TwitterがXになってどう変わった? セガとキングジムの中の人にSNS運用のコツを聞いてみた
2023年7月、「Twitter」が「X」に名称を変更した。企業のSNS担当や広報担当の中には、「こんなに変わってどうすればいいの?」と悩んでいる人も多いだろう。
「デジタルマーケターズサミット 2024 Winter」では、キングジムの三浦なずな氏と、セガの山田愛氏が登壇。エスファクトリー代表取締役のイミトモ (井水朋子)氏をモデレーターに、SNSに起こった変化や最新機能の活用について語った。
「X」の運用体制は? 投稿のネタ出しはどうやってる?
ゲーム機器やイベントなどを幅広く手がける大手ゲームメーカーのセガと、「テプラ」や「ファイル」で有名な文房具メーカーであるキングジム。上図は、その「中の人」である三浦氏・山田氏が運用している企業公式アカウントだ。
まず、2社のX(旧Twitter)の運用体制について、一問一答形式でそれぞれ回答していった。
質問①どんなことを投稿しているの?
- セガ:ゲーム・イベント・グッズや社内のことなど、セガに関するニュースはなんでも投稿している
- キングジム:新製品、自社やグループ会社情報、ささやかな日々のできごとなどを投稿している
質問②運用方針(目的、KPI、ターゲットや投稿頻度)は?
- セガ:親近感・信頼感の醸成とセガを好きになってもらうことを目指している。投稿数は、1日3~10投稿
- キングジム:中長期的な視点でキングジムファンを増やすことを目指している。投稿数は、1日平均10投稿
質問③投稿の頻度は?
- セガ:毎日
- キングジム:ほぼ毎日
質問④運用担当者の人数は?
- セガ:主メンバーは3名+α
- キングジム:3名
質問⑤投稿のネタ決めから公開に至るまでのフローは?
- セガ:週1回の編集会議(社内の担当者5~6人)でアイデア出しをし、社内監修後に投稿
- キングジム:新製品の情報や季節投稿については、PR担当者がスケジュール表などで管理して投稿。雑談投稿は即興
Twitter→Xになってどう変わった?
では、TwitterからXになったことで、実際何が変わったのだろうか。
質問⑥Xの新機能は使っている?
Xでは新機能として、主に以下の3つが追加されている。企業公式アカウントでは、これらの最新機能を利用しているのだろうか。
- 140文字以上投稿できる機能(有料版で追加)
- 通話機能(音声通話とビデオ通話:無料版でも利用可能)
- スペース(最大13人までで、音声を使ったリアルタイムの会話:無料版でも利用可能)
セガでは、いずれも未使用ですが、スペースや長文の投稿には興味があります(セガ 山田氏)
キングジムはなりすまし防止のために有料アカウントにしているので、たまに140文字以上の長文投稿をします。アスキーアートは、キングジムのアカウントのお家芸と言っていただくこともあります。Twitter時代には文字数制限で投稿できなかったものもあるので、色々試しています(キングジム 三浦氏)
( •ω• ) きん
— キングジム (@kingjim) April 5, 2024
| ハ |
( •ω• ) きん
| 乂 |
(|•ω•|) きんようび
| |
( •ω• ) キン
| ハ |
( •ω• ) キン
| 乂 |
( >д<) 、;'.・ィクシッキングジム
| 乂 |
質問⑦アルゴリズムが変わったと感じるのはどんな時?
また、Xになったことで、アルゴリズムにはどのような変化があったのだろうか。山田氏は、「見たいアカウントがタイムラインに出にくくなった」「同内容のポストのエンゲージメントが昨対比で伸びた」と語る。
たとえば、セガではキングジムさんをフォローしていますが、フォローしているだけではタイムラインに投稿が出にくくなりました。共同でキャンペーンを実施していたときはタイムラインに表示されていたので、コミュニケーションの頻度がタイムラインに影響しているのかな、と感じています。一方で、人気投稿はフォローの有無に関係なく、タイムラインに表示されるようになりました。
また、リポストやリプライが初速で多いものは、その後のインプレッションの伸びが以前よりも大きいと感じます(セガ 山田氏)
続いて三浦氏は、「投稿文が長い時に畳まれる」「収益化プログラム開始後からファンの投稿が見つけづらくなった」「人気投稿の拡散スピードが速くなった」の3点を挙げた。
投稿文が長いと畳まれてしまいます。また、140文字を超えていないアスキーアートでも畳まれることがあって悲しいです。
また、以前はフォロワーさんからいただいたリプライに返信していたんですが、収益化プログラム開始後からファンの投稿がスパムボットなどに埋もれてしまって、見つけづらくなりました。
あとは、人気投稿の拡散スピードが速くなったと感じています。セガさんも触れていたように、初速の反応がいいものは、エンゲージメントやインプレッションが上がりやすいです(キングジム 三浦氏)
- フォローしているだけではタイムラインに投稿が出にくくなった(見たいアカウントはリストに入れてチェックしたほうが良い)
- フォローしていないアカウントでも、人気の投稿はタイムラインに出るようになった
- 人気投稿の拡散速度が以前よりも速くなった
- ファンからのコメントが見つけにくくなった
- 長文投稿は畳まれて表示される
質問⑧タイムラインの流れに乗るために工夫していることは?
