【サーチファンド白書2023年】中小企業の後継者不在問題にはサーチファンドが活用可能。2023年のサーチファンドを活用したM&Aは9件と過去最多!2024年は金融機関以外の事業者もサーチファンド参入か
Growthixグループ
サーチファンドを推進するGrowthix Investment株式会社(本社:東京都中央区、代表:奥井 夏樹、竹内智洋、以下Growthix Investment)は、サーチファンドを活用したM&A案件に特化した「サーチファンド白書2023」を作成いたしました。このサーチファンド白書は4月1日の「サーチファンド誕生の日」制定を記念し、2023年より発行しています。なお、本資料は公開されている情報に基づきまとめております。 【TOPICS】 1.2023年のサーチファンドによる投資実行数は9件!過去最多を記録 2.国内のサーチファンドは大きく2種類に分類できる!各サーチファンドの特徴を解説 3.ファンド組成実績のある日本のサーチファンド事業者は6社。トラディショナル型は4名が活躍中 4.北九州市が自治体として初めてサーチファンド事業者との連携協定を締結 5.サーチファンドについて情報発信する登録無料の「ネクストプレナー大学コミュニティー」開設 6.掲載数は横ばい。専門紙や地方メディア等での露出増 7.2024年予測:より多様性に富んだステークホルダーが出現する年に?
Summary
2023年はサーチファンドによる投資実行数が過去最多の9件を記録。また、公開情報ベースではアクセラレータ型サーチファンドにおいて日本では初となる買収企業の譲渡も1件実行されました。過去最多を記録した背景には、2023年は特に金融機関やM&A仲介会社を含むプロフェッショナルサービス業界のサーチファンドへの理解が進んだことがあります。サーチファンドを正しく理解した上で、差別化や具体的なリターンについて認識している金融機関等が増加しました。
また、9月には北九州市が自治体として初のサーチファンドに関する連携協定を締結。11月に東京都の中小企業の事業承継問題を解決する目的で東京都が主な出資者となる「Tokyo Search Fund」が設立されました。さらに、ファンドは組成していないものの沖縄県における企業のサーチファンド事業への参入の発表もあり、自治体単位や地域企業でのサーチファンドへの取り組みが増えはじめた1年となりました。こうした地域の取り組みにより、サーチファンドへの認知度は首都圏にとどまらず地域にまで浸透してきたように思います。しかし、日本の中小企業が抱える後継者不在問題は、今もなお深刻です。サーチファンドを活用した事業承継数を増やしていく必要があります。
2024年は、サーチファンドの認知度が向上したことにより、金融機関などのプロフェッショナル業界以外の事業者においてもサーチファンド事業に参入してくる可能性が考えられます。より多様性に富んだステークホルダーが出現し、サーチファンドをますます盛り上げてくれること、そして投資実行数がさらに増えることを期待します。
【サーチファンド白書2023年】のPDF版はこちら:https://hubs.ly/Q02hwJ9_0
2023年の「後継者不在率」は60%越えで過去最多
中小企業庁によると、2025年までに平均引退年齢の70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万社にのぼり、そのうち約半数の127万社は後継者が未定と発表されています。この127万社を放置すると、累計で650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があります。本データの発表は2017年でしたが、実際に後継者不在率は年々増加しております。
東京商工リサーチの2023年11月の発表によると、2023年の後継者不在率は61.09%で調査開始以来過去最多を記録しました。政府や自治体、金融機関の支援が整ってきている中でも、円滑な事業承継が進んでいないことが予想できます。
「サーチファンド」は、こうした日本の中小企業の事業承継問題に活用できると考えられ、日本でも少しずつ広がってきております。
サーチファンドとは
経営者を志す個人(=ネクストプレナー/サーチャー)が生活費や調査費などの活動予算(サーチ費用)を投資家・ファンドから調達してその資金を活用し後継者不在企業を自ら探します。さらに、自身が経営したいと思う企業が見つかった際には、投資家・ファンドから買収資金をさらに調達して企業を買収・経営するアメリカ発祥のM&Aです。
