2020年の「楽天市場」単体の流通総額が3兆円を突破したコロナ禍、楽天・執行役員の野原彰人氏は今後の取り組みとして「透明化法」(2021年2月施行)への対応として「コマース渉外室」「楽天市場サービス向上委員会」を新たに設立するとメディア向け説明会で説明した。野原氏が語った2021年上半期の施策と2020年の振り返りをまとめた。
2021年上半期に「コマース渉外室」「楽天市場サービス向上委員会」設立
2021年上半期の施策として、「店舗への情報開示のわかりやすさ」「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公平性の向上に関する法律(透明化法)」に対応するため、「コマース渉外室」「楽天市場サービス向上委員会」の設立をあげた。
「透明化法」の主旨について野原氏は「デジタルプラットフォームに出店する事業者から見て、取引の透明性を向上、取引関係の公平性を確保すること」と説明。「楽天市場」がプラットフォームとして果たすべき責務は、①取引条件などの情報の開示②自主的な手続き・体制の整備③運営状況の報告書提出――があるという。
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2021年2月から施行される「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公平性の向上に関する法律(透明化法)」について
「店舗への情報開示のわかりやすさ」
「楽天市場」における現状の取り組みについて野原氏は、「出店規約に記載し、店舗向けサイトやガイドブックに記載している」と説明。規約変更時の事前通知については、相互理解のためにさまざまな手段でコミュニケーションを行っているという。
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「透明化法」に対する「楽天市場」の現状の取り組み
今後の課題は、「開示した情報が店舗にとってわかりやすいか」という点。「以前、規約を変更する際、変更理由が店舗側にきちんと伝わっていなかったことがある」とし、「私たちから見て十分にわかりやすいと思っていても、店舗側から見たらそうでないこともある。店舗から見てわかりやすいかどうかをどんどん改善していく」と野原氏は話す。
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「透明化法」に対する「楽天市場」の今後の課題
変更に対する事前通知期間についても、オペレーションの見直しを行っていくという。
「コマース渉外室」
2021年2月1日付けで野原氏の直下に「コマース渉外室」を新設。理由について野原氏は「透明化法を見据え、行政とより円滑なコミュニケーションを行い、行政からの要請などに迅速に対応できるよう、社内の体制整備を作るため」と説明した。
メンバーは「楽天市場」のルール作成に長年携わってきた責任者、弁護士資格を持つ実務担当者、コンプライアンス責任者など5人で構成する。
「楽天市場サービス向上委員会」
「楽天市場」のサービス向上のため、「楽天市場出店者 友の会」とディスカッションを行う場として設立。2021年3月開始予定。
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2021年3月から開始予定の「楽天市場サービス向上委員会」
設立の理由について、野原氏は次のようにコメントした。
分科会を通じて物流などについて議論を行い、団体とコミュニケーションを取ってきた。「友の会」以外にもJ-FEC(日本電子商取引事業振興財団)やTEK(東海イービジネス研究会)、EBS(イーコマース事業協会)などとも話をしてきた。サービス向上に向けて、店舗の声を積極的に採り入れながら改善に取り組んでいきたい。(野原氏)
オンライン化が進んだ2020年
新型コロナウイルスの影響を受けた2020年は、「店舗とのコミュニケーションが大きく変容した」と野原氏は振り返る。
学びの場をオンラインに移行
新型コロナウイルスの影響を受け、オンライン上での学びの場を提供。2020年4月からスタートした「楽天大学 まなびLIVE」の継続実施、「オンライン勉強会の定期開催」、「楽天NATIONS」を2020年7月から完全オンライン化するなどの対応を行った。
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2020年4月からスタートした「楽天大学 まなびLIVE」
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参加費無料で行った店舗向けオンライン勉強会
ECCとの商談をオンライン化
これまで対面で行ってきた店舗とECCの商談をオンライン化。物理的・時間的な制約があったが、オンライン化したことにより、総商談件数が前年同期比52.8%増加したという(1774店舗における2020年10月~12月の数値)。
EXPO、カンファレンスのオンライン実施
グランドプリンスホテル新高輪で毎年行っていた「楽天EXPO」「新春カンファレンス」について、2021年はオンラインで実施。関係するすべての店舗が閲覧できるようになり、参加者数が増加した。2021年の「新春カンファレンス」は事前登録店舗数が2万2000店舗を超えたという。
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2020年8月に始めてオンラインで開催した「楽天オンラインEXPO」
オンライン化によって参加者が増えたことで、「楽天が何をめざしているのか」「どうしてこの施策を行うのか」ということへの理解がより深まることを期待している。実際効果が出てきているのではないか。(野原氏)
サステナビリティに関する情報発信・提供
サステナビリティに関して、Eラーニングや「まなびLIVE」などで情報を発信・提供した。「SDGsについては中堅、中小企業ではまだ大企業とくらべて認知が広まっていない。それぞれの規模に応じた取り組みができると考えている」と野原氏は述べ、直近では「楽天市場」内のバレンタイン特集でSDGsに取り組んでいる店舗を掲載している。
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「楽天市場」のバレンタイン特集ページ内で掲載されているコンテンツ(画像は「楽天市場」からキャプチャ)
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オリジナル記事:楽天が取り組む「透明化法への対応」「コマース渉外室」「楽天市場サービス向上委員会」など【2021年上期施策まとめ】 | 大手ECモールの業績&取り組み&戦略まとめ
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