株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインにおけるWebマーケティングの現場 (2/3) -新規獲得のための施策について-

ゴルフ業界の最大手ECポータルサイトを運営する株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインに、収益を上げていくための運営ノウハウについてお伺いしました。
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Webインテグレーション事業を展開する株式会社マイクロウェーブが、大手Webサイトご担当者様と対談を行い、Webサイト運用における成功事例や失敗事例、今後の取り組みについて語ります。

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【対談index】
第1回: ECサイトのKPIについて
第2回: 新規獲得のための施策について
第3回: 既存育成のための施策について
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第2回目である今回は、「新規獲得のための施策」についてお伺いします。

2.新規獲得のための施策について

――それでは、「新規獲得」をテーマとした施策内容についてお伺いできればと思います。まず、「新規」とはどのように定義されていますか?

新規の定義は、大きく分けて以下2つととらえています。
 ①ECサイト、メルマガの新規会員登録
 ②新規購買

①の会員数の推移については、季節変動やゴルフのトレンドを踏まえて週次で確認し、②の購買については四半期から半年単位で確認しながら施策推進を行っています。

シェアが高まるスマートフォンでは若い世代が増えている

 

――新規の動向として、特徴的なことはありますか?

スマートフォン経由のアクセス、購買については、新規のお客様の比率が比較的多い傾向にあります。
また、これまではPC/ガラケー共に40代、50代の会員がメインだったのですが、スマートフォンは既存の年代層に加えて30代が多くなってきています。
ガラケーはPCの補完ツールであり両方併用して使われていたのに対し、スマートフォンユーザーはPCを使わずにスマホだけで完結しているユーザーが多いと推測でき、今までとは異なる層にリーチできていると感じています。

 

――実際のスマートフォンのシェアを教えて頂けますか?

購買では、去年11月時点で6%~7%でしたが、現在は12%まで伸びてきています。またビジターでは、全体の20%程度を占めています。
大手モール系ECなどが次々にスマートフォン対応したこともあり、スマートフォンにおける購買行動のハードルが下がってきているのも追い風になっていると感じています。

 

――実際に結構伸びているんですね!
確かに、スマートフォン対応のECサイトもどんどん増えてきていますし、弊社も昨年はお客さまからスマートフォン対応をしたいというご相談が増えてきましたね。特にアパレルECではスマートフォンでの売り上げが伸びていると良く聞きます。実際にとあるアパレルECサイトでは後発にも関わらずPCの売り上げに匹敵するぐらいの規模になってきています。当然ながら伸び率では断トツです。スマホはビジュアル訴求もしっかり出来るし、ECの基本である「情報をしっかり伝える」ことが出来る秀逸なデバイスなんだと改めて思います。

――スマートフォンユーザーの購買行動に特徴はありますか?

スマートフォンユーザーは同時購買点数が少ないという傾向が見られます。PCでは2,3点のまとめ買いが多いですが、スマホは1点買いが多くなっています。

 

――そうなんですね、それはPCよりも若い世代が多いことと関係しているのでしょうか?

まだ確実な検証は仕切れていないのですが、たしかにPCより若い世代が多いことも一つの要因だと考えています。またスマートフォンの特性として、場所に縛られにくいということもあるため、「来週使うクラブがほしい」など、思いついたときにその場で買い物をするユーザーが多いのかもしれないと考えています。

 

――モバイルECの特性として「瞬間購買ニーズに強い」がありますが、おそらく突発的なニーズに答えやすい情報設計というのも、今後のスマホECのキモなんでしょうね。

集客施策はコストパフォーマンスを検証して最適な施策のみを実施

 

――広告はどのようなところに出稿されていますか?

広告は、リスティング、アフィリエイトなどコストパフォーマンスが高いものを中心に行っています。
ゴルフダイジェスト本誌への出稿はリテール関連については年数回行っています。

マス広告は、以前行っていましたがコストパフォーマンスが比較的低かったために現在は行っていません。
昨年今年と、米国「Golf Digest」誌が2004年より実施しているゴルフギアのレーティング企画“HOT LIST”の日本展開を行った際には、多くのメディアに取り上げて頂きました。マスプロモーションというより、このようなPR活動は行っています。

 

――外部チャネルとの連携は行っていますか?