サーチファンドは一般的な企業対企業のM&Aとは異なりネクストプレナー/サーチャーがM&Aを行うため、買収する前に何度も企業に足を運び現社長とコミュニケーションをとることができます。社長はサーチャーの人柄や能力、価値観、熱意などを譲渡する前に確認できるため、後継者として適している人材かを見極めることが可能です。
次の経営を任せられる人を社長自らが選べる点で、日本の中小企業の事業承継に合っており、後継ぎ不足を喫緊の課題としている中小企業オーナーにとって解決の糸口になると期待されています。
TOPIC 1 2023年はサーチファンドによる投資実行数が9件!過去最多を記録。
2023年1月~12月までの1年間で9件のサーチファンドを用いたM&Aが実現し、日本におけるサーチファンド活用数は過去最多を記録しました。2023年3月に設立されたサーチファンド未来創造も1件投資実行されました。
年間に渡り、コンスタントに投資実行されていることから、サーチファンドの活用が広まってきていると考えられます。
<2023年のサーチファンドを用いたM&A 一覧>
サーチファンドが日本で活用され始めた2020年から比較しても年々投資実行件数は増えています。
また、2023年10月にはサーチファンドを活用し買収した企業の譲渡も実行されました。譲渡したのは2023年2月にサーチファンド・ジャパンが投資実行した株式会社アレスカンパニーです。8カ月での譲渡となりました。
TOPIC 2 国内のサーチファンドは大きく2種類に分類できる!各サーチファンドの特徴を解説
2023年はサーチファンドの広がりとともに日本国内で広がるサーチファンドの種類も増えました。 大きく「トラディショナル型サーチファンド」と「アクセラレータ型サーチファンド」の2種類あります。
■トラディショナル型サーチファンド
トラディショナル型サーチファンドは、サーチファンド発祥の地であるアメリカの形をそのまま取り入れたサーチファンドモデルです。サーチャーは自ら複数名の投資家やファンドに掛け合い、まずはサーチャー自身がサーチ活動をしている間必要となる生活費用を含めた資金を調達します。その資金を用いながら、買収したい会社を自力で探し、買収に向けて交渉します。さらに、買収時に必要となる資金も複数名の投資家やファンドから自ら調達し、買収、経営権を得るという流れです。資金調達・企業探しを全てサーチャー個人で行います。なお、資金を提供していただくためには、投資家1人1人と信頼関係を築く必要があり、経営権を得た後にも影響してきます。
■アクセラレータ型サーチファンド
アクセラレータ型サーチファンドは、サーチファンド運営会社が運営するファンド1つが大株主としてサーチャーに資金を提供するモデルです。トラディショナル型サーチファンドとの大きな違いは、サーチャーは複数の投資家と個別に交渉して資金調達をする必要がありません。日本において投資家個人が買収先の決まっていないサーチャーに投資することは一般的ではないことから、こうした1つの大きな投資家(ファンド)がサーチャーを支える仕組みが広まりやすいと考えられます。実際、アクセラレータ型サーチファンドは日本で最も多く普及しているサーチファンドの種類で、2023年11月、新たに東京都の中小企業の事業承継を支援することを主な目的とした「Tokyo Search Fund」が設立されました。
また、アクセラレータ型サーチファンドの中には、日本の後継者不在問題の解決を最大の目的とし、日本の市場に合う形に改良した「日本式サーチファンド」もあります。日本式サーチファンドはGrowthixグループが取り入れています。
Growthixグループは、後継者となるサーチャーが不足していることを課題と認識し、サーチャーを育成・輩出する機関「ネクストプレナー大学コミュニティー」を運営しております。
2023年は、ファンド組成はしていいないものの、エキサイトホールディングスが子会社のM&ABASE株式会社を通じてサーチファンドアクセラレーター事業に参入することを発表しました。さらに沖縄県の株式会社TRAYD INNOVATIONとシンバホールディングス株式会社は沖縄県発のサーチファンドアクセラレータ―事業に参入することを発表するなど、地域での注目度も高まってきています。
TOPIC 3 ファンド組成実績のある日本のサーチファンド事業者は6社。トラディショナル型は4名が活躍中
ここからは既にファンドを組成をしている「トラディショナル型サーチファンド」「アクセラレータ型サーチファンド」、アクセラレータ型サーチファンドの中でも後継者不在問題の解決を最大の目的として、日本の市場に合う形に改良した「日本式サーチファンド」の事業者を詳しく紹介します。
■トラディショナル型サーチファンド
■アクセラレーター型サーチファンド
【山口フィナンシャルグループ】
