酒場のアンドロイドから銀行のチャットbotまで?気になる汎用国産AI『AMY』の中身に迫る
おはようございます。アズマです。
突然ですがみなさん『AMY』ってAI(人工知能)知っていますか?
三井不動産レジデンシャルの物件を紹介するLINEアカウントで使われたり、広島銀行のチャットサービスで使われたり、酒場での沈黙に合わせて発言するカールスロイドというアンドロイド?で使われたり…。とにかくいろいろなことに使われているんです。
ただ、AMYは他のAIと何が違うの?
よくわからなかったので、開発元Automagi株式会社取締役COO清水孝治さんにお話をうかがってきました。
大手SIerのAIは高級車。AMYは大衆車
―しょっぱなからざっくりした質問で申し訳ないのですが、御社のAMYと大手SIer(IBM、NECなど)のAIの違いってなんですか?
はい。よく聞かれます。(笑)
実際AIを比較するのって難しいんですよ。
同じ期間、同じデータを使って比較するなんてことがないですからね。
ただ、よく“大手SIerのAIは高級車でAMYは大衆車だ”と答えています。
清水さん曰く
AI(機械学習)は、データを沢山もらえればもらうほど精度が上がる為、AIの“精度”というのは、クライアントと開発の共同作業で大きく左右するんだそう。
なので、強いAIを作る為にはカタログにあるスペックの精度だけでなく、導入期間や実現したい要望にどれだけ柔軟に応えていけるかも重要になるんだとか。
そういった部分に柔軟に対応することによって、安価でも大手と変わらない実績を残してきた。ということでした。
もともとAutomagiでは3年前からNTTドコモのエージェントサービス「iコンシェル」で超高速な高度判断ロジックのシステムをつくっていたそう。
例えば勤務情報を入れなくても、GPSから平日の昼は普段〇〇にいる事が多いから〇〇で働いている確率が高い。だから〇〇近辺で電車の遅延が発生した場合に情報を知らせる。といった超高度な判断ロジック。
ロジック自体はサービス提供側で、ある程度ルールがあるらしいのですが、ユーザーのパラメーターは大量にある。
その大量にあるパラメーターをどういう状況、どういう基準でセットし最適な情報を選んでいくのかということを超高速にAIで判断することをやっていたんだそう。
どのような情報が知らされるべきかは、表示前に膨大なパラメータから状況に即して計算が終わっていなければならず、そのような 1/1000秒オーダーで動作するシステムを担当していたんだとか。
そこで得られたノウハウや最新の機械学習の研究から、各企業に合わせて自社の人工知能製品としてカスタマイズして提供しだしたのが『AMY』の始まりなんだとか。
最近ではAIの定義は様々ですが、AutomagiでのAIの定義は「機械学習をつかった技術」として、取り組んでいる分野は大きく分けて
- 画像
- テキスト
- 予測
の3つ。
テキストを使ったコミニュケーションの分野では自然言語解析をかけあわせる必要があるため、日本市場では まだまだ日本製にアドバンテージがあるんだそう。
確かに、AIアプリのリリースをよく聞きますが、まだ英語対応のみや日本のアプリストアじゃ落とせないなんてものもあったり、実用となるとまだまだ言語の壁を感じることも多いです。
グループ会話を聞き分けるカールスロイド
―コミュニケーションといえば御社のカールスロイドは斬新でした。凄く強烈なインパクトだったのを覚えています。
そうですね。今までは画面上でのやりとりだったのが物体として現れましたから。
実際、反響もかなりありました。
いままで1:1の会話を聞き取るAIを使ったロボットは存在しましたが、居酒屋でグループの会話を聞き取るというのは世界初ではないでしょうか。
ただ音声によって人を判断するっていうのはある程度条件が必要で、実際のサービスで使うには課題があるようです。
聞き分けること自体は可能でも、学習するためのデータと時間が必要なため、グループでいきなり席についたAさんBさんを振り分けるっていうのは現段階では難しいんだとか。
今回のカールスロイドではAMY以外にも
- 音声認識
- 音声合成
- 3Dプリント
