「Webサイトの多言語対応」知っておきたい5つのポイントとは?
海外展開や越境EC、海外拠点との連携や外国人の採用など、企業活動において外国人との接点は増大している。その中で、Webマーケティングも国際化・多言語化が求められるケースが増えているという。ある日突然、上司から「多言語Webマーケティングに取り組んでほしい」とアサインされるかもしない。
そんなとき、何に気をつけ、何から手を付ければいいのか。そんな視点から多言語Webマーケティング活動の要点を解説するセッションが「Web担当者Forumミーティング 2021 秋」で行われた。講師は「世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにする」をミッションに掲げるWovn Technologies(ウォーブン・テクノロジーズ)の森山 真一 氏だ。
Webサイトの多言語化は、多言語Webマーケティングの入り口
外国語のWebサイトを立ち上げ、多言語Webマーケティングを開始する……と考えれば誰でも構えてしまうかもしれない。まずは言語や文化を問わず変わらないWebマーケティングの基本をおさらいしよう。
- デザイン:わかりやすく快適に見てもらえるようデザインする
- コンテンツ:興味を引くようなコンテンツを掲載する
- SEO:ユーザーの検索意図や検索エンジンの仕組みを踏まえて、上位表示されるように対策する
- 広告:見込み顧客がアクションを起こすような、さまざまな媒体でPRする
国内向けの場合は、日本人にわかりやすいデザインで、日本人の興味を引くようなコンテンツを作り、日本人の好む広告を作ることになるが、それを別の言語に翻訳するだけでなく、その国の文化や習慣、事情に合わせ込む作業が多言語Webマーケティングということになる。
その第一歩はWebサイトの翻訳、多言語化となるが、マーケティングの効果を上げるためには、単にサイトを多言語化するだけでなく、その先のマーケティング施策まで実行して初めて意味がある。森山氏は、「Webサイト多言語化は、多言語Webマーケティングの入り口にすぎない」という。
国際展開する企業には、グローバルで統一サイトを持つ企業もあれば、国ごとにWebサイトを分けマーケティングを展開する企業もあるが、いずれの場合も多言語マーケティングは必須となる。しかし、海外向け施策の実行は非常に高負荷で、多くの課題と向き合わなくてはならないのが実情だ。
多言語Webマーケティング特有の課題
多言語Webマーケティング特有の課題とはどのようなものか。森山氏は「国内向けのWebマーケティングより難易度が高くなるもの」として、以下の5点を紹介した。
多言語Webマーケティング特有の課題①
運用体制の構築
多言語Webマーケティングでは、しっかりした運用体制の構築が重要だ。日本語のコンテンツでも、企画を検討し、原稿や写真をチェックし、デザインされたページを確認して公開するというステップが必要だが、多言語化ではここに「翻訳」という作業が入る。
これを現地スタッフに依頼している場合には、時差も考慮する必要があるなど工程が煩雑になり、公開まで時間がかかることも多い。また、日本語のコンテンツの公開・更新が逐次報告されないケースもある。まずは、これらのコミュニケーションについて、しっかりフローを整備する必要がある。
- 多言語コンテンツ公開までのコミュニケーションフローを作る
- 元言語コンテンツの更新を検知する仕組みを作る
- 翻訳開始のタイミングや手順を定義する
多言語Webマーケティング特有の課題②
デザイン・レイアウトのローカライズ
デザインやレイアウトでは、国によって好みが違う部分があるので、それを考慮してページを作成する必要がある。基本的に、日本人は情報が盛りだくさんのデザインを好み、海外ではシンプルでスタイリッシュなデザインが好まれる傾向にある。
以下の図は、AOKIの国内向けサイトと海外向けサイトのトップページの比較だ。日本ではAOKIが服飾メーカーということはすでに認知されているため、キャンペーンやセールなど「現在のお買い得情報」を強調している。一方、海外向けでは「どんな商品があるのか」といった必要な情報だけを表示するすっきりしたデザインになっている。
翻訳したことによって文字数が増減し、デザインが崩れることもある。たとえば日本語の「お食事」を英訳すると「Dining & Restaurants」になって文字数が増え、スペースからはみ出してしまうといったことだ。
意味は通じたとしても、崩れたレイアウトのままではWebサイトの信頼性にも影響してしまう。正しく翻訳するだけでなく、ユーザビリティまで考慮してCSSを修正するなどの工数が必要になる。
- 外国ではシンプルなデザインが好まれる傾向
- 翻訳による文字数の増減とデザインのバランスを考慮する
多言語Webマーケティング特有の課題③
文化・習慣の違いを考慮する