山口フィナンシャルグループの地盤である山口県・広島県・福岡県の企業を主な対象とした第1号ファンド「YMFG Search Fund」を2019年に設立。その後、規模を拡大し、対象を全国に広げた第2号ファンド「地域未来共創Searchファンド」を設立しています。
【サーチファンド・ジャパン】
サーチャーであった伊藤公健氏が自身のノウハウと経験をもとに設立したファンドです。M&A仲介業の日本M&Aセンターと日本政策投資銀行(DBJ)、キャリアインキュベーションがパートナーで、第2号ファンドまで設立しています。
【ジャパン・サーチファンド・プラットフォーム(JSFP)】
野村ホールディングスが関わる日本最大規模のサーチファンドです。JaSFA代表取締役社長の嶋津紀子氏がスタンフォード大学で学んだサーチファンドモデルを応用しています。トラディショナル型サーチファンドへの投資実績もあります。
【サーチファンド未来創造】
神奈川県と東京都の事業承継問題を解決するために2023年3月に設立されました。
【Tokyo Search Fund】
東京都の中小企業における事業承継問題を解決するために2023年11月に設立されました。サーチファンド・ジャパンが組成した第2号ファンドと中小企業M&A投資事業有限責任組合の共同出資です。
■日本式サーチファンド
【Growthixグループのファンド】
サーチファンド事業者の中で唯一サーチャーを育成・輩出する機関「ネクストプレナー大学コミュニティ―」を運営しています。他のサーチファンド事業者と異なり、グループ内で案件紹介、ファンドの組成・運営、サーチャーの育成が完結する一気通貫モデルを採用。なお、Growthixグループでは、サーチャーのことを“次世代の起業家”を意味する造語「ネクストプレナー」と定義しています。
TOPIC 4 北九州市が自治体として初めてサーチファンド事業者との連携協定を締結
2023年9月4日、北九州市はサーチファンドに取り組むGrowthix Capital株式会社と山口キャピタル株式会社の2社と「市内中小企業の事業承継推進に関する連携協定」を締結しました。
主な協定内容
・北九州市とサーチファンド事業者が事業承継セミナーを開催し、後継者不在問題を抱える企業を発掘。
・北九州市内の企業とネクストプレナー(サーチャー)のマッチング。
・ネクストプレナー(サーチャー)が企業視察や面談等を行う場合は、調査活動費の一部を北九州市が補助。(上限50万円)
北九州市が2022年に実施したアンケートによると、回答者の約4割が後継者不在でこのうち約7割が廃業を検討していることがわかりました。本協定の締結を通して地域の活性化を目指しています。
TOPIC 5 サーチファンドについて情報発信する登録無料の「ネクストプレナー大学コミュニティー」開設
サーチファンドに関する情報を発信する会員制コミュニティープラットフォーム「ネクストプレナー大学コミュニティー」が2023年11月22日に開設されました。本コミュニティーを運営するGrowthix Capital株式会社は様々な後継者候補と接する中で「欲しい情報がなかなか手に入らない」「同じ思いを持つ仲間ともっと交流し、意見交換をしたい」といった相談を受けることが多かったことから、無料登録だけで参加できる本コミュニティーを開設しました。
経営者としての視点を磨く情報やサーチファンドに関する情報、コミュニティー内でしか得ることができないクローズドな情報の提供、経営に関するお悩みの相談を気軽に行うことができます。コミュニティー登録者同士での交流も盛んにすることで、経営者が陥りやすい“孤独”にならないよう、切磋琢磨できる環境を整えることも目的としています。
開設から2か月で250名が登録しており、うち、今すぐもしくは2~3年以内に事業承継をしたいと考えている方は64名います。(2024年1月24日時点)
TOPIC 6 掲載数は横ばい。専門紙や地方メディア等での露出増
新聞・雑誌・テレビ・WEBの合計128件の掲載がありました。
2022年と比較すると、WEBでの掲載が伸びサーチファンドに関する新しいニュースはコンスタントに掲載されています。一方、テレビは2022年ほどの露出はありませんでした。ただ、テレビ東京「ガイヤの夜明け」でサーチファンドのみの特集が組まれインパクトがありました。そのほか、本調査対象外ですが、北九州エリアや沖縄エリアのテレビ番組にて報道ニュースとして取り上げられています。これまで掲載の多かった経済系専門紙のみならず、一般紙やその他専門紙、地方のテレビ等での掲載が増えつつあるように感じます。
TOPIC 7 2024年予測:より多様性に富んだステークホルダーが出現する年に?
