大正製薬は、訴訟を前にサントリーウエルネス(以下、サントリー)に直接抗議。関係各所にも広告起用に関わる「業界の慣習」に反すると訴えていた。
編注:大正製薬による、イメージキャラクターの起用をめぐる訴訟とは?
プロサッカー選手の三浦知和選手を自社のイメージキャラクターとしていた大正製薬。三浦選手の広告出演管理を行うハットトリックと広告出演契約を結んでいた。これを踏まえて、錠剤の健康食品サプリメント「リポビタンDX」の広告出演を打診したところ、ハットトリックは拒否。大正製薬との契約書には「錠剤」の規定がなく、すでにサントリーの「セサミンEX」の広告に出演させる決定をしたことが理由だった。大正製薬は21年1月にハットトリックを提訴するも、東京地裁は請求を棄却。大正製薬は23年1月に控訴したが、高裁も請求を棄却。これを受けて大正製薬はハットトリック、サントリーに対して“怒りの声明”を発表した。
通販新聞ダイジェスト 大正製薬が“怒りの声明”の理由は? 大正製薬VSサントリーウエルネス、訴訟の詳細と争点を解説①
大正製薬とサントリーウエルネスの係争を3編にわけて解説する。イメージキャラクターの起用をめぐり、大正製薬はサントリーウエルネスを訴えたが敗訴となり、怒りの声明を発表した。事態の内実は?【第1回】
通販新聞[転載元]11/2 7:00
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20 通販新聞ダイジェスト 大正製薬とサントリーウエルネスの係争、法廷の争点は「競合」に当たるか否か――。訴訟の詳細を解説②
3編にわけて解説する、大正製薬とサントリーウエルネスの係争の2編目。係争に至るまでの経緯はどのようなものだったのか? 詳細を解説する【第2回】
通販新聞[転載元]11/6 7:30
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30 訴訟前、大正製薬はサントリーに“忠告”
サントリーに対しては、沖中直人社長宛てに、書面でハットトリックによる三浦知良選手の広告出演拒否の経緯を説明した上で、訴訟提起を準備中であることを通告。
競合製品に同じイメージキャラクターを起用することが商慣習上、禁止されており、「当社が貴社の競合会社であることは十分承知のはず」、「貴社が広告出演させるに至ったことは甚(はなは)だ遺憾」と忠告している。サントリーホールディングスの新浪剛氏社長宛てにも「子会社で同様の事態が起きないよう真摯かつ責任ある対応をお願いする」と、同じ書面を送っている。
書面では、広告関連の業界団体である日本広告業協会(=JAAA)、日本アドバタイザーズ協会(=JAA)にも詳細の説明を行い、業界全体の問題として公の場で議論することを提言したとしている。
サントリーは、広告出演について、過去にグループ会社の清涼飲料水などに広告出演した経緯から関係が深く、年齢にとらわれずチャレンジする姿勢がセサミンの広告にふさわしいという考えに基づき起用したと説明。声明に対しては「大正製薬と契約した商品カテゴリーが異なり、起用に問題はない」と回答した。JAAも「個社のことで議論したり、見解を述べる立場にないとお伝えした」(日本広告業協会は本紙掲載までに未回答)としている。
声明も共感得られず
なぜ、主張は受け入れられなかったか。関係各所へのここまでの抗議や提言は、創業一族である上原家の決断がなければできなかったことだろう。
ただ、声明による社会への発信も、共感が広がることはなかった。訴えが、社内倫理に基づく一方的なものであったこともあったのではないか。法廷では、契約を仲介した博報堂DYスポーツマーケティングの担当者から、「『カズは大正製薬の持ち物ではございません』ということをはっきりさせておきたい。事務所(注・ハットトリックサイド)として非常に残念な気持ちになっている。これ以上の交渉は、心証を悪くしてリポビタンDの契約にも悪影響を及ぼす」(陳述より一部抜粋)と指摘を受けている。
ハットトリックに大正製薬が広告出演の依頼をしたが、ハットトリックがそれを拒否した錠剤サプリメント「リポビタンDX」
博報堂は謝罪、関係にも変化が
一方で、博報堂はグループ企業が大正製薬に謝罪を行っている(編注:大正製薬の窓口は博報堂キャスティング&エンタテインメント。ハットトリックの窓口は博報堂DYスポーツマーケティングとなっていた)。
法廷では、大正製薬に対しても「理想的には大正製薬に健食カテゴリーも契約していただくことが一番よいと考えていた」(同)、「(ハットトリックの担当者は)契約も末永く継続していきたいとの意向を持っておられた。こうした争いをしなければいけなくなってしまったことをとても悲しんでおられた。大正さんへの感謝の想いとリポビタンDという商品に対する好意を強く持っておられた」(同)と配慮をみせている。
また、三浦選手の起用を打診した大広の社長が謝罪。大正製薬は、大広が約7割を出資するD&Iパートナーズ(現・博報堂コネクト)とコールセンター業務などで取引関係にあったというが、「上原家の逆鱗に触れ、出資比率や社名の変更を行い手打ちになった」(業界関係者)という。
取引関係など現在の博報堂との関係について、大正製薬は「契約をやめたとは聞いていない」と回答。博報堂に声明への見解や社名変更の経緯を尋ねたが「守秘義務もあり、個別の業務・取引内容に関して当社からお伝えすることができない」(博報堂DYホールディングス)と、具体的な回答は得られなかった。
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オリジナル記事:広告起用に関わる「業界の慣習」に反する――。大正製薬とサントリーウエルネスの係争、訴訟の詳細を解説③ | 通販新聞ダイジェスト
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