アナログ施策を全部やめたら大失敗! デジタルとアナログを融合したBtoBマーケティングのポイント
今、マーケティングにおいてデジタルとアナログの組み合わせが注目されている。顧客が何かを買うことを考えると、すべてがデジタルだけで、またはアナログだけで完結することはまずない。
「デジタルマーケターズサミット 2019 Summer」のセッションでは、シャノンの村尾氏が、「アナログ施策をやめて完全にデジタルに移行したことで大失敗したことがある」と自社の経験を開示し、BtoBマーケティングにおけるデジタルとアナログの組み合わせをスモールスタートで始める方法を紹介した。
アナログを切り捨てたシャノンの失敗経験
シャノンは、マーケティング支援ツール「シャノンマーケティングプラットフォーム」を提供するツールベンダーだ。
村尾氏は、同社のマーケティング部の部長に就任した当初、それまで実施していた展示会やセミナーといったアナログ施策をすべて切り捨てた経験がある。それによって捻出した予算を、「リスティング広告」「SEO」「A/Bテスト」といったデジタル施策の強化に使ったのである。
その結果、資料請求は前年比248%まで伸長、翌年もデジタルシフト前から324%と大きく伸びた。村尾氏は、「思惑が当たり、大成功だ」と思ったという。しかし、会社の売り上げは思ったより伸びていなかったのだ。
リスティング広告は、比較・検討フェーズの刈り取りが得意だが、MAツールは思いついてすぐに買うようなものではない。高額で複雑な製品を取り扱うBtoBマーケでは、刈り取り施策だけに注力していても成果は限定的だ(村尾氏)
デジタルとアナログの組み合わせが注目されている
デジタル施策だけでは、不十分だと気付いた村尾氏は、改めてアナログ施策に再注力した。具体的には、次のような施策だ。
- マーケ部門にインサイドセールスを立ち上げ
- 定期セミナー
- ダイレクトメール
- 外部リアルイベントへの積極展開
これによって、業績は回復してきているという。
この話は、「今、デジタルとアナログの組み合わせが注目されている」ことを裏付けている。さらに村尾氏は、デジタルとアナログの組み合わせが重要な理由として、「顧客はデジタルとアナログをまたがって行動しているから」と述べ、以下の図を示した。
アナログ施策は情報を覚えてもらう効果がある
村尾氏は、同じ内容でも“メールだけでは伝わらない”ことを裏付ける話をいくつか紹介した。
例えば、米コーネル大学において「まったく見知らぬ人に同じセリフでコミュニケーションをとり、1週間後にどれだけ正確に覚えているか」という実験をしたところ、メールより対面で話をする方が34倍効果的という結果が出たという。
一方で、日本ダイレクトメール協会の「DMメディア実態調査2018」によると、受け取ったダイレクトメール(DM)の開封率は79.4%、行動喚起につながるのは24%と、かなり高い割合になるという。DMがデスクに置かれていたら、捨てるにしても一度手に取るので、開封・既読が高くなりやすいのだと考えられる。
さらに、メールとDMを組み合わせると効果的だという調査結果も出ている。とあるECサイトでは、メールを2回送った時のサイトへのアクセス数は10%、注文数は3%に過ぎなかったが、メールの後に紙のDMを送った場合のアクセス数は23%、注文数は12%と増加した。また、紙のDMを送った後にメールを送る方式でも、アクセス数は23%、注文数は14%となった。
もちろん、アナログ施策はDMに限らない。最近はプライベートのイベントを開催する企業も多いが、米国の調査では74%の人が「イベント体験は購買に対して好影響を与える」と答えている。
「デジタルとアナログの組み合わせ」初めの一歩
村尾氏は、デジタルとアナログの組み合わせにチャレンジするにあたり、スモールスタートで行いやすい方法を紹介した。
① インサイドセールスとダイレクトメールを組み合わせる
