Instagram時代の消費行動モデル「CREEP」 | ikedanoriyuki.jp | Tribal Media House, Inc.

ikedanoriyuki.jp | Tribal Media House, Inc. - 2017年12月19日(火) 16:17
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先週、Instagram、ハッシュタグのフォローが可能に(CNET Japan)というニュースに触発されて、ハッシュタグエコノミーの時代という記事を書きました。

昨日、それに触発されて(笑)うちの高橋遼がハッシュタグエコノミーの幕開けは「文脈価値経済」の幕開けでもあるという記事を書いたので、さらにそれに乗っかる体で、インスタが変える消費行動モデルについて書いてみます。

AIDMA、AISAS、SIPSに代表される生活者の消費行動モデル、有名ですよね。マスの時代からネットの時代へ、そしてソーシャルメディア時代へ移行するにともない、生活者のメディア接触頻度や態度、行動(購買)プロセスも変わっていくというものです。

でも、なんか最近、自分の行動と照らし合わせると、何か違うんだよなぁ…ということが増えてきました。

可処分時間に占める大量の「だらだらタイム」

これは5~6年前につくった資料です。いままでのネットの中での人の動きは、多くの場合、何かしらの顕在ニーズがあって、それを解決するための検索行動でした。だから、多くの人の動きが「目的的」で、「直線的」でした(ネットサーフィンはあるにせよ)

それが、TwitterやFacebookが普及することによって、ネットの中に広大な「無目的空間」が広がり、非連続的で、偶発的な人の流れ(クリックやタップ)が生まれることになった。

GoogleやYahoo!で「おしゃれテント」と検索するとき、人はすでに顕在化したニーズを持っており、ベクトルは検討や購買に向けて直線的です。

でも、そんな行動が少しずつ減ってきている気がします。


インスタ時代の行動パターン CREEPモデル


最近多いのはこんな感じ。

電車の中や、家に帰った後のマッタリタイムの中で、ソファに横になりながら、スマホでInstagramやTwitter、Facebookを眺める(Chill out:だらだらする

フィードに流れてくる大量の投稿の中で、気になった(ごくごく一部の)投稿で指を止め、ハッシュタグをタップして他の画像見てみたり、Amazonで検索してクチコミを見たりして理解を深める(Relevance:自分ゴト

「このお店ステキだなぁ…、今度行きたい」、「このテントかっこいいな。欲しい…」、「SUP(スタンドアップパドルボード)おもしろそうだなぁ…春になったら始めたい」などと妄想を広げる(Evoked Set:選択肢化

それから一定の期間を経て、お店に行ったり、テントを買ったり、SUPを始めたとき(Experience:体験)、スマホで写真を撮って、InstagramやFacebookでリア充アピールをする(Post:投稿

これが自然だと思うんです。

名付けて、CREEP(クリープ)モデル

順に説明します。


Chill out:だらだらタイム

まず、これがいままでと一番違うところ。「何かをしよう」という明確なベクトルはなく、単にヒマだからスマホを開く。エレベーター待ちなら5秒~20秒、電車待ちの駅のホームなら2~3分、電車内なら数十分、家のソファなら数分~数時間とバラツキはあるものの、みんな「何かおもしろいことないかな~」くらいのユルさで、InstagramやFacebookに接触してくる。

一回あたりの時間は短くても、回数が多いので、大量の可処分時間がここで消費されることになりました。ここが出発点。


Relevance:自分ゴト化

世の中の99.9%の出来事は、僕たちにとって他人ゴトです。試しに、Yahoo!ニュースでも、asahi.comでも開いてみてください。この中で、クリック(タップ)して読みたいニュースがどのくらいありますか?

通常、クリック(タップ)していないニュースは、あなたにとって他人ゴト、興味がないわけです。こういった情報がフィードに流れてきても、あなたの指は止まりませんよね?

何も考えていないだらだらタイム。99.9%は他人ゴト

そんな状況下で指を止めてもらうためには、相手が何に興味があるのか、の前に、どんな情報だと指が止まらないのか、を徹底的に理解しておく必要があります。これはもう頭ではなく、肌感覚。習うより慣れるほかありません。

ユーザーが興味があるのは、記事やコンテンツなので、多くの場合、広告は他人ゴト(邪魔者)です。だから、これからは広告よりもPRの時代

多くの流行は、広告ではなく、テレビの情報番組や雑誌の特集、ウェブのニュースなどが幾重にも折り重なってつくられていきます。メディアの記事✕ソーシャルでの反応が、社会の空気(世の中ゴト)をつくる。

