CMS選定・完全マニュアル
“人と会えない” コロナ時代に企業Webサイトに求められるもの ~CMS選定・完全マニュアル

コロナ禍の「Webサイトの役割」を考える。CMS選定のポイントも解説

コロナ禍で求められるWebサイトとリモートワークでも効率的に運用するためのCMS選定のポイントをキノトロープ生田氏に聞いた。
キノトロープ社長の生田昌弘氏

コロナ禍で、改めてWebの重要性が浮き彫りになった。外出や出社ができない中で、顧客と企業との接点がインターネットに集約されたからだ。新型コロナウイルスの影響でテレワークが当たり前になる中で、Webに求められることやWebサイト運用時に必要不可欠なCMS(コンテンツ管理システム)選定のポイントをキノトロープ社長の生田昌弘氏に聞いた。聞き手はWeb担当者Forumの四谷志穂。

コロナ禍でもWebサイトの役割は変わらない

企業の意識は、コロナ禍の影響で大きく変わり、同時にユーザーの意識も変化した。出社や外出が難しくなったことで、初めてインターネットサービスに手を出した人も多いはずだ。

これまでもネット人口は増え続けていたが、コロナ禍によってインターネットをより“深く”使うようになった(生田氏)

たとえば、「インターネットを使う」と言っても、SNSやオンラインゲームをするだけでは、まだインターネットの「本来の価値」を体験できているとは言えない。それらはインターネットの一部に過ぎないのだ。

コロナをきっかけに、インターネットの本当の便利さをユーザーが知ることになった。一度、インターネットサービスの便利さを知った利用者は、もう元には戻らない。コロナが終息した後も、使い始めたサービスを継続利用し、自ら検索してWebサイトやサービスを見つけて使ったりするだろう。

Webサイトとはお客様の問題を解決するためのツール

企業やユーザーの意識は変化しているが、「Webサイトの役割はそもそも何も変わっていない」と生田氏は言う。Webサイトとは、お客様の問題を解決するためのツール。ユーザーが自ら検索したり、アプリを探したりするようになれば、Webが顧客との最初の接点になる。

外出自粛中にはWebしか顧客との接点が持てなかったことで、企業もWebで良質なファーストコンタクトを作る重要さを実感したはずだ。

もう「Webはテキトーでいい」などと考える人はいないはず(生田氏)

だからこそ、より一層Web担当者には、ユーザーニーズを見抜く工夫や資質が求められる。インターネットを使うユーザーはわがままで、自分の欲望を素早く満たしたいわけだ。これまで以上に、ユーザーを中心にしてWebを制作していくことが求められている。

「ユーザーにとって必要なコンテンツは何か?」「スマートフォンで最適な状態であるか?」再度、ユーザーニーズ最適化を見つめ直してほしい(生田氏)

リモートワークでも運用できるWeb構築は欠かせない

ユーザーニーズ最適化を実現するためには、継続的なWebの運用が欠かせない。テレワークの推進と同時に運用することを考えれば、インターネットの特徴を活かしてどこからでも運用できる体制作りが求められる。

「日本は過剰にセキュリティを気にしすぎる」と生田氏。「改ざんされないように」「データが漏えいしないように」と過剰に対策をしすぎれば、運用に支障が出る。社内からのアクセスしか想定していなかった企業では、テレワークに対応するため慌ててVPNを用意したケースも多かったようだ。

機密情報を扱うサーバーは別にするなど、対策をしておけば「運用が難しくなるほどの過剰な対策は必要ないかもしれない」(生田氏)。そもそもセキュリティとは「完全性」「可用性」「堅牢性」がそろって評価されるものだ。攻撃されないようにと堅牢性ばかりを高めても、運用が難しくなる。このような可用性の低下を招いては、セキュリティ対応とは呼べないだろう。

こうした、運用継続を加味したWebの設計や運用体制の差が、コロナ禍でははっきりと現れた。

インフラも含めて整備が必要だと、痛いほどわかった会社も多いのではないだろうか。クラウドが普及したことで、セキュリティと使いやすさのバランスがとれた環境構築もローコストでできるようになった(生田氏)

CMS選定のポイント

改めて、効率よく運用していくために必要なCMSやIT基盤の整備について考えてみよう。

point ① CMS導入はお客様のサービス向上ありきで考える

まず、CMSを選定する前に、「Webで何を実現したいのか?」「お客様にどんな価値を提供したいのか?」「お客様の利便性がどのように向上するのか?」など、Webサイトの目的を明確にすることから始める。運用側の利便性の向上ももちろん大切ではあるが、基本は「お客様のニーズ」からスタートし、運用側は付加要素にとどめる。

point ② Webサイトの目的を実現するために必要な機能整理をする

Webサイトの目的が決まったら、そのために必要なCMSの機能を整理する。しかし、どのCMSもおおよその機能は持っていて、機能の○×表での比較検討はできない。機能が多いことが正義ではなく、「必要な機能がどのレベルで使えるか」を比較しないと意味がない。言い換えれば「どんな運用をするつもりか」が重要である。

CMS選定で、機能の○×表で比較検討してはいけない

point ③ スケーラビリティ(規模感)でおおよそのツールの予測と概算予算を立てておく

  • お客様は同時にどの程度アクセスするのか?
  • 管理側は一度にどの程度アクセスするのか?
  • サイトのページ数はどのくらいか?
  • ドメインの数は?
  • どれだけ複雑なワークフローが必要か?