他にも、日本ではポジティブな意味の仕草が、タブーとなってしまう国もある。たとえば、親指を立てるサムアップは、日本や米国文化圏ではポジティブな意味を表す仕草だが、反対に侮辱と捉える文化圏もある。展開する国の文化や習慣にアジャストする方がいい。
また、色のイメージも国によって違う。たとえば白は、日本や欧米では「花嫁」「純粋」「清潔」などポジティブなイメージがあるが、中国やベトナムでは死をイメージする色で、レストランのサイトなどで使われているとぞっとすると感じる人もいるという。
- 文化によって仕草やポーズの意味が異なる場合がある
- 国によって色に対するイメージが違う
多言語Webマーケティング特有の課題④
SEO、広告の実施
日本でSEOやリスティング広告というと、まずはGoogleというのが一般的だが、中国ではBaidu(バイドゥ)が圧倒的なシェアを持っている。このように、国によって検索エンジンの優劣も異なってくるので、現地の状況に合わせることも重要だ。
- 現地の商習慣に合わせる
- 海外の検索エンジンに合わせたSEO
多言語Webマーケティング特有の課題⑤
リソースの確保
MAツールの導入や各種データ収集、マーケット分析、コンテンツ拡充、広告出稿など、そもそも国内向けだけでもWebマーケティングはやることが多い。それと同様の作業が多言語で必要になるので、どうしてもリソース不足になってしまう傾向にある。
さらに、サイト構築自体も、言語ごとに手作業で書き換えていたら膨大な作業になる。運用するには、サーバの設定や国別デザイン、UI調整など、さらに大量のタスクが発生する。
負荷を大幅に軽減する多言語化ソリューションの活用
このように多言語Webマーケティングはかなり負荷が高いが、多言語化ソリューションを活用することで負荷を軽減することも可能だ。
WOVN.ioは、最大43言語・77のロケール(言語と地域の組み合わせ)に対応する多言語化ソリューションだ。API連携も可能なため、Webサイトだけでなく、アプリやメール、クラウド、チャットボット、サイト内検索、データベースなど、HTML化されていない情報の多言語対応も可能で、さまざまな外部機能との連携を容易に実現できる。
WOVN.ioを導入することで、設定によっては言語を切り替えるとテキストはすべて自動翻訳されるが、さらに細かいチューニングにも対応する。たとえば固有名詞や会社独自の頻出用語などで、必ずこの訳語を使いたいというものがあれば、「用語集」という機能であらかじめ設定しておくこともできる。
また、切り替えた翻訳後の画面を見て、「ライブエディター機能」で翻訳修正やフォントサイズを変更することも可能。たとえば、英訳で「two」ではなく「2」にしたい場合、Webサイトを見たまま翻訳結果を修正できる。
ロゴマークに文字が入っている画像などは、文字を翻訳した画像を用意すれば、WOVN.ioの設定で画像を切り替えることができる。CMSに移動せずにWOVN.io上でできるので、作業が楽になる。
その他、以下のようなことが可能になる。
海外SEO対策
hreflang(エイチレフラング)挿入、メタデータの翻訳、言語固有URLの生成、サーバーサイドでの翻訳を実施でき、海外検索エンジンへのインデックス登録が可能で、海外SEO対策の基盤となる。
開発、運用コスト/リソースを大きく削減
一般的に、多言語のサイトを構築するには数か月から数年の期間と、数百万から数千万円の初期開発費用が必要になる。さらに構築後には、運用や翻訳の費用もかかる。課題で挙げたように、リソースも多く必要だ。
WOVN.ioの導入期間は数週間~4か月程度、クライアント側でシステム開発は不要なため初期開発費用は発生せず、運用の自動化、重複翻訳が発生しない翻訳などで、期間やコストを大幅に削減できる。
デザインやレイアウトを言語ごとに調整
言語切り替え時にデザインやレイアウトの調整が可能なため、国(言語)に合わせた調整が行える。
その他、WOVN.ioにはCDNやアカウント管理、プライバシー保護(GDPRにもとづくCookie非取得設定)などの機能がある。
ただし、WOVN.ioを導入しただけで多言語Webマーケティングが実行できたということではない。森山氏は、「Webサイトを多言語化することはWOVN.ioを使えばできるが、まずは専任体制を構築することが重要」という。必要となるポジションは以下の通りだ。
さらに、運用フローやルールの策定、翻訳品質に関するルールの策定も必要だ。以下の図は、実際に策定された代表的なルールの概要である。
最後に森山氏は、「多言語Webサイトはあくまで基盤で、多言語コンテンツ拡充、デザインのローカライズ、海外SEO対策、海外媒体向け広告運用など、実際のマーケティング施策を行って、初めて成果に結びつく」とまとめた。
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