続いて、タイムラインの流れに乗るための工夫としては、「Xのトレンド欄を逐一チェック」「他のメディアにもアンテナを張って流行を捉える」ことが挙げられた。
トレンド欄を見ながら、ひとり大喜利のように、『こんな投稿をしたらおもしろいのでは』と考えながら見ています。サラリーマン川柳なども大好きで、入賞作品が出たら必ずチェックして、世の中のトレンドを捉えて、言葉を掛け合わせてみることを習慣にしています(セガ 山田氏)
文具にかかわらず、気温の変化や花粉などのお天気情報にも、幅広くアンテナを張るようにしています。Xのトレンド欄はもちろん、4マス(テレビ、雑誌、新聞、Webメディア)を、まんべんなく見てトレンドを追うように心がけています(キングジム 三浦氏)
企業アカウントの「中の人」が語る! SNS運用の○○な話
最後のトークテーマは、「SNS運用の○○な話」。企業アカウントの中の人ならではの、リアルな本音を聞いていこう。
質問⑨フォロワーのリプや引用ポストに反応する基準は?
宣伝投稿以外は基本的に全返信しています。もちろんゲームの内容や攻略方法などは答えられないので、それ以外の挨拶や日常の投稿、社内の様子などはできる限り答えて、コミュニケーションを楽しんでいます(セガ 山田氏)
リプライはほぼ返信(雑談などは時間の許す限り返信)しています。製品の不具合など重要なものは、一般的なCSと同じように24時間以内に対応し、自部署で受けられないものは必ず関連部署に連絡・報告しています。ただ、引用ポストについては、マンパワー不足で見るにとどまるケースが多いです(キングジム 三浦氏)
一方で、「小さな会社では、SNSに返信していると社内から『遊んでいる』と思われることがあるという」とイミトモ氏。それについて山田氏は、次のように語る。
セガでは2012年からSNS運用を始めましたが、やはり最初の2~3年は社内の理解が追いついていないところがありました。しかし、返信がフォロワー以外にも見えるので、『ちゃんと調べて返信している』などお客様からお褒めの言葉をいただくこともあって。広報部の活動を評価してくれる人も増え、だんだんと社内の理解が深まっていきました(セガ 山田氏)
質問⑩製品やイベント告知のポストで気をつけていることは?
セガをフォローしてくださっているファンの皆さんには『(ゲームなどの)欲しい情報を1秒も遅れずにキャッチしたい』というニーズがあります。この公式アカウントをフォローしていてよかったと思われるように、顧客目線で欲しい情報が、早く正確に伝わるように気をつけています(セガ 山田氏)
お客様が知りたい情報を、わかりやすい文章で、なるべく100文字以内で簡潔に、まとめることを意識しています(キングジム 三浦氏)
質問⑪炎上しないように気をつけていることは?
多様な属性(年齢層やジェンダー)のチームでチェックしています。さらに、時代によって炎上しやすいものが変わるので、燃えやすいもの・対処方法などの知識は常にアップデートするように心掛けています(セガ 山田氏)
ネットリテラシーの理解を深めることは大切です。炎上しやすい事柄に注意するのに加えて、大きな事件や災害があった時には、優先すべき情報が埋もれないように宣伝は控えています(キングジム 三浦氏)
質問⑫SNS担当者になって苦労したことは?
1つの投稿でも、複数部門から了承を得る必要があり、社内調整は大変です。SNSは即時性が要求されるので、早いタイミングから動いて、期日までに全員からOKをもらわなければ……と駆けずり回ることもあります笑(セガ 山田氏)
キングジムはファンの世代が幅広いので、どの年代の方にも伝わりやすいような表現や画像の選び方に気を配っています。『老眼だから写真が4枚あると見えない』と言われたこともあって、より配慮が必要だなと感じました(キングジム 三浦氏)
最後に、運用に悩む担当者に伝えたいSNSのコツとして、山田氏は「人によい影響を与えるアカウントになること」を挙げた。「ファンの方の姿は(ネット上では)目に見えませんが、少しでも喜んでもらえる投稿をして、皆さんにちょっといいことがあるアカウントになれたらいいなと思う」と語った。
また、三浦氏は「長い視点で続けてみること」と述べる。「自分も最初は失敗の連続でしたが、それを繰り返して今がある。短期的に結果を出すことだけでなく、長い目で見て継続することが大切。一緒にがんばっていきましょう」と呼びかけ、セッションを締めくくった。
\Web担主催リアルイベントが“オンデマンド配信”決定!/
満席で申し込みできなかった講演も聞ける【12/13(金)18:00まで視聴可能】
ソーシャルもやってます!