上記のスケーラビリティ(規模感)で、おおよそのツールの予測と概算予算を立てておくのが良いだろう。

たとえば、あるホテルでは、複数ある店舗の従業員が隙間時間に運用に携わる体制を想定していた。しかし、ホテルの営業時間は、どの店舗でもさほど変わらない。結果、同じ時間帯に何百もの同時アクセスに耐えられるCMSが必要だった。このような場合、ブログ向きのCMSでは、対応が難しい。

その他、ネックになりやすいのは承認フローだ。承認フロー設定ができるCMSは多いが、「日本の承認フローは複雑な場合が多い」と生田氏。複数ステップの承認が必要だったり、複数人が確認して初めて次の承認フローに回るようにしたりと、会社によってそのあり方はさまざまである。

そもそもその承認フローが本当に必要なのかを見直す必要があるし、標準機能で簡単に実装できるのか、カスタマイズの構築が必要なのか、見極める必要がある。

標準機能で簡単に実装できるのか、カスタマイズの構築が必要なのか、見極める必要がある

point ④ 最適なツールをWeb制作会社に提案してもらう

1~3の要素をもとに、Web制作会社に最適なツールの選定を依頼しよう。企業がCMS選定をする場合は「機能」で選ぶのに対して、制作会社はCMSの種類で選ぶ。繰り返しになるが、間違っても機能の〇×表で選んではいけない。それが、構築時のトラブルを避けるためのポイントだ。

point ⑤ Web制作会社の実績を確認する

Webの専門家とはいえ、初めて使うCMSで構築を行えばトラブルに陥りがちだ。「炎上したプロジェクトの支援に駆けつけると、たいていの場合、制作会社が初めて使うCMSのことが多い」と生田氏。

何万人ものユーザーが使うようなソフトと違って、企業向けのCMSはユーザーである企業数がそれほど多くない。CMSは熟知したツールでなければ、見落としがちな落とし穴がたくさんある。

もし依頼したい制作会社が決まっているのなら、CMSの実績だけでなく、実際にそのツールを使って構築した実績があるかを確認したほうがいい(生田氏)

さらに、Web構築がスタートしたら、制作会社と社内でのコミュニケーションツールが必要になってくる。どんなツールでコミュニケーションを行っていくのか、複数のツールを使うときは役割なども明確にしておくといいだろう。

また、インフラは、「できればクラウドを使う」(生田氏)のが基本の考え方だ。コンテンツの更新だけでなく、サーバーの運用もずっと楽になる。機密データを扱うような場合でも、前述のようにサーバーを分けるなどの工夫で運用のしやすさも確保したい。

インターネットの使い方は短絡的

繰り返しになるが、Webは運用できなければ意味がない。「今」のお客様のニーズに合わせて最適化していくことがWebの役割だと生田氏は強調する。

「今のニーズ」を見抜くには、ユーザーの行動を知る手がかりが必要だ。米アップルがWWDC(世界開発者会議)で、iPhoneの端末識別子であるIDFA(Identifier For Advertising)に制限を加えると発表するなど、ユーザーの行動履歴は入手しにくくなっている。しかし、生田氏は「工夫次第でユーザーのニーズは読み取れる」と言う。 たとえば、検索キーワードごとにランディングページを用意する方法だ。

このページはこのキーワードでしか上位表示されない、というページを複数用意しておけば、どのキーワードから流入しているかがおおよそ読み取れるはずだ(生田氏)

また、「インターネットの使い方は短絡的だ」と生田氏は表現する。たとえば、ECサイトの買い物であれば、気になった商品を買うために何か月も貯金をしたり、商品を見比べたりして買うよりも、衝動的に購入する方がインターネットらしい使い方だ。

調査会社の報告やマーケティング担当者の分析も参考にはなるが、それは半年や1年前の傾向だ。ユーザーのリアルタイムな行動に対応するには、担当者が自ら考えてニーズを見抜く工夫やセンスが求められる。

喝! 生田氏から読者へエール

インタビューの最後に生田氏は次のように述べ、読者にエールを送った。

コロナは、御社のWebサイトのダメなところを明確にしてくれたはず。

  • 更新ができない!
  • 会社に行かないと何もわからない!
  • チーム間のコミュニケーションが取れない!
  • サーバーの負荷がかかりすぎている!
  • お客様がうまく使えてないようだ!(使い方の問い合わせが増えた)

「お客様の問題解決を目指したWebサイト」と「それを継続的に実現できる運用体制」が整っていないことが明確になったことを感謝すべき。

お客様のニーズに最適化せよ! コロナによって、すべてのWebサイトがお客様へのニーズ最適化を進めてくれることを祈ります!

イラスト:北上諭志
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