企業ホームページ運営の心得

Web担当者がぶつかる採用コンテンツの壁、どっちつかずはWebの弱点

人材採用コンテンツならではの工夫のポイントを紹介
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の364

あんたが悪い……とは言えない

Web担当者が、どれだけ知恵を絞り工夫をしても、限界があると断言できるコンテンツがあります。

採用(求人)コンテンツ

それはなぜか、「社長案件」だからです。

空前の人手不足がやってきました。あのバブル期を越えるといってもよいでしょう。どちらも主因は少子高齢化ですが、バブルのころは、戦後日本の人口ボリュームゾーンである「団塊世代」が労働力を下支え、まもなくその子供の世代である「団塊ジュニア」が社会参加するという予測がありました。今回はそのどちらもありません。そして「採用コンテンツ」が、Web担当者の重要なミッションとなることでしょう。

しかし、すでに指摘したように人材採用とは「社長案件」。その決定的な理由は後に述べるとして、まずは、

社長、あんたが悪い

と言えないWeb担当者のために、採用コンテンツを工夫する方法を紹介します。

バブル期に咲いた技

求人票に記述する内容を、Webサイトに転載しただけで人が集まることはありません。まして「人手不足」の時代に入ったのです。他社との差別化は不可欠で、これについて一家言持つのは、私が「バブル期の就職活動」を経験しているからです。

バブル期は、初任給が毎年1万円単位で上昇し、500円のアルバイト時給が2年後には750円と、25%もアップするような時代でした。当然、すぐに会社が支払える給料の限界に到達します。そこで給料以外の差別化を目的として生まれたコンテンツが、

先輩

です。採用対象者と年齢の近いスタッフを紹介することで、楽しく働いているという職場の「雰囲気」で差別化を目指します。人間は年齢をはじめ、境遇の近いものに自己を投影する傾向があり、同コンテンツには未知の世界へ飛び込む不安を払拭させる効果も期待できます。もちろん、当時の求人はWebではなく、求人誌などですが。

就職氷河期の言葉

先輩の声は、Webの採用コンテンツとしてさらに役立ちます。ある物流企業で先輩のヒアリングをした際、「就職氷河期」をくぐり抜けてきた女性社員は、志望した理由をこう述べます。

なくならない業界

人、物、金といった、経済を動かす三要素の一角を担う企業なら、採用した後に「潰れる」ことがないという見立てです。厳しい就職氷河期をサバイブしたものの視点だといえます。その後、数年にわたり、このキーワードでアクセスが絶えなかったのは、同じ時代、同じ経験をしたものだけに通じる「言葉」だったからです。つまり採用限定の「SEOキーワード」になったのです。

輝く道を選ぶ心理

もう1つ、バブル期に生まれたコンテンツが「未来(ヴィジョン)」です。「幹部候補生」「独立歓迎」など、アルバイトを対象にした求人誌『フロム・エー』にも散見しました。これには、

安い給料だけど我慢して

という含意があり、支給できる給与の限界からの苦肉の策です。その後、ブラック企業が活用するようになったのは、皮肉な話ですが、それだけ効果があるということです。

ヴィジョンとは入社何年で、どの役職、職種になることが可能なのかという提示です。人手不足の売り手市場で、よりどりみどりに選択できる「未来(就職先)」ならば、輝ける道を選ぶのは当然です。そして、ここでWeb担当者は限界にぶつかります。なぜなら、大半の企業は、そのヴィジョンをもたないからです。

出世する理由は雰囲気

民間企業においての出世とは、大なり小なり「雰囲気」が決定します。受注件数などの具体的な指標が用意されておらず、部課内の人間関係や、縁故関係(コネ)も含めた状況に左右されるからです。対する成果主義を礼賛しているのではありません。「成果」だけでない評価システムは、アットホームな空気を作りだし、チーム全体としての結束力を高めるという利点もあるからです。問題は、

どっちつかず

という社長の姿勢にあります。ドラスティックな成果主義を打ち出すわけでもなく、チームワークを売りとするのでもない「中途半端」な人事政策は、「差別化」の対極にあります。入社後のヴィジョンを提示できない人事システムは、瞬時に同業他社との比較ができるWebの採用競争で不利に働くことは否めません。

Web担にできること

だからといってWeb担が、社長室へ乗り込み、人事政策に進言する……ことはやめたほうがよいでしょう。私が会社を辞めた理由の1つが、人事政策へのしん言だからです。そこで、最後に採用に関する効果的な方法を紹介します。それは「資格」です。

日本にはさまざまな資格があり、公的な資格に絞り込んでも多種多様です。「電気工事」1つをとっても、

  • 第一種電気工事士
  • 第二種電気工事士
  • 第一種電気主任技術者
  • 第二種電気主任技術者
  • 第三種電気主任技術者

があります。これらの「資格取得」のための要件や手続き、方法、そのコツなどを紹介するコンテンツを用意するのです。資格取得を目指すのは、すでに従事しているか、これから目指す人です。するとこのコンテンツをきっかけに、自社に興味を持ってもらうことを期待でき、あわよくば採用につなげようという皮算用です。

資格の種類によっては、競合のいないブルーオーシャン。コンテンツを作った翌日に、SEOを実現した事例は数多いのですが、弊社の顧客利益の確保のためここでは割愛します。そしてこれらのキーワードでのアクセスが確認できれば、「引き合い」の可能性を示すことができ、ここまでがWeb担の仕事。あとは「社長の仕事」です。

ちなみに電気工事に関連するものには「技能講習」として

高圧ケーブル工事技能、高所作業車、ガス溶接、小型移動式クレーン

などがあり、さらに「特別講習」なら

安全衛生責任者、低圧電気取扱、高圧・特別高圧電気取扱、高所作業車運転、有機溶剤業務、アーク溶接……etc

などと多岐にわたり、そこかしこにブルーオーシャンが広がっていました。執筆に当たり、情報を整理する過程において、普通自動車運転免許一枚でWeb屋をやっている我が身を反省しました。

今回のポイント

資格は求職者を呼び寄せるコンテンツ

人手不足の時代は人事政策の公開が好まれる

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