【レポート】Web担当者Forumミーティング 2022 秋

なぜ、いま「パーソナライズ」が求められるのか? セールスフォース・ジャパンが語る3つの理由

顧客を中心としたコミュニケーションや体験を提供する「パーソナライズ」はなぜ必要なのか? その理由と法方をセールスフォース・ジャパンが解説する。
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ECをはじめとするオンラインビジネスの世界は、潜在顧客の多さという圧倒的魅力を備えているが、同時に市場競争は極めて熾烈だ。マーケティングの手を抜けず、なにより顧客の動向もデジタル化によって急速に変化している。

そうした中で、売り上げを着実に高め、顧客ニーズを満たすためには「パーソナライズ」が重要であると、「Web担当者Forumミーティング 2022 秋」に登壇したセールスフォース・ジャパンの髙木氏は語る。いわゆるレコメンドなどを通じて、消費者はすでにパーソナライズの一端に触れている。しかし、なぜそれが重要なのか? 必要ならば、Web担当者はどうすべきなのか? その全貌を解説する。

株式会社セールスフォース・ジャパン 髙木 真樹 氏
株式会社セールスフォース・ジャパン ソリューション・エンジニアリング統括本部 DXビジネスコンサルティング部 リードビジネスコンサルタント 髙木 真樹 氏

「パーソナライズ」を実践すべき3つの理由

セッション冒頭、髙木氏が投げかけた問いが「パーソナライズ」に対するイメージと定義だ。

検索エンジンでは、検索動向の履歴に応じて上位に表示されるサイトが変わる。ECサイトのメルマガなら、商品購買履歴に基づいておすすめ商品がユーザーごとに変化する。動画配信サイトでもやはり視聴傾向に応じて、次に視聴すべき作品が差し替わる。これらはどれもパーソナライズの一形態だが、顧客体験向上の手段として広く定着した感もある。

調査会社のガートナーによれば、パーソナライズの定義は「受け手の体験を充実させるために、送り手と受け手の間で、関連性が高く個別化したやりとりを行うプロセス」とされる※。髙木氏はこれを自分なりに解釈し、「企業が個人から収集した情報に基づいて、体験やコミュニケーションをアレンジすることではないか」と再定義した。

「パーソナライズ」とは何か?
「パーソナライズ」とは何か?

では、そもそもなぜパーソナライズを重視すべきなのか。髙木氏はその理由を3点に絞って解説した。

パーソナライズを重視すべき理由①
価値観の多様化~デジタルファーストな時代での情報収集の変化

スマートフォンの普及によって、情報収集に対する消費者の価値観は変わった。店頭に出向かずECサイトで購入する、購入前にSNSで情報収集する、デジタルならではのキャンペーンを体験するなど、「デジタルファースト」な行動はすでに日常のものになっている。

顧客自身が欲しい情報を取捨選択できる時代になった。その結果、企業が不特定多数の消費者に一方的にマーケティングしても、消費者はその全てを受容してはくれずモノが売れない時代になったのではないか(髙木氏)

顧客が情報を取捨選択するようになったことは、情報を選択する機会が増えたことの裏返しだ。かつてなら高級品、著名ブランド、高機能、価格優位性などが商品選びのキーだった。だが現在は、顧客自身の理想や目的が叶えられる製品を優先して選ぶ。多様化した価値観とライフスタイル、一人ひとり異なる趣向に合わせたマーケティングが、まさに求められているというわけだ。

顧客自身が欲しい情報を取捨選択できる時代に
顧客自身が欲しい情報を取捨選択できる時代に

パーソナライズを重視すべき理由②
マーケティングの限界~市場シェアやマスの限界と対面接客の重要性

新商品や新サービスの開発にあたって、これまでは市場シェアを考慮することが一般的だった。年間総売り上げがどれくらいになりそうか、市場規模から逆算する例などが典型的だ。そして、市場シェアを伸ばすため、販売が好調な曜日にセールを行ってさらなる売り上げ向上を狙うこともある。もちろん、それである程度の成果は出るだろうが、競合他社も同じことを考えている。結果、値下げ競争やクーポンの配布合戦という負のスパイラルに陥ってしまう。

