【2022年のEC業界予測】eコマースの成長鈍化、新しいビジネスモデルの構築、インフレ、Amazonへの圧力など | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2022年1月13日(木) 07:00
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米国の大手EC専門誌『Digital Commerce 360』編集部による2022年オンライン小売業の予測では、eコマースの成長率鈍化、アメリカ連邦政府によるAmazonへの攻撃、新しいビジネスモデルの登場などをあげています

eコマースの成長鈍化、アメリカ連邦政府によるAmazonへの攻撃、目が離せないインフレの状況など、2022年のオンライン小売業について米国の大手EC専門誌『Digital Commerce 360』の編集部が予測します。

過去2年間は、小売業界の予想を上回るスピードでeコマースの成長が加速しました。新型コロナウイルスの大流行で、eコマースの重要性、消費者に提供する利便性に注目が集まったのです。

前例のない過去数年間のオンライン販売の伸びが、再び繰り返されることはないと考えられますが、今後数か月は驚きの連続となるでしょう。『Digital Commerce 360』編集部が予測する2022年の展望をご紹介します。

eコマースの成長率が鈍化

『Digital Commerce 360』発行の「2021 eコマース Market Report」の初期予測では、米国の2021年オンライン売上は前年比16.2%増と伸長しました。健全な成長に見えますが、伸び率は2020年の31.8%増から大きく落ち込みました。

『Digital Commerce 360』の調査データ担当ディレクターであるジェシカ・ヤング氏は、2022年のeコマースの成長は正常な状態に戻ると話します。

2020年ほどのeコマースの成長率は持続できないでしょう。2021年は減速、その傾向は2022年も続き、オンライン売上の成長率は前年比14%増程度になると予測しています

成長の鈍化により、小売事業者は「もう一度クリエイティブになることを余儀なくされる」とシニアコンシューマーインサイトアナリストのローレン・フリードマン氏は言います。

「おそらく、実店舗がまた大きな価値を持つようになれば、より多くの店舗が復活し始め、ショッピングのダイナミズムを再び変えるでしょう。」

eコマースはさらに新しいビジネスモデルへ

オンライン小売事業者が競合に差をつけるためには、独自のマーケットプレイスの立ち上げ、中古品の販売、買い取り・下取りプログラムなど、新しいビジネスモデルへの投資が必要だとヤング氏は言います。

小売事業者が独自のマーケットプレイスを立ち上げることは、『Digital Commerce 360』編集部がすでに注目しているトレンドです。2021年には複数のトップクラスのオンライン小売事業者がこの分野に着手しています。

マーケットプレイスモデルは、商品の仕入れ、在庫保管、配送に関わる責任を負わずに、より多くの種類の商品を提供したい小売業事者にとって魅力的だとヤング氏は考えます。

ラグジュアリー市場では、オンライン委託販売や買い戻しプログラムが先行しており、このトレンドは2022年にさらに加速するとヤング氏は予測しています。

多くの若い消費者がサステナブルな商品に注目しています。環境への悪影響や倫理的に問題のある労働慣行が疑われるファストファッションを嫌っていることから、小売事業者はこれらの問題の解決をめざした新しいビジネスモデルを試すために軸足を移すでしょう

改善に向かうサプライチェーンの問題

希望的観測かもしれませんが、2022年後半にはサプライチェーンの問題が徐々に改善されると予測する編集者が少なからず存在します。もちろん、これは世界が新型コロナウイルスの大流行を収束させられるかどうかにかかっています。

工場や港は、新型コロナウイルスの大きな再流行がない限り、徐々に正常な状態に戻っていくでしょう。

編集長のドン・デイビス氏はこう言います。

インフレが小売業界の新たな混乱要因に

米国では現在、約40年ぶりの高インフレが進行しています。2021年11月の消費者物価指数は前年同月比6.8%増となりました。

インフレはサプライチェーンのコストと制約の増加の影響によるものだとシニアエディターのジェームス・メルトン氏は話します。「インフレは病気というより症状です」

2022年にインフレがいくつかの点で小売業界に影響を与えると、編集調査部ディレクターのポール・コンレイ氏は考えています。

商品価格のインフレは、賃金のインフレ圧力につながります。すでに従業員を確保するために割高な賃金を支払っている小売事業者にとっては、悲惨な結果となる可能性もあります。

しかし、インフレは「ここ数年できなかった値上げをするためのチャンスを与えてくれる」とメルトン氏は指摘します。。

太平洋を横断する輸送用コンテナの価格のようなサプライチェーンのコストが正常化するのと同様に、不況に陥らない限り、市場は価格上昇も織り込み済みかもしれません

インフレはディスカウントストアにとっても朗報だとコンレイ氏は考えています。

T.J. Maxxのようなディスカウントショップは、これまでeコマースへの投資に乗り気ではありませんでしたが、コロナ禍によって状況が一変。実際、家具・家庭用品のディスカウントストアのHomeGoods(TJX Cos. Inc.傘下、「北米EC事業 トップ1000社データベース 2021年版」63位)は、2021年後半にECサイトを立ち上げています。ヤング氏はこう言います。

インフレの影響と、コロナ禍にオムニチャネルサービスを試した人たちのおかげで、TJXグループは成長してきましたが、2022年も前進し続けるでしょう。

ウェディング、配送、連邦政府

『Digital Commerce 360』編集部が2022年に注目しているその他のトレンドは、ウェディング業界とAmazon(「北米EC事業 トップ1000社データベース 2021年版」第1位)の独占禁止法違反問題です。また、ラストワンマイル配送分野での合併にも注目しています。

「2020年、2021年は結婚式の中止や延期が多々ありましたが、2022年はフォーマルウェアを含む結婚式関連のショッピングがブームになるでしょう」。編集部リテール担当ディレクターのエイプリル・バーテン氏は言います。

コンレイ氏が「超高速」配送と呼ぶ分野でも、良縁が生まれるかもしれません。

DoorDashがオンデマンド食料品配達サービスのGorillasを買収するという噂は実現しませんでしたが、DoorDashは独自のオンデマンド食料品配達サービスを立ち上げると発表しました。コンレイ氏はこう言います。

投資家が既存のプロバイダーの買収や新しいプロバイダーの立ち上げに奔走する中、今後数か月の間に数百万ドル規模の合併が行われると見ています。最も可能性が高いのは、GrubHubのGorillas買収でしょう。Jokr、Fridge No More、Buyk、その他多数のプロバイダーも買収のターゲットになりそうです。

2022年は米国最大のオンライン小売事業者であるAmazonにとって苦しい年になるかもしれないと、デイヴィス氏は予測しています。

バイデン政権は、反Amazonを標榜するドリームチームを結成しました。彼らは2022年、バイデン大統領がホワイトハウスを去った後もずっと続くであろう法的拘束力を盾に、Amazonの力を抑制しようとするでしょう。

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この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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