自分の気持ちを文章化するツール4種で楽に文章作成(第3回)
連載筆者の中野氏に学ぶWebライティング講座が2020年10月14日(水)に開催されます。
文章作成の作業を1枚のチャート上で、分解しながら行うことで、共感が結果につながる文章を楽に作るツール(方法)を紹介します。このツールを使えば、文章作成にかかる作業を効率化できます。
アイ・エンパシー(iEmpathy)
文章作成を楽にするiEmpathy(アイ・エンパシー)を紹介します。これは、私が10年間文章を書いてきた実践と経験で開発したツール「エンパシーチャート®」をWeb上で使えるようにしたソフトウェアです。もちろん、アイ・エンパシーを使わなくても、紙とペン、そして付せんさえあれば、同様のメソッドは手描きでも実践できます。
アイ・エンパシーでは、「埋める」→「貼る」→「つなぐ」という3ステップで文章作成をしていきますが、1回目で紹介した「次々に読まれる文章を書く3ステップ」に当てはめると次のようになります。
- 「埋める」→ ステップ1「内容(メッセージ)」をとにかく出す
- 「貼る」→ ステップ2「文章構成」だけを考える
- 「つなぐ」→ ステップ3「文章表現」を整えて完成させる
つまり、「次々に読まれる文章を書く3ステップ」をまったく意識しなくても実践できるように1枚のシートに埋め込まれているのです。また、読み手の未来に寄り添い、そこから逆算して内容(メッセージ)を浮かび上がらせる設計になっており、ポジティブ面でだけではなく、ネガティブな部分にも思いを寄せることで、共感され応援され、敵を作らない文章が書けます。
では、早速説明していきましょう。
ステップ1【埋める】:「内容(メッセージ)」をとにかく出す
エンパシーチャートの最初のステップ【埋める】では、「ゴール設定」「タイトル」に加えて、読者から共感され、敵を作らないための文章作成に必要な「ポジティブステップ」「ネガティブステップ」といった10個の空欄があります。これらを、埋めることで「内容(メッセージ)出し」が簡単にできます。
ステップを細かく分解しているので最初は、大変に感じるかもしれませんが、慣れれば10分もかからずに書けます。
具体例として、4回目のテーマ「次が読みたくなるタイトル・書き出し方法」をもとにエンパシーチャートを説明していきます(完成した文章は次回の連載中で確認してください)。
ポジティブ側のステップ
ポジティブステップがなぜ必要なのか? それは、読み捨てられる文章ではなく、あなたの文章が意味を持つためには、読み手の感情や行動を変化させ、今よりも少しでも良くなり、ポジティブ(ハッピー)にさせることが大切だからです。
あなたの文章を読んだ人が、ハッピーになるにはどんなメッセージがあればいいかを考え、文章化する必要があります。つまり、満たされたポジティブな未来から逆算(バックキャスティング)してメッセージを抽出していきます。
あなたの文章を読む人を想像すると、ポジティブで共感されやすいメッセージを抽出しやすいです。そのため、このフェーズではターゲットを想像しながら書き進めます。
①ゴール設定をする
まず、ゴールを決めます。「相手に伝わって、その人の感情や行動がどのように変化したらいいか?」という文章を書く目的・役割・狙いは何ですか?
②ポジティブなセリフを考える
次に、ターゲットを決めてから、ポジティブなセリフを考えます。あなたの文章を読む(商品を買う)理想的で具体的な1人(対象)は誰ですか?
※決め方については、1回目で説明していますので、ご覧ください。
実在するその人がハッピーになっているところをイメージしながら、「ポジティブなセリフ」を具体的に考えます。あなたの文章を読んでワクワクしている、その人は何と言っていますか? その人が言いそうな、リアルなセリフで書きます。
紙とペンで行う場合は、図と同じようにスマイルマークに吹き出しを書いてから、セリフを書き加えましょう。
③ポジティブな感情を想像する
②でポジティブなセリフを言っているその人はどんな「ポジティブな感情(気持ち・心理・状態)」ですか?
④あなたが相手に求める行動を考える
その人がポジティブな状態「②ポジティブなセリフ」を言っている、もしくは「③ポジティブな感情」になった結果、あなたが相手に取ってほしい行動(あなたが相手に求める行動)は何ですか?
