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アメリカのハーバードビジネスレビューのwebsiteを見ていたら、面白いケーススタディを発見しました。
タイトルは「We Googled You」
(日本でも「ググる」という動詞が使われているが、米国でも同様にgoogleという言葉は動詞で使われる」)
かなり端折ってケーススタディの内容を説明します。
「主人公の会社が中国のローカルマネジャー候補として、一人の女性を面接した。
非常に才気溢れ、将来性が期待できる人物で、主人公は彼女に採用通知を出そうとする。一方、主人公の会社のHRマネジャーがふと彼女の名前でgoogle検索をした。
すると・・・ 彼女が学生時代に、中国で反政府運動に参加していた、というニュースクリップが見つかった。
これを知った主人公は、彼女を採用するだろうか?あなたならどうする?」
というのが内容。これは今、社員を採用する側にある私としても考えさせられる内容です。ここまで極端な例はないですが、私も採用の際に同様の経験をしたこともあります。
僕の答えは、月並みですが「case by case」と言わざるを得ません。
・issueのインパクト
・当該ポジションがステークホルダーに与える影響
この2つで判断すると思います。
たとえ面接した本人の印象が良く、私が100の信頼を寄せても、
ネット上に暴露されている情報による風評リスクが大きい場合、かつ当該ポジションがステークホルダーとの調整が必要なポジションの場合、残念ながら採用は難しいと思っています。
・・・・さて、ここからは「We Googled You」が示す、検索エンジンによって発生する情報暴露のインパクトを数学的に考えてみたいと思います。
情報の衝撃度を示す数値として、情報エントロピーを使ってみます。
(大学時代、熱力学で落第した僕がエントロピーという言葉を再び使うとは思っていませんでした・・)
【情報エントロピー】
Ωを、台が有限集合である確率空間とする。Ω上の確率分布 Pが与えられたとき、各事象の選択情報量 logP(A)の平均値
H(P)=-∑P(A)logP(A)
をPのエントロピーという。情報エントロピーは、ある世界の中に存在する、それぞれの情報の衝撃度の期待値を意味します。
実例を挙げた方がわかり易いので、簡単なモデルを考えてみましょう。
世界に100人の人間が存在するとして、
1人を芸能人、残りの99人を一般人とする。
「誰か1人だけの情報が必ずメディアで閲覧されること」を前提として、
事象1:芸能人が閲覧される
事象2:一般人1が閲覧される
・
・
事象100:一般人99が閲覧される。
という事象を考えて見ます。
1)検索エンジン・CGMが存在しない時代(Before Web2.0)
検索エンジン・CGMが存在しない場合、一般人の名前が閲覧される可能性はほぼ0に近い。その確率を0.01%とします。
(実際、新上幸二の名前がテレビなどのマスメディアで公開されることは一度もありませんでした)
P(1)=0.9901
P(2)=P(3)=・・=P(100)=0.0001 とすると、
log(0.9901)≒-0.01 log(0.0001)≒-9.2 より、
H(P)=0.9901*0.01+0.0001*9.2*99≒0.10
2) 検索エンジン・CGMが存在する時代(After Web2.0)
Blogや検索エンジンの影響で、一般人がメディアで閲覧される可能性が相対的に20倍(※数字の根拠は無いので別途調査が必要)になるとします。
(現在、新上幸二でgoogle検索をすると620件の検索結果が表示されます)
P(1)=0.802
P(2)=P(3)=・・=P(100)=0.002
log(0.802)≒-0.22 log(0.002)≒-6.2
H(P)=0.802*0.22+0.002*6.2*99≒1.40
単純計算して情報エントロピーは14倍になっていますね。
検索エンジン・CGMによって情報の重み(衝撃度)は14倍、
言い換えると以前と比較して、14倍の情報暴露リスクが発生することになります。
もちろん、机上の計算による簡単なモデリングですし、
メディアに公開される情報の種類・質は全く無視していますから、ご参考までに。
インターネットを中心とするメディアによる情報暴露リスクの上昇は、
不可逆であり回避不能(政府の規制でも入らない限りは)と思われます。
あらゆる人が同様に検索されるようなことになれば、数字は莫大なものになっていくでしょう。
(実際にfacebookやLinkedIn、plaxoや僕らが運営しているキャリコネなどのサービスは確実に情報エントロピーを急激に上昇させる)
対策を取ることはできない以上、情報暴露時代のビヘイビアや価値判断基準を考えていく必要があると思います。
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