SNSがECに大きな影響を与えるようになった今、UGC(ユーザー生成コンテンツ)が他のユーザーの購買を後押しするコンテンツになるとして、UGC活用を重視した企業の取り組みが活発化している。その中で、UGC活用ツールで国内トップシェアの「visumo(ビジュモ)」は、ファッション、コスメ、家具・雑貨、食品など、幅広い業種業態で導入が進んでおり、各社で売上拡大やファン化促進といった効果を生み出している。
UGCをどのように収集し、どう効果的に活用するべきか? こうした疑問に「ネットショップ担当者フォーラム 2022 夏」に登壇したvisumoの千林正太朗氏が、導入各社の成功事例を交えて解説する。
株式会社visumo 執行役員ジェネラルマネージャー 千林 正太朗 氏
業種業態を問わず500社以上がUGC活用に使う「visumo」
InstagramやTwitterのユーザー投稿を自社のECサイトに活用できるビジュアルマーケティングプラットフォーム「visumo(ビジュモ)」は、2017年にecbeingの事業部として誕生。2019年に分社化して以降、ecbeingに限らず多くのショッピングカートとの連携も進めてきた。
カート連携に加え、UGCマーケティングへの注目の高まりから導入企業数は500社を突破。第三者機関の調査※1では、Instagram連携のUGC活用ツールとして国内トップシェアと発表されているという。導入企業はファッション、コスメ、雑貨、家具、食品など、取り扱う商材が多様なだけでなく、自動車メーカーやホテル業、観光業、アミューズメント施設など、ECではない業態でも活用が進んでいる状況だ。
※1 出典:日本マーケティング・リサーチ機構調べ/指定領域における実績調査/調査期間:2021年11月期
「visumo」は、主に以下の4つのソリューションを提供している。
- visumo social:Instagram上のユーザー投稿をECサイト/オウンドメディアに活用できる
- visumo vidio:YouTubeやInstagramライブの動画データなど、自社動画アセットをサイトECサイト/オウンドメディアで簡単に展開できる
- visumo snap:スタッフが、商品の写真や情報をスマートフォンから簡単にECサイト/オウンドメディアに投稿できる
- visumo comment:専門知識は不要、ノーコードで商品詳細ページを充実させることができる
消費者はUGCを見て購入後の利用シーンをイメージし、購買を検討している
ある調査※2では、消費者の63%が「購入前に商品のUGCを探している」と回答したという。購入前の消費者の行動が「ググる」から「タグる」に変化したと言われるように、商品のスペックなどを検索して検討していたのが、最近ではInstagramやTwitterで商品のハッシュタグ検索をして、実際に商品を使っているユーザーの情報を見て検討する行動が一般化した。
同調査では53%が「UGCが購買に影響を及ぼしている」とも回答しており、企業側がUGCを広告に活用するケースも増えている。
※2 出典:Olapic「Facebook & Instagram Advertising With UGC:A Pactitioner’sGuid」
購入前の情報収集にはUGCが重要視される傾向が強まっている
さらに、2022年7月には米ファスト・カンパニーから、「インフルエンサーの活用は下火に」という内容のレポートが発表された※3。一昔前までは、いわゆるインターネットセレブリティのインフルエンサーを活用して、商品の情報を発信する動きが盛んだったが、最近では無名なクリエイターらのUGCが有効と捉えられ、ブランドマーケッターもUGC活用に重きを置くようになっている。
欧米の波はやがて日本にも浸透してくると予測されるため、動向には注視しておかなければいけない。こうした背景を踏まえ、千林氏はUGCの重要性を次のように話す。
消費者は、購入後に自分が利用するイメージが湧かない商品は買わない心理がある。その点、UGCはリアルなユーザーの利用シーンがイメージしやすいため効果的だ。また、一般ユーザーの声は信頼できるコンテンツとして、価値が高いものと言える。(千林氏)
インフルエンサー活用は下火の傾向か
企業にとっても、UGCは「コスト・時間の削減」がメリットに
企業から発信する公式投稿は重要なコンテンツであることには変わりないため、これからも公式投稿がまったく必要なくなることはないと思われる。しかし、クリエイティブを充実しようとすれば、スタジオを借りて、そこに商品を搬入して撮影するといった手間がかかってしまい、特に大型の家具などでは多大なコストと時間を要しがちだ。
このため、クリエイティブとして撮影できるパターンには限界があるだろう。千林氏は「公式投稿を補うためにも、UGCのコンテンツは役立つ」と話す。
クリエイティブが多いほど、消費者が購買を検討する上で参考にできる情報も豊富になる。商品に関するUGCを資産と捉え、それらを有効活用していけば、購入の背中を押すきっかけも増やしていけるということだ。
どのようにUGCを収集し、増やしていけばいいのか?
