ヤフーは2014年10月のショッピング革命以降、Yahoo!ショッピングの出店料を無料化し、出店者からの広告で収益を得るモデルに変更している。今年8月には、Yahoo!ショッピングの出店者向けにカスタマイズしたクリック課金型広告サービスが始まるなど、ようやく新たな広告メニューもそろい始めた。こうした広告の利用状況や効果はどうなのか。マーケティングソリューションカンパニーサーチ&コマース広告ユニットコマース広告サービスマネージャーで、ショッピングカンパニー編集本部にも所属する中島淑志氏に話を聞いた。
出店者向け広告は高いROASが出ている
――現在、Yahoo!ショッピングの出店者が利用できる広告には、どういったものがありますか。
従来から出店者向けに提供してきた、Yahoo!ショッピング内の特集ページなどの広告枠、Yahoo!ショッピング内の検索結果に商品を表示できるアイテムマッチは現在でも利用できます。これらのサービスはもちろんニーズがありますし、今後も伸ばしていきたいと考えています。
また、Yahoo! JAPANとして考えると、一般検索した際に広告を表示する検索連動型広告「スポンサードサーチ」や、広告主さまの商材や訴求対象に合わせてターゲットを絞った広告を配信する「Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)」といったサービスを提供しています。これらの広告もYahoo!ショッピングの出店者にもぜひご利用いただきたく、今年8月からはYahoo!ショッピングの出店者向けにカスタマイズしたクリック課金型広告サービス「Yahoo!プロモーション広告」を開始しました。
どこをカスタマイズしているかというと、広告の効果を測るためのコンバージョンタグ、リターゲティングタグ、アクセス解析タグが店舗のページに標準設定されている点が挙げられます。このため、運用が煩雑な「タグの設置」という技術的障壁がなく、簡単にタグを使った広告が運用できます。
また11月19日から、たとえば「食品」ジャンルのショップは、過去に「Yahoo!ショッピング」の食品ジャンルを訪れたことがあるなど、食品に興味があるとみられるユーザーに絞って、広告を配信できるようになるインタレストカテゴリーターゲティングを「Yahoo!プロモーション広告」の機能の1つとして追加しました。
――Yahoo!ショッピングの出店者向けにカスタマイズしたクリック課金型広告「Yahoo!プロモーション広告」を利用している店舗の実績はどうでしょうか。
全体としてみると、とても良い結果が出ています。特にこの「Yahoo!プロモーション広告」はROAS(広告費1円当たりの売上金額)で良い数値がでています。EC事業者の場合、結果が出ると、さらに広告費をかけて売り上げを伸ばしていく傾向にあるようで、運用して成果が出ているショップはどんどんと売り上げを伸ばしているの現状です。
中島淑志氏
出店者にとって広告運用が難しいことは否めない
――良い結果が出ているにもかかわらず、利用している店舗はまだ少ない状況です。その理由についてどう考えていますか。
1つは、良い結果が出ていることをまだ知らない出店者が多くいるということが挙げられます。良い結果が出ていることがわかれば、広告運用技術のある企業は使い始め、実際に自分たちのショップの状況を見ながら、運用を強化していくと思います。
もう1つは、広告運用に携わったことのない出店者が利用するには、やはりまだ難しいことが挙げられます。出店者向けにかなり易しくカスタマイズしたのですが、それでも難しいことは否めません。ショップのオーナーの多くは商売人で技術者ではありません。そのため、使い方が難しいとその段階で利用しない人が多いのだと思います。
また、出店者の多くは従来のショッピング内の広告枠を買うことに慣れているので、「Yahoo!プロモーション広告」の細かな運用に追いつけていないことが多いです。「Yahoo!プロモーション広告」は細かな運用を行うことで成果が出る広告なので、とりあえず試しに使ってみたけれども、手をかけなかったため成果が出ず、あきらめてしまったというケースも多くあります。
「Yahoo!プロモーション広告」の管理画面
――やはり今後も、売れている店、広告運用技術を持っている店だけが得をしてくのでしょうか。
そのようなことは全く考えていません。むしろ、そうした難しい運用ができないショップオーナーに、いかに使ってもらえるようにするかが重要だと思っています。もっと簡単にターゲティングをすることができたり、クリエイティブが自動的に入稿できるなどの改善を行い、究極は「広告を出す」というボタンを押すだけですべて最適化し、広告を出稿できるようなシステムを作っていかなければいけないと考えています。広告予算が少ないショップでも、その額に応じた成果がしっかり出るようにしていくので、売れている店だけを優遇しようとは考えていません。
効果の高い広告作りをひたすら追い続けていく
――私が今からYahoo!ショッピング内にショップを出した場合、どの広告から利用するのが一番良いですか。
まずは、Yahoo!ショッピング内の検索結果に広告が出せるアイテムマッチが有効だと思います。並行する形で、「Yahoo!プロモーション広告」のスポンサードサーチを利用していただきたいです。スポンサードサーチでは「アシストプラン」というサービスを用意しています。これは最初のセットアップやうまく運用するためのサポートを行うもので、こうしたサポートを利用すると、はじめて広告を運用する方でも利用しやすいと思います。
「アイテムマッチ」の表示例
――今後の具体的な変更点はありますか。
従来から行っているYahoo!ショッピング内の広告枠は、現在は特定の枠に対して価格を設定しているのですが、出店者の意見を聞いてみると、やはり成果報酬の方が利用しやすいという声も多いです。このような出店者の声を踏まえ、ショッピング内の広告枠も一部、クリック課金にしていくことを検討しています。
また、インタレストカテゴリーターゲティングも、より精度を高めていきたいと考えています。先日開始したサービスでは、「食品」などの大まかなカテゴリーまで絞ることができますが、今後は、さらに精度を上げてより深いところまでターゲットを絞って広告を出せるようにしていきたいと考えています。
結局、自分たちの役割は、いかに出店者に効果の高い広告を提供できるかにあると思っています。投じた広告費よりも成果が上がる広告を提供できれば、必ず出店者は満足していただけると思いますし、広告の販売量も増えます。そのため、いかに広告を買ってもらおうかと考える前に、効果を高めることだけをひたすら追い続けていけばいいと考えています。
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オリジナル記事:売れている店だけを優遇するYahoo!ショッピングにはしたくない | 単発記事 | ネットショップ担当者フォーラム
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