⑤ポジティブへの言葉がけ
「ポジティブな状態」になったのは、あなたがどんな言葉がけやメッセージを送ったからですか? 思いつくメッセージを短くキーワード化して付せんに書きましょう。紙とペンで行う場合もこの内容は、付せんに書いてください。
ネガティブ側のステップ
なぜ、ネガティブ側にも想いを寄せることが大切なのでしょうか? たとえば、同じ情報を受け取っても、ポジティブに喜ぶ人もいれば、ネガティブに悲しむ人もいます。誰もが情報を発信できる現在では、ネガティブに感じた人が、いつでもその感情を発信できます。
つまり、企業のキャンペーンや有名人のブログが炎上するような、負のスパイラルが誰にでも起こりうるのです。そのため相手のネガティブ面にも共感し、受け入れ、癒し、そして、ポジティブなイメージで共感を得て、相手の心を動かすことが極めて大切なのです。
参照:『6分間文章術――想いを伝える教科書』自著(ダイヤモンド社)
⑥ネガティブな感情を想像する
「③ポジティブな感情」と逆の感情は何ですか? 「③ポジティブな感情」を機械的に反転させると埋めやすいです。
⑦ネガティブなセリフを考える
「⑥ネガティブな感情」の“架空の人”があなたの文章を読んだら、何と言いそうですか? その人が言いそうで、あなたが言われたくない「具体的なセリフ」で書きます。
紙とペンで行う場合は、図と同じように悲しい顔マークに吹き出しを書いてから、セリフを書き加えましょう。
⑧ネガティブの背景・本音・理由を考える
ネガティブな状態にある“架空の人”が、「⑦ネガティブなセリフ」を言っているのはなぜか? その背景にある本音や理由、現実認識を考えていきます。
⑨ネガティブへの言葉がけ
「ネガティブな状態」にある人に安心してもらう(受け入れる、ねぎらう・癒す、リードする)ために、どんな言葉がけやメッセージを送りますか? 思いつくメッセージを短くキーワード化して付せんに書きましょう。
⑩テーマ・タイトルをひと言で考える
このエンパシーチャートのテーマをひと言でいうと何ですか? テーマを考えるときは、チャートが1つの映画だとしたら、どんなタイトルをつけますか? もしくは、本のタイトルだとしたら? と考えます。
ステップ2【貼る】:「文章構成」だけを考える
ステップ1で、6マスの中央にある2つのボックスには共感を生む“あなたらしい”メッセージ(付せん)が浮かび上がっています。ステップ2では、これらの付せんを並び替えて、どういう順番で伝えるかという「文章構成(文章の骨格)」を考えていきます。
私はこの作業が一番好きです。同じメッセージなのに、ちょっと順番(文章構成)を変えるだけで、文章の魅力をグッと引き立たせることができることができるからです。
⑪曲線を描く
「⑤ポジティブへの言葉がけ」と「⑨ネガティブへの言葉がけ」で付せんに書いた内容をいったん6マスから外したのち、下図のように、6マスの左下の角から右上の角に向かって、フリーハンドで波打つような曲線を描きます。この曲線が文章構成のたたき台を作るためのヒントになります。
アイ・エンパシーのツール内では、付せんを貼ったり外したりする機能や曲線を自動で描く機能があります。
⑫ストーリーを描く
曲線の変化に合わせて先ほど外した付せんを並べます。付せんなので、何度でも自由に並べ替えができます。つまり、1枚のチャートの上で、文章構成を気軽に検証できます。
6マスの横軸は読み進めていく“時間の変化”を表し、縦軸は“感情の変化(ワクワク⇔冷静)”を表しています。
曲線の山と谷にハッキリした変化があるほどおもしろく、よりあなたらしい文章が生まれます。しっくりくるストーリー(文章構成)になるように付せんを並び替えてみてください。そのとき「あなたが伝えたい順」ではなく、「相手が知りたい順」を意識することが重要です。
ステップ3【つなぐ】:「文章表現」を整えて完成させる
付せんの順番が決まり、文章構成のたたき台ができたあと、付せんに書ける範囲で圧縮していたキーワードを解凍するように文章化しながらそれらをつなげ、馴染ませ、文章を仕上げていきます。
実際に文章化する前に声に出して読んでみると文章を整理しやすくなります。文章化しにくければ、付せんの順番を変えたり、不要な付せんを外したり、新しい付せんを加え文章を整えていきます。
