企業ホームページ運営の心得

プロ失格! 企業が誹謗中傷にさらされたときの対処、正攻法&グレーゾーン

根拠のない誹謗中傷がインターネット上で広まってしまったら
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の304

有名税ともいっていられず

だから、あなたはまわりに嫌われる

とは、以前に私が書いたブログへに寄せられたコメントです。私の「まわり」とは足立区周辺。手前味噌ですが、面識のある方の評判はそこそこ良いのは営業マン時代に身につけた処世術によるもので、根拠のない誹謗中傷であることは明らかなのですが、この「まわり」も「嫌われる」のどちらも「主観」によるもの。物書きの端くれとして「表現の自由」を尊重します。

しかし、先日「プロ失格」と罵るブログを発見。インターネット、ソーシャルメディアが一般層に広く普及したことで、個人や企業を問わず、こうした批判は今や日常茶飯事です。「消費者の生の声を聞ける」という側面もありますが、企業として誹謗中傷は頭の痛い課題です。そこで、グレーゾーンの手口、もとい対策と、正攻法を紹介します。

なお、該当ブログについて、これは「表現の自由」と見逃すことはできず、戦うことにした顛末は後ほど。

だれも守ってくれない

グーグルのサジェスト機能(予測検索)によって名誉を傷つけられた

グーグルのサジェスト機能で、自分の名前と無関係な犯罪とを結びつけられた日本人が、その削除を求めて訴え、それを認めた東京地裁の判決が下ったのは1年前のこと。これについて、「米国本社に日本の法律の規制は及ばず、個人情報保護に関する社内規定の削除理由にも当たらない」というのがグーグルの見解です。

日本でサービスを提供して収益を上げていながら、日本の法律なんて守ってられねえぜ! という態度にイラっとしますが、今回のテーマはそこではなく、どうするかということ。

グレーな悪評対策

「インフォプレナー(情報起業)」の名前を入力すると、マクドナルドにおけるハンバーガーとポテトの関係のように「詐欺」がサジェストされることが少なくありません。それでは彼らはどうしているのかというのが興味の出発点です。

インフォプレナーの名前と詐欺がタイトルにある検索結果をクリックすると「インフォプレナー詐欺110番」(仮名)というサイトにたどり着きます。被害報告をまとめたものかと思いきや、「○○は詐欺師か」というエントリーで婉曲的に、インフォプレナーを褒めちぎっています。さらに検索結果にあがった別のブログは、詐欺ではないとする1本の記事だけしかありません。つまり「詐欺」というサジェストからの検索結果に「詐欺ではない」が並んでいるのです。

そこで「被害」とサジェストされているサイトを借りて実験開始。新しいブログを立ち上げ、意識的に「サイト名」と「被害」が登場するエントリーを数編書き下ろすと4日後には結果が出ました。「被害」の検索結果の6番目に表示されているのです。

宮脇睦0.2

検索結果にこちらが意図したコンテンツを並ばせることは不可能ではないということです。ただし、グーグルがこれをスパムと判断する可能性もありグレーゾーンとしておきます。

そしてここからは、グレーゾーンであることを踏まえての提案です。中傷キーワードがサジェストされる会社名や商品名、サービス名に対して、「使用法」「利用者の声」「評判」といった、関連するキーワードを組み合わせた独自コンテンツを充実させることで、対抗できる可能性もあるということです。こうしたコンテンツが、ユーザーにとって有益なものであるならば、グーグルがグレーと判断することはないでしょう。

ちなみに今、サジェストによる表示を削除できるという業者の存在も確認していますが、こちらは眉唾です。検索エンジンの仕組みがブラックボックスである以上、「削除できます」という言葉に保証はありません。

さて、ここからは法に則った「正攻法」です。冒頭で紹介した、私を誹謗中傷するブログでは、ITを使いこなせていない人々を紹介するマイナビニュースの連載「エンタープライズ0.2」をもじって、私自身を0.2だと罵倒します。

論拠は私の実績が、とある飲食店しかなく、そのサイトも「メニューさえ書いていない」とあげつらいます。さらに検索すると「.jp」ドメインに変更されており、そこへの転送設定しないことをもって「プロ失格」と断じます。もちろん、主観は人それぞれ。

リーガルマインドで対応

そもそも、エントリーに記された「.jp」サイトは弊社の管理する飲食店サイトではなく、旅行代理店の企画サイトで「オフィシャルツアーサイト」と最上部のバナーに記されています。だからリダイレクトの設定など論外。つまり、ほぼ100%の事実誤認のうえで「プロ失格」との指摘は、「表現の自由」ではなく名誉棄損と営業妨害です。

そこでブログの運営会社に当該記事の削除申請を出します。すると2日後に「プロバイダ責任制限法」による対応をすると返信が届きます。そうなのです。今、ブログの提供会社は誹謗中傷に関して対応しなければならず、かつてのような「野放し」は許されてはいません。

自由な言論が保証されている我が国では、批判や批評、ときに中傷でも保護されます。しかし、事実誤認をもとにした中傷は「営業妨害」であり「名誉棄損」です。さらに表現の自由もまた野放しではありません。「名誉棄損」とは仮に事実を元にした告発であっても、「公益性」が認められなければ罪に問うことができるからです。

しかし、悪評が広まってからでは遅すぎます。海外では、検索エンジン側は要請に基づきコンテンツを削除すべきだと、原告の訴えが認められた例もありますが、グーグルは事実無根の中傷であっても削除には及び腰です。定期的な「エゴサーチ」と、プロバイダ責任制限法を駆使した対処は、もはや企業Web担当者の日常業務といって過言ではないでしょう。

※正しくは「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」
プロバイダや掲示板の管理者の責任者を明確にするための法律で、権利侵害の申し出に対して、一定の手続きの後、管理者に削除権限を与えるものです。

今回のポイント

グレーゾーンは自己責任で

悪評はグーグルが見つける前の処置が大切

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