visumoには、「UGCの重要性は理解できたが、どのようにUGCを収集して増やしていけばいいのか?」といった相談がよく寄せられている。そうした悩みを持つ企業のECサイトやSNSを見ると、消費者からの投稿を促すような工夫やアクションが足りていないケースが多いようだ。UGCを有効活用して成果をあげている企業が、実際に取り組んでいるUGC収集施策を紹介する。
UGC収集事例①ストーリーズを活用する
企業やブランドとして、どういう投稿を求めているのか、どういう写真が評価されているのかが消費者にも伝わるよう、手本となるようなUGCを自社のECサイトでストーリーズとしてしっかりと紹介していくことが重要だという。
ひと言に写真といっても、商品の物撮りや人物と一緒の写真、さらにはさまざまなアングルで撮影されるなど、ユーザーそれぞれにパターンが異なるもの。自社の集めたいクリエイティブにマッチしたUGCを着々と拾い集めて紹介していくことが、先々のUGC収集にもつながっていくようだ。
自社の収集したいクリエイティブの手本となるようなUGCを拾い集めて、しっかりと紹介していく
UGC収集事例②SNSに投稿したくなる仕掛け作り~パッケージデザインを再考する
SNSに投稿したくなる仕掛けの一例が、パッケージデザインや包装物だ。レトルト食品を製造販売するにしき食品は、思わず写真を撮りたくなるようなデザインのパウチで展開し、ギフト用の包装資材のデザインにもこだわって、ユーザーの投稿を促進している。
このほか、ウェルネスプロテインが販売する女性向けのプロテイン「KOREDAKE」は、Instagramの投稿写真が正方形であることを意識した形状で製品パッケージを開発。プロテインというと、従来は男性的なイメージが強かったが、女性が「映え」を感じられるようなデザインやカラーも意識した。広告を一切打たずとも、短期間で「#KOREDAKE」の投稿が7,000件を突破し、自然とオーガニックな投稿が増える状況になっているという。
ユーザーが思わずSNSに投稿したくなるようなパッケージや包装で販売展開するにしき食品とウェルネスプロテイン
UGC収集事例③SNSに投稿したくなる仕掛け作り~ストアデザインを見直す
パッケージデザインのほか、SNSに投稿したくなる仕掛け作りに店舗を活用している事例もある。ワークマンが展開する「ワークマン女子」の店舗では、入り口にメルヘン調のブランコを設置。柱周りにはマグネットのプロップス(小道具)を貼り付けたり、シューズコーナーの床には映えるように靴の写真が撮れるようなペイントを施したりと、至る所でユーザーが積極的にハッシュタグ投稿をしてくれるような工夫が散りばめられている。
「ワークマン女子」の店舗で実施している、ユーザーのSNS投稿を促す工夫の一例
UGC収集事例④投稿キャンペーンを継続して行う
UGCを増やすために、フォトキャンペーンなどの投稿を促す施策も有効だ。しかし、こうしたキャンペーンで重要なのは、「定期的に、繰り返し実施すること」だと千林氏は指摘する。初回から思うように投稿数が集まらないことは往々にしてあるにもかかわらず、「一度フォトキャンペーンを実施したが、投稿数があまり集まらなかった」という理由で諦めるケースがよく見受けられるという。
フォトキャンペーンを複数回実施して投稿数を集めた事例として、雑貨販売のAWESOME STORE(オーサムストア)やエスビー食品を挙げる。
AWESOME STOREは「映え弁」やペット、ハロウィーンなど、さまざまなテーマのフォトコンテストを年に数回実施し、投稿数は着実に増加している。2022年9月に実施した、犬・猫好き向けのキャンペーン「わんにゃんバサダー」は、第1期生という形でユーザーを募った。一番の応募条件は「AWESOME STOREのファンの方!」とし、自社製品に愛着を持ったユーザーをアンバサダー認定する方法を取ったことで、多数の応募が集まったという。
エスビー食品も、自社の食品に関するコンテスト形式のキャンペーンを年間通して実施している。たとえば、ユーザーが好きなチューブ調味料を使ったレシピを投稿する「チューブ調味料総選挙」で集まったUGCは、当該商品の商品詳細ページに掲載するなど、購買を後押しするクリエイティブにとして有効活用しているようだ。
フォトコンテストなどのキャンペーンを年に複数回実施してUGCが増加しているAWESOME STOREとエスビー食品
