Web 2.0時代にCMSが果たす役割はSEOやアクセス解析にも効くCMS

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Web 2.0時代にCMSが果たす役割は
SEOやアクセス解析にも効くCMS

ここまでの解説で、CMSがサイト運営にどのような役割を果たすのかの基本的な部分を説明した。しかし、CMSの力はこれだけではない。

たとえば、今どきアクセス解析をしていないサイトはあり得ないだろう。アクセス解析の中でも、最近はページのHTMLの中にJavaScriptを埋め込んで使う「ビーコン型」と呼ばれる仕組みが中心になっている。また、そのJavaScript上で製品名や価格をアクセス解析のデータに重ねて登録することで、ECサイトならばどの商品がどう売れたかなどの高度な解析ができるものもある。また、どのリンクをたどってユーザーが移動したのかを確認するために、サイト内のリンクのURLに特定のパラメータを追加するやり方もある。こういったJavaScriptやリンクURLの指定も、CMSを使っていれば簡単にできる。

また、サイトを作るときにSEOを考えないことはあり得ないだろう。SEOでは、metaタグやtitleタグを正しく指定したり、適切にh1やh2などの見出しタグを使って構造化されたHTMLにしたりする必要がある。CMSでテンプレートをうまく設計しておけば、SEOを知らない人がページを更新してもある程度のSEO効果を確保することも可能だ。

すでにJIS化されて徐々に浸透してきているアクセシビリティや、ユーザーがサイトを使いやすくするユーザビリティなども、正しく設計したテンプレートを使うことで、SEOと同様にだれが更新しても効果を持続できる。

いまさらRSSナシはあり得ない

RSSはWeb 2.0のなかでも重要な役割を果たすものの1つだ。企業のウェブサイトにおけるRSSの役割としては、主にRSSリーダーを使っているユーザーに対して確実にサイトをアピールできることが挙げられる。

昔ならば、サイトをお気に入りに登録してもらうことは重要なことだと考えられていた。最近ではこれがRSSリーダーに登録してもらうことに変化しつつある。そして、RSSリーダーにサイトを登録してもらうには、当然サイトでRSSを出力しておく必要があるのだ。

CMSを使っていればRSSの出力も非常に簡単だ。RSS用のテンプレートを用意して、どの情報をRSSに載せるかを決めるだけでいい。CMSなしにRSSを出力しようと思うと、いちいちRSS用のデータを手入力で作る必要があり、現実的ではない。

確かに、RSSリーダーを使っているユーザーは14.8%と、多くはない(『インターネット白書2006』より)。しかし、情報過多の時代に適切に情報収集をするにはRSSリーダーが必須になってきているし、現時点でRSSリーダーを使っているのは、ネット上で他の大勢のユーザーに対する影響力のある先進的なユーザーだとも考えられる。そういったユーザーにとって、サイトでRSSを出力していないことは、「うちは別に定期的にチェックして見に来てほしいわけじゃない」という拒絶のメッセージと同じだという意見もある。RSSはニュースサイトとブログだけのためにあるのではないのだ。

インタラクションのためにもCMS

企業にとってのWeb 2.0とは、ある意味では、ネットを通じたユーザーそれぞれとのインタラクションであると考えることもできる。インターネットがごく普通のインフラとして使われる時代において、ネット上のユーザーと自社のサイトの間でどのようなインタラクションを生み出せるかは、どんな企業のサイトでも検討するべきだろう。

わかりやすい例で言うと、トラックバックだ。『インターネット白書2006』によると、何らかの形でブログを公開している人は、インターネットユーザーの26.8%にものぼる。このブロガーたちとの関係を少しでも強めるために、トラックバックを受け付ける機能をサイトに追加したいと思うこともあるだろう。それもCMSを使っていれば簡単だが、そうでなければ面倒なことになるだろう。

トラックバックはわかりやすいシンプルな例だが、それ以外にも自社のビジネスや顧客層、サイトの目的に応じて独自のユーザーインタラクションを打ち出そうと動きが多くなるだろう。その場合にも、サイトがCMS化されていれば、新しい機能や仕組みを追加する手間やコストは非常に低くなる。また、既存のサイトを管理することで担当者が手一杯だったら何もできない。CMSで運用の手間を減らすことで、新しいことを考える余裕が生まれるのだ。

