化粧品の広告で利用できる体験談と利用できない体験談の違いとは | 健康・美容業界の今を知る! | ネットショップ担当者フォーラム | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2014年11月19日(水) 07:00
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健康食品や化粧品にかかわる法律、規制などについてわかりやすく噛み砕いてご紹介します 連載第5回目

前回の第4回では健康食品広告における体験談の注意点をご紹介致しました。今回は化粧品の体験談を見ていきましょう。

化粧品は薬事法で定められたすべてを守らなければならない

来る11月25日の薬事法改正において「薬事法」という名前(件名)が無くなり、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」略して「医薬品医療機器等法」と呼ばれるようになります。今後、レポートや記事を執筆する際、「薬事法」と書くと間違いになりますので、注意してください。とはいえ、新名称はまだまだ一般的には認知度が低いため、「医薬品医療機器等法(旧薬事法)」と列記するのがいいのではないでしょうか。本連載でも、11月25日以降はそのように記載するようにいたします。

話を化粧品の体験談に戻します。健康食品のみならず化粧品の広告においても、体験談は無くてはならない要素といっても過言ではないくらいの“見せ場”です。ですが、お客様の生の声だからといって、何でも表現して良いということではありません。

化粧品をはじめ、薬用化粧品を含む医薬部外品、医薬品、医療機器は、薬事法という法律の中で制限されています。健康食品の場合であれば、薬事法の対象ではないので“医薬品であるかのような振る舞いをして、医薬品だと誤解をさせなければ良いという考え方が基本となりますが、化粧品等は薬事法で定められた事を全て守らなければいけないという義務があるということになります。極端な例えをすると、薬事法の中で守らなければならないことが100個あったとしたら、100個全て守ってはじめて正しいと判断されるということです。たった1つでも守られてない事があるのであれば、その1つが原因で薬事法違反と見なされる可能性があるということです。

でも、法律というのはそれだけ見てもわかりにくく、書かれている内容を実務に当てはめようとしても無理があります。そのため、場合に応じて法令の解釈、運用、取扱基準をよりわかりやすく明記した通知・通達というものが出されています。化粧品等に関連する通知・通達は沢山ありますが、中でもよく知られているのは「医薬品等適正広告基準」です。薬事法に基づいて、医薬品等(医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器)の広告が虚偽誇大にならないよう適正を図るため、当時の厚生省薬務局長(現在は厚生労働省医薬食品局長)から通知の形式で出された、各都道府県知事に宛ての通知です。それを元に、より解説を加えたものが「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」であり、この中で広告として表現できる事、できない事、またその条件等が記載されています。

今回の“体験談”については、この「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」の【基準3(6)】に考え方が記載されていますので、まずはこの内容をみてみましょう。

【基準3(6)】
3の(6)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止
医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実であることを保証をするような表現をしないものとする。

〔注〕
<共通>
(5)使用体験談等について( 平成6 年一部改正)
愛用者の感謝状、感謝の言葉等の例示及び「私も使っています。」等使用経験又は体験談的広告は、客観的裏付けとはなりえず、かえって消費者に対し医薬品等の効能効果等又は安全性について誤解を与えるおそれがあるので行わないこと。ただし、医薬品(目薬、外皮用剤等)や化粧品等の広告で使用感を説明する場合や、タレントが単に製品の説明や呈示を行う場合は、本項には抵触しない。この場合には、使用感が過度にならないようにすること。

使用感は利用可能だが、効能・効果に触れると×

まず、文中に“効能効果”と出てきますが、化粧品では昭和36年2月8日薬発第44号薬務局長通知「薬事法の施行について」の中で、標ぼう可能な効能効果の範囲が決められています。現在56個あるので、良く『化粧品で標榜可能な56の効能効果』と呼ばれますが、これらは事実を前提に、広告等の中で使用する事のできる効能効果です。例えば、化粧品において良くハリ、ツヤ、キメ、うるおい、汚れを落とす…といった表現が用いられますが、それぞれこの56の効能効果に含まれますので、事実である限り使用可能と判断できるのです。一方で、「シミが薄くなる」「シワが消える」といったものは含まれませんので、効能効果の逸脱ということから薬事法違反と判断されるということになります。

ここで改めて、医薬品等適正広告基準3(6)をみてみましょう。「<共通>(5)使用体験談等について」において何が書かれているかというと、体験談では効能効果・安全性の保証につながる内容のものは不可という事です。

要は、商品説明の中で「肌にハリが出る」「汚れが落ちる」と表現する事そのものは事実である限り可能ですが、体験談として

  • この○○(商品名)を使用するようになって、肌にハリが出てきました!
  • クリーミーな泡なのに、しっかり汚れが落ちるところが気に入っています。

となると、効能効果・安全性の保証につながるものとされ、不可と判断されてしまうということなのです。大変厳しいルールです。

一方で、表現できることもあります。医薬品等適正広告基準の3の(6)「<共通>(5)使用体験談等について」に「化粧品等の広告で使用感を説明する場合」とあるように、「使いやすいです」「のびがいいです」などといった使用感のようなものであれば可能です。

例えば、

  • 使いやすいです。
  • ベタつき感がなくサラッとしていますね。
  • ほんの少しだけでなじみがよく、顔全体にのばせる所が気に入っています。
  • においも無く、たっぷり塗っても気になりません
  • 使いやすいだけでなく、お財布に優しいのも嬉しいですね 

このようなものが、実際のお客様の声として寄せられているのであれば、過度でないものという制限はありますが使用できるということになります。また、芸能人及びその体験談を起用する場合には、一般人より影響力が大きいため、使用感に関しても製品の説明や呈示の範囲に留めるなど、特に過度にならないように注意が必要です。

お客様の声の活用は、広告要素として重要なものではありますが、ルールを意識して正しい広告を作成していきましょう。

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稲留 万希子
薬事法広告研究所 副代表

東京理科大学卒業後、大手医薬品卸会社にて医療従事者向けポータルサイトの企画運営に従事。東洋医学に興味を抱いたことをきっかけに、中医学専門学校にて3年間薬膳料理や漢方について学ぶ。その間、ヘルスケア分野でのビジネス展開には薬事法を避けて通れない事から、薬事法と広告についても並行して学び、その後、国際中医専門員、漢方薬膳療術師、反射療法士、薬事法管理者、コスメ薬事法管理者の資格を取得し独立。2008年3月、薬事法広告研究所の設立に参画。

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