レッドブルの事例に学ぶ、顧客価値を高めるデジタルマーケ戦略 | ネットショップ担当者フォーラム

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世界的大手メーカーがECプラットフォーム「Hybris(ハイブリス)」を採用する理由

デジタル化によって企業と消費者の関わり方が大きく変化する中、小売業やメーカーにとってオムニチャネル化は最重要施策の1つだ。オムニチャネル・コマース・プラットフォーム「SAP Hybris Commerce」を国内で販売しているSAPジャパンと、同製品をベースとしたオムニチャネルソリューションを提供しているNTTデータの担当者が、企業が取り組むべきデジタルマーケティング戦略やプラットフォームの活用法について、レッドブルの事例をあげて解説した。 写真◎Lab

セミナーのポイント
  • 流通は“顧客価値”を中心としたエコシステムに
  • レッドブルのデジタル戦略の目的は「顧客ニーズの把握」
  • システムだけで解決できない問題をどう乗り越えるか
SAPジャパン株式会社 SAP Hybris ソリューション事業本部 ソリューション エンジニアリング ディレクター 阿部 匠 氏
SAPジャパン株式会社 SAP Hybris ソリューション事業本部 ソリューション エンジニアリング ディレクター 阿部 匠 氏
流通は“顧客価値”を中心としたエコシステムに

オムニチャネルは小売業界にとどまらないビジネス革新の潮流だ。消費財、ファッション、家電など幅広い分野において企業と消費者の関係性が大きく変化し、流通は“顧客価値”を中心としたエコシステムへと再編が進んでいる

デジタル化によって流通は“顧客価値”を中心としたエコシステムへ再編されている
デジタル化によって流通は“顧客価値”を中心としたエコシステムへ再編されている

家電業界の価格交渉力を例に上げると、家電の価格交渉権はかつてメーカーが握っていたが、やがて小売りの力が強くなり、現在では消費者の価格交渉力が最も強くなっている

消費者の価格交渉力が高まった背景には、スマートフォンを使って商品の価格を調べ、他店と比較しながら店員と価格交渉をするような「デジタルネイティブ」の消費者が増えていることがある。

【デジタル化がもたらす消費行動の変化】
  • 買い物の際に商品についてオンラインで調べる
  • パソコンからモバイルへの急激なシフト
  • ソーシャルネットワーク上の評判やクチコミで判断
  • 情報が豊富なため企業やサービスを比較検討して乗り換えやすい

こうしたデジタル化がもたらした市場の変化について、SAPジャパンの阿部氏は次のように指摘した。

消費者を押えた企業が、このエコシステムの王になる。そして勝者と敗者の明暗がはっきりと分かれる。そうした変革をもたらす可能性をデジタル社会は秘めている(阿部氏)。

デジタル化は小売業とメーカーの関係性も大きく変えた。メーカーが直販サイトを持ったり、海外展開したりすることで、従来は限定的だった顧客への直接的な販路を拡大できるようになったのだ。

そして、メーカーと消費者が直接つながる時代のマーケティングにおいて強みを発揮するのが、SAPジャパンが提供している多彩なECソフトウェア機能を備えたオムニチャネル・コマース・プラットフォーム「SAP Hybris Commerce」だ。

レッドブルのデジタル戦略の目的は「顧客ニーズの把握」

「Hybris」は世界中の小売業者やメーカーなど多くの企業で活用されている。阿部氏は一例として、エナジードリンクメーカーであるレッドブルの事例を紹介した。

レッドブルは積極的にスポーツイベントへの投資を行っており、同社のロゴが入ったプロスポーツのユニフォームなどを直営ECサイトで販売している。ECサイトは売上獲得に加え、ブランドイメージの向上やデジタルマーケティングの役割も担っている

同社はデジタル媒体に広告を出稿し、アクセスした顧客のデバイスアドレスやIPアドレスなどを獲得。さらにFacebookやTwitterに出稿した広告のアクセスからSNS のアカウントIDも収集している。

