セブン&アイ・ホールディングスが進めるオムニチャネル戦略「omni7(オムニ7)」の初年度EC売上は1418億円――。2015年11月のグループポータル「オムニ7」運用開始から4か月。2016年2月期決算で明らかになった「オムニ7」の実績といった現状、2019年2月期に1兆円構想を実現するための課題などを探ってみる。
オムニ売上1兆円構想、初年度の実績は?
セブン&アイは「オムニ7」に代表されるオムニチャネル戦略の売り上げを“オムニ売上”として設定。オムニ売上は「EC売上」と「Webルーミング売上」(ネットで情報調べて実店舗で商品を購入する消費行動による売り上げ)の合算数値で、2016年2月期は1418億円。なお、2016年2月期は「Webルーミング売上」を除いている。
出典は2016年2月期の決算説明会資料
「EC売上」の構成は、各子会社のEC事業、セブン-イレブンの食品宅配サービス「セブンミール」と「イトーヨーカドーネットスーパー」の宅配系EC、「ニッセン」のEC売り上げ。
各子会社が運営主体となっているECサイトの売り上げは1年間を通じた実績だが、「イトーヨーカドー ネット通販」は4か月間の売り上げ数値。「オムニ7」のスタートにともない、「セブンネットショッピング」で取り扱っていた日用品などを「イトーヨーカドー ネット通販」に移管する形で、イトーヨーカ堂がネット通販を始めたため。
また、ニッセンHDの2015年12月期売上高は1572億8900万円。「ニッセン」はEC売上高が掲載されている。
セブン&アイの発表情報をもとに編集部で表を作成
セブン&アイは2019年2月期にオムニ売上1兆円をめざす方針を掲げる。成長シナリオは、商品力の向上と品ぞろえの拡大だ。
グループ企業の連携で専属の商品開発体制を構築する。各社長責任による進捗管理を実施。精鋭のマーチャンダイジング(MD)担当者を各社から選抜し、商品開発プロジェクトを進める。また、将来を見据えた物流戦略の検討を進め、グループの既存物流を含めた物流効率化をめざすという。
グループ連携を強化する一方、外部企業との連携も進める。2017年春までに順次連携を実現する方針で、外部企業に「オムニ7」へ参加してもらい、品ぞろえなどの拡充につなげる。
オムニ戦略の成長シナリオはニッセンの業績回復がカギ握る?
こうした連携策を進めるなかで、カギを握るのが「ニッセン」との連携だろう。「オムニ売上」のなかで最も高い売り上げを計上しているものの、いまだ両社の連携はまだ道半ばだ。
2014年、セブン&アイはニッセンホールディングスを傘下に収めた後、
- ニッセンが保有するコールセンター機能の活用
- 「セブン-イレブン」店頭受取サービスを、ニッセンのECサイトやカタログ通販の商品にも展開
- ニッセンのアパレルの一部を「セブンネットショッピング」で販売
といった取り組みを進めてきた。だが、「オムニ7」への参加、ポイント連携などは実現されていない。それは、ニッセンHDが経営不振に陥っていることが少なからず影響しているようだ。
ニッセンHDの2015年12月期連結業績は、売上高が前期比14.4%減の1572億8900万円、営業損失は81億5900万円(前期は72億9200万円)、当期損失は133億2400万円(同89億2000万円)(前期業績は子会社の決算期変更の影響を除外した数値、前期比は同数値と比較)。経営構造改革の途上、真っただ中だ。
こうした状況を背景に、市場信行社長は決算説明会でセブン&アイとの連携について次のように説明している。
最優先課題は経営を立て直すこと。「オムニ7」への参加は現状では考えていない。カタログでのポイントはナナコに変える可能性はあるが、時期は未定だ。
セブン&アイは自社PB商品「セブンプレミアム」の開発・販売に注力しているように、「オムニ7」でも高付加価値商品の取り扱いを進めようとしている。グループ各社横断で専属の商品開発体制を築き、「オムニ7でしか購入できない」といった価値提供を見据える。
一方のニッセン。これまで進めてきた“安さ”の追求が業績不振を招いた一因でもあることから、「安さのニッセンから価値のニッセンへと変えたい」(市場社長)として、方向転換を示唆する。
セブン&アイグループのノウハウを活用した商品として「セレクト10」を開発。従来製品よりも価格を高く設定するなど、「高くても良い商品だねと顧客に言ってもらえるようなMDを進めていく」(同)という。
オムニチャネル戦略を強烈に推進しようと、セブン&アイはニッセンを買収したものの、肝心な「オムニ7」への参加に向けた課題は山積状態だ。ニッセンの業績次第で、「オムニ7」の成長シナリオに黄色信号が灯るかもしれない。
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オリジナル記事:「オムニ7」売上は1418億円。セブン&アイがめざす1兆円計画の現状と課題は?
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