BtoBのマーケティングにおいて“インサイドセールス”も注目されている。しかし、いきなり電話をかけても成果は非常に限定的だ。村尾氏のお勧めは、まずDMを送って「こういう理由で電話します」と伝え、Webサイトに来訪したというシグナルをキャッチしたら電話するという方法だ。もちろん、きちんとターゲットとメッセージを決めることも重要になる。
ちなみに、DM送付後に電話に出た人の印象をシャノンのインサイドセールス担当にヒアリングしたところ、ポジティブが50%、ニュートラルが46%で、少なくとも“ガチャ切り”をされることはほとんどなかったという。
② 社内に蓄積された名刺を取り込む
そもそもリードが少ない場合には、名刺をマーケティングのシステムに取り込めばいい。営業は年間200枚ほど名刺を交換すると言われており、そのうち「今すぐ購入する顧客」は約12.5%に過ぎず、約70%は「長期フォローが必要な顧客」だという。長期フォローはマーケティングの得意分野なので、マーケティングのハウスリストとして取り込むのがお勧めだ。
③ 対面接点の有無でフォローを分ける
MAと聞くとリードナーチャリングを連想するが、「MAでできることは2つある」と村尾氏は言う。それが下記の2つだ。
- 再燃キャッチ
- ステップアップフォロー
1. 再燃キャッチ(対面接点がある場合)
通常、MAにはトラッキング機能があり、誰がいつどのページを見たか蓄積されている。それによると、自然検索による自発的なWebアクセスは7~12%程度あるという。これは、その顧客が比較・検討フェーズに入った合図なので、それをキャッチしたら即座にフォローして商談を生み出すのが再燃キャッチだ。
例えば、展示会で名刺交換した相手が、その後自然検索でWebサイトを訪問したなら、相手がわかっているのだから即座にフォローする。なぜなら、おそらくその人がサイトに来たのは、「上司が変わってもう一度情報収集し直さなければいけなくなった」「競合が他の製品を入れてプレスリリースを出したため再検討の指示が出た」など、何かがあったに違いないからだ。本腰を入れて選定を始めたタイミングをキャッチして電話することで、商談につなげられる。
逆に、展示会で書いてもらったアンケート用紙に「情報収集中」とあったなら、その時点でしつこくアプローチするのは嫌われるだけだ。
2. ステップアップフォロー(対面接点がない場合)
対面接点がない場合は、順番にリードナーチャリングすることになる。
態度変容には、それなりの接触時間が必要になるが、接触時間の確保はアナログである対面接点が得意とするところだ。かといって、毎日アナログで訪問されても顧客は困るだろう。逆に、メールは頻繁に送ることができる一方で、じっくり読んでもらうことは難しい。このように、それぞれの接点には得手不得手があるので、それぞれの特徴を理解して活用することが重要になる。
対面接点においてオススメなのは「セミナー」「Webミーティング」「ウェビナー」
時間をとってもらえる対面接点は重要なので、マーケティングのハウスリストに対面接点のない人がいたら、下記のような手法で誘導することがオススメだ。
セミナー
購買ファネルの後期の顧客に向けた製品セミナーは、リアルのセミナーを少人数で開催して来社してもらうのが効果的で、その後の受注率に大きく影響する。
Webミーティング
来社してもらうのが難しい場合は、Webミーティングや個別のデモで興味を引き上げる。
ウェビナー(Webセミナー)
製品の説明ではない啓蒙系セミナーは、ウェビナーを活用して実施すると良い。シャノンでは、「YouTubeライブ」などのサービスを使っている。
シャノンのマーケティングプラットフォームは、DM発送機能や名刺管理機能、セミナーなどのオフラインイベントをサポートする機能などを備えており、デジタルとアナログを組み合わせたシナリオを構築可能なのが特徴だ。村尾氏は、「あと少し顧客の“引き上げ”が足りない場合には、ぜひリアルな接点を取り入れたデジタルとアナログの組み合わせを検討してほしい」とアピールしてセッションを締めくくった。
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