2023年は、サーチファンドの投資実行数が過去最多となったこと、行政との連携が進んだこと、さらに公開情報ベースではアクセラレータ型サーチファンドにおいて初の売却が行われたことが特徴として挙げられます。海外では、サーチファンドのEXITの動きは当然ながらあるものの、日本では初めての事例となり、ようやくEXITのベンチマークが形成されました。
サーチファンドへの投資は2020年の塩見組を皮切りに始まりましたが、2022年から投資が活発に行われるようになり、投資期間が一般的に3~5年であることを考慮すると、本格的なEXIT事例が増えるまではもう少し時間がかかるものと思われます。
投資実行数が過去最多となった背景については、2023年は特に金融機関やM&A仲介会社を含むプロフェッショナルサービス業界のサーチファンドへの理解が進んだことが大きいのではないでしょうか。(奥井)
「聞いたことがある」レベルではなく、理解した上で、サーチファンド業界内での差別化様相や具体的なリターンについて認識している金融機関等が増えた印象を持っています。こうした金融機関の協力により、首都圏にとどまらず、全国の事業会社にも徐々にサーチファンドの認知度が高まっているように思います。
また、事業会社がサーチファンドへの関心を示す例も見られ始めています。2023年にエキサイトホールディングスがサーチファンド事業への参入を発表したように、2024年はこれまでの金融機関やM&A仲介業者といった専門業以外の会社がサーチファンド事業に参入することが考えられます。2024年はこうしたステークホルダーがより多様化される年になると期待しています。(竹内)
Growthix Investment株式会社 代表取締役
奥井 夏樹(おくい なつき)
早稲田大学商学部を卒業後、米国系コングロマリッド最大手のGEに入社。中堅企業・中小企業向けのファイナンス業務に従事する。その後、コンサル業界大手であるデロイトトーマツコンサルティングにて、先進企業の成長戦略・新規事業戦略の立案を支援。2016年に独立後、BtoBプラットフォームサービスの開発・事業展開に創業メンバーとして従事。2021年よりGrowthix Investmentの立ち上げに参画。M&A及びサーチファンドという手法で後継者問題に悩む中堅企業・中小企業を支援。
竹内智洋(たけうち としひろ)
新卒としてGEのファイナンスリーダー育成プログラム(FMP)に入社。ファイナンスの実務経験を積んだ後、本社監査部(CAS)に移籍。CASにて世界8ヶ国の航空機事業、エネルギー事業、医療機器事業、金融事業の会計監査・コンプライアンス監査業務に従事。2018年GEヘルスケアに移籍。APACリージョンのセールス&コマーシャルリーダーとして日本における中古医療機器の買取・再生・再販オペレーションを構築。その後GEヘルスケアジャパンのマーケティング部・コマーシャルオペレーション部の兼任部長に就任、本事業部業績のV字回復を牽引した。2021年にGrowthix Investmentの立ち上げに参画。
<Growthix Capital株式会社 概要>
【所 在 地】東京都中央区日本橋兜町 22-6 東京セントラルプレイス5階/6階
【代 表 者】中島 光夫
【設 立】令和元年5月7日
【U R L】https://growthix.co.jp/
【事業内容】後継者不在企業の紹介・マッチング
<Growthix Investment株式会社 概要>
【所 在 地】東京都中央区日本橋兜町 22-6 東京セントラルプレイス6階
【代 表 者】竹内 智洋、奥井 夏樹
【設 立】令和3年6月1日
【U R L】https://growthix-investment.com/
【事業内容】ファンドの設立およびその運営
<一般社団法人ネクストプレナー協会 概要>
【所 在 地】東京都中央区日本橋兜町 22-6 東京セントラルプレイス6階
【代表理事】河本 和真
【創 立】令和2年9月1日
【U R L】https://nextpreneur.jp
【事業内容】ネクストプレナー大学の運営
「報道・取材のお問合せ先」
TEL : 070-1576-4954
e-mail:e.mori@growthix.co.jp
担当:森
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サーチファンドを推進するGrowthix Investment株式会社(本社:東京都中央区、代表:奥井 夏樹、竹内智洋、以下Growthix Investment)は、サーチファンドを活用したM&A案件に特化した「サーチファンド白書2023」を作成いたしました。このサーチファンド白書は4月1日の「サーチファンド誕生の日」制定を記念し、2023年より発行しています。なお、本資料は公開されている情報に基づきまとめております。 【TOPICS】 1.2023年のサーチファンドによる投資実行数は9件!過去最多を記録 2.国内のサーチファンドは大きく2種類に分類できる!各サーチファンドの特徴を解説 3.ファンド組成実績のある日本のサーチファンド事業者は6社。トラディショナル型は4名が活躍中 4.北九州市が自治体として初めてサーチファンド事業者との連携協定を締結 5.サーチファンドについて情報発信する登録無料の「ネクストプレナー大学コミュニティー」開設 6.掲載数は横ばい。専門紙や地方メディア等での露出増 7.2024年予測:より多様性に富んだステークホルダーが出現する年に?