UGC収集事例⑤アンバサダープログラムの実施
ワークマンでは、ワークマン製品を利用してSNSに投稿しているバイクのライダーやキャンパー、猟師など、各業界のセミプロの人にオファーをかけ、現在約40人をアンバサダーに認定している。アンバサダーとしてオファーする条件は、ワークマン製品への愛着が感じられる人。宣伝色を出さず、なおかつアンバサダーには製品の使いづらい点なども正直かつ自由に発言してもらえるよう、金銭的なインセンティブは一切発生していないという。
このほか、アンバサダーとの製品開発にも力を入れており、現状では約3分の1を共同開発した商品が占めるまでに至っている。売れ行きも好調で、将来的には全商品の半分以上まで拡大したい考えだ。
ワークマンは公式アンバサダーからの情報発信のほか、アンバサダーとの製品開発にも力を入れている
UGCをどう有効活用していくべきか? 成功各社の事例を紹介
UGCを収集した次は、UGCを販促に活用して売上につなげていかなければいけない。ここからは、「visumo」を使ってUGCをどのように活用できるのか、導入各社の事例を交えて紹介する。
UGC活用事例①
「UGCループ」により投稿数が増加している平安伸銅工業
突っ張り棒で国内トップシェアを誇る平安伸銅工業は、突っ張り棒ブランドのほか、インテリアのDIYパーツブランド「LABRICO(ラブリコ)」も展開している。
「LABRICO」のECサイトに、「インスタグラムユーザーの使用事例」のコーナーを設置。気になる画像をクリックすると、Instagramに投稿された画像や文章と合わせて、この投稿でユーザーが使用している商品も表示される。ここの商品をクリックすると、当該の商品ページに移動する仕組みで、こうした導線は、「visumo」の管理画面から簡単に設定できるようになっている。
「LABRICO」はECサイトにユーザーのInstagram投稿を掲載。画像をクリックした先から簡単に当該の商品ページに移動できる
DIY製品の特性上、ユーザーは作ったインテリアを多くの人に見てもらいたいという思いが強く、Instagramとの親和性は高いようだ。そうした気持ちのユーザーにメーカーから「ECサイトで使用させてください」とオファーが来るため、非常に高い確率で使用許可が得られ、ユーザーにも喜ばれているという。
オファーして掲載させていただいたお客さまは、また別の作品を投稿してくれることが多く、私はこれを「UGCループ」と呼んでいる。一度掲載されたお客さまは「また載りたい」という心理が働き、自然発生的にUGCの投稿数が増えていくようになるため、ECサイト上にUGCのコーナーを設けることは有効だ。UGCループが発生する状況を作れることは、良い流れの1つなのではないかと思っている。(千林氏)
UGC活用事例②
掲載許可を得るメッセージでファン化を促すVAIO
ノートパソコン「VAIO」のオンラインストアでは、「#わたしとVAIO」というコーナーを設置し、VAIOの利用シーンなどをInstagramに投稿したユーザーのコンテンツを並べている。平安伸銅工業と同様の形で、気になる画像をクリックすると、Instagramに投稿された画像や文章、関連商品が表示され、関連商品をクリックすることで当該の商品ページに移動できる仕組みとなっている。
「VAIO」のオンラインストアでは、ノートパソコンの利用シーンを紹介しているユーザー投稿を掲載。関連商品をクリックすると、商品ページに移動できる
「visumo」の導入企業は、基本的にはInstagramのコメント欄で「素敵な写真なので、ぜひ使わせてください。許可いただける場合は『#Yes』と付けてくださいね」と許諾を得るためのやり取りを行い、ツールで進捗や許諾の有無などを管理するようにしている。こうした掲載の許諾を得るためのメッセージのやり取りに、VAIOの工夫が見られるという。
VAIOは初めてオファーするユーザーには「はじめまして」から始まり、2回目以降のユーザーには冒頭で「いつも素敵なご投稿ありがとうございます」と添えるなど、メッセージを変えるようにしている。当たり前に思えることだが、ユーザー心理からすると毎回定型文が送られるより、メーカーがいつも投稿を見てくれていると感じられる方がブランドへの愛着が湧きやすく、ファン化には重要なポイントになるといえる。
