日本人の52.6%は「社外で自己研鑽しない」? 世界18カ国・地域の働き方を比較【パーソル総研調べ】
パーソル総合研究所は、日本を含むアジア太平洋地域(APAC)および欧米地域を含めた世界18カ国・地域における「グローバル就業実態・成長意識調査」を実施した。本調査は、2019年8月、APAC14カ国・地域を対象に行われた調査に続くものである。
コロナ禍の影響で「在宅勤務」が各国・地域で大幅増加
2022年はほとんどの国・地域で「在宅勤務」実施率が大幅に増加した。全体の平均では11.9%の実施率となり、最も高いのはフィリピン(22.3%)、ついで日本(18.5%)、マレーシア(18.4%)であった。「時短勤務(1日6時間以上、8時間未満)」も増加傾向にあり、台湾やベトナムでの増加が目立った。一方で、「フルタイム」は複数の国で減少していた。
コロナ禍で「働く実態」にどのような変化があったかを聞いたところ、「テレワーク増加」と「所得減少」は多くの国・地域で上位に入った。日本では、「将来のキャリアに関する不安が増加した」や「仕事の生産性が下がった」は18カ国・地域の中で最も低かったが、他方で「上司や同僚とのコミュニケーションが減った」「職場における部下マネジメントが複雑になった/負担が増えた」が上位に入った。
また、コロナ禍で「働く意識」にどのような変化があったかを聞くと、全体で最も多かったのは「現在の会社で安定して働き続けたい」で、すべての国・地域でトップ3に入った。「仕事の生産性を上げたい」「業務のデジタル化を進めたい」といった意見も多かった。
日本人は転職や独立に消極的? 継続就業・出世欲も控えめ
一般社員・従業員に対し、「現在の勤務先で管理職になりたいか」を聞いたところ、1位はインド(90.5%)、ついでベトナム(87.8%)、フィリピン(80.6%)と続き、日本は19.8%で最下位であった。最も男女差があったのはスウェーデンで、男性が女性を大きく上回った。一方、マレーシアを除く東南アジアと日本を除く東アジア、インドでは、男女差が比較的小さかった。
続いて、「現在の勤務先で継続して働きたいか」を聞くと、全体平均が71.2%であるのに対し、中国とインドでは8割強と継続意欲が高く、日本は56.0%と最も低かった。
「他の会社に転職したいか」を聞くと、全体平均が35.2%であるのに対し、インドが56.8%と最も高く、逆に最も少ないのはインドネシアで20.2%だった。日本は25.9%で、2番目に少なかった。
「会社を辞めて独立・起業したいか」を聞くと、全体平均が35.1%であるのに対し、インドとインドネシアでは半数を超え、フィリピン、アメリカ、中国では4割を超えていた。日本は20.0%と最も低かった。
日本の組織文化の特徴は「権威主義・責任回避」
「組織文化」の特徴(10分類)を用いて、類似度により国・地域をマッピングしたところ、日本は韓国と並び「権威主義・責任回避」に特徴づけられた。オーストラリア、アメリカ、イギリス、ドイツ、スウェーデンは「個人を尊重した柔軟なマネジメント」に、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナムは「組織の調和を重視した自由闊達な風土」に近いのが特徴的であった。
また、「上司のマネジメント行動」の特徴(6分類)を用いてマッピングしたところ、日本、韓国、香港、中国は「日常的に感謝やねぎらいの言葉をかけられている」「上司から褒められている」など「肯定的なフィードバック」に特徴づけられた。
一方で、フランス、スウェーデン、インド、タイ、インドネシアでは「部下の話の傾聴」、フィリピン、マレーシア、シンガポールでは「権限委譲」、ドイツやオーストラリアでは「目標の設定と共有」が重視される傾向があった。
「働くことで幸せを感じている」人の割合、日本は49.1%で最下位
「働くことを通じて、幸せを感じている」人の割合は、全体平均が74.7%であるのに対し、日本は49.1%と最も低かった。最も高いのはインドで、92.6%だった。
職場における「女性」「若手」「シニア層」「人種的・民族的マイノリティ」「LGBTQ」「移民や外国人労働者」の働きやすさを5段階尺度で調べると、日本はいずれも全体平均点を下回り、ダイバーシティ&インクルージョンの実現度は低いという結果となった。
社外での自己啓発、日本は「特に何もおこなっていない」が52.6%
勤務先以外で自分の成長を目的に行っている学習・自己啓発について聞いたところ、全体では「読書」(34.5%)、「研修・セミナー、勉強会等への参加」(30.4%)の実施率が特に高い結果となった。一方で、日本では「とくに何もおこなっていない」が52.6%と18カ国・地域の中で最も高かった。
また、勤務先以外での学習・自己啓発に対する「自己投資」については、全体平均は「既に自己投資している」が7割を超え、特にインド、ベトナム、インドネシア、フィリピン、アメリカでは8割を超えており、自己研鑽に意欲的な傾向が見られた。
一方、日本における「既に自己投資している」の割合は計40.0%と最も低く、「現在は自己投資しておらず、今後も投資する予定はない」という割合も42.0%と、自己研鑽意欲の低さが際立った。
働いてみたい国・地域では「日本」は上位。2019年よりは低下
働いてみたい国・地域を聞いたところ、全体ではアメリカが1位、ついで日本、イギリス、カナダ、シンガポールと続いた。日本では、「働きたい地域はない(自国のみで働きたい)」が47.2%と、他国・地域に比べ最も高かった。
東南アジアや台湾、香港では、日本は働いてみたい国・地域の上位に挙がったが、2019年調査と比べると、タイ、ベトナム、台湾の日本を希望する割合は10ポイント以上低下した。
調査概要
- 【調査対象エリア】18ヵ国・地域
東アジア:日本(東京、大阪、愛知)、中国(北京、上海、広州)、韓国(ソウル)、台湾(台北)、香港
東南アジア:タイ(グレーターバンコク)、フィリピン(メトロマニラ)、インドネシア(グレータージャカルタ)、マレーシア(クアラルンプール)、シンガポール、ベトナム(ハノイ、ホーチミンシティ)
南アジア:インド(デリー、ムンバイ)オセアニア:オーストラリア(シドニー、メルボルン、キャンベラ)
北米:アメリカ(ニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルス)
ヨーロッパ:イギリス(ロンドン)、ドイツ(ベルリン、ミュンヘン、ハンブルグ)、フランス(パリ)、スウェーデン(ストックホルム) - 【調査対象者】20~69歳男女/就業している人(休職中除く)/対象国に3年以上在住
- 【調査時期】2022年2月10日~3月14日
- 【調査方法】調査モニターを対象としたインターネット定量調査
- 【サンプル数】各国・地域 約1,000サンプル
- 【調査主体】パーソル総合研究所
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