中国のEC大手「拼多多(Pinduoduo:ピンドウドウ)」を展開するPDDHDが海外向けに展開している越境ECサイト「Temu(ティームー)」が急成長しています。米国プロフットボールリーグの決定戦「スーパーボウル」でCMを放送してから、「Temu」アプリの市場シェアは小売店のなかでトップクラスとなり、ファストファッションブランド「SHEIN(シーイン)」をグローバル展開する中国のライバル企業SHEIN Grpup(シーイン・グループ)を今では上回っています。「Temu」の成長実績とその施策を振り返ってみましょう。
「スーパーボウル」でのPRを皮切りにした「Temu」の快進撃
ECサイトおよびアプリの流通総額を急成長させている「Temu」。PDDHDは2023年2月、「Temu」を訴求するために「スーパーボウル」で放送するCMに多額の費用を投じました。
「Temu」の公式ECサイト(画像はサイトから編集部がキャプチャ)
「スーパーボウル」の試合中に3本、試合後に2本のCM枠を購入してCMを放送。いったいどれほどの広告費をかけたのでしょうか?
「スーパーボウル」の広告費は、年間で最も高額だと言われています。米国の放送局CNNは、2024年2月に実施された第58回「スーパーボウル」では、広告主が30秒のCM枠に650万ドルから700万ドルの費用を投じたと推測しています。ただし、実際の出稿料は、試合中に広告が放映されるタイミング、個々の広告主が複数のCM枠を購入するかどうかによって異なります。「Temu」の広報は、投じた出稿料を明らかにしていません。
広告主による、30秒のテレビCM枠の平均出稿額(年別)(出典:米経済紙「The Wall Street Journal」 )
CMで「億万長者のような買い物」を訴求
「Temu」は「スーパーボウル」で放送したCM中で、「億万長者のように買い物をしよう」というキャッチフレーズを掲げました。CM動画では、動画中の主人公が10ドル以下のさまざまな日用品やアパレル商品を購入しました。なお、主人公の購入品は、「Temu」が注目されるようになった超低価格商品の一部です。
2023年の「スーパーボウル」で放送した「Temu」のCMの1つ
「Temu」の広報によると、CMでは米国のプロフットボールチーム「サンフランシスコ49ers(フォーティーナイナーズ)」のランニングバック、クリスチャン・マキャフリー氏を起用。試合前にInstagramの広告費として500万ドル、試合中にさらに1000万ドルの割引特典とブランド名を宣伝したそうです。
ユーザー数は前年比3倍増、「SHEIN」も圧倒
2023年の「スーパーボウル」で多額の広告費用を投じ、「Temu」をプロモーションしたPDDHD。PDDHDは当時、2022年9月に「Temu」を立ち上げたばかりでした。そのため、多くの米国人にとって初めて耳にするブランド名。PDDHDは当時、次のようにコメントを発表していました。
可能な限り規模の大きな場所で訴求し、「Temu」が提供する商品価格だからこそ気がねなく買い物が楽しめることを消費者にアピールしていきたいです。(PDDHD)
その後、「Temu」は堅調に市場シェアを拡大しています。データ分析事業を展開する米センサータワーによると、「Temu」は2023年、米国で最もダウンロードされたアプリに。全世界で見ると、ダウンロード数は8番目でした。2024年1月の月間アクティブユーザー数は5100万人となり、前年比で約3倍増です。
Bloombergの報道によると2023年5月には、シーイン・グループの全米月間流通総額を上回りました。2023年9月に米国のデータ分析会社アーネスト・アナリスティクスが発表した報告書によると、「Temu」は、米国で1ドル均一ショップを展開するダラー・ゼネラルやダラー・ツリーからも市場シェアを奪ったそうです。
ウォールストリートジャーナル紙が米国の調査会社インサイダーインテリジェンスの調査結果に基づいて報じたところによると、「Temu」のECサイトは現在、Amazon、ウォルマート、イーベイに次いで、米国で最も訪問者の多い小売りサイト第4位に位置しているそうです。
シーイン・グループは米国のEC専門紙『Digital Commerce 360』が発行する「アジアデータベース」で売上高が36位、ダラー・ゼネラルは2023年の「北米EC事業 トップ1000社 2023年版」で725位にランクイン。北米のトップ1000社のなかで、大手小売企業のオンライン売上高ランキングを見ると、Amazonが1位、ウォルマートが2位でした。「アジアデータベース」に、「Temu」はまだ含まれていません。
2024年は30億ドルのマーケティング費用を見込む
顧客獲得を優先し、広告に多額の費用を投じている「Temu」。センサータワー社によると、「Temu」がフェイスブックに費やした広告費は、2023年10-12月期(第4四半期)にAmazonを除くすべての広告主を上回りました。
このとき、「Temu」によるフェイスブックへの広告費は前年同期比318%増、インスタグラムへの広告費は同101%増だったそうです。
金融サービスを広く手がける米J.P.モルガンは、「Temu」は2024年、自社のマーケティングのために30億ドルを費やすと予測しています。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:「SHEIN」を上回る成長の中国EC「Temu」はなぜ急拡大している? 「スーパーボウル」を起爆剤に使うプロモーション戦略 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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