の3社のアライアンスで完成したそう。
音声を認識する技術、3Dプリンタで物体を作る技術は、まぁわかるとして…気になったのは音声合成の技術。
『あ』『い』『う』『え』…という1文字ずつで音声を構成するとどうしてもイントネーションが悪くなってしまう。
そのため『こんにちわ』『ですね』など単語を声紋データと持っておいて、それぞれの単語を合成するんだそう。
音声合成技術によりAIの発声は飛躍的にスムーズになったそうです。
ただ、カールスロイドはアンドロイドビジュアルなのでわざとぎこちなくしゃべらせたんだそう。
なんとも…手が込んでますね
ユーザーファーストで考えた結果AIだった
―技術は凄いですけど、なんというか企画がぶっ飛んでいますよね。思いついても実行しないというか…
サントリーさんから、こういうことやりたいけどできる?って聞かれたので、エンジニア集団のAutomagiとしては出来ます!といった感じでした。
もちろん銀行のような真面目な案件もやっていて最近では広島銀行さんのアプリの中にAIサポートという機能をAMYで作りました。
AIサポートは口座開設のやり方などを自然文で質問すると、AIが答えてくれるチャットサービス。
やはり銀行という分野上、間違ったことを返さないかというチェックに耐えうるレベルにまで学習させてリリースする必要があるためカスタマイズに時間がかかったんだそう。
精度を高めるために、広島銀行で実際にコンタクトセンターの顧客との電話のやり取りの音声データをもとにデータの質と量をあげて、さらにロジックを加えチューングしPDCAをまわして…なんてことを何度もトライして完成させたんだそうです。
将来的には顧客のお金の使い方をAIで分析し、資産運用の提案をするなんてことも視野にいれているそうで、AIのサポートがないサービスというのも今後少なくなっていきそうです。
最適解を実行し効果的なバナーを表示
―AIによってwebデザインのカタチもドンドン変わっていきそうですね。
そうですね。チャット形式というのも新しいデザイン、UXですが、予測の部分でもAIが活躍している事例があります。
ネット専業銀行の住信SBIネット銀行さんとはAIによってユーザーの属性、趣味嗜好や行動にあわせたバナーを、自社のサイト上やネット広告で表示させるという実験を開始予定です。
いままではサイトに訪れて目的のバナーなどを多くのバナーから探しだしてクリックするとういうのが当たり前でした。
一度に表示できるバナーは限られるので機会損失も少なくありません。
それをユーザーの属性、サードパーティクッキー、ファーストパーティクッキーなど、あらゆるデータから分析してもっともコンバージョンするバナーを自動で表示させるんだそう。
- データ分析
- 分析結果から予測 ←まぁある
- 予測からの最適解 ←かなり上位
- 最適解を実行 ←凄い!
最適解の実行までおこなうという驚き。
効果的なバナーのみが表示されると最適なサイトにはなるが、新しい発見や面白みなんてものがなくなるんじゃないか?とも思いましたが、AIの強みはビジネスとして最大化するように全体最適するということなので、単純に毎回同じものが表示される。ということにはならないそうです。
AIの可能性についてワクワクさせられる刺激的な取材となりました。
清水さんお忙しいところたいへんありがとうございました。
さいごに
今後、AIによる自動化、効率化に注力したいとおっしゃられていました。
流通のような無駄に商品を作り在庫をたくさん抱えてしまうというような業界はAIによる最適化がもっとも効果を生みやすいとのこと。
大量生産、消化率と原価率のせめぎあいからの脱却ができれば市場は正常に戻るのかもしれません。
流通業界の方の苦労は限界を超えているようにも感じることが多々あるので、AIによって明るい未来になればいいなと思います。
「BITA デジマラボ」掲載のオリジナル版はこちら酒場のアンドロイドから銀行のチャットbotまで?気になる汎用国産AI『AMY』の中身に迫る2016/12/13
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