共感を結果につなげる文章作成ツールがアイ・エンパシー
共感を結果につなげる文章作成ツール「エンパシーチャート®」は、読者に共感しながらあなたの中からメッセージを浮かび上がらせる仕組みが設計されていますので、「自分が書いたとは思えないような文章」が書けるようになるのも大きな特徴です。
私が10年書き続けてきた独自メソッドを1枚のチャートにして、ツールとして開発したのがこのアイ・エンパシーです。もちろん、この文章作成法は、ツールを使わなくても試せます。実際にツールを使い始める前に、紙とペン、付せんで文章が楽に作れることを実感してください。ツールとして使う場合は有料です。ツールの機能に一部制限があるべーシックプランは680円/月、全ての機能が使えるは、980円/月です。
その他のツール
マインドマップ
マインドマップを使って、文章を作成していく方法もあります。中心(セントラルアイデア)から思いつくことを放射状に拡げていくことで、次々にアイデアが生まれていきます。ひとりブレインストーミングをするように、マインドマップのブランチ(枝)を思いつくまま伸ばしていきます。
この記事のマインドマップを描いてみましたのでご参考ください。iMindMapというツールを使っていますが手描きでも描けます。
描き終わったあとに、俯かんしながら、伝えるべき内容(メッセージ)を取捨選択しながら抽出してテンプレートに当てはめていきます。最後に、文章全体のつなぎや文章表現を整えれば、文章の完成です。
1回目で紹介した「次々に読まれる文章を書く3ステップ」に当てはめるといったコンビネーションで文章を作成します。
少し理屈っぽくなりますが、マインドマップは発散するツールなので、それらを文章というひとつの形に収束させていくためにテンプレートを活用しているとも説明できます。
アウトラインプロセッサ
文章をツリー状に管理できるソフトです。アイ・エンパシーが1つの文章作成に向いているとすれば、アウトラインプロセッサは論文や小説など、大きな構造を持つ文章(長文)の作成・構築に適しています。全体の構造を決め、見出しや小見出しを入れ、そのブロックごとに記述や編集ができ、ブロックごとの組み替えができます。
無料から有料のものまでいろいろありますが、私のオススメは、Windows及びMacで使える高性能なアウトラインプロセッサ・ツール「Scrivener(スクリブナー)」です。
このツールを使う場合は、『考えながら書く人のためのScrivener入門 小説・論文・レポート、長文を書きたい人へ』著:向井領治(ビー・エヌ・エヌ新社)が、スクリブナーの使い方をわかりやすく解説しているので、参考にしてください。
Word(テキストエディタ)
Wordやテキストエディタ、Evernoteなど自分が使い慣れているツールがある場合は、2回目で紹介したテンプレートを活用すれば、とたんにスムーズに文章作成できます。
お好きなテンプレートを選んだら文章はどこから書いてもいいということを思い出していただき、順番を気にせず「思いついたところ」「書きたいこところ」から自由に書いてみてください。
テンプレート(型)という文章構成が決まっていると、文章の道筋が見えている状態で書きはじめることができる安心感から、内容(メッセージ)に集中して、文章作成ができます。
まとめ
今回は、実際に文章化するときアイ・エンパシー(iEmpathy)というツールを中心に説明しました。以下、ツールの特徴をまとめます。
- アイ・エンパシー(iEmpathy)
共感を生むメッセージを浮かび上がらせ、構成と文章化までが1枚のチャートでできるツール - マインドマップ(iMindMap)
内容(メッセージ)を拡げるのに便利なツール。文章化にはテンプレートを活用する - アウトラインプロセッサ
文章をツリー状に管理できるソフト - Word(テキストエディタ)
テンプレートと組み合わせて使う
最終回の次回は、完成した文章の読まれる確率をさらに引き上げるための、テクニック法タイトル・書き出し方法を紹介します。
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