どこに言っても、みんなが話題にしている「世の中ゴト」が自分ゴトを促進する。または、会社の仲間がみんな話題にしている「仲間ゴト化」が自分ゴト化を促進する。これ、ぜんぶ広告ではありません。

このように、ソーシャルのフィードに流れてくる膨大な情報の中で、ふと指が止まるのは、広告ではなく、PRによってつくられた世の中ゴトや仲間ゴトのケースが多いので、これからはPRが得意なエージェンシーの時代がやってくると予想しています。

ちなみに、ここで消費されるコンテンツは、噛む情報ではなく、飲む情報です。ボリボリ噛み砕いて、自分で咀嚼解釈しないと飲み込めない(文章が長かったり、画像が少ない)コンテンツは嫌われます。15秒~30秒で、何も考えず、ゴクッと飲み込める液体型コンテンツが好まれますので、スマホ時代のコンテンツは、タベモノからノミモノへ!を心がけてください。

飲んでもらった後に、「もっと知りたい」と思わせてから、食べてもらえば良いのです。最初から「美味しいから食べてって!」と言っても、口に入れてもらえないので、まずは「美味しいから飲んでみて!」から始めてください。

(そういうお前のブログはいつもボリュームたっぷりのタベモノじゃねぇか、というツッコミはまあアレとして)


Evoked Set:選択肢化

※知名集合:知っている
※処理集合:特徴を理解している
※想起集合:好意的な選択肢の上位集合
※保留集合:想起集合に入れなかったその他のブランド
※拒否集合:買いたくない選択肢
※第一位選択:想起集合の中で1位のもの

ここ、重要です。

皆さん、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどで買う商品ではない、家電、車、住宅、趣味性の高い商品などを買う場合、どのくらいの「温め(検討)期間」がありますか? 来年のGWに行く海外旅行、いつ頃から検討を始めますか?

多くの場合、1ヶ月とか、2ヶ月とか、金額によっては半年や一年以上の温め期間がある場合も少なくないと思います。

こういった、商材の場合、とても重要になるのが、このEvoked Set:想起集合です。想起集合とは、商品やサービスの購入を検討するときに、頭の中で(純粋)想起する好意的な選択肢の集合体です。7±2個、つまり、5個~9個入っていると言われますが、実態は入ってて3個だと思います。

次に乗り換えたい車は何ですか!?
GWに行きたい海外旅行先は?
国内の温泉に行くとしたらどこ?
歯磨き粉
醤油
マヨネーズ
トマトジュース

みなさんの頭の中には、みなさんの頭の数だけ、上記のEvoked Setが形成されています。自然に3つ以上の選択肢が出ましたか? 1つだけしか出ないものもありませんでしたか? ここに入っていなかったら、そのブランドは、その時点でほぼ負けが決まってしまいます。

選択肢に入れてないんですから、検討もされません。強制的に買ってもらうためには、値引きをともなった大量陳列かプレゼントキャンペーンをやるしかなく、ブランド価値が毀損するか、利益が減るか、というオプションしか残されないわけです。

で、何が言いたいかというと、この想起集合は、生き物のように時間とともに変化するということ。

仮に一度、一位を獲れたからといって、未来永劫一位なんてことはありえません。しばらく接触してないブランドはどんどん保留集合に追いやられてしまいます。

それ以前に、想起集合は熾烈なレッドオーシャンでの戦いが行われている激戦区なので、ここに入ることすら楽ではありません。何と言っても、カテゴリー内純粋想起3位以内という超高いハードルなわけですから。

Chill outが長い消費者の想起集合に入るためには、RFEが大事。

ダイレクトマーケティングの業界で、RFM(Recency / Frequency / Monetary)という言葉がありますが、そのMをEにもじったものです。

分散化が進んだメディア環境において、自社の都合でつくったオウンドメディアに定期的に訪れてもらうのはどんどん難しくなっていきます。であるならば、消費者が毎日大量の時間を過ごすInstagram公園やFacebook公園に出店を開き、そこで接触した方がいいですよね。

そして、これからは、企業の公式アカウントによる直接的な出店(でみせ)マーケティングではなく、消費者のハッシュタグ付き投稿が集積されるマイクロトライブ、いわば公園の中でのレジャーシートの数、質、面積が、消費者の想起集合に大きな影響を与えると考えられます

買回商材や専門商材は、だらだらタイム→自分ゴト→想起集合内での温め期間があって、初めて購入されるわけですから、短期的な検索エンジン対策やリタゲ効率もいいんですが、想起集合に入ってないものは「お得」以外では買われないわけですから、そろそろブランドマーケティングのKGIに想起集合を加えてみては如何でしょうか。

※ブランドカテゴライゼーションについてさらに深く知りたい方は、1995年に恩蔵直人先生が発表された論文「ブランドカテゴライゼーションの枠組み」(PDF)を読んでみてください。超絶わかりやすいですよ!