Summary
2023年はサーチファンドによる投資実行数が過去最多の9件を記録。また、公開情報ベースではアクセラレータ型サーチファンドにおいて日本では初となる買収企業の譲渡も1件実行されました。過去最多を記録した背景には、2023年は特に金融機関やM&A仲介会社を含むプロフェッショナルサービス業界のサーチファンドへの理解が進んだことがあります。サーチファンドを正しく理解した上で、差別化や具体的なリターンについて認識している金融機関等が増加しました。
また、9月には北九州市が自治体として初のサーチファンドに関する連携協定を締結。11月に東京都の中小企業の事業承継問題を解決する目的で東京都が主な出資者となる「Tokyo Search Fund」が設立されました。さらに、ファンドは組成していないものの沖縄県における企業のサーチファンド事業への参入の発表もあり、自治体単位や地域企業でのサーチファンドへの取り組みが増えはじめた1年となりました。こうした地域の取り組みにより、サーチファンドへの認知度は首都圏にとどまらず地域にまで浸透してきたように思います。しかし、日本の中小企業が抱える後継者不在問題は、今もなお深刻です。サーチファンドを活用した事業承継数を増やしていく必要があります。
2024年は、サーチファンドの認知度が向上したことにより、金融機関などのプロフェッショナル業界以外の事業者においてもサーチファンド事業に参入してくる可能性が考えられます。より多様性に富んだステークホルダーが出現し、サーチファンドをますます盛り上げてくれること、そして投資実行数がさらに増えることを期待します。
【サーチファンド白書2023年】のPDF版はこちら:https://hubs.ly/Q02hwJ9_0
2023年の「後継者不在率」は60%越えで過去最多
中小企業庁によると、2025年までに平均引退年齢の70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万社にのぼり、そのうち約半数の127万社は後継者が未定と発表されています。この127万社を放置すると、累計で650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があります。本データの発表は2017年でしたが、実際に後継者不在率は年々増加しております。
東京商工リサーチの2023年11月の発表によると、2023年の後継者不在率は61.09%で調査開始以来過去最多を記録しました。政府や自治体、金融機関の支援が整ってきている中でも、円滑な事業承継が進んでいないことが予想できます。
「サーチファンド」は、こうした日本の中小企業の事業承継問題に活用できると考えられ、日本でも少しずつ広がってきております。
サーチファンドとは
経営者を志す個人(=ネクストプレナー/サーチャー)が生活費や調査費などの活動予算(サーチ費用)を投資家・ファンドから調達してその資金を活用し後継者不在企業を自ら探します。さらに、自身が経営したいと思う企業が見つかった際には、投資家・ファンドから買収資金をさらに調達して企業を買収・経営するアメリカ発祥のM&Aです。
サーチファンドは一般的な企業対企業のM&Aとは異なりネクストプレナー/サーチャーがM&Aを行うため、買収する前に何度も企業に足を運び現社長とコミュニケーションをとることができます。社長はサーチャーの人柄や能力、価値観、熱意などを譲渡する前に確認できるため、後継者として適している人材かを見極めることが可能です。
次の経営を任せられる人を社長自らが選べる点で、日本の中小企業の事業承継に合っており、後継ぎ不足を喫緊の課題としている中小企業オーナーにとって解決の糸口になると期待されています。
TOPIC 1 2023年はサーチファンドによる投資実行数が9件!過去最多を記録。
2023年1月~12月までの1年間で9件のサーチファンドを用いたM&Aが実現し、日本におけるサーチファンド活用数は過去最多を記録しました。2023年3月に設立されたサーチファンド未来創造も1件投資実行されました。
年間に渡り、コンスタントに投資実行されていることから、サーチファンドの活用が広まってきていると考えられます。
