アンダーアーマーCEOが語るEC強化施策、EC化率4割の秘訣と今後の施策 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2023年12月21日(木) 08:00
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アンダーアーマーのCEOが、EC事業の取り組みや方針を語ります。CEOが語る「効果的なマーケティング施策」「ロイヤルティ向上の秘訣」「顧客の裾野拡大に向けた打ち手」とは

米国のスポーツ用品メーカーUnder Armour(アンダーアーマー)は、ECプラットフォームの活用を強化しています。グローバル売上高に占めるEC売上高の割合は10%台、ECがDtoCビジネスの約40%を占める規模までに拡大しているからです。ステファニー・リナーツ社長兼最高経営責任者(CEO)インタビューを紹介します。

ECが売り上げの4割を占めるアンダーアーマー

アンダーアーマーのECは現在、全社売上高のうち「10%台半ば」を占め、DtoCビジネスの売り上げに占める割合は約40%に達しているそうです。リナーツCEOはこう語ります。

Under ArmourのECサイトトップページ(画像は同サイトから編集部がキャプチャ)Under ArmourのECサイトトップページ(画像は同サイトから編集部がキャプチャ)

世界で最も機能的なECサイトを作ったとしても、そのECサイトに掲載されている商品が見栄えよく、人気があり、売れ行きが良くなければ、さらにマーチャンダイジングがうまくいかなければ、意味がありません。(リナーツCEO)

シカゴにあるアンダーアーマーのミシガン・アベニュー店で行われた、米国のEC専門誌大手『Digital Commerce 360』とのインタビューで、リナーツCEOは27年の歴史を持つスポーツウエア企業であるアンダーアーマーの事業、ブランドはどのような方向をめざすかを説明しました。

アンダーアーマーへ2023年2月に入社したリナーツCEOは初の女性CEOに就任。前職では「リッツ・カールトン」などさまざまなホテルの運営やフランチャイズを手がけるマリオット・インターナショナルの社長を務めました。そんなリナーツCEOはアンダーアーマーのECサイトとアプリの今後の展開について、明確なビジョンを持っていると説明。EC機能と商品販売方法を改善するために、リナーツCEOは「やるべきことがたくさんある」と考えています。

AIなどテクノロジーを積極的に活用

アンダーアーマーは実店舗やECサイト、アプリを起点とした売り上げを消費者への直接販売と定義。また、スポーツ用品専門店のDicks Sporting Goods、Amazon、靴を中心とした大手アパレルチェーンFoot Lockerなどを通じて卸売りも手がけています。

検索性の向上と顧客のパーソナライズのために、アンダーアーマーはすでにECサイトで「AIを使用しています」とリナーツCEOは言及。サプライチェーンでも、商品の品質を保つためにAIを活用しているそうです。多くの小売事業者が生成AIの導入を模索している段階に対し、リナーツCEOは自社の投資が有意義かつ影響力のあるものにしたいと考えています。

AIだけではなく、新たなテクノロジーを導入する際は高い目的意識を持つ必要があります。アンダーアーマーは引き続き、事業に専念するつもりです。AIを含め、テクノロジーがどのような場面で当社の業績を成長させるのに役立つかを真剣に考える必要があります。(リナーツCEO)

パフォーマンス向上に成果

ホリデー商戦の数字はまだ公表していませんが、事前に顧客からのECサイトへの注目が集まっていたことは、ユーザーによるECサイトの読み込み時間から垣間見えます。

ECベンダーのBlueTriangleは、アンダーアーマーがサイバー5(サンクスギビングからブラックフライデー、その後の土日、さらに月曜日のサイバーマンデーを合わせた5日間)の期間中、パフォーマンスが絶好調だった他の事業者と比較しても、堅調だったことを明らかにしました。

Blue Triangleは、ECサイトのパフォーマンスランキングを、WebページのUX指標「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」の1つで表示速度を測る指標「LCP」などの指標に基づいて決定しています。

