ビルディ コンテンツ部 クリエイティブチーム リーダー 戸田夏海氏。2022年、ビルディにクリエイティブデザイナーとして入社。翌年クリエイティブチームに配属後、SNSの運用担当をスタート。ショート動画制作では企画から編集まで一貫してチーム内で担う。バナー制作やパンフレット・カタログなどの印刷物の制作をはじめ、プライベートブランドの製品デザインや、ビルディが国内総代理店を務める電動工具ブランド「DCK」の国内向けパッケージデザイン・公式サイトの運営など、ビルディに関わるあらゆるクリエイティブ業務を担う。
ビルディECの成長を支える戸田氏のコンテンツ戦略
――工具のBtoB-EC市場において、ビルディはSNS活用で認知拡大や集客に成功している。EC事業における近年の実績について聞きたい。
ビルディ 戸田氏(以下、戸田氏):BtoB-ECの売上高が全社売上に直結しており、2025年5月期の売上高は35億1900万円を達成し、前期比20.8%増となった。この実績には、自分が推進したSNSの内製化とショート動画戦略が貢献している。
2022年に入社、その年に新設されたコンテンツ部に配属され、ECへの流入を担うデジタル戦略を担ってきた。翌年の2023年は、SNS経由の自社ECサイトへの流入(新規会員登録)が前期比48.3%増を達成。以来、流入数は堅調に伸長し、2024年5月期は前期比微増のペースで手堅く推移した。

工具を中心にBtoB向けの商材をECで展開するビルディ(画像はECサイト)
プロの心をつかむ「100万回再生」ショート動画
――従前は外注していたSNS運用を戸田氏が着任後、企画から編集までほぼすべて内製化した。この戦略転換の狙いはどこにあるのか。
戸田氏:内製化の狙いは、「職人のリアルなニーズに、迅速かつ的確に応えるコンテンツ」を提供することにある。外注では難しかった、工具への深い専門知識と、職人目線での「かっこよさ」や「比較」といったコンテンツを、短い動画でスピーディーに配信することが可能になった。

ビルディでは短尺かつ商品の特長が伝わる動画を次々とアップしており、多くのフォロワーを抱える(画像はビルディのTikTok公式アカウントから)
――具体的にはどのような動画コンテンツか。
戸田氏:特に成功しているのはショート動画だ。TikTokでは、プロ向けの新型工具をいち早く紹介した動画が100万回再生を超えた。また、工具の比較動画では、プロが本当に知りたい情報を簡潔に提供し、高いエンゲージメントを獲得している。
戸田氏:SNSの「ストーリー」機能は営業日はなるべく毎日アップし、ビルディが実施している日替わりのセール情報などを欠かさず届け、ECへの直接的な流入を促している。その結果、Instagramのフォロワーは直近1年強で36.6%増の約7000人、TikTokも2万1100人を超えるフォロワーを獲得できた(2025年9月時点)。
SNSはTikTok、Instagram、X、YouTubeなど、複数のSNSチャネルを運用している。全体のフォロワー数を合算すると約4万人となる。
多角化したSNSチャネルと新規顧客獲得
――複数のSNS運用による、発信チャネル多角化の狙いはどこにあるか。
戸田氏:プラットフォームごとにユーザー層やコンテンツの受容性が異なるため、多角的に発信することで、工具を探す幅広い職人層との接点を最大化している。自分がコンテンツ部に参入しSNS活用を加速した2023年、新規会員登録が前期比48.3%増という成果が出たのは、Web広告に頼るのではなく、オーガニックなコンテンツを通じて潜在顧客にリーチできたことの証明であると思っている。
――戸田さんが担う業務について、具体的には。
戸田氏:SNSは、企画、撮影、編集、アカウント運用まで担っている。企画は、とりあげる商材に詳しい社内スタッフに相談しながら行うことが多い。たとえば工具の紹介動画の場合、電動工具の知識に富んだスタッフに相談しながら制作した。
入社前は異業種にいたため、動画制作やSNSアカウントの運用は初めてだったが、手探りで知見を積み上げてきた。
工具の比較動画。社内スタッフと連携し、戸田氏が指揮をとってSNS配信用の動画を制作している
――一般的にTikTokやInstagramは若い年代を中心に見られることが多い印象だが、ビルディのSNSアカウントを実際に見ている年齢層はどうか。
戸田氏:フォロワーの年齢層は幅広い。セール情報を細やかに配信していることもあり、頻繁にチェックしてくれている人が多い。ボリューム層は男性30~40代となっている。
工具の比較動画のように、たくさんのメーカーのアイテムを紹介することができるのは、ビルディがD2Cではなく、販売店だからこそできること。さまざまなアイテムを、ディテールや操作感までていねいに伝えている。
クリエイティブ全般を内製化するインフラ改革
――SNS運用以外で注力したクリエイティブ面での取り組みはあるか。
戸田氏:SNSだけでなく、プライベートブランドの製品デザインや、国内総代理店ブランド「DCK(ディーシーケー)」のパッケージデザイン・公式サイト運営など、ビルディに関わるあらゆるクリエイティブ業務を内製化し、自分が担っている。DCKのSNSも運用しており、DCKの広報も担当している。
内製化により、ECサイト全体のブランドの一貫性を保ちつつ、クリエイティブ制作における外注コストの削減と、リードタイムの短縮を実現した。ビルディの継続的な成長を支える要因の1つになっている。

2024年9⽉からビルディが国内総代理店を担っているプロ⽤電動⼯具グローバルブ ランド「DCK」