Walmart(ウォルマート)はこのほど、ユーザーがメタバース空間でショッピングできる「Walmart Realm」を立ち上げました。新たな買い物体験の提供によって、既存の販売チャネルや他社との差別化を図り、Amazonに競合する事業者になることをめざしています。有識者のなかには「Walmart Realm」の利用拡大、小売市場全体に波及する可能性を予測し、高く評価する人もいます。
Walmartがメタバース世界での買い物体験を発表
「Walmart Realm」はメタバースのプラットフォーム「Realm」を活用し、Walmartの実店舗とは異なるショッピング体験を提供します。メタバーススタイルの没入型ショッピングの実現により、Amazonに対抗できるオンラインショッピング環境を提供する事業者になることをめざします。
「Walmart Realm」のイメージ動画(動画はWalmartのYouTubeアカウントから )
「Walmart Realm」に訪れた消費者は、まるでDisney映画のなかにいるような没入型のショッピングを体験できます。バックミュージックとしてファンキーな音楽が流され、アバターが登場します。そこにないのは3D眼鏡だけです。
日用品、美容、ファッションのカテゴリーの商品を提供している「Walmart Realm」で試しに買い物をしてみたところ、113ドルするAlden Designのモダンフェイクレザーチェアを簡単にカートに入れることができました。その感覚はショッピングというよりほとんどゲームです。
小売業界全体に変革をもたらす買い物体験
Walmartの最高マーケティング責任者であるウィリアム・ホワイト氏は、「Walmart Realm」で味わえる近未来的な買い物体験をアピールしています。
「Walmart Realm」での買い物は幻想的で、感動的。簡単に言えば、とても楽しいのです。Walmartはバーチャルの世界を中心にデザインされたオンラインでのショッピング体験において、革新的なテクノロジーを取り入れています。(ウィリアム氏)
「Walmart Realm」が小売EC業界に変革をもたらすかもしれないと考えているのはWalmartだけではありません。
デジタルマーケティングサービスを提供しているKarasin PPCのオーナーであるジョー・カラシン氏は、「Walmart Realm」が成功すれば、他の小売事業者も同様の戦略を試みるだろうと予測しています。
「Walmart Realm」は、将来的に他の小売業者が追随するメジャーな体験型購買チャネルとなる可能性が高いです。これは、これまでのテクノロジー発展の方向性と一致しています。
たとえば、AmazonはARビューオプションにより、購入前に家具をユーザーの自宅に配置したかのような映像を確認できるサービスを提供していますが、家具・キッチンECのWayfair、百貨店チェーンのValue Cityといった他の小売事業者も、Amazonに続いて類似サービスの提供を始めました。(ジョー氏)
ジョー氏は、WalmartがAmazonの市場シェアの一部を奪う可能性さえもあると予想します。
若年層獲得の効果を見込む
「Walmart Realm」では、「Realm」に関してWalmartと協業している家具販売のSawhorseのデザイナーによる作品、バーチャルプラットフォームの開発を手がけるEmperiaが制作したプラットフォームを展示しています。これは、3DコンテンツプラットフォームメーカーであるUnityとの提携を含む没入型ショッピング体験実現に向けた提携に基づくものです。
Walmartはさらに、ゲーム内商取引に取り組もうと、バーチャルゲームプラットフォームのRobloxと連携。ブロックチェーン上で構築できる代替不可能なトークンNFTのユースケースを模索してきました。
批評家のなかには、「Walmart Realm」が一時的に流行するだけだと批判する者もいますが、コンサルタント会社である5 NewDigitalのマイケル・ザックール創設者はそう考えていません。
「Walmart Realm」は一時的なはやりではなく、長期的に見ても賢い戦略です。事業者にとって大切なことは、売り上げのトップラインを伸ばすことではなく、より新しく、より若い消費者を引き付けることです。それと同時に、Walmartの既存の顧客に対しても、「Walmart Realm」で新しい買い物体験をする習慣をつけさせることです。(マイケル氏)
既存にないビジネスモデルを確立
マイケル氏は、「Walmart Realm」でクリエイターやインフルエンサーを活用してショップを作り、キュレーションし、運営することは、これまでにない革新的なビジネスだと付け加えます。「これにより、既存の店舗、オンライン、マーケットプレイスで提供されるものとの差別化を図ることができるからです」(マイケル氏)
「Walmart Realm」は実際、市場に存在する既存の販売チャネルとのさまざまな差別化を試みています。
海底をテーマにしたバーチャルショップ(ただし、魚に敬意を表して「So Jelly」という楽しげな名前を付けている)、開拓時代の米国西部をテーマにしたバーチャルショップ「Y'Alternative」、月面の世界をテーマにしたバーチャルショップ「Go Chromatic」を提供しています。
たとえば「So Jelly」では、海をテーマにした「Vlush」ブランドの全身鏡が、バーチャル上の“海”を旅するユーザーを出迎えます。
「Walmart Realm」で展開しているショップの一例(画像は「Walmart Realm」トップページから編集部がキャプチャ )
しかし、大きな問題は、消費者がバーチャルショッピングに関心を持ってくれるかどうかです。
消費者のすべてにバーチャル上でのショッピング体験を受け入れられるとは限りません。しかし、もし多くの消費者に受け入れられれば、小売業に大きな革命が起きるでしょう。(カラシン氏)
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:Amazonを追随するウォルマートがメタコマースに進出。新たに始めたメタバース型の販売チャネル「Walmart Realm」とは? | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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