
①「Speed Index」…Googleが発表したパフォーマンス指標。ブラウジング開始後、ファーストビューの表示が完了するまでの視覚的経過状況を総合的に算出したもの。目標値 4.5秒内
②「Backend」…サーバー、NW通信、DNS名前解決を含む、クライアントリクエストを処理するための時間。いわば反応スピード。目標値1秒
③「Start Render」…空白ページからコンテンツが初めて表示されるまでの時間、ユーザーが「Webサイト表示が速い」「遅い」と体感する指標。目標値2秒内
④「Size」…1ページに含まれるファイル(画像、動画、フォント、CSS、JavaScript、HTMLなど)の総量
⑤「Request」…1ページに含まれるファイル(画像、動画、フォント、CSS、JavaScript、HTMLなど)の読み込み個数
「Amazon」のホリデーセールページのファイルサイズ(Size)は14.82MBでしたが、実はビデオファイルが含まれており、実際は4MB弱のファイル容量です。同様に「Nordstrom」のリクエスト数682は多すぎる数字ですが、第2位を確保しています。
Amazonの商品詳細ページの表示は1.6秒で完了している
Amazonの商品詳細ページの内容。リクエスト数は184、ファイル容量は3.8MB。10MBを超えるビデオファイルが多数存在するが、非同期かつ高速なビデオストリーミングでWebページ表示の速度遅延、影響がほとんど出ていない
BFCM時のコアウェブバイタルは?
今回の調査対象では、大型のECサイトが多いためか「コアウェブバイタル」対策が不十分な傾向が見受けられます。しかしSpeedIndexが3秒を切っている1位~7位のサイトに関しては、「Nordstrom」を除いてほぼ対策が進んでいると見受けられます。
Speed
Index
順位 サイト名 Speed
Index
(秒) LCP
(秒) ⑥ TBT
(ミリ秒)⑦ CLS⑧ 1 Amazon(ホリデーセール) 1.49 1.53 212 0.31 2 Nordstorm(US) 1.50 1.58 2377 0.00 3 Amazon(BlackFriday) 1.53 1.44 256 0.07 4 GoogleStore 1.86 1.97 273 0.00 5 トイザらス 2.02 1.85 582 0.37 6 楽天市場 2.72 1.87 293 0.00 7 Qoo10 2.87 3.39 253 0.02 8 ユニクロ(誕生感謝祭) 3.04 3.70 991 0.46 9 Macy's(US) 3.15 1.78 1804 0.07 10 イオン 3.70 5.66 201 0.65 11 ディズニーストア 3.87 6.98 598 0.15 12 イトーヨーカドー 3.89 3.46 743 0.12 13 GAP 4.89 3.68 1072 0.09
※各数字はトップと商品詳細の合算の平均値で表しています。(US)以外は日本のサイトです。
「コアウェブバイタル」の基準値
本記事の「コアウェブバイタル」の基準値はGoogle社情報「ウェブに関する主な指標レポート低速なサイトを修正してユーザー エクスペリエンスを改善する」に準拠した形をとっています。
Good
(良好) Needs
Improvement
(要改善) Poor
(不良・低速度) LCP 2.5秒以下 4秒以下 4秒を超える TBT
(※FIDの代替) 300ミリ秒以下 600ミリ秒以下 600ミリ秒を超える CLS 0.1以下 0.25以下 0.25を超える
・サイト名の背景黄色が「コアウェブバイタル」の3指標すべてがGreen(良好)のサイト。トップページ、詳細ページの平均値を集計しています。
・TBT(※FIDの代替指標)について
本計測はSpeedCurveのSynthetic計測サービスを利用しています。FIDはWebサイトに訪れたユーザーリアルデータに基づく統計指標であり、仕様上精緻な計測が難しいため、GoogleDevelopersサイトの内容も踏まえて、FID代替え指標の TBT(Total Blocking Time)で計測、集計しています。
最新リテールのベンチマークを知りたい方は
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調査概要
今回の調査では売れている時間帯のコンディションを把握するために、12:30、18:30、22:30の1日3回、比較的高負荷の時間で実施しました。1サイトにつきトップページ、商品詳細ページの2つのURLを計測対象とし、合算値でランキングとして並べています。
調査期間:2021年11月19日 12:30~2021年11月29日 22:30までの11日間
調査対象:弊社独自調査でブラックフライデーセール(11月19日~11月20日)を実施した、大手ECサイトを14サイトピックアップ、定点計測を実施しています。
- ウォルマート(US)も計測対象としていましたが、ロボット検知により正常に計測できないため対象外としました。よって、13サイトをランキングしています。
- 「GoogleStore」はブラックフライデーが2021年11月25日に開始したため、11月25日に計測対象として追加
- 「Amazon(BlackFriday)」は、ブラックフライデーが2021年11月26日に開始したため、11月26日に計測対象として追加
調査範囲:1サイトにつき、①トップページ②リストページ(カテゴリページ)③商品詳細ページの3つのURL(計測したのは①50URL、②50URL、③50URLの計150URL。うち、リストページと商品詳細ページが同一のため②③に同一ページで計測したのは2URL)。当該サイトURLは、検索エンジンによる検索結果から移動できるURLを用いた。
①トップページ②リストページ(カテゴリページ)③商品詳細ページ、それぞれの中央値(median)を平均したものをサイトの代表値とする。
計測時間:12:30、18:30、22:30の1日3回
測定プロファイル:Apple iPhone X(4G LTE)、Samsung Galaxy S8
※集計に使用したのは「Apple iPhone X(4G LTE)」
1回当たりの計測数:3 checks
計測回数:150URL × 1日3回 × 3checks × 2デバイス × 14日間 = 3万7800回計測
エミュレート回線品質(4G LTE):ダウンロード 11.7Mbps/アップロード 11.7Mbps/レイテンシー 70ms
計測ロケーション:日本向けECサイトは東京、US向けECサイトはUS WestCoastのクラウド環境から測定
値の算出方法:期間内の計測結果から各指標の中央値を出し、各ページ(top、item)の平均値を反映。
サイト調査実施:ドーモ 文・レポート:占部雅一、計測データ集計:村岡温子
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:ブラックフライデー&サーバーマンデーのWeb表示スピード&コアウェブバイタルを調査! 1位は「Amazon」【2021年データ】 | 勝手にスピードテスト Powered by SpeedCurve
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