担当者が気づかない本当に怖い炎上とは? ソーシャルメディアのリスク管理と顧客関係の維持・改善/NTTコム オンライン
セミナーイベント「Web担当者Forum ミーティング2012 Autumn」(2012年11月8日開催)の講演をレポートする。他のセッションのレポートはこちらから。
「本当に怖い炎上」を未然に防ぐには?
ソーシャルメディアに潜む顧客の声をビジネスにつなげるには?
ソーシャルメディアを通じて顧客との良好な関係を築こうとする企業がいるなか、ソーシャルメディアを発端とした炎上事例も生まれている。ソーシャルメディアの「リスク管理」と「顧客関係の維持・改善」という2つのポイントについて、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション(NTTコム オンライン)の森氏が、NTTグループの事例も交えて紹介したセッションをレポートする。
ソーシャルメディアの傾聴で顧客の本音がわかる
最初に森氏は、「企業にとってソーシャルメディアが拡大している意味」を、次のように説明する。
情報量が増大し、顧客接点が増えたということだけではなく、今までは聞こえなかった顧客の本音を、積極的に聞きに行けることができるようになったことが、企業にとってのソーシャルメディア拡大の意味だと思います。個人間のやりとりのなかで発せられている企業名や商品名に、もっと耳を傾ける姿勢を持つことが大事なのではないでしょうか。
ではソーシャルメディアを傾聴することによって何がわかるのだろうか。森氏はNTTグループの事例を挙げながら説明した。2012年7月、NTTグループは料金の請求業務をグループの金融子会社に統合した。この統合に先立って各利用者に案内が送られたが、ニュースメディアの論調は「グループの結束が強められて、独占が強化される」というものだった。
しかし、ソーシャルメディアで顧客の声を傾聴したところ、「ニュースメディアの論調=世の中の論調」ではないことがわかったという。たとえば、Twitterでは、「料金滞納したと思っただろ、ふざけんなw」といったネタ投稿が目立った。独占が強化されるというメディアの論調に対しても、「難癖つけすぎ」「利便性が高まるならどうでもいい」という評価がほとんどだったという。
このような意見を、わざわざ電話をして企業に伝える顧客はほとんどいません。しかしこうした声に耳を傾けることで、たとえば「封筒のデザインや文言を、滞納通知と誤解されないように工夫できたのではないか」とか、「消費者の利便性を考えて統合するというメッセージを、もっと強く発信できたのではないか」といった具合に、ビジネスの改善につなげることができるのです。
また米国のトヨタ自動車では、ソーシャルメディアを傾聴していたことで、根も葉もないデマの拡散に早期に気づき、公式アカウント上で否定声明を出して、それ以上の拡散を回避したケースもあるという。「ソーシャルメディアに埋もれている顧客の声に注目することで、顧客関係の維持・改善やサービスの品質改善、リスク回避が、常にできるようになる
」と森氏は話す。
担当者が気がつかないうちに進行する“本当に怖い炎上”
続いて森氏は、いわゆる「炎上」対策について言及した。森氏によれば、ソーシャルメディアを傾聴しておくことで、「本当に怖い炎上」による被害を、最小限に食い止めることができるという。「本当に怖い炎上」とはどのようなものか。森氏は次のように説明する。
社長が何か問題発言をして炎上するというケースが、ソーシャルメディアではよく見られます。しかしこのような炎上は“本当に怖い炎上”ではありません。社長に認識を改めてもらえば済む話だからです。本当に怖いのは、知らないうちに火がつき、爆発的に拡散し、企業が対応する前にまとめサイトまでできているような炎上です。恥ずかしながら弊社のグループ会社も、こうした炎上を経験しました。
森氏によれば、Webサービスを扱うNTTグループ会社の担当者が、冗談めかした発言をTwitterに投稿したところ、「シャレにならない」と非難の声が上がったそうだ。その後、いったんは自然鎮火したかのように見えたが、半日ほどたってまとめサイトが出現して火付け役になり、“拡大再炎上”してしまった。すぐに自社の公式アカウントから訂正発言を投稿したが鎮火できず、まとめサイトを着火点としてしばらく燃え続けたという。
社長の問題発言は、社長自身に気をつけてもらうと同時に、社長の発言だけをチェックしていればいいわけですから、ある程度火元をコントロールできます。しかし自社には非がないのにいつの間にか非難が拡散しているケースや、弊社グループの事例もそうですが社員の発言によって炎上するケースは、コントロールは非常に難しい。とにかく早期警戒システムをつくって、火種を見つけたら一刻も早く対応することが炎上対策のポイントになります。
では、具体的にどのような対策を講じておけばいいのか。森氏はいくつかの事例を紹介した。たとえば、国内のある商社では、広報担当者がタブレット端末を常に手元に置いておき、自社名やネット上での自社の俗称、社長名などを検索・表示しているという。
また米国のDellでは、専門チームが2万6,000件の発言をチェックし、専用のモニタールームで検索結果をリアルタイムで表示し、発言には全社的に対応する体制を整えている。
とはいえ一般の企業では、コストの問題もありそのような対応はできないケースもある。そこで森氏は、ソーシャルメディアの傾聴(リスニング)ツールを使うのが有力な対策になると説明する。
傾聴ツールはさまざまな会社からリリースされているが、その1つがNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションのクチコミリアルタイム分析サービス「BuzzFinder」だ。BuzzFinderを使うことで、いつ、誰が、何を、どのように(ネガティブかポジティブか)発言しているかを、リアルタイムで可視化できるようになる。クチコミから競合他社の状況を把握する機能も備わっている。
なかでも大きな特徴は、日本語Twitterの全量分析ができる点です。Twitterのオフィシャルの検索機能には制限があり、実際には存在している発言でも表示されないことがあります。しかしBuzzFinderはすべての発言を検索できますから、情報を見逃しません。
このほか炎上のきざしとなる変化を自動的に監視し、あらかじめ設定した条件に達したらアラートする機能や、ソーシャルメディア上の顧客の声をまとめて、定期的にメールで送付する機能も備わっているそうだ。
最後に森氏は、ツール選択についてこのようなアドバイスを付け加えて講演を終えた。
傾聴は担当者が個人でやるのであれば、手作業でもできます。しかし企業として取り組むのであれば、ツールによって傾聴を効率化していく必要があると思います。ツール選択では、分析データをすぐに確認できること、そして簡単に扱えることがポイントになると思います。
ソーシャルもやってます!