現在はYahoo!、Amazonなどの大手ECモールにも出店をしています。
こちらでは、GDOゴルフショップではリーチできていないユーザーにご購入いただけるよう、商品ラインナップの見せ方やモール上で実施されるキャンペーンへの参加などを積極的に行っています。
例えば、Yahoo!ショッピング上でご提供させていただいているGDOゴルフショップでの見せ方についてのPDCAを繰り返すことによって、Yahoo!経由の売り上げが数倍に増えてきています。
Yahoo! ショッピングに参画している競合企業との価格競争力は、決して高いとはいえないのですが、お客様とGDOとの信頼関係を、徐々に構築することができてきているのだと実感しています。

 

――自社のECを展開されていると他のモール系ECへの出店に消極的な企業も多いと思うのですが、御社は積極的にやられていますね。

自社だけではリーチできないユーザーへアプローチするためのチャネルの拡大という観点で出店を行っています。
他のモールなどを経由して購入頂いたお客様にも、GDOのファンになっていただくために、日々改善を行っております。

 

――このように自社のリスト獲得につなげられない場合、別途お客様へアプローチする施策は何か行っていますか?
または自社の会員獲得というより、まずは購入してもらってファンを醸成していくというKPIで運営されているのでしょうか。

今後の課題です。
会員獲得のために、ポイント系サイトの露出を行っていたこともありましたが、そこで獲得した会員の多くは購買につながりませんでした。やはり、ご購入いただいて、サービスを実感していただくことが重要だと考えていますが、KPI運営にはいたっておりません。

 

――確かにポイントなどの特典獲得を目的として会員登録したユーザーは、実際のターゲットとは異なることが多いですよね。ECそのものの市場が拡大していた時期は、懸賞を含めリスト獲得という意味ではそれでもよかったんでしょうが、今売れているECサイトを見ると、商品軸での目利き、つまりユーザーが欲しいと思う商品の「情報をしっかり伝達」し、「適正価格」で買いやすい手法で「ストレスなく購入できる」という、物販の当たり前の基本が大事だと感じています。

――ちなみに非アクティブな会員に対して何か対応などは行っているのでしょうか。

サイト会員について削除等は行っていませんが、メルマガ会員については、一定以上アクセスがない(開封率が低い)会員はリストから削除するようにしています。

あまり広く集客を行っても、ロイヤリティの高い会員獲得にはつながりにくいため、どちらかというと小さな施策をいくつか行ってPDCAサイクルを回しながらロイヤリティの高い会員を獲得していくことに注力しています。

 

――例えば他の大手小売り業者様で、1000万人規模の会員、メルマガ会員は37万人程度持っているがあまり活用しきれていないという課題を持っているところもあります。
そういった会員リソースを持っているところとアライアンス的な取り組みは行っていますか?

検討中です。購買年代層の親和性が高いアライアンス先はもちろんのこと、弊社の会員層とは異なる若手や60代以上の会員との接点を持っているパートナーとの提携についても、積極的に行いたいと思っています。

 

――リアルからのECへの集客も実施されていますか?

リアルからの引き込みとして、GDOがゴルフ場で行っている企画「ワンオンチャレンジ」の参加者にGDOゴルフショップのクーポン券を配布するなど、普段ネットチャネルだけではリーチできない層に対しての販促施策を行っています。

 

――スマホチャネルでの集客で独自にやられていることはありますか?

スマートフォンのアドネットワークやリスティング等は、まだコストパフォーマンスがあまり見込めないために出していません。スマートフォンでは、オーガニック検索で来訪するユーザーが多く、SEO対策については注力しています。

 

――ガラケー時代は、キャリアの公式サイトに登録して、サイトのランクを上げていくことが事業戦略の重要な施策の一つでありましたが、スマートフォンではキャリアの影響力はかなり下がってしまっていると感じています。御社は現在そのようなキャリアとのつながりを意識しているところはありますか?

おっしゃる通り、スマホ時代に移行しつつある流れの中でキャリアの運営するポータル経由の集客力は下がっていると感じるところはあります。
ただ、シニア層をターゲットにした施策として、シニア向けのスマートフォンにGDOアプリをプリインストール、といった施策は面白いかもしれませんね。

 

――確かにゴルフ人口としてシニア層は多いですからね。
今後はこのシニア層も引退していきますし、現在ゴルフ人口自体は減っていくことが予想されていますよね。
今後はゴルフユーザーの新規獲得としては、上限があるのではないですか?