許諾を取るだけの作業と捉えてしまうと、どうしても苦痛になってしまうもの。ファン化につながるコミュニケーションと考え、1週間に5~10枚程度でも十分なので、自社にマッチしたお客さまの投稿をピックアップしてUGCを増やしていってほしい。(千林氏)
UGC活用事例③
ブランドイメージの表現としてUGCを活用するJ.M. WESTON
数年前までは、高価格帯ファッションブランドでのUGC活用は広がりが鈍く、visumoの導入も進みづらい分野だったそうだが、最近ではラグジュアリーブランドもUGCを活用する動きが活発化しているという。
フランスの老舗シューメーカー「J.M. WESTON(ジェイエムウエストン)」の日本のオンラインストアでは、ユーザー投稿を紹介する「Icons×J.M. WESTON」というコーナーを設置。ブランドイメージの通り、プロ顔負けの画像が並んでおり、ユーザー投稿を選定する際の強いこだわりが見て取れる。ブランドからの利用申請には、多くのユーザーが喜びの声とともに「#Yes」と返信しているという。
J.M. WESTONも「visumo」を導入。高価格帯のファッションブランドでもUGC活用が進んでいる
ブランド名にハッシュタグを付けて投稿している時点で、そのユーザーはファンだと捉えるべきだろう。そうしたファンの投稿は自社の資産になるため、企業側から積極的にメッセージを送ることが重要だと考えている。(千林氏)
簡単にUGC活用が実現できる「visumo」
UGCを収集し、自社で活用していく過程では、多くのユーザーとのやり取りが発生するため、人の手だけでは運用が煩雑になりがちだ。こうした課題を、簡単な3つのステップで運用できる「visumo」が解決し、日々の作業負担を軽減しながら、UGC活用をいっそう促進していけるという。
「visumo」の簡単ステップ①Instagram・Twitterの投稿を収集
まず、「visumo」の管理画面上で「#ブランド名」といったように、InstagramやTwitterの投稿をハッシュタグ検索すると、該当するユーザー投稿が一覧で表示され、その中から自社で使いたいクリエイティブをピックアップする。さらに詳細な絞り込みをしたい場合は、ハッシュタグ検索と検索窓を併用する仕組み。たとえば「#ワークマン」と合わせて、検索窓で「釣り」と検索すると、ワークマンと釣りに関連する投稿が絞り込まれるといった具合だ。
投稿の中に自社で使いたいクリエイティブがあれば「登録」ボタンを押す。ここまでが第1ステップとなる。
「visumo」の簡単ステップ① 自社で使用したいユーザー投稿を探して登録
「visumo」の簡単ステップ②利用申請を送る
次は、第1ステップで登録した投稿に、利用申請を送る。申請メッセージは、あらかじめ複数のパターンを用意しておくことができ、その中から文面をコピーして送信することも可能だ。ユーザーから掲載可能を意味する「#Yes」の返信が届くと、管理画面上のフラグは自動的に「掲載可能」に変わる仕組みとなっている。
「visumo」の簡単ステップ② 利用申請を送り「#Yes」の返信が来ると自動的に「掲載可能」フラグに変わる
「visumo」の簡単ステップ③ECサイトに掲載する
管理画面上には、「キャンペーン用」「公式Instagram用」など、用途ごとのコレクションが作れるようになっている。このコレクションの中に掲載許可の取れた投稿を格納することで、ECサイトで展開できるようになる。
「visumo」の簡単ステップ③ 掲載許可の取れた投稿をコレクションに格納して、ECサイトで展開
掲載したUGCの効果を分析できる機能や、導入サポートも充実
「visumo」には、掲載したUGCごとのクリック数やコンバージョンなどを計測し、効果を分析できる機能も搭載されている。自社にはどういうクリエイティブがマッチしているのかがわかることで、今後収集に力を入れるべきテイストの写真などが把握できるほか、自社で作るクリエイティブの参考にもなると考えられる。
UGCをしっかりとコンバージョンや売上につなげていただくために、当社はカスタマーサクセス専任の部署を設置し、導入企業を手厚く支援している。利用継続率の高さは、UGC活用の効果が導入各社で表れていることの証拠だ。今後も、導入企業のビジネスの成功に貢献していきたい。(千林氏)
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