単なる更新ツールではないCMS

ここまでの解説では、サイトの管理や更新の手間を軽減する「更新ツール」としての、ウェブCMSを解説してきた。もちろんそういった作業の効率化はCMSの重要な側面なのだが、CMS=ウェブCMS=単なる更新ツールと考えると、将来を見誤る。CMSは、本来「コンテンツ」をいかに管理して、いかに最適な状態で出力するかのためのツールなのだから。

そういう意味では、基幹システムと連動して商品データベースの内容を変更したらウェブサイトにもその変更が反映されたり、カタログ冊子の内容もウェブサイトの内容も同じコンテンツソースから作り出したりといったことが可能なECMS(エンタープライズCMS)も視野に入れておくのがいいだろう。もちろん、ECMSの導入はウェブCMSの導入の何倍も大変な、全社的なプロジェクトになるのは事実だが。

ウェブCMSも常に進化し続けている。たとえば、FatWireはCMSの機能としてのアクセス解析を、「FatWire Analytics」として5月にリリースした。既存のアクセス解析ツールはページ単位の解析だが、FatWire Analyticsでは、個々のアセット(コンテンツ)単位でのアクセス解析が可能になっている。また、同社のセグメンテーションエンジンであるEngageと組み合わせて使うことで、アクセス状況に応じて表示する内容を変更することも可能になっている。

検索エンジンでどのような検索をしてサイトにたどり着いたのか、サイト内でどのようなページを見たかによって、ユーザーにどんなコンテンツを表示するのかがリアルタイムで変わるような仕組みも、CMSの機能を使って簡単に実現できる時代がもうそこまで来ているのだ。

あと数年すれば、コンテンツを入力するとCMSが「SEOを考えるともう少し○○や△△という単語を増やしたほうがいいでしょう」「ボタンは上と下の両方に配置して、色を明るくしたほうがいいでしょう」などと教えてくれる時代が来るのかもしれない。

動的・静的とインストール・ASP

CMSは、いくつかのタイプに分けられる。

最も重要なのは、静的HTML生成タイプと動的ページ出力タイプだろう。「静的」タイプは、あらかじめサイト全体のHTMLページを生成して公開サーバーにアップロードしておくタイプで、CMSサーバーはウェブサーバーとは別の場所にあることもある。「動的」タイプは、サイトの訪問者がページを見ようとしたときにリアルタイムでページの内容をCMSが作って送り出すタイプで、CMSサーバーはウェブサーバーと同じサーバーになることが多い。

どちらも一長一短あるが、大きな特徴をいくつか紹介しておこう。

静的タイプでは、CMSのサーバーにセキュリティ上の問題があって停止する必要があったり、そもそもCMSを変更したりしても、ウェブサーバー上にHTMLファイルがある限り、訪問者への情報提供が止まらないことが大きなポイントだ。

動的タイプでは、そもそも静的タイプでは実現できない高機能なサイトを実現しやすいことが大きなポイントとなる。

もう1つのタイプとして、CMSがインストール型かASP型かという分類がある。「インストール型」は、自分でサーバーを用意してそこにインストールするタイプで、「ASP型」は、事業者がCMSをサービスとして提供していて利用者はCMS用のサーバーを自分で用意する必要がないタイプだ。

インストール型の特徴としては、サーバーを自社ネットワークに置け、CMSに登録したコンテンツもすべて自社がコントロールできる代わりに、サーバーを管理する必要があることが挙げられる。セキュリティ面の規約から社外のサービスを利用できない場合はこちらのタイプを使うしかないだろう。

ASP型の特徴としては、サーバーやCMSソフトウェアの管理はサービス提供事業者が行うため、面倒なシステム管理をする必要がないことが挙げられる。CMSがバージョンアップする場合でも、自社で何もしなくていい。また、社外のスタッフがCMSサーバーを利用する場合にもASPサービスならばアクセス権を設定すればいいだけなので便利だろう。

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.1』 掲載の記事です。

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