<2023年のサーチファンドを用いたM&A 一覧>
サーチファンドが日本で活用され始めた2020年から比較しても年々投資実行件数は増えています。
また、2023年10月にはサーチファンドを活用し買収した企業の譲渡も実行されました。譲渡したのは2023年2月にサーチファンド・ジャパンが投資実行した株式会社アレスカンパニーです。8カ月での譲渡となりました。
TOPIC 2 国内のサーチファンドは大きく2種類に分類できる!各サーチファンドの特徴を解説
2023年はサーチファンドの広がりとともに日本国内で広がるサーチファンドの種類も増えました。 大きく「トラディショナル型サーチファンド」と「アクセラレータ型サーチファンド」の2種類あります。
■トラディショナル型サーチファンド
トラディショナル型サーチファンドは、サーチファンド発祥の地であるアメリカの形をそのまま取り入れたサーチファンドモデルです。サーチャーは自ら複数名の投資家やファンドに掛け合い、まずはサーチャー自身がサーチ活動をしている間必要となる生活費用を含めた資金を調達します。その資金を用いながら、買収したい会社を自力で探し、買収に向けて交渉します。さらに、買収時に必要となる資金も複数名の投資家やファンドから自ら調達し、買収、経営権を得るという流れです。資金調達・企業探しを全てサーチャー個人で行います。なお、資金を提供していただくためには、投資家1人1人と信頼関係を築く必要があり、経営権を得た後にも影響してきます。
■アクセラレータ型サーチファンド
アクセラレータ型サーチファンドは、サーチファンド運営会社が運営するファンド1つが大株主としてサーチャーに資金を提供するモデルです。トラディショナル型サーチファンドとの大きな違いは、サーチャーは複数の投資家と個別に交渉して資金調達をする必要がありません。日本において投資家個人が買収先の決まっていないサーチャーに投資することは一般的ではないことから、こうした1つの大きな投資家(ファンド)がサーチャーを支える仕組みが広まりやすいと考えられます。実際、アクセラレータ型サーチファンドは日本で最も多く普及しているサーチファンドの種類で、2023年11月、新たに東京都の中小企業の事業承継を支援することを主な目的とした「Tokyo Search Fund」が設立されました。
また、アクセラレータ型サーチファンドの中には、日本の後継者不在問題の解決を最大の目的とし、日本の市場に合う形に改良した「日本式サーチファンド」もあります。日本式サーチファンドはGrowthixグループが取り入れています。
Growthixグループは、後継者となるサーチャーが不足していることを課題と認識し、サーチャーを育成・輩出する機関「ネクストプレナー大学コミュニティー」を運営しております。
2023年は、ファンド組成はしていいないものの、エキサイトホールディングスが子会社のM&ABASE株式会社を通じてサーチファンドアクセラレーター事業に参入することを発表しました。さらに沖縄県の株式会社TRAYD INNOVATIONとシンバホールディングス株式会社は沖縄県発のサーチファンドアクセラレータ―事業に参入することを発表するなど、地域での注目度も高まってきています。
TOPIC 3 ファンド組成実績のある日本のサーチファンド事業者は6社。トラディショナル型は4名が活躍中
ここからは既にファンドを組成をしている「トラディショナル型サーチファンド」「アクセラレータ型サーチファンド」、アクセラレータ型サーチファンドの中でも後継者不在問題の解決を最大の目的として、日本の市場に合う形に改良した「日本式サーチファンド」の事業者を詳しく紹介します。
■トラディショナル型サーチファンド
■アクセラレーター型サーチファンド
【山口フィナンシャルグループ】
山口フィナンシャルグループの地盤である山口県・広島県・福岡県の企業を主な対象とした第1号ファンド「YMFG Search Fund」を2019年に設立。その後、規模を拡大し、対象を全国に広げた第2号ファンド「地域未来共創Searchファンド」を設立しています。
【サーチファンド・ジャパン】
