映像を編集してクオリティを上げる
映像を編集してクオリティを上げる
収録した素材はそのまま流してもいいのですが、ライブでない限りは編集したほうがクオリティは高くなります。話の本質が伝わればいいので、熱く語っていただいた演者には申し訳ないと思いつつ、バッサリと切る覚悟が大切です。今回は2分のセミナー告知ですから、たくさんの映像素材のなかから編集するというよりは、何度か撮り直した映像素材のなかから良いOKシーンをつなぐ、という作業になると思います。
編集ソフトによって細かな違いはありますが、編集作業の流れは次のようになります。
- 使いたい映像素材を取り込む
- 使いたい映像をつなげる
- テロップなどの必要な情報を入れる
詳細な編集手順については、前述のムービーメーカー簡単操作ガイド(日本マイクロソフト)などをご覧いただくとして、ここでは、上記3つのフローでのポイントとなる点をおさえます。
1. 使いたい映像素材を取り込む
ムービーメーカーではビデオファイルをドラッグするか、リボンの[ホーム]タブにある[ビデオおよび写真の追加]ボタンをクリックして使いたいファイルを選び、画面右側にあるスペースに移します。
作業自体は、画像や文書ファイルを移す要領と同じですが、スピードよく進めるためには、映像収録の段階で、どの素材を使うかをある程度決めておくことが大切です。何度か取り直しが発生しているなら、前述で説明したように、OKな映像は何番目のものなのかを控えておき、使う素材のみを効率よく取り込みます。また、今回のように短い動画の場合は、いろいろ撮っておいて編集時に考えるのではなく撮影時に映像をしぼっておくことも大切です。
撮った映像の途中から使いたいという場合は、使いたい映像部分をピックアップする必要があります。Windowsムービーメーカーには「分割」という機能が搭載されており、これを利用してトリミングを行います。「のりしろ映像」もこの時点でカットします。
「トリム」機能では、開始位置と停止位置を指定すると、指定した時間の映像ファイルのみが切り出されます。操作画面左横にある、動画再生画面の下に出るタイムカウンターを見て、使いたい映像の時間を確認して入力します。
2. 使いたい映像をつなげる
複数の「使いたい映像」を取り込むと、編集画面の右側に取り込んだ映像のファイルアイコンが並びます。左から時系列に再生されますので、構成にそって、取り込んだファイルを並び替えます。映像をつなげる作業がスムーズにいくか否かは、「のりしろ映像」をとる、「途中から取る場合は、角度を変えて撮る」など、撮影時にほぼ決まってしまっています。とはいえ、編集段階で途中からカットしてつなげる、ということは出てくると思います。
撮り直した時の角度が微妙に違っていて、つなぎ目がどうしても不自然になってしまう、という場合もあるかと思います。映像がどうしてもつながりが気持ちよくない場合や時間の経過を表す時は、付属機能で一度白や黒などにフェードアウトさせてみたり、トランジション(場面転換エフェクト)などを使用することで効果的にごまかすこともできます。
編集で短くなった分、要点を補足するためや強調するためにテロップを挿入したり、図版をセリフに被せてあげることで、内容が濃くなり、一層質感が上がっていきます。
3. テロップなどの必要な情報を入れる
キャプション(字幕)入れやテロップ補足は、わかりやすさ、オフィスなどで音を出さずに観る視聴者への配慮として有効と言えるでしょう。
ネット動画ならではのテロップ入れのポイントとしては、「文字は大きく」が基本です。理由は小さな画面でも見やすくするためです。PCやモバイル端末の画面の大きさはテレビ画面と比べて小さなものですし、PCと同じ動画をモバイル端末でみるとさらに小さくなります。なお、ネット動画の画素数は、1Mbpsの動画コンテンツのもので640×360ピクセルくらいが一般的です。ちなみにHDTV(地上デジタル)の画素数は1920×1080ピクセルです。
映像データを出力する
編集後の映像データを出力することを一般的に「書き出し」といいます(ムービーメーカーでは「発行する」)。作業の注意点として、配信方法(詳細は後述)や使用用途に応じて設定を選択、適宜変更して書き出す必要があります。最近の編集ソフトであれば豊富なテンプレートから選ぶだけで済むでしょう。
今回は、PCサイトでの公開というシーン想定ですので、主要フォーマットとして以下4つを挙げておきます。
- Windows Media(.wmv)
- Quicktime(.mov)
- Flash Video(.flv)
- Mpeg4(.mp4)
自社サーバーで公開するのであればWindows MediaもしくはFlash Videoでの公開がいいでしょう。Windows MediaはWindowsユーザーであれば誰でも視聴ができますので、公開時の設定が容易です。ただしMacユーザーは視聴することができないため、Macユーザーをフォローするのであれば、QuickTimeビデオを別途用意するか、Flash Videoで書きだす必要があります。
