イケアが3万人超のスタッフにAI研修をする理由は? 新たなイノベーションの創出、優秀な人材を獲得する取り組み | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ | ネットショップ担当者フォーラム

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従業員にAIのトレーニングを計画しているIKEAの狙いとは。IKEAによるこれまでのAI活用の変遷とともに解説します

IKEA(イケア)が従業員に対してAI(人工知能)のトレーニングを計画していると発表しました。従業員がAIを理解し活用することで、新たなイノベーション、今後の人材採用にも好影響をもたらすことをめざしています。

新たなイノベーションを起こすためにAI活用のトレーニングを計画

欧州の家具大手であるIKEAは、3万500人の従業員に人工知能(AI)のリテラシーを活用するための研修を計画していると4月に発表しました。AIの開発と人材教育の両方に投資する計画で、IKEAは従業員がAIテクノロジーを活用し、これまでにないイノベーションを起こせるようにしたいと考えています。

プレスリリースによると、IKEAは「組織全体にAIに対する深い理解を根付かせ、技術を活用する際にIKEAならではの価値観が反映されるようにしたい」と考えているようです。

IKEAの人材教育のイメージ(画像はIngkaグループのプレスリリースから編集部がキャプチャ)IKEAの人材教育のイメージ(画像はIngkaグループのプレスリリースから編集部がキャプチャ)
人材採用にも好影響

IKEAを運営するIngka(インカ)グループの中核事業であるIKEA Retailのパラグ・パレク氏(チーフ・デジタル・オフィサー)は、プレスリリースのなかで「この取り組みは、従業員がテクノロジーを活用してより高い創造性、効率性、結果を達成できると、IKEAが信じている証です」と話します。

米国の調査会社Forrester Researchのアナリスト、ブレンダン・ウィッチャー副社長兼主席はこれはIKEAにとって賢明な投資だと指摘しています。

今回の取り組みは、従業員に対するIKEAの積極的な関与の事例と言えます。今後のデジタル戦略や、小売戦略の主要な部分を担うスキルを持つ人材の確保にもつながります。(ウィッチャー氏)

IKEAはAIの研修を受講する3万500人の従業員のうち、3万人を対象にAIの基礎など、社内の役割に応じた複数の学習トレーニングコースを提供する予定です。

受講者のうち500人のリーダー層に対しては、AIの可能性とIKEAのビジネスにおける優先事項を結び付ける学習トレーニング「AI Exploration Days」を提供します。IKEAは、それがどのようなトレーニングであるか詳細は明らかにしていません。

ウィッチャー氏は、このような学習プログラムを提供することで、IKEAは人材採用においても優位に立てると話しています。

従業員が離職せずに定着するかどうかという議論は別として、既存の従業員への投資に対する将来的なリターンを評価するのは、企業にとって難しいことです。しかし、IKEAがこのように人材教育に取り組んでいることは、実務の労働と引き換えに給料を支払うだけの他の小売事業者よりも、人材獲得に有利に働くと考えられます。(ウィッチャー氏)

IKEAのAI活用の変遷

IKEAにとって、AIの活用はこれが初めてではありません。最近、マイクロソフトと共同で「The Hej Copilot」と呼ばれる生成AIツールをリリースしました。このツールは、イメージの作成、アイデアの創出、プレゼンテーションの作成など、従業員の作業をサポートするように設計しています。

プレスリリースでは、「The Hej Copilot」のテクノロジーは人間の能力を増強し、従業員がより価値の高いタスクに集中できるようにするための代表的な例だと説明します。

さらに2月、米OpenAIが提供するカスタムAIチャット「GPTs」で作成したアプリを公開できる「GPT Store」を通じて、生成AIショッピングツール「IKEA AIアシスタント」を発表。このツールは、IKEAカタログや店舗間の商品在庫に関する質問に答えることで、顧客の買い物をサポートすることを目的としています。

米国の消費者はOpenAIの「GPT Store」を通じてIKEA AIアシスタントを入手できる(画像はIngkaグループのプレスリリースから編集部がキャプチャ)米国の消費者はOpenAIの「GPT Store」を通じてIKEA AIアシスタントを入手できる(画像はIngkaグループのプレスリリースから編集部がキャプチャ)
生成AIツール活用の関心高まる

IKEAの事例だけにとどまらず、生成AIショッピングツールは現在、小売業界で多くの投資と関心を集めています。

米Salesforceと米Retail AI Councilが2023年3月、世界の小売事業者1390社を対象に実施した調査では、小売事業者の81%が「AI専用の予算を確保している」と回答しています。

さらに、調査対象となった小売事業者の93%以上が、「パーソナライゼーションのために生成AIを何らかの形ですでに使用している」と回答しています。これには、顧客ごとにパーソナライズされたEメールのテキスト作成や商品のレコメンドなどが該当します。

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この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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