東京商工リサーチが実施した賃上げに関する企業アンケートによると、2025年度に約85%の企業が賃上げを予定していることがわかった。中小企業で賃上げの引き上げ率「6%以上」を見込む企業は約9%にとどまっている。有効回答は5467社で、調査期間は2025年2月3日~10日。
2025年度に賃上げを実施するかどうかを聞いたところ、「実施する」と回答した企業は85.2%。2024年度の84.2%を1.0ポイント上回り、東京商工リサーチが調査を開始した2016年度以降で最高を更新する見込み。
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賃上げの動向(年度推移)
企業規模別では、「実施する」は大企業が92.8%(378社中、351社)と9割を超えたが、中小企業は84.6%(4900社中、4147社)にとどまり、8.2ポイントの差が開いた。
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2025年度に賃上げを実施するか
賃上げを「実施する」と回答した企業に対し、賃上げ率(全体)は2024年度と比較してどの程度を予定しているかを聞いたところ、全体で「5%以上」と回答した企業は36.4%(875社)、中小企業で「6%以上」と回答した企業は9.1%(2251社中、205社)だった。
日本労働組合総連合会(連合)は2025年の春闘方針で賃上げ率を、全体で「5%以上」、中小企業は「6%以上」と掲げている。この結果を見ると、中小企業が6%を達成するハードルは高いと見られる。
全体では、レンジ別の最多は「3%以上4%未満」の28.7%(692社)。「5%以上6%未満」が27.4%(659社)、「2%以上3%未満」が15.8%(381社)で続いた。
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前年度比の賃上げ率
2025年度に賃上げを「実施する」と回答した企業を対象に、向こう5年先まで見通した場合、毎年の賃上げを実施できそうか聞いたところ、全企業で最も多かったのは「毎年実施できるか不透明」で29.3%(4292社中、1258社)。次点は「おそらく(60%程度)毎年実施できる」で28.8%(1237社)となっている。「毎年実施するのは難しい」と回答した企業は5.3%(228社)だった。
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向こう5年先まで見通した場合、毎年の賃上げを実施できそうか
2025年度に賃上げを「実施する」と回答した企業に、賃上げする理由を聞いたところ、最も多かったのは「従業員の離職防止」で78.0%(3,359社)だった。続いて、「物価高への対応」が71.7%(3087社)、「新規採用を円滑にするため」が50.1%(2159社)となっている。「業績向上分の還元」は33.3%(1435社)、「業績見通しの好転」は7.6%(328社)だった。
「新規採用を円滑にするため」は大企業が72.1%(337社中、243社)で、中小企業の48.3%(3966社中、1916社)を23.8ポイント上回った。
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賃上げする理由(企業規模別)
「従業員の離職防止」を理由にあげた企業を産業別に見ると、「2024年問題」などでドライバー不足が深刻な運輸業は87.2%(173社中、151社)と突出した。
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賃上げする理由(業種別)
2025年度に賃上げを「実施しない」と回答した企業に理由を聞いたところ、「原材料価格・電気代・燃料費などが高騰している」が49.5%(350社)で最も多かった。
企業規模別で見ると、「受注の先行きに不安」は、中小企業が45.6%(683社中、312社)で、大企業の17.3%(23社中、4社)を28.3ポイント上回った。「増員を優先」は、大企業が26.0%(6社)で、中小企業の9.8%(67社)を16.2ポイント上回った。
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2025年度に賃上げを実施しない理由
賃上げ実施状況別に、コスト高騰分の価格転嫁割合を聞いたところ、「価格転嫁できていない」の構成比は、賃上げを実施する企業では17.3%(2365社中、411社)、賃上げを実施しない企業では36.4%(422社中、154社)となっている。
価格を転嫁できた企業の転嫁割合は、賃上げを実施する企業では「1割」が最も多く、26.5%(629社)だった。次いで「5割」が13.0%(309社)となっている。すべて価格転嫁ができた「10割」は5.4%(130社)だった。
賃上げを実施しない企業では、「1割」が30.8%(130社)、次いで「2割」が8.7%(37社)、「5割」が6.6%(28社)となっている。
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賃上げ実施企業、賃上げ非実施企業における価格転嫁の割合(前年度比)
賃上げを実施するうえで必要なことを複数回答で聞いたところ、最多は、「製品・サービス単価の値上げ」の70.5%(5467社中、3,856社)。これに続いて、「製品・サービスの受注拡大」の59.9%(3275社)、「従業員教育による生産性向上」の47.9%(2621社)となっている。
企業規模別では、「従業員教育による生産性向上」が大企業58.8%(420社中、247社)に対し、中小企業47.0%(5047社中、2,374社)で11.8ポイント、「設備投資による生産性向上」が大企業35.4%(149社)に対し、中小企業24.2%(1226社)で11.2ポイントの差がついた。大企業ほど生産性向上で賃上げ原資の捻出をめざす傾向が強い。
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賃上げを実施するうえで必要なこと(企業規模別)
小売業では、「製品・サービス単価の値上げ」を回答した企業が最も多く、65.7%(280社中、184社)だった。これに続いて、「製品・サービスの受注拡大」が55.3%(155社)、「従業員教育による生産性向上」が48.2%(135社)だった。
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賃上げを実施するうえで必要なこと(産業別)
調査の回答企業は5467社で、調査期間は2月3日~10日。東京商工リサーチは「定期昇給」「ベースアップ」「賞与(一時金)」「新卒者の初任給の増額」「再雇用者の賃金の増額」を賃上げと定義して調査した。また、資本金1億円以上を「大企業」、1億円未満を「中小企業」と定義している。
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オリジナル記事:2025年度の「賃上げ」は企業の85%が予定。中小企業で賃上げ率「6%以上」は約9%
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