Blue Triangle のデータによると、アンダーアーマーのサイバーマンデーにおけるLCPは最も優れた小売企業トップ1000社の第11位にランクイン。Blue Triangleによると、アンダーアーマーのLCPは0.452で、LCPが最も早かった小売事業者はアパレルブランドのThread Pitで0.200でした。

Googleの「Core Web Vital」Teamによると、LCPが2.5秒より早ければ「良好」とされており、LCPが2.5秒から4.0秒の間なら「改善が必要」で、4.0秒を超えると「悪い」と見なされます。

ECの成長計画は「女性」「若者」の裾野拡大

リナーツCEOによると、アンダーアーマーのターゲット層は、団体競技に携わる16~24歳のアスリート。「あらゆる層、あらゆる宗教、あらゆる地域のターゲット消費者にアプローチしたいのです」とリナーツCEOは話し、「多様性、公平性、インクルージョンを重視する企業でありたい」と続けます。

購入者の男女比率を見ると、売上高の75%以上が男性向け商品によるもの。リナーツCEOの目標の1つは、女性向け商品の売上高を増やすことです。

そのためには、効果的なマーケティングが必要です。リナーツCEOは「アンダーマーマーの女性に対するマーケティングや営業は、男性向けとは異なります」と説明。そのため、「女性たちが多く集まっているところにアプローチしていく」と話し、多くの洋品店や百貨店で商品に並ぶようにして、ブランドの存在感を高めていく計画を掲げます。

この戦略において、SNS、特にInstagramとTikTokで大きな役割を果たしています。

16~24歳の若者の多くは、テレビを見ていません。だからといって、テレビやOOH(交通広告や屋外広告)などで何も訴求しないというわけではありませんが、マーケティング費用をよりデジタルに振り向けて、より“常時接続”にシフトしています。さらに、商品ベースのマーケティングを強化し、今までのアセットを活用していきます。(リナーツCEO)

会員プログラムでエンゲージメント向上

リナーツCEOは「顧客が今いる場所で結びつきを深めることが、Webとアプリのエンゲージメントで最優先事項です」と説明。そのエンゲージメントの推進に含まれるのが、7月下旬に開始したロイヤルティプログラム「UAリワード」です。

ロイヤルティプログラムの立ち上げと成功は、新規顧客と既存顧客を引き付ける重要な要素です。その結果、エンゲージメントとコンバージョンのレベルが向上しました。オムニチャネルの価値を高める新たな方法を常に模索しています。(リナーツ氏)

リナーツCEOは「エクスペリエンスとオムニチャネル機能を統合することでECの売り上げを伸ばすことができる」と話している(画像提供:Abbas Haleem)リナーツCEOは「エクスペリエンスとオムニチャネル機能を統合することでECの売り上げを伸ばすことができる」と話している(画像提供:Abbas Haleem)
会員数は100万人突破

2023年4-9月期(中間期)において、「UAリワード」の会員数が最初の数か月で100万人を突破したと公表しました。

「これまでのところ、『UAリワード』会員は90日以内にリピート購入し、ブランドを再訪する確率が約2倍となっています。ブランドへの愛着とロイヤルティーを高めるという点で、早い段階から効果が出ています」とリナーツCEOは投資家との決算説明会で語っていました。『Digital Commerce 360』との取材では、顧客に体験を与えることの大切さを話しています。

「UAリワード」を開始したときに実施したキャンペーンで、当選者がボルチモアでプロバスケットボール選手のステフィン・カリーと1日を過ごせる旅行券をプレゼントしました。

つまり、体験がすべてなのです。もちろん、使った金額に応じてポイントを付与しますが、それだけではなく、運が良かった当選者にノートルダム大学の試合を観戦してもらったり、アスリートに会ってもらったりするにはどうしたらいいのか、チャレンジやエクササイズにポイントを与えるにはどうしたらいいのか――ロイヤルティ会員限定の企画ができるかなどを考え、会員がいち早くそれらの情報をピックアップできるようにすることが大切です。(リナーツCEO)

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この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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