結果へ導く“自分中心”インタフェース改善術、ユーザーインサイトを活用した仮説検証型スピードアップテクニック/ユーザーローカル&三菱電機
セミナーイベント「Web担当者Forum ミーティング2012 Autumn」(2012年11月8日開催)の講演をレポートする。他のセッションのレポートはこちらから。
「クリックエリアの分析で、約38%の直帰率を20%台に改善」。サイト解析ツール「ユーザーインサイト」のセッションでは、三菱電機 宣伝部 ウェブマスターの粕谷氏がゲストスピーカーとして招かれ、サイトの離脱率や導線の改善に成功した事例をデータを交えて紹介した。Web担当者として、どのような点に着目してサイトを改善すればいいのか、具体的なヒントが語られた講演をレポートする。
企業サイトに“箸休めコンテンツ”が必要な理由とは
セッション前半には、まずユーザーローカルの渡邊和行氏が登壇。サイト解析ツール「ユーザーインサイト」に備わっている、特徴的な2つの機能を説明した。
1つ目は、「ヒートマップ解析」と呼ばれる機能だ。この機能は、ユーザーがWebページをどう見たのかを、温度を測定するサーモグラフィーのように可視化するもの。クリックが多い場所はどこか、どこまで読まれているか、熟読されている段落はどこか。こうしたことを一目で把握できる。現在はPC向けのWebページが解析対象だが、「2013年の早い段階で、スマートフォンにも対応する
」と渡邊氏は語った。
もう1つは、ユーザー属性を把握する機能だ。行動履歴からプロファイルを推定するエンジンを使い、年齢や性別、業界、都道府県、会社・学校などを検出する。実際にどのようなユーザーがWebサイトに来ているかがわかる。
三菱電機のサイト改善事例は、この2つの機能を活用したものだという。渡邊氏の説明のあと、三菱電機の粕谷氏が壇上に立ち、事例紹介に先だってユーザーインサイトの利点を、次のように話した。
弊社では解析ツールは5~6個使っており、テレビのチャンネルのように、目的に合わせて切り替えながら使っています。そのなかで、ユーザーインサイトのいいところは、見たいデータをサクッと簡単に見られる点です。弊社サイトの共通のJavaScriptに解析用のタグを入れているので、いちいちタグを入れなくてもいい。設定も簡単で、どのページでも簡単にデータを見ることができます。
今回、このユーザーインサイトを用いて粕谷氏が改善したのは、企業サイト内の箸休め的な役割を持つコンテンツだという。一般的な企業サイトのコンテンツとしては、「製品情報」「サポート」「販売」「企業情報」などが挙げられるが、このような箸休めコンテンツを設ける意義について粕谷氏は、「ガチガチのコンテンツだけではなくて、少し息抜き的なコンテンツがあると会社のイメージアップにつながりますし、総和としては良いサイトになるのではないか
」と説明した。
三菱電機の企業サイトでは、そうした“箸休めコンテンツ”を2005年から公開している。最初に公開したのは「everywhere(エブリウェア)」というコンテンツで、写真(静止画)と音声を組み合わせてショートムービーをつくり、三菱電機の製品が幅広く使われていることをアピールする内容だった。
2008年からは動物写真家の岩合光昭氏とのコラボレーションで「the beauty of NATURE」を公開。岩谷氏が撮影した世界中の動物写真を4年間にわたって掲載し、iPhone・iPad用のアプリも開発した。三菱電機のブランドを前面に出すのではなく、美しい写真を通じて、エコ活動に取り組む企業のイメージを感じてもらうことが目的だったという。
そして2012年7月から公開されているのが、「Blue Planet」というサイトだ。自然写真家でダイバーでもある高砂淳二氏がナビゲーターとして登場するデジタルマガジン形式のコンテンツで、氏の写真やコラムなどが月に2回更新されている。
三菱電機では、顧客に対して独自の情報を発信し、コミュニケートする場をとして「from ME」というサイトを2011年6月にオープンしており、そのコンテンツの1つがBlue Planetになる。Blue Planet閲覧すると、ナビゲーション上に設置されたボタンのクリック操作で、画面がスクロールする。スマートフォンやタブレット端末を意識したつくりなのが特徴的だ。
ページビューは月5万程度で、主な流入元としてはfrom MEのフェイスブックページや、三菱電機の会員制サイトのメールニュースなどが挙げられるという。Blue Planetの目的は、集客によってfrom MEサイト内の回遊を促進することと、三菱電機のエコイメージを向上させることにあり、女性を主なターゲットにしている。
コンテンツ公開後、ユーザーインサイトで解析をしたところ、男女比は約8割が女性で狙った通りの構成になった。ページビューも2008年のthe beauty of NATUREと比較して2倍程度になったという。回遊促進については、ユーザーインサイトには「ページ別の内部クリック先の解析」機能が備わっており、Blue Planetのコンテンツを起点として、どのページに移動したかが簡単にわかるようになっている。この解析によって、環境特集など、from ME内の他ページへの移動も確認できたそうだ。
エコイメージの向上については、ユーザーインサイトの機能ではないが、アンケート調査を行い、「美しい写真が見れてうれしい」「自然を守っていかなきゃいけないですね」「次の冷蔵庫とエアコンの買い換えは、三菱電機にします」といった声が寄せられた。「ちょっとした啓蒙になっているのではないか
」と粕谷氏は説明する。
これからのWeb担当者にはマルチプレイヤーとしての能力が求められる
もちろん課題もあった。公開当初のデータでは、コンテンツのトップページの直帰率が37.7%もあったのだ。この直帰率を改善するために、ユーザーインサイトのヒートマップ解析を利用した。
解析の結果、サイトのタイトル画像中の“Blue Planet”の部分が、ボタンではないのにクリックされていることに、ヒートマップを見て気がつきました。これは大きな問題だと思い、ただちに修正して、2日後にはクリックされていた部分をボタンに変えました。この結果、37.7%あった直帰率が、32.1%に下がった。このあとも改善を進めて、今は直帰率は20%台まで下がっています。
もう1つの課題は、Blue Planetのメインコンテンツである写真のギャラリーページへのアクセスが少ないことだ。アクセス数の上位はトップページ、プレゼントページ、ギャラリーページの順であり、ヒートマップ解析をすると、本来見てもらいたいギャラリーは、最後まできちんと見られていたものの、アクセス数は少なかった。この原因として粕谷氏は、トップページのファーストビュー近くに設置したプレゼント情報のリンクをユーザーがクリックし、そのままギャラリーに戻ってこないのではないか、という仮説を立てた。
そこで仮説に基づいて、トップページに置いていたプレゼント情報をギャラリーページの後ろのページに置き直した。他にもトップページへ戻るためのボタンをページ下部に設置するなど、導線を改善した結果、最後までギャラリーを見てくれるユーザーが増えたという。
Web担当者は、ユーザーインサイトのような簡単に使えるツールを用いて、このような改善を積み重ねることが大事ではないか。粕谷氏は改善の感想をこのように述べ、これからのWeb担当者はどのような人材であるべきか、次のように提言をして講演を終えた。
以前、このミーティングで基調講演(2012年春の基調講演)をしたときに、Web担当者には「構築系」「分析系」「集客系」の3つがあるとお話ししました。しかし最近は、Web担当者はこの3つをすべて考えられる人じゃないといけないと思っています。構築がメインの人であっても、解析ツールを使ってみたり、集客を考えてみたりする。マルチプレイヤーとして仕事をするのがいいのではないかと思っています。
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