Webで簡単に結果をだす方法。客を選べば格差社会が味方となる
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の百九十九
キング牧師に寄せて
私には夢がある
2010年夏の民主党代表選挙で小沢一郎さんが語り、菅直人さんがパクった話ではありません。90年代半ば、米国の公民権運動に殉じたキング牧師へのリスペクトで、こう続きます。
ホームページ屋の存在を、誰もが当たり前と受け止める日が来ることを
21世紀も10年が経ち、ホームページについての理解も深まった、というのは我々業界人の思い上がりです。昨年、「仕事」をテーマにした小さな講演を、高校生向けに行いました。そこで「ホームページを作っている」と自己紹介したところ、終了後のアンケートに「そんな職業があることを知らなかった」と書かれていました。「業界」の外側に一歩踏み出せば、驚くほど知られていません。
ホームページ屋が「当たり前になる」ということに込めた意味は、すべての中小・零細企業が活用するようになれば、町内だった商圏が関東に広がり、関東から世界へとつながり、連れて日本経済が活性化されるであろうということです。だから私は同業者を応援します。
今回は連載200回直前スペシャル。ホームページ屋が簡単に結果を出す方法について。
商売として成立している
ホームページ屋の社会的認知を高める最適解は「結果」を出すことです。街の看板やポスター、あるいはチラシのように「結果」を積み重ねれば、誰も必要性を疑わなくなります。「結果」の出し方については、次より述べるとして、認知度向上には「街のホームページ屋」が増えることも重要と考えています。
「ツイッター」や「業界」にいるとホームページ屋の多さに閉口しているかもしれませんが、業者は「都心とネット(の中)」に集中しており、地方やリアルの街角ではグッと減ります。いまだに「ウチには関係ない」とホームページを遠ざけている企業の多くは、ホームページ屋との接点がなく、その役割と活用法を教えてくれる存在と出会っていないのです。ホームページ屋なのだからネットでというのは業界の傲慢です。ネットを活用しない顧客層に「続きはWebで」と案内するCMのミスマッチを想像すれば答えは明らかです。
つまり、潜在的需要をWeb業界が拾いきれていないことも、認知度の低さの一因になっていると見ています。それは圧倒的「知名度」を武器に地方の営業拠点を強化している「楽天市場」の動きと対照的です。
結果を出す方法は2つ
結果を出すための簡単な方法は2つあります。一番手っ取り早いのは「セレブ」の仕事を手がけることです。かつての六本木ヒルズの寵児は、著名人のホームページ制作を皮切りに金儲けの階段を駆け上がったといいます。「セレブ」の多くは自尊心が強く、裏返しに自分の決定を否定することを嫌います。つまり失敗を認めることはまれで、「受注」してしまえば「結果」は約束されたのも同然です。そして、その自尊心が「紹介」を生みます。自分が認めたものを人に勧めたがるのも自尊心だからです。また「セレブ」の友人は「セレブ」で……以下同文。さらに「紹介」による取引は、
紹介者の信用
という信頼感の上に成り立つので、さらに有利な取引が期待できます。
日本身分社会
日本は身分社会です。違う「階層」の人間と接点が生まれにくい社会構造が身分を生み出しました。政治家とテレビタレントを見れば明らかなように身分は世襲されます。たとえば、幼稚園や小学校の「お受験」をする「社会階層」は元ヤン(元ヤンキー・不良)の属する世界ではありません。中学受験や大学受験でも上位校になれば状況は同じで、2009年に文部科学省の専門家会議は、世帯年収と学歴には相関関係があると発表しています。
こんなこともあります。ある漫画家の政治活動に、全国紙の女性記者がツイッターで援護射撃しました。また、少し前には漫画家の新刊を記者は「記事」として紹介していました。漫画家は元首相と深い縁があり、新聞記者も「セレブの家柄」で、両者は高校時代の同級生。「セレブ」は「セレブ」と親交を深め、「ヤンキー」は「元ヤン」とつるみます。
商売の王道を走る
庶民のひがみではなく、元ヤンのご子息の多くが、後ろ髪だけやたら長いように、同じ身分同士で価値観を共有しており、「紹介」などにつながりやすいのです。また、「旧車」「VIPカー(改造車)」などを取り扱う商売においては「元ヤン」は「セレブ」と同義です。本稿においての「セレブ」とは、その世界で主導的立場にある人と定義してもいいでしょう。
また「セレブ」を頼らずに簡単に結果を出す方法もあります。飲食店なら「旨い」と客に言わせ、マッサージ師なら「上手い」と喜ばれることが「結果」を出すことで、ホームページ屋なら客の商売を成功させることです。
次に、ちょっと視点をずらして「結果を出しやすい客」を探します。
どこにでも必ずいる
結果を出しやすいお客の条件はもう1つあります。それは、
特殊な商売
だということです。一般客を相手にしていないと思われる商売なら、なお良いでしょう。たとえば、自動車用リフトメーカー「日整工業」のホームページには、日本全国の「一般家庭」からの問い合わせが入ります。自宅にマイカー用のリフトを設置しようと思っても、そもそも「リフト屋」が少なく、どこの街角にでもあるそば屋のように簡単に見つけられるものではありません。すると、「ネットで検索」して探してくれます。市場(パイ)は大きくなくても、ライバルが少なければ「結果」は上がりやすく、さらに特殊な業界は「ホームページ屋」の出入りも少なく、SEOの基本を押さえるだけで検索結果の上位に食い込むことは簡単です。
そして、結果を出せば「クチコミ」が客を連れてきます。ツイッターの「クチコミ」より換金……マネタイズしやすいこと請け合いです。特殊な業界は他にも「砥石製造業」「発泡スチロール屋」「製麺機械製造業」などなど。他にも「老舗」や「日常」といった、地域特性にあった「結果の出しやすい客」はありますが、そちらは別の機会に。
1つの町内会に1つのホームページ屋。そんな時代が来ることを年初に夢見ております。
今回のポイント
ホームページ屋の市民権向上にセレブのクチコミを活用。
結果を出しやすい客はいる。
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