確かに、団塊世代が引退すると、若手がどの程度増えるかにもよりますがゴルフ人口が減ると言われております。
ただ、現在GDO会員数は220万人程度で、国内のゴルフ人口は新陳代謝を繰り返しながら1,000万人程度と言われており、まだまだ購買ユーザーは増やしていけると考えています。

 

――今後は時代や市場の変化とともに施策を検討していく必要がありますね。
広告宣伝費の売上対比率は決めているんでしょうか。

以前は、ゴルフダイジェスト本誌のブランディング効果で集まるユーザーが多かったために広告活動自体をあまり行っていませんでしたが、昨今はECの競合も出てきているため、売上の数%と設定しています。

ソーシャルは、直接購買に繋げるのではなく低いレイヤーで“ゆるく”繋がっていく

 

ソーシャル系は、サイトへのアクセスや購買という成果はほとんど出ていない状況です。
公式Facebookページではファンが7.5万人ほどおり、そこで商品紹介も行っていますが、アクセスがなく購買も少ない状況です。大会結果などの情報配信の方がリアクションも多く関心が高いと感じています。
成果を上げるという視点でいうと、例えばAmazonさんなどが行っているタイムセールのような取り組みについては、今後の施策として視野に入れています。

ソーシャルメディアの活用としては、直接購買に繋げるというよりは、一段階下のレイヤーで“ゆるく”繋がっていくという視点で考えています。

――最近、ソーシャルメディアを運用するメリットとしては、認知、記憶、刷り込みまでの役割をソーシャルが担って、実際にアクション(購買など)を起こすときにはGoogleで検索してECサイトにアクセスして購入するケースが多々あるみたいです。この辺の定量情報をトラッキングする仕組みはなかなか難しいものがありますが、今後の重要指標のひとつである「ユーザーと対話する」ことで、この辺りの情報を拾うことができるといいですね。

ネットとリアルが連携し「ゴルフで世界をつなぐ」の実現へ

 

――現在、私の周囲でも御社の認知度は高く、ゴルフを予約しようとか、ゴルフ用品を購入したいと思うとまず御社が浮かぶと聞きます。さらに認知度はどんどん上がってきているかと思いますが、そのような実感はありますか?

もともとゴルフダイジェスト誌の認知度が高いこともあり、特に首都圏での認知度は高いように感じています。

 

――首都圏以外のエリア戦略は行っていますか?

ロケーションを分けた戦略はまだ行っていません。
地方在住のゴルフプレイヤーには、お付き合いの長いゴルフショップがあることが多く、お店に行ってゴルフ談義やプレイの相談をすることが多いようですね。そういった方々がゴルフ用品購入する際には、やはり、なじみのお店での購入が主になります。弊社のECからご購入いただくハードルは、まだまだ高いなと感じています。
弊社では、中古を取り扱う店舗「ゴルフパラダイス」も運営しておりますが、弊社直営店は関東のみです。

 

――店舗はどの程度展開されていますか。
また今後の戦略はどのようなことをお考えですか?

店舗は5店舗展開しています。
中古販売を中心に展開しているのですが、来客を増やすことで、買い取り規模を増やし、在庫を確保していくことがこの事業を伸ばすキモだと考えています。自社サイト、店頭での買い取りに加え、ゴルフ場併設のゴルフショップと提携し、中古ゴルフ用品の買い取りを行っています。

今後は市場動向などを踏まえながら、店舗戦略を検討していきたいと考えています。

 

――最近はゴルフバーなどが増えてきたりしていますが、そのような取り組みは行っていますか?

ゴルフバーでの遊び感覚とは少し異なりますが、モーションセンサーというスイングを可視化する機器を使った、本格的なレッスンプログラム「GolfTEC by GDO」をご提供しています。
六本木に1号店があり、4月18日に恵比寿に2号店を出店したところです。

 

――若い年代はバーやシミュレーションなどでカジュアルなプレイを楽しんでいますよね。若年層へのアプローチとしてそういったことは考えていますか?

現在は考えていないですが、若年層へのアプローチとしてそのような取り組みもありますね。

 

――そこでスマートフォンアプリを展開するなどもありますしね。

最近は、小さな機器をクラブに取り付けるとスイングなどの情報がスマホアプリに転送されて、データが溜まっていくようなモノも出てきていますね。
すでに「スコア管理」サービスは提供済みですが、今後は、プレイログなどのゴルフ情報が全て蓄積されデータベース化、ライフログ化していくとおもしろいですね。

 

――まさに、御社の理念である「ゴルフで世界をつなぐ」世界が実現されていくわけですね。

 

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【対談index】
第1回: ECサイトのKPIについて
第2回: 新規獲得のための施策について
第3回: 既存育成のための施策について
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※本コンテンツは株式会社マイクロウェーブのサイトでも配信を行っております。こちらも合わせてご確認ください。
http://www.micro-wave.net/interview/chapter2.html

 

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