Twitterの企業公式アカウントから、一般ユーザーのツイートに返信する活動をアクティブサポートと呼びます。今回は、このアクティブサポートの必要性や事例などについて紹介します。
目次
1. アクティブサポートとは?
2. 今アクティブサポートが必要な理由
3. パターン別、アクティブサポート事例
4. アクティブサポートの担当者
5. アクティブサポートの効果測定
6. アクティブサポートの注意点
7. アクティブサポートのやりがい
8. 消費者を正しく理解し、愛されるために
アクティブサポートとは?
アクティブサポートとは、Twitter上でつぶやかれている自社や製品に関するツイートを抽出し、サポートを必要とするツイートに対して、企業の方から@返信する取り組みを指します。情報発信用のアカウントとは別にアクティブサポート専用のアカウントを用意して運用する例が多いです。
日本国内でアクティブサポートの概念がひろがったのが、2010年ごろのことです。SoftBankサポートがユーザーのツイートを見て、返信を行う取り組みを開始し、企業のほうからユーザーに声をかけるアクティブサポートが注目を集めるようになりました。
最近では、河野大臣が新型コロナウイルスのワクチン注射を行う医師の悩みに対応方法をリプライするようなことがありました。これもアクティブサポートの一つとして、メディアで取り上げられていました。
なお、困っているわけではなく、「購入した」「来店した」「買ってよかった」など好意的、有効的なツイートに対して返信する活動もアクティブサポートの一環です。
今アクティブサポートが必要な理由
Twitterは、ユーザーの日々の何気ないつぶやきが発信されています。その中には、ふと感じた不便や苦情、改善案などがあります。サポートセンターに問い合わせるまでもない、しかし今後のサービス利用意向に大きく影響するようなものも多くあります。
アクティブサポートでオンラインショッピング利用のサポートを
例えば、コロナ禍においてはECを利用する人が増加しました。Googleの調査レポートによれば2020年の国内小売EC市場の規模は前年から20%以上増加の11.9兆円まで上昇(推定)しました。
特に既存ユーザーの購入頻度、購入金額が増えた傾向にありました。また、ECの利用者は今後もECの利用意向が高いこともわかっています。
加えて、この調査では、月の利用金額が月6,000円未満から6,000 円以上〜2 万円未満にアップした層は、ECサイトのデメリットとして「個人情報流出」「配送のクオリティ」「フェイク品」や「新しい商品との偶然的出会いの消失」などをあげている人が多くなっています。
コロナ禍でECサイトを使いながらも不安を感じていることがうかがえ、こうした人の不安や不満に気づきサポートできれば、今後の利用意向にも大きく影響すると考えられます。
参考:2020 年 EC 市場分析から見えた利用拡大のヒント:カギは「3 つの生活者トレンド」「ミドル昇格層の不安解消」
パターン別、アクティブサポート事例
では実際にアクティブサポートは、どういう風に行うのか、事例をもとに紹介していきます。なお、アクティブサポートには、事例にあげたパターン以外にも様々なものがあります。
商品の使い方が分からない人へのサポート
ahamo公式アカウントでは、ahamoの利用がわからない人や申し込みで困っている人に返信してサポートしています。ahamoの契約をしたいとツイートしている人には、申し込み手続きについて案内しています。
商品・店舗への好意的なツイートへのお礼
ネスカフェ公式アカウントでは、ネスカフェの商品を購入したことや、店舗に来店したことをツイートしているユーザーに返信しています。
商品の不具合があった人へのサポート
BenQライティングの公式アカウントでは、商品を購入したが点灯しなかったことをツイートしている人に対して、対応方法について返信しています。
多言語でのサポート
Amazonでは、Amazonに関連するサービスの不具合、苦情、配送トラブルなどについてツイートしている人に対してアクティブサポートを多言語で行っています。ツイートしてからリプライまでが数分で行われており、徹底して対応していることがわかります。
アクティブサポートの担当者
アクティブサポートを行う場合は、誰がサポートを行うのか、どんなツイートに返信するのか、そしてどう対応するのか、といった方針を定めておくとよいでしょう。
アクティブサポートに向いている人
担当者として適任なのは、店舗での接客やカスタマーサポートでの顧客対応の経験があり、自社や製品の知識がある人です。
アクティブサポートには、どのような情報を提供すれば、困っているユーザーの問題解決ができるか判断できる能力が必要です。
通常、Twitterの運用はマーケティングや広報部門が担当することが多いですが、アクティブサポートに限っては、カスタマーサポート部門で担当するという例も多くあります。
事前に決めておいたほうがいいこと
返信するツイートの種類もあらかじめ決めておきましょう。自社名や製品名が出たら必ず返信していては、件数が多すぎて対応できない場合もあります。
使い方がわからない、不具合、故障、返品、配送トラブルなど、返信対象とするカテゴリを決めて対応しましょう。
返信を避けたほうがいいものは、ユーザー同士でおすすめしあったり、評価しあったりしているツイートです。ユーザー同士で会話している場に、割って入るのはなるべく避けたほうがいいでしょう。
サポート体制について
サポート方法もあらかじめルール化しておくと、対応の効率化ができて、担当者による対応のゆれを防ぐことができます。
商品の返品や返金、割引などは、担当者の自己判断にまかせず、あらかじめ定めたルールにしたがってください。一人のユーザーに対応したら、他のすべてのユーザーにも同様に対応しないといけません。
対応方法は、カスタマーサポートの部門ともこまめに連携して情報をアップデートしておきましょう。なお、不具合や苦情等のサポートの場合、担当者の名前を最後に記しているケースが多くあります。
また、必ずしもTwitterのサポートですべて解決する必要がないということも決めておきましょう。個別対応したほうがよければ、カスタマーサポートを紹介するなど、適切な窓口を連絡するのもアクティブサポートの重要な役割です。
アクティブサポートの効果測定
アクティブサポートを行う場合は、Twitter担当を複数人にする、休日、夜間にも対応するなど、通常のTwitter運用よりも、人件費をかけて行うことも多くあります。
では、アクティブサポートの費用対効果、事業貢献度はどのように評価すべきでしょうか。
フォロワー数やエンゲージメントは正しい指標?
