大規模サイトのリニューアルとオンラインブランディングの新しい挑戦/富士フイルムの場合
次のリニューアルに向けて……
「以前のウェブサイトは、あまりにも情報量が増えすぎてしまっていたため、それを整理するのに3~4年かかってしまいました
」という安東氏。すでに社内では、次のウェブサイトのリニューアルに向けて準備がスタートしているそうです。
「写真やカメラのイメージが強いなかで、B2Bの領域が広がってきていることが伝わりにくいので、(次回の)リニューアルで、情報構造の見直しや、それぞれの分野ごとに最適な訴求をしていきます。
今のfujifilim.jpは、言ってみればカタログサイト。富士フイルムはこんなことをしていますというエモーショナルな部分、ビジネスにつながる部分、お客さまからとってみると自分たちにとって何をしてくれるのというプラスアルファの部分の情報も提供してきたいですね
」(安東氏)
リニューアルに向けて、現サイトの課題について、アクセス解析のデータを活用したり、アンケート調査を実施したりしているのでしょうか?
「リニューアルにあたって、ユーザビリティ調査をしています。富士ゼロックスが数年前から実施していた調査を弊社でも実施することにしました。ユーザーの使い勝手がどうなのかをデータで示してもらって、リニューアルに役立てていきます
。
また、アクセス解析については、これまで1つのプロモーションの集客効果しか見ていなかったため、ユーザーの動線が想定どおりかどうかの確認などはできていませんでした。現在、ユーザビリティ調査と同時にユーザー動線も確認していっているところです
」(長谷川氏)
「(リニューアルが)4年に1回だと感覚的にはちょっと遅いかなと思っています。特にいま、会社が第二の創業ということで、新しい富士フイルムを打ち出していく最中なので、サイトリニューアルも含めて柔軟に更新できるようにしていきたいですね
」(安東氏)
B2BもB2Cもやっている電機メーカーのサイトなどを参考にしているという安東氏。次のリニューアルに向けて、準備は着々と進んでいるようです。ちょうど6月26日に、リニューアルの一環として、富士フイルムホールディングスのウェブサイトで「株主・投資家情報」のコーナーが全面リニューアルされました。この先、富士フイルムホールディングスをはじめ、富士フイルムの公式サイトを大幅にリニューアルしていくとのことですので、今後どのようなサイトが公開されるのか、今から楽しみです。
タッチポイントの拡大には、社内コミュニケーションが重要
マス広告や交通広告は宣伝部、ウェブサイトはインターネット室、そしてプレス対応は広報部というように、富士フイルムの情報発信は多部門にわたります。
「新聞発表されたその日に、その情報がウェブに掲載され、お客様のタッチポイントが連携しているのが理想的
」という安東氏。広告や広報も含めて、インターネット室としてタッチポイントの拡大戦略をどのように考えているのでしょうか?
「タッチポイントが拡大するなかで、いかに同じ1つの企業としてお客さまにコミュニケーションするかが重要だと思います。店頭とネットの印象が違うというのはよくないですよ。今はそういった意味で企業が試されているときと思います
。
いつ企業の情報に触れられるかわからない。そういう怖さがある反面、逆にうまくそこを管理できると、ファンになっていただけたりロイヤルカスタマになっていただけるという可能性が広がっています。こちらとしてもやりがいがありますし、注力していきたい
」(安東氏)
そのためには、部門間の連携が重要になってきます。富士フイルムでは、部門を越えた情報共有はどのように実現しているのでしょうか?
「2004年から2006年にはコーポレートコミュニケーション部という上位の共通組織があって、ある程度情報共有を密にやっていたので、もともとコミュニケーションのインフラはできています。現在は、組織の枠組みにとらわれず案件に応じて部門横断的に連携しています
」(安東氏)
「さまざまな広告を通じて、富士フイルムの事業の広さを知ってもらうことが目的のand-fujifilm.jpというサイトがあります。2年前のサイト開設当時はクロスメディアという発想やストーリーがまだ薄かったのですが、昨年末の企画から、ウェブもかなり意識したクリエイティブになり、タッチポイントを増やしていく方向にシフトしています
」(長谷川氏)
and-fujifilm.jpでは、企業メッセージを中心に、新聞広告、TVCF、ラジオ広告をオンラインで一覧できるようになっています。新聞広告は1日だけの掲載になってしまいますが、そのほかの広告と一緒に企業の取り組みをトータルで伝えることができるのも、ブランディングサイトの大きな役割です。
東京ミッドタウンに移転したオフィスでは、広報部門やIR部門もインターネット室と同じフロアになったそうです。「またイントラネットで広報部との連携が密になったので、次は社外広報の部分でも連携して、ネットPRを展開していきたい
」と安東氏。
インターネット室発のニュースリリース
fujifilm.jpには、「ニュースリリース」と「お知らせ」の2つのコーナーが並んでいます。「ニュースリリース」は広報で一般紙に向けて出しているもの、「お知らせ」は各部門で発表している業界紙向けに発信した情報やサイトの更新情報、のように区別しているそうです。
現在、「お知らせ」をインターネット上に流通させるためにニュースリリースポータルを活用しています。その執筆を担当しているのはインターネット室とのこと。「一度読んだらそのページだけで離脱する、直帰率が高い
」(長谷川氏)という「ニュースリリース」と「お知らせ」。これらをネット上に流通させることの期待と効果について聞いてみました。
「(リリースポータル活用)当初は、一般紙向けのプレスリリースをニュースリリースポータルに掲載していました。一方で、写真コンテストやキャンペーン情報などの「お知らせ」を載せたらお客様の反応はどうなるだろう、ということで掲載してみたところ、関連情報への訪問が思ったよりも多く、効果が高いと感じました
」(長谷川氏)
News2u.netに掲載されているリリースにも、本文中のリンクの位置の工夫や、関連サイトのリンク。また、それぞれのURLにトラッキングコードを付けて効果測定をするなど、さまざまな工夫が見られます。
「関連リンクについては、コンテンツが豊富だということをアピールしています。同時に、SEOの外部リンクを増やす対策としても考えています。
「お知らせ」の文章は、発表したものを一部リライトしています。書き方は内容によってケースバイケースですが、元の文章の意図が変わらないよう、リライトする際はその点にも注意しています
」(長谷川氏)
「SEOの視点でリリースが書けるのは、インターネット室だから
」という長谷川氏。リリースポータルの活用で「自社ウェブサイトへのアクセスアップやサービスの認知に広げていきたい
」と語ってくれました。
四川省大地震への支援や温暖化対策などCSR関連のニュースリリースについては、「一般のお客さま向けの製品発表などと比べるとアクセス数は少ないながらも、企業活動においては重要な情報
」という長谷川氏。
変化する企業のリアルタイムの情報を提供する企業ウェブサイトはまさに自社メディアです。
時代との共生も含めて、常に“メディア”としての最適化に取り組み続けなればならない企業ウェブサイト。その果たす役割の大きさを改めて実感しました。
コメント
日産に
日産にリンクが…
修正しました
編集部の安田です。ご指摘ありがとうございます。
うっかりとリンク先が間違っている部分が残っていましたが、修正いたしました。
間違った状態でご覧になった方、富士フイルムの方、ならびに関係各位にはご迷惑をおかけいたしました。申し訳ありません。