ステルスマーケティングの規制などを目的とした景品表示法の新指定告示の導入に「待った」がかかった。2月8日の自民党消費者問題調査会(会長=船田元衆議院議員)で日本通信販売協会(JADMA)が規制の問題点を指摘し、要望を行った。
この席では、自民党議員からステマの具体的な被害や取り締まりの対象などを明らかにすべきなどの意見も出たという。ステマ告示問題は、同調査会で引き続き検討の予定で、年度内を目処に性急に進む告示に影響しそうだ。
JADMAが表明した3つの要望とは?
JADMAは万場徹専務が資料(JADMAホームページで公開中)に基づいて説明した。法改正を伴わず国会で審議しないにもかかわらず強力な規制効果が生じ、単なる口コミ規制ではなく、事業者や私人に広汎(こうはん)な影響を及ぼすとした。
このため、表現の自由の侵害、経済の萎縮効果、経済発展の阻害などが生じる恐れがある――と懸念を表明。次の3点を要望した。
- これまで問題を生じさせていない商取引や商慣習が法令違反とならないような措置
- 広告主の意見を聞き、日本の実際の商取引や商習慣を反映した基準の策定
- 健全な事業者の不安や懸念に配慮し、社会や経済の混乱を回避する
新指定告示は「広告であることが不明確な行為」全般を広く規制する。違反要件は「表示内容への関与」と「消費者が広告と判別することが困難なこと」の2つ。
新たな指定告示は、問題のない商行為や商習慣まで違反とみなされるおそれがある(画像は
JADMAホームページから編集部がキャプチャ)
運用基準では、レビューやアフィリエイトなど第三者が行う表示について、事業者との関係性や対価提供、第三者の自主的な意思の有無から「事業者表示」を総合的に判断する。
ただ、どの程度の関係性や対価提供が違反となるのか、判断が難しいケースがある。判断の裁量は、消費者庁に委ねられている。
規制対象が不明瞭。“運用基準案わかりにくい”の声も
「運用基準案を読んだが、抽象論と具体的ケースが混在してわかりにくい。お中元やお歳暮、バレンタインのチョコレートをもらっても対価となりかねず日本の贈答文化が壊れかねない」。自民党の政治関係者もこう危惧(きぐ)する。
これまでの規制導入のプロセスでは、ステマによる被害実態、規制すべき対象など規制根拠が不明瞭なままだ。検討会でも、当事者である広告主不在の中で、「ステマ」という言葉が持つネガティブな印象を前提に進んだ。
しかし、ふたを開ければ、「広告であることが不明確な行為」が一律に規制される内容で、対象範囲は極めて広く、社会的な影響も大きい。
消費者庁が発表した「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(=ステマ規制)の運用基準案の一部(画像は
意見募集のページから編集部が抜粋[※意見募集は現在終了])
一方で、河野太郎消費者庁担当大臣の指示で年度末を期限に告示の手続きは進んでおり、異例のスピードだ。「河野大臣はSNSなどで積極的に発信しているが、今回の告示で自分の投稿がステマになる危険性もあることをきちんと理解していないのではないか」との声もある。
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オリジナル記事:ステマ規制の告示に「待った」の声。事業者や私人への悪影響を大きく懸念するJADMAの要望とは | 通販新聞ダイジェスト
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