Experience:体験する

文字通り、購入、行動、体験です。

ここで重要なのは、次のPにつながるかどうかを左右する文脈価値です。

たとえば、これはInstagramの #飯テロ というハッシュタグ。

彼ら、彼女らは、なぜ #飯テロ というハッシュタグを付けて、これらの画像を深夜に投稿するのでしょうか。どんなコメントを期待して投稿しているんでしょうか。

「美味しそう!」

ではなく、

「羨ましい!」「いいな!」「呼ばれてない!」「今度連れてって!」という承認欲求を満たすコメントであり、「こんな時間にやめてくれー!ハラ減って来たじゃないか!」という悲痛な叫びを期待しているわけです。

これが、文脈です。

肉の柔らかさや美味しさ、価格やコストパフォーマンスといった使用価値や物理的ベネフィットを伝えたいわけではなく、こんな時間に、こんな仲間と、こんな素敵な時間を過ごしている俺、私が羨ましいでしょ、ホラホラ、お腹がすいてきたでしょ! という文脈価値をアピールしているのです。

試しに、なんでもいいですから、Instagramでハッシュタグ検索をしてみてください。インスタに投稿されているのは、商品でもサービスでもなく、ほぼ全て、文脈です。

#スタバなう

インスタでの #スタバなう も、ラテやフラペチーノそのものが美味しい、ということが伝えたいのではなく、「いま自分は、一人で(もしくはXXと)、スタバXX店という素敵なサードプレイスで、XXのような気持ちである」という文脈を伝えていることがわかります。

インスタで投稿されている画像は、すべて「文脈」である

であるならば、メーカーのブランド担当者は、どんな文脈をつくれば、もしくはどんな文脈に寄り添うことが、自社ブランドの存在感を高めることにつながるかを考えなければならないということです。


Post:投稿

4年以上前に、【事例解説】 「共有型」キャンペーンと「拡散型」キャンペーンの仕掛けと仕組みというブログを書きましたが、いまだに「共有」と「拡散」をごちゃ混ぜに理解している人が少なくありません。

なので、インスタ時代の消費行動プロセスの最後は、あえてShareではなくPostにしました。

あなたは、素敵な風景や美味しい料理の写真をInstagramにアップするとき、「みんなに共有♫」なんて思っていますか? すくなくとも、僕は「共有」とは思っていません。単なる「投稿」です。

@ikedanoriyuki

これ、僕のインスタです。最高の一瞬を切り取って、リア充が爆発していることをつま先がプルプル震えるのを我慢してアピールしていることがわかります。

これらの投稿で、僕は一回も推奨をしていません。「ワーゲンバスかわいい」「キャンプ最高!」「ベスパかっこいい」「ウッドデッキつくった!」とは言っていますが、「ワーゲンバス買った方がいいよ」「みんなキャンプ始めた方がいいよ!一緒に行かない?」「バイク買うならベスパ一択でしょ!」「DIYやるならウッドデッキづくりはマスト!」なんて一言も言っていません。

つまり、推奨していない。

でも、繰り返し繰り返しキャンプの投稿をしていると、どこからともなく「池田さんの投稿見ていたら、キャンプ行きたくなってきちゃいましたよ」「手始めにテントを買おうと思っているんですが、何かオススメのブランドってありますか?」と向こうから聞いてくる。

これ、推奨価値じゃなく、影響価値なんですよ

ソーシャルメディア時代になって、広告主のマーケティング担当者は、アルファブロガーに、アルファツイッタラーに、ユーチューバーに、インスタグラマーに、「推奨」してもらいたいと、インフルエンサーマーケティングを仕掛けます。「これいいよ♫」って書いて、って。

でも、僕たち、日常的に、そんな直接的な投稿、あんまりしないですよね。「これいいよ♫」「これオススメ☆彡」って(笑)

それが自然で、それでいいんです。でも、フォロワーは確実に影響を受けている。そして、向こうから聞いてくる。そのときに初めて、「あ、テントならXXがいいよ」という推奨が生まれるんです。

だから、Instagram時代の消費行動モデルの最後は、ShareでもRecommendでもなく、Post。Just a POST!! なのです。


ということで、今回も長々と書いてきましたが、疲れてきたのでそろそろ終わります。

今回まとめたCREEPモデルは、比較的高価格、高関与、中長期的な比較検討期間がある買回商材や専門品を対象としています。飲料や食品、日用雑貨などの最寄品には必ずしも当てはまりませんので、ご注意ください。

文脈的思考、待ったなしですぞ(再)

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