この負の連鎖を断ち切るヒントが「対面接客」にあると髙木氏は語る。

髙木氏はECサイト運営に携わる前、鮮魚店の副店長を努めていた経験を持つ。顧客層は幅広く、買い物の目的はそれぞれ違う。仕入れのために毎日同じモノを買う居酒屋の店主、晩ご飯のメニューを相談してくる主婦、頼まれたので買いに来たとメモを見せてくる会社帰りのサラリーマン、贈答用の魚を予算内で選んでほしいという常連客など、まさに十人十色だった。

ヒントのひとつは対面接客にある
ヒントのひとつは対面接客にある

髙木氏は日々の接客でこうした顧客属性をキャッチし、仕入れる魚やオススメ商品、魚の並べ方などを日々変えていたという。売りっぱなしで終わらせず、接客を通じて顧客ニーズを見極められれば、製品の価格や機能以外の部分でも、顧客満足度の向上と売り上げ向上の両立が狙えるよい例といえるだろう。

Salesforceの調査では、「企業が提供する体験は製品・サービスと同じくらい重要である」と答えた消費者の割合は84%だった。「上質な体験が得られるなら、多少値段が高くても許容する」との答えも66%に上っている。顧客はモノやサービスに対して高い要求を持っているが、その入手前後の体験にも上質さを求めていることが伺える。

パーソナライズを重視すべき理由③
リピート増加~顧客と企業間の関係性の継続

ある商品がAさんとBさんに売れたとする。商品軸で見れば、売り上げへの貢献度はAさんとBさんに差はない。しかし、Aさんは同じ商品を何度も買うなかの1回、Bさんはたまたま来訪して初めて買ったということもわかれば、企業側はAさんとBさんで対応を変えるべきだろう。

特にBさんにフォーカスして、再購入を促すような施策をとるほうが後々の売り上げ向上にもつながるはずだ。つまり、商品性だけを強化するのではなく、顧客を状況分析し、継続した関係性を構築することが重要だといえる。

顧客との関係性継続を意識する
顧客との関係性継続を意識する

パーソナライズ実現のためにやるべき4つのポイントとは?

髙木氏が挙げた3つの理由から、パーソナライズの重要性は理解できただろう。では、企業は具体的にどう対応していけばいいのか。こちらは4つのポイントがあるという。

パーソナライズ実現のために①
情報を活用する

鮮魚店時代の髙木氏のように、顧客のニーズは現場従業員の頭の中にはしっかりと叩き込まれていることが多いが、それが属人化し、組織的に活用できていないことは往々にしてある。

デジタルの世界でも同様の事象が垣間見える。位置情報、顧客ステータス、利用時間、サイト訪問回数、メルマガ開封数、アプリへのプッシュ通知の利用率など、どれもが顧客ニーズを知るための手がかりとして集計されている。しかし多くの場合、管理ツールが異なるため一元的に管理できていない。

データを取得していても、組み合わせて活用できているのか?
データを取得していても、組み合わせて活用できているのか?

その統合のためのソリューションが「CDP(Customer Data Platform:顧客データプラットフォーム)」だ。ただ、コストが壁になって導入は広がっていないとの指摘もある。

そうした声に触れる機会が多いのだが、ターゲットが不明瞭なまま広告をうつより、確実性のある顧客に対して、会社が持ちうるリソースを集中した方が、圧倒的にコストパフォーマンスがよいはずだ(髙木氏)

「データ活用は大企業だけのもの」との声も多いが、髙木氏はこれを否定する。製品の認知率を上げて1人でも多くの顧客にアプローチするという従来型思考に対し、現在は一人ひとりの顧客像を理解し、より長く、より多くのサービスを利用してもらおうという発想が台頭してきた。つまり、顧客をいかに管理するかが重要であり、あらゆる施策の起点となる。データ量の多寡は副次的な要因に過ぎないという。