これらのデータに加え、直販サイトでのユーザーの購入履歴や行動情報を蓄積、紐付けることで、顧客の人物像を解析し、一人一人に対して最適な販促施策を打てるようにしているという。

デジタルデータをリアルタイムで活用することで顧客の行動を把握し、顧客にとって意味のあるコンテンツを提示する
デジタルデータをリアルタイムで活用することで顧客の行動を把握し、顧客にとって意味のあるコンテンツを提示する

デジタル化が浸透する以前は、顧客の行動やニーズを細かく把握することが難しく、企業側の目線で「顧客は何に興味を持ち、購買を行っているのか」を考えてきた。

だが、デジタル化によって、消費者一人一人のさまざまな情報を取得できるようになり、そうしたデジタルデータをリアルタイムで活用することで顧客の行動を把握し、顧客にとって意味のあるコンテンツを提示し、購買につなげられるようになっている。

テクノロジーは揃ってきた。本格的なデジタルマーケティングに取り組むか、取り組まないかの判断が、今、企業に迫られている(阿部氏)。

システムだけで解決できない問題をどう乗り越えるか

企業がデジタルマーケティングに取り組む際のポイントとして、NTTデータの風間氏は、「ビジネス環境やマーケット、顧客動向の変化に合わせて変更すべき部分と、頻繁に変更すべきでない部分がある」と指摘した。

株式会社NTTデータ クラウドコンピューティング事業部 課長 風間 昭男 氏
株式会社NTTデータ クラウドコンピューティング事業部 課長 風間 昭男 氏

変更すべき部分とは「CRM」「ECサイト」「キャンペーン」といったフロントエンド部分、頻繁に変更すべきでない部分は「受注から商品出荷までのプロセス」「在庫管理」「会計」といったバックエンド部分だという。そして、データハブとして、フロントエンドとバックエンドを取り持つ仕組みが必要となる

NTTデータは「BizXaaSオムニチャネル」を提供している。BizXaaSオムニチャネルは「SAP Hybris Commerce」を日本の企業が最大限活用できるようにするためのサービスである。高度なEC機能を備えているほか、顧客情報や商品情報、在庫情報、注文情報などを、あらゆるチャネルから集約して一元管理できるクラウドサービスだ。

こうしたソリューションを提供する一方で、風間氏は次のように強調する。

オムニチャネル化に取り組む上で、「どこへ向かうのか(目標設定)」「どうやって向かうのか(手段)」「何を使って向かうのか(ツール・システム)」を定めていくことが重要だ。これらはシステムだけでは解決できない。したがって、NTTデータではテクノロジーの提供だけでなく、目的や手段に関する情報提供も行っている(風間氏)。

目標設定については、社内の意見を受け止める枠組みを構築することが重要となるという。「経験・体験」「製品」「基本構造」といった自社のビジネスの構成要素の中から、どれを優先的にデジタル化していくかを洗い出し、自社にとってのデジタルビジネスとは何であるのかについて共通認識を築いていくというものである。

次に、デジタル化の手段については、社内のどの部門が中心となり、誰がリーダーを担うのかを明確に定めていくことが不可欠だ。オムニチャネル化の過程では過去の慣習を壊すような革新も必要となるため、当然軋轢も生じる。「したがって、役員や役員クラスの担当者など、上位レベルで合意を後押しする存在が不可欠となる」と風間氏は指摘する。また、関係者の意見をまとめ、論点のレベル感を統一するため、定期的に同じ土台で議論・点検・修正を行っていくことも必要だ。

そしてもう1つ重視すべきポイントは、オムニチャネル化を進めるために「何を使うのか」、つまりシステムやプラットフォームの選択だ。テクノロジーは今やビジネスをけん引しており、その選択がビジネスの成否を大きく分けるようになっている。デジタル化の時流に合ったテクノロジーやソリューションを選び、活用していくことがオムニチャネルを成功させる鍵となる。

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オリジナル記事:レッドブルの事例に学ぶ、顧客価値を高めるデジタルマーケ戦略
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伊藤 秀樹

ライター

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