サーチャーであった伊藤公健氏が自身のノウハウと経験をもとに設立したファンドです。M&A仲介業の日本M&Aセンターと日本政策投資銀行(DBJ)、キャリアインキュベーションがパートナーで、第2号ファンドまで設立しています。
【ジャパン・サーチファンド・プラットフォーム(JSFP)】
野村ホールディングスが関わる日本最大規模のサーチファンドです。JaSFA代表取締役社長の嶋津紀子氏がスタンフォード大学で学んだサーチファンドモデルを応用しています。トラディショナル型サーチファンドへの投資実績もあります。
【サーチファンド未来創造】
神奈川県と東京都の事業承継問題を解決するために2023年3月に設立されました。
【Tokyo Search Fund】
東京都の中小企業における事業承継問題を解決するために2023年11月に設立されました。サーチファンド・ジャパンが組成した第2号ファンドと中小企業M&A投資事業有限責任組合の共同出資です。
■日本式サーチファンド
【Growthixグループのファンド】
サーチファンド事業者の中で唯一サーチャーを育成・輩出する機関「ネクストプレナー大学コミュニティ―」を運営しています。他のサーチファンド事業者と異なり、グループ内で案件紹介、ファンドの組成・運営、サーチャーの育成が完結する一気通貫モデルを採用。なお、Growthixグループでは、サーチャーのことを“次世代の起業家”を意味する造語「ネクストプレナー」と定義しています。
TOPIC 4 北九州市が自治体として初めてサーチファンド事業者との連携協定を締結
2023年9月4日、北九州市はサーチファンドに取り組むGrowthix Capital株式会社と山口キャピタル株式会社の2社と「市内中小企業の事業承継推進に関する連携協定」を締結しました。
主な協定内容
・北九州市とサーチファンド事業者が事業承継セミナーを開催し、後継者不在問題を抱える企業を発掘。
・北九州市内の企業とネクストプレナー(サーチャー)のマッチング。
・ネクストプレナー(サーチャー)が企業視察や面談等を行う場合は、調査活動費の一部を北九州市が補助。(上限50万円)
北九州市が2022年に実施したアンケートによると、回答者の約4割が後継者不在でこのうち約7割が廃業を検討していることがわかりました。本協定の締結を通して地域の活性化を目指しています。
TOPIC 5 サーチファンドについて情報発信する登録無料の「ネクストプレナー大学コミュニティー」開設
サーチファンドに関する情報を発信する会員制コミュニティープラットフォーム「ネクストプレナー大学コミュニティー」が2023年11月22日に開設されました。本コミュニティーを運営するGrowthix Capital株式会社は様々な後継者候補と接する中で「欲しい情報がなかなか手に入らない」「同じ思いを持つ仲間ともっと交流し、意見交換をしたい」といった相談を受けることが多かったことから、無料登録だけで参加できる本コミュニティーを開設しました。
経営者としての視点を磨く情報やサーチファンドに関する情報、コミュニティー内でしか得ることができないクローズドな情報の提供、経営に関するお悩みの相談を気軽に行うことができます。コミュニティー登録者同士での交流も盛んにすることで、経営者が陥りやすい“孤独”にならないよう、切磋琢磨できる環境を整えることも目的としています。
開設から2か月で250名が登録しており、うち、今すぐもしくは2~3年以内に事業承継をしたいと考えている方は64名います。(2024年1月24日時点)
TOPIC 6 掲載数は横ばい。専門紙や地方メディア等での露出増
新聞・雑誌・テレビ・WEBの合計128件の掲載がありました。
2022年と比較すると、WEBでの掲載が伸びサーチファンドに関する新しいニュースはコンスタントに掲載されています。一方、テレビは2022年ほどの露出はありませんでした。ただ、テレビ東京「ガイヤの夜明け」でサーチファンドのみの特集が組まれインパクトがありました。そのほか、本調査対象外ですが、北九州エリアや沖縄エリアのテレビ番組にて報道ニュースとして取り上げられています。これまで掲載の多かった経済系専門紙のみならず、一般紙やその他専門紙、地方のテレビ等での掲載が増えつつあるように感じます。
TOPIC 7 2024年予測:より多様性に富んだステークホルダーが出現する年に?