顧客起点でなければ見えないこともある
顧客起点でなければ見えないこともある

パーソナライズ実現のために②
チャネル単位でコミュニケーションをアレンジする

現代のユーザーは、移動中にはスマートフォンでSNSをよくみる、自宅に帰ったらPCでメールを使う、リアル店舗訪問時は購入検討物品をじっくり触るなど、その時々に応じてチャネルとデバイスを使い分けている。これを前提に、企業は発信するメッセージを出し分けなければならない。

全チャネル・全デバイスに同一のメッセージを届けても効果は薄い
全チャネル・全デバイスに同一のメッセージを届けても効果は薄い

パーソナライズ実現のために③
タイミングとリアルタイム性を意識する

前述の②とも関連するが、メールマガジン配信1つをとっても、ユーザーによって開封のタイミングはまちまち。たとえばメール配信から3時間限定でキャンペーンを実施しても、ユーザーがメールに気付くのが6時間後であれば効果は期待できない。

パーソナライズ施策開始初期は、すべての思惑がはまらない可能性は高い。完璧を求めすぎず、ある程度想定したシナリオで実施し、アクセス履歴やメール開封率などのデータを蓄積する。そうして徐々に施策を進めていき、一人ひとりが望むであろう手法を見出していくことが重要だ。

適切なタイミングでアクションする
適切なタイミングでアクションする

パーソナライズ実現のために④
個々の求めるコンテンツを提供する

顧客一人ひとりの嗜好に沿ったコンテンツを用意するのは、簡単ではないが重要なことである。顧客が求めるコンテンツの傾向を発見するため、顧客の情報を積極的に集めなければならない。カスタムデザインに対応した製品を用意したり、複数ある割引クーポンの中からどれを取得したのか調査したりするのも、データ収集の一類型だという。

顧客一人ひとりを認識したうえで、ニーズを把握する
顧客一人ひとりを認識したうえで、ニーズを把握する

次の図は、企業と顧客1対1のパーソナライズコミュニケーションの実態を解説したものである。Salesforceの製品である「Marketing Cloud Personalization」では、この特定・理解・判断・アクションの一連の工程を30ミリ秒未満で実行でき、分析につなげられるという。

1対1のリアルタイムパーソナライゼイションの例
1対1のリアルタイムパーソナライゼーションの例

Webサイト、メール、アプリでのパーソナライズ事例

「Marketing Cloud Personalization」のパーソナライズの応用範囲は広い。たとえばWebサイトのパーソナライズでは、初回訪問した匿名顧客のページ閲覧履歴やマウスカーソルの動きを記録しておき、後日訪れた際、その履歴をもとにページ内情報を差し替えることができる。またECサイトにおいて、商品閲覧履歴に基づいて別の商品をレコメンドする際、AIを用いて判定する例も増えているという。

Webサイトのパーソナライズ例
Webサイトのパーソナライズ例

顧客の意見を吸い上げる方法としては、簡単なアンケートがある。Webサイトやアプリ上で、一部顧客に対して直球の質問を投げ、その結果をパーソナライズに反映させる。こうすることで、顧客はアンケートを意義あるものとして捉えてくれる。

アンケートで顧客ニーズを調べる
アンケートで顧客ニーズを調べる

メールやアプリも、パーソナライズの有力手段である。アプリで旅行について検索しておき、最終的な決済はPCのWebサイトで行うといったユーザー行動は十分あり得る。ここで情報がアプリ~Webサイト間で連携していれば、顧客はより簡単に予約が行える。また、予約後に関連情報をアプリで再び表示できれば、追加購入の可能性も高まる。

髙木氏は「顧客を中心にビジネスを考えること」の重要性を改めて指摘する。そのうえで「顧客の情報を統合・管理して、リアルタイムで迅速に活用する。これこそがパーソナライズのために“今できること”だ」と呼び掛け、講演のまとめとした。

アプリとWebサイト間の連携でのパーソナライズ例
アプリとWebサイト間の連携でのパーソナライズ例
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