アクティブサポートは、通常のTwitter運用とは異なるので、フォロワー数、エンゲージメントなどは、正しい指標ではないことが多いでしょう。
通常の発信をしていない場合は特にこれらの指標では評価できません。
効果測定としては、アクティブサポートが必要なツイートの件数、アクティブサポートとして声をかけた件数、問題を解決した件数、またこれらの数字からサポート率、問題解決率を計算して指標にするとよいでしょう。
問題解決できたかどうかは、ユーザーの反応から判断することになりますが、あらかじめ解決したと判断する基準を定めておきましょう。
顧客満足度を測ることは可能?
顧客満足度調査を実施している場合、Twitterのカスタマーサポートの体験について聞いてみてもよいですが、件数が限られているため、あまり目立った数値にはならない可能性が高く、無理に盛り込む必要はありません。
長期運用には社内の理解が必須
アクティブサポートを実施する場合は、あらかじめ経営陣や社内に活動の意義や目的を説明して理解をえておくことも重要です。すぐに、売上や企業好感度、顧客満足度などに影響が現れるわけではないので、カスタマーサポートの窓口の一つとして実施していることを理解してもらいましょう。
アクティブサポートの注意点
アクティブサポートはあくまで問題解決のサポートが目的ですから、それ以上のコミュニケーションは避けましょう。
特にユーザーから求められていない限り、商品のおすすめなどは行わないでください。押し付けがましいセールスと思われ、不快感を与えます。
あくまで、ユーザーが自由に話している空間にお邪魔しているという感覚を忘れないでください。
声をかけるときは「会社名です。ご不便をおかけしています」などと一言挨拶をしてから本題に入るとよいでしょう。
サポートとしての声掛けであっても、「ツイートを見られていて、監視されているようだ」「フォロー外から話しかけられた」など不快感を示す方もいます。その場合は、謝罪の念を伝えてサポート窓口を案内するなどにとどめましょう。
アカウント/企業に批判的なツイートにどう対応する?
アクティブサポートのアカウントに向けて、ユーザーから批判的な投稿や誹謗中傷(根拠のない悪評や過剰なクレーム)が@ツイートで送られてきた場合は、あらかじめ用意した定型文で伝え、議論に発展させないようにしましょう。こうした対応はカスタマーサポート部門での対処方法にならうとよいでしょう。
そもそもTwitterで言及されているのか?
なお、そもそも商品やブランド、会社に対するツイートがほとんどない場合は、無理にアクティブサポートを実施する必要はありません。まずは、発信用アカウントを使って情報を発信し、Twitterで言及しやすい雰囲気を作ってみましょう。
アクティブサポートのやりがい
アクティブサポートを続けていると、ユーザーのコミュニティで話題になることもあります。BenQでは、商品を購入したときにパッケージの箱やモニターをセットした写真をアップするユーザーが多く、そうしたツイートを公式アカウントがリツイートしたり、お礼を伝えたりする取り組みをしていました。その件について、取材で以下のように語っています。
先日、長野在住のアンバサダーを取材したときに聞いたのですが、BenQファンの間では、「製品写真をアップすると、公式アカウントが話しかけてくる」という話が広まっているそうです。
最初はメーカーが話しかけてくることが珍しくて、びっくりされたり、喜んだりしていましたが、今はそれを狙って、「並べてみた」「買った」など積極的にユーザーが発信してくれるようになりました。運用メンバーもユーザーとのやり取りが楽しいと言っています。
このように、ポジティブな評判が増えるようなアクティブサポートは担当者のモチベーションアップ、やりがいにもつながります。
消費者を正しく理解し、愛されるために
アクティブサポートは、ツイートからユーザーの困りごとを察して、企業から声掛けをする取り組みです。
アクティブサポートの中で、ユーザーがどういうことに困り、不便を感じているのか理解することができ、その後の改善につなげられます。親身になったサポートで、問題が解決すればユーザーはその企業姿勢を評価し、より好きになってくれるでしょう。
アクティブサポートは、始めたら半年、1年など一定期間はかならず続けるべき取り組みです。
ユーザーのツイートを抽出し、複数メンバーで対応していくためには、Twitterの標準機能だけでは不都合な場合があります。その場合は、Twitterの運用管理ツールを利用してみましょう。
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