2023年は、サーチファンドの投資実行数が過去最多となったこと、行政との連携が進んだこと、さらに公開情報ベースではアクセラレータ型サーチファンドにおいて初の売却が行われたことが特徴として挙げられます。海外では、サーチファンドのEXITの動きは当然ながらあるものの、日本では初めての事例となり、ようやくEXITのベンチマークが形成されました。
サーチファンドへの投資は2020年の塩見組を皮切りに始まりましたが、2022年から投資が活発に行われるようになり、投資期間が一般的に3~5年であることを考慮すると、本格的なEXIT事例が増えるまではもう少し時間がかかるものと思われます。
投資実行数が過去最多となった背景については、2023年は特に金融機関やM&A仲介会社を含むプロフェッショナルサービス業界のサーチファンドへの理解が進んだことが大きいのではないでしょうか。(奥井)
「聞いたことがある」レベルではなく、理解した上で、サーチファンド業界内での差別化様相や具体的なリターンについて認識している金融機関等が増えた印象を持っています。こうした金融機関の協力により、首都圏にとどまらず、全国の事業会社にも徐々にサーチファンドの認知度が高まっているように思います。
また、事業会社がサーチファンドへの関心を示す例も見られ始めています。2023年にエキサイトホールディングスがサーチファンド事業への参入を発表したように、2024年はこれまでの金融機関やM&A仲介業者といった専門業以外の会社がサーチファンド事業に参入することが考えられます。2024年はこうしたステークホルダーがより多様化される年になると期待しています。(竹内)
Growthix Investment株式会社 代表取締役
奥井 夏樹(おくい なつき)
早稲田大学商学部を卒業後、米国系コングロマリッド最大手のGEに入社。中堅企業・中小企業向けのファイナンス業務に従事する。その後、コンサル業界大手であるデロイトトーマツコンサルティングにて、先進企業の成長戦略・新規事業戦略の立案を支援。2016年に独立後、BtoBプラットフォームサービスの開発・事業展開に創業メンバーとして従事。2021年よりGrowthix Investmentの立ち上げに参画。M&A及びサーチファンドという手法で後継者問題に悩む中堅企業・中小企業を支援。
竹内智洋(たけうち としひろ)
新卒としてGEのファイナンスリーダー育成プログラム(FMP)に入社。ファイナンスの実務経験を積んだ後、本社監査部(CAS)に移籍。CASにて世界8ヶ国の航空機事業、エネルギー事業、医療機器事業、金融事業の会計監査・コンプライアンス監査業務に従事。2018年GEヘルスケアに移籍。APACリージョンのセールス&コマーシャルリーダーとして日本における中古医療機器の買取・再生・再販オペレーションを構築。その後GEヘルスケアジャパンのマーケティング部・コマーシャルオペレーション部の兼任部長に就任、本事業部業績のV字回復を牽引した。2021年にGrowthix Investmentの立ち上げに参画。
<Growthix Capital株式会社 概要>
【所 在 地】東京都中央区日本橋兜町 22-6 東京セントラルプレイス5階/6階
【代 表 者】中島 光夫
【設 立】令和元年5月7日
【U R L】https://growthix.co.jp/
【事業内容】後継者不在企業の紹介・マッチング
<Growthix Investment株式会社 概要>
【所 在 地】東京都中央区日本橋兜町 22-6 東京セントラルプレイス6階
【代 表 者】竹内 智洋、奥井 夏樹
【設 立】令和3年6月1日
【U R L】https://growthix-investment.com/
【事業内容】ファンドの設立およびその運営
<一般社団法人ネクストプレナー協会 概要>
【所 在 地】東京都中央区日本橋兜町 22-6 東京セントラルプレイス6階
【代表理事】河本 和真
【創 立】令和2年9月1日
【U R L】https://nextpreneur.jp
【事業内容】ネクストプレナー大学の運営
「報道・取材のお問合せ先」
TEL : 070-1576-4954
e-mail:e.mori@growthix.co.jp
担当:森
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