Web担当者たるもの、かくあるべし 「Web担道」秘伝の書

(2)小さなヒットをコツコツと打つ

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(2)小さなヒットをコツコツと打つ

“ホットユーザー”の仮説が立てば、前回お伝えした「ターゲットに刺さるモノを、刺さる場所に送り込む」段階となる。

「小さなヒットを打つ」とは、小さな施策の積み重ねから「黄金ルート」を少しずつ見つけ出すことだ。Webサイトの効果測定ができていれば、施策Aが良かったのか、施策Bが良かったかが判断できる。この繰り返しのなかからあなたのWebサイトにおけるオリジナルの指標を見付け出していくのだ。先にも述べたが、経営者は“量”の話をしがちだが、成約につながる過程の“率”の指標を見つけ出し共有することが、経営層の納得と信頼を勝ち得ていくのだ。単純な問い合わせや資料請求件数だけでなく、もう一歩深掘りした数値指標を見つけ出すことがポイントとなる。

また、この段階では多種多様な施策にチャレンジしてみてほしい。くどいようだが、効果測定ができることが必須だ。

Web→リアル 一気通貫の効果測定

たとえば人材派遣会社Webサイトを例にとると、コンバージョンポイントの1つとして、求職者の「登録申し込み」がある。もちろんこの「登録申し込み」が一定量あることは重要な指標なのだが、Webサイトの「登録申し込み」を獲得するだけで彼らのビジネスが完了するわけではない。その後リアルの窓口に来社してもらい、直接面談した後に「登録完了」となる。さらには登録したユーザーが企業とマッチングし、晴れて業務を開始してから派遣会社として収益があがるのだ。

一般的には、Webからリアルチャンネルに移行したときに、データが途切れてしまう場合が非常に多い。進んだ人材派遣会社であれば、Webの登録データとリアルチャンネルを連動してWebのコンバージョンを計測している。

特定のWeb集客施策でリアルチャンネルに送り込んだユーザーが、リアルでの収益率が高い、という事が見えるような「Web→リアル一気通貫の効果測定」がこれからの時代は求められてくる。

(3)PDCAよりCACA

この段階で、PDCAサイクルを回して施策の精度を上げていく、と考えたくなるが、壮大なPDCAサイクルをプランニングして実行しても成果はなかなか見えてこない。そこでおすすめする秘伝は、「C(Check)→A(Action)の回転を短期間で繰り返すこと」だ。サイト立ち上げときにおける長いスパンのPDCAサイクルは、たとえるならアマチュアがホームラン狙いで大振りするようなものだ。アマチュアであれば、まずはバントでバットに確実に当てることから始めよう。

このCAサイクルを何度も回すことで、「黄金ルート」すなわち高いROIを見つけ始めた、ということになるのだ。

また、先述の事例のようなアタックリストを営業部隊に提供することである場合、自分の部署からリストが手離れしても、リストのなかの1件1件がどういう結果になったかを追えるようにしよう。そこまで追ってこそ「黄金ルート」と呼べるのだ。

(4)獲得単価を見つけ出せ

高いROIを発見できた!と言っても、この段階でそれだけに少ない予算をすべて投下するのは無意味だ。もっといろいろと試していこう。小さなヒットを打つための小さな失敗であれば、この段階で大きな痛手にはならないし、むしろ今後を考えれば「このパターンはない」ということが学習できるよい機会となる。自分で最適だと思った範囲のなかで、できるだけ多くの施策を打ってみる。そうすると、いろんな小さなヒットを狙っているうちに、獲得単価の幅が見えてくる。さらに施策ごとに獲得できる件数も見えてくるだろう。

次に、さまざまな結果が得られてくれば、それらを整理して獲得単価の許容範囲を見つけ出そう

たとえば、獲得単価が1,000円から3,000円のさまざまな施策で、100件獲得できたとする。この獲得単価幅で、この件数は許容範囲かどうかを検証するのだ。もちろん獲得単価が低いことに越したことはないが、件数が少ないのでは意味がない。獲得単価と獲得件数を吟味しながら、ここでさらに“黄金ルート中の黄金ルート”の仮説を立てるのだ。それが許容範囲になっていく。

ここまで来れば、経営層にも予算獲得へ向けた合理的な説明・説得ができる材料が出揃ったといえる。

経営層と共有する“ものさし”とは、決して“量”ではなく、“率”すなわちROIなのだ。

どこから来た潜在顧客がどれだけ獲得につながったか、流入先ごとの獲得数を計測したデータを取り続け、「徹底的な数値による報告」の習慣化とROIに特化した報告が、“ものさし”を共有することになる。

経営層から予算を引っ張る準備と交渉術

経営層というものは、最終的には投資対効果しか見ていない。このことは、Web担当者といえども肝に銘じておいてほしい。「今どきWebは重要だ」ということは理解していても、投資対効果(ROI)が低ければコストセンターだと判断されてしまい、必然的に予算は縮小傾向になる。たった1人のWeb担当者であったとしても、経営者の目線を知っておくことはビジネスマンとして重要だ。

これを踏まえて、経営層から予算を引っ張り出す交渉術の秘伝をお教えしよう。それは「経営層に獲得件数だけを言わせる」ことだ。

獲得単価1,000円~3,000円のさまざまな施策で合計100件/月を獲得したとしよう(許容範囲を検討すると、実際には1,500円から2,800円で90件/月といったところだろう)。

“率”のものさしで共有したはずでも、経営層は“量”でも判断しなければならないので、獲得件数を約10倍の1,000件/月が可能かどうか尋ねてくる。期間も3か月ほどになるかもしれない。ここであなたが答えるべき言葉は「ムリです!」ではなく「プランニングします」だ。テストマーケティング段階での予算は、単純計算だが、約20万円/月しかなかったものが、200万円/月になり、3か月総額で600万円になるかもしれない。

こうなると次のレベルでの外部パートナーを選定するコンペも可能になる。詳細は次回で解説するが、経験則から言えば、500万円を越える予算規模であれば、一定レベルを越えた外部パートナーを使えるようになる。ノウハウや実積を専門的に持っているため、想定しているROIよりも効率的になる可能性もある。

もちろん、もっと少ない獲得件数を言われることもある。その場合は、予算額をもとに外部パートナーにコンペ可能か相談すれば良いのだ。外部パートナーが無理と言うのであれば、再度あなた自身で施策実施し、次の予算獲得のチャンスまで実績を積めば良いだろう。

ただ、獲得単価を無闇に低めに設定される場合は、しっかりと経営層と議論すべきだ。獲得単価を低くすると獲得件数も下がることを、論理的に数値で経営層に示せば良い。もしくは、獲得単価を低くする理由を聞けば、もしかすると自分でも気づかなかった方法を知る機会になるかもしれない。こうやって立ち上げ期のWebサイトに経営陣も深く巻き込むことができれば、結果的にWebサイトの成功への近道になる。

◇◇◇

次回は、立ち上げ期を脱し、成長期に入ったWebサイトを、どうやってさらに成長させるかをテーマに解説しよう。

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