Flash VideoはWindows、Macの両ユーザーをサポートできますが、表示するためのswfプレーヤーを別途作成・用意する必要があるなどの手間がかかります。YouTubeなどの動画配信サービスを利用する場合は、それぞれのサービスに対応するフォーマットで書き出します。
動画の配信方法は大きく3つ
先に説明したように、映像データは配信方法に適した形で書き出す必要があり、自社サイトで公開する場合、配信方法は大きく3つあります。いずれかの方法を使って動画をWeb上にアップロードして公開してみましょう。
- YouTubeなどの無料動画配信サービスを使う
- 自社のWebサーバーを使用する
- 有料の動画配信サービスを利用する
1. YouTubeなどの無料動画配信サービスを使う
一番簡単なのはYouTubeなどの無料サービスを通じて公開することでしょう。YouTubeでは公開した動画の下にある[共有]ボタンをクリックし、[埋め込みコード]ボタンを押せば自社サイトに貼り付けるためのHTMLコードを簡単に作成できます。なお、ムービーメーカーには、YouTubeやFacebookに書き出す機能がついています。
YouTubeはHD動画のアップロードを推奨しており、手続きを踏めば時間も無制限です。配信無料で始められる魅力は大きいものがあります。ただし、あくまでもYouTubeは動画を使ったメディア媒体ですので、自社サイトで動画を再生中に他社の広告が表示されること、自社サイトからYouTubeへユーザーが移動してしまう可能性があることなどはあらかじめ認識しておく必要があります。
2. 自社のWebサーバーを使用する
自社のWebサーバーに動画をアップロードし、ダウンロード方式(ダウンロードとストリーミングの詳細は第1回を参照)で映像を配信する方法です。ユーザーのローカル端末に映像データが残ってしまうという欠点がありますが、新規にサーバーを手配することなく自社のサーバー環境を使えるという点は魅力です。
ただし、動画は画像やテキストと比較して大容量になりますので、サーバーやネットワークの管理担当者と事前に相談しましょう。2分の動画コンテンツを1Mbpsでエンコードしたときの容量は、約15MBになります。また、動画へのアクセスが集中した際に自社のサイト全体の表示が重たくなるリスクもあります。
動画ファイルへリンク・公開する手順ですが、ここでは、Windows Media Videoファイルを公開する前提で大まかなフローを記載します。
- Windows Media VideoファイルをWebサーバーへアップロードする。
- htmlにWindows Media Videoファイルのアップロード先を追加する。
- htmlをアップロードする
- Windows Media VideoファイルをWebサーバーへアップロードする。
- メタファイルを作成する。
- メタファイルをWebサーバーにアップロードする。
- メタファイルのURLをhtmlに記述する。
- htmlをアップロードする。
※HTMLソースやメタファイルの記述については、日本マイクロソフトのサポートページを参照ください。
3. 有料の動画配信サービスを利用する
公開手順の考え方としては、自社のWebサーバーを使用するときと大きく変わりません。上記のフローのなかで、動画ファイルの呼び込み先が、自社のWebサーバーにあるダウンロードファイルではなく、外部にある動画ファイルになるという点が違うくらいです。
外部の有料サービスを利用するメリットは、安定性やサポートが受けられる点です。人的サポートが受けられる場合は、自社の希望に沿って必要なリンク設定の手配などをしてくれますし、オンラインによるフルオートサービスの場合は、動画のアップロードやソースコードを自動生成する機能など、YouTube同様の簡単な操作で配信できます。また、マルチデバイス向けの動画変換サービス、動画のアクセス解析に対応しているサービスもあります。外部サービスの契約形態は、容量やデータ流用によってさまざまですが、月額1万円以下で利用できるサービスもあります。
◇◇◇
以上、ひと通り説明させていただきましたが、少しでも動画制作から公開までの裾野が広がり、情報伝達手段の1つとして動画の魅力や伝達力の高さ(視覚・聴覚からの同時情報入力)に触れていただければ幸いです。
動画で情報を発信してみようと考えたとき、「自社に適した動画はなにか」というのを一番知っているのは企画者である企業の担当者です。撮影も編集もセンスが問われますが、まずは動画を身近な存在として、いくつも作ってみることをお勧めします。そして、映画やテレビ番組、ネットの動画などをたくさん見て吸収し、技術を真似てみてはいかがでしょうか。ご自身で映像制作のフローがわかっていると、参考映像の見る際に「そうかこの手があったのか」と新しい発見も多いと思います。いずれも自分が視聴者だったらという観点で進めるといいでしょう。
今回は自社スタッフのみでの制作を想定していますが、手に負えない規模やクオリティを求めたときには、弊社も含め、プロに依頼することを検討してみてください。
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