Webサイトにおけるユーザーエクスペリエンス(UX)とは?

ユーザーエクスペリエンス(UX)について、その定義や必要性からWebサイトにおける施策内容をまとめました。
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近年、Web業界で注目度が高まっているユーザーエクスペリエンス(以下UX)。Web担当者にとって、UXとはどう向き合いどう対応していくべきなのでしょうか。

本コラムでは、UXの定義や必要性から対応するべき施策内容をまとめました。

UXとは

UXは、User Experienceの略語で、直訳すると「ユーザー体験」となります。
その由来は、当時のApple Computer社に勤務していたアメリカ認知心理学者のDonald A. Norman博士が考案し造語したといわれています。UXという用語は幅広く使われており、人によって場面によって解釈は異なりますが、一般的に言うと、UXとはユーザーが特定の製品やサービスを使った時に得られる経験や満足等全体を指す用語です。ユーザービリティ(使いさすさ)だけでなく、使う行為による楽しさ、心地よさ、感動、行動の変化なども含まれます。ユーザーが真にやりたいことを、いかに楽しく、心地よく実現できるかを重視した概念となります。
UXの概念は以前から存在していましたが、ここ数年かなり注目されるようになってきています。Apple社が次々と記録的なヒット商品を世に送り出したのも、成功要因の一つとして挙げられるのが豊かなUXの実現だと言われています。

 

UXと関連する言葉としてユーザーインターフェース(以下UI)がありますが、UIはユーザーと情報のやり取りをするための操作感や表現方法のことであり、UXは、「楽しかった」「気持ちよかった」といったユーザーの認知体験の総体を意味する多くの概念を包括した用語です。

2010年にドイツで行われたUXセミナーの成果をまとめた「UX白書」(※1)では、UXを期間(利用前、利用中、利用後、利用期間全体)によって分類しています。 こちらでは明確に表現されていますが、UXはユーザーと接している時だけではなくその前後も含めた「体験」を提供するということなのです。

なぜ今UXが重要視されてきているのか?

ではなぜ今UXが重要視されてきているのでしょうか。 今までの考え方とどう違うのか、何が重要なのか、本当に取り組む必要があるのか、という疑問を抱く方も多いかと思います。 UXの必要性について、大きくは以下2点にまとめることができます。

  1. ユーザーの経験値の蓄積、価値観の変化への対応

    今まで数多く"良い"商品・サービス・サイトが輩出しており、ヒットしたものも数え切れないほど存在しています。新しい"良い"ものが出てくるたびに、ユーザーの常識が刷新され、経験値が高く積み上げていくため、昔の「良いもの」に対する定義は必ずしも今の時代でも通用できるとは限りません。ユーザーの目はどんどん肥えていき、判断基準も厳しくなってきていると言えます。 このような時代には、企業側も新たな価値提供を行うべくステップアップが求められます。そのステップアップのカギとしては、②で述べる技術の発展があります。

     

  2. チャネルの多様化/技術の発展により、リアルとデジタルの境界がなくなりつつあるなど、ユーザーとの向き合い方も変わってきた

    スマートフォン、タブレットなどのデバイスの普及により、ユーザーとの接し方は今までと大きく変わりました。 操作自体も、マウス操作以外にもタッチ操作や音声操作などより簡単に操作することが可能になったことで、デスク以外でも買い物やテレビを見ながら家事をしながらなど様々な生活シーンにデジタルサービスが溶け込んでいます。

    そのため次のステップアップとしては、先述のようにユーザーがデジタルに接している時だけでなく、その前後も含めてユーザーの生活シーンへどう入り込んでいくか、どうリアルな「体験」とリンクしたサービスを創り出せるか、ということが重要になってきています。

 

その考え方がUXとして定義され、これからはUXこそが他サービスと差別化できる武器であると考えられ注目されていると考えられます。

UXの定義

UXの概念と重要性を踏まえて、どうやって実際のWeb制作・運営に導入するかを検討する際、まずUXの要素を理解しておいたほうが効果的です。 UXを語る際によく引用されるのは、ピーター・モービル氏のハニカム構造(※2)です。 ピーター・モービル氏は情報アーキテクチャ論の先駆者であり、UXを構成する7つの要素を以下のように挙げています。

  • ①Useful 役に立つ・有用

    常に製品とシステムに有用であることを求め続ける勇気と独創性を持ち、保有している技術と手段を利用し、より有用性の高い革新的な解決策を定義する。

  • ②Usable 使いやすい・便利

    ユーザーの目的実現に効率的・効果的なサポートを行う。

  • ③Findable 探しやすい、迷わずに目的地に辿り着ける

    ユーザーがほしい情報に辿り着けるような設計と、常に現在位置を確認できるような設計をする。

  • ④Credible 信頼できる

    提供するコンテンツに信憑性がある。ユーザーは提供されている内容に信頼できるかどうかの設計的要因を重視する。

  • ⑤Accessible アクセスしやすい、誰もが見られる

    ユーザーへの配慮を欠かさず行う。どのような状態の人でも利用できるようにする。

  • ⑥Desirable 好ましい・魅力的

    イメージ・アイデンティティ・ブランドなどの要素を含めた情動的なデザイン(Emotional Design)を駆使し、ユーザーに好感を持たせる。

  • ⑦Valuable 価値がある

    Webサイトはスポンサーに利益をもたらさなければいけない。非営利的な場合は、UXはミッションの実現を進行させる役割を持つ。営利的な場合は、UXは売り上げに貢献し、顧客満足度を上げる役割を持つ。

 

健全なるUXデザインはこの七つの要素をバランスよく具現化しているものであると定義されています。

Web担当者が実行するべき施策

上述した7つの項目ごとに、Webサイトの構築・運用の中で具体的に行うべき施策をピックアップしました。

  • ①Useful 役に立つ・有用

    ≪ユーザーニーズに適したサービス開発≫

    □ユーザーニーズの把握
      市場調査、現サイトのアクセス解析 等
    □ユーザーテストの実施による有用性の検証

  • ②Usable 使いやすい・便利

    ≪ユーザーファーストでユーザビリティに配慮したサイト設計≫

    □最適なサイト設計
    □閲覧環境に適したチャネル展開
    □ユーザビリティへの対応
    □ユーザーサポートの充実

  • ③Findable 探しやすい、迷わずに目的地に辿り着ける

    ≪ユーザーシナリオに沿ったUI/IA設計≫

    ユーザーニーズを元に、シナリオを設計。そこに沿ったUI/IA設計を行う
    現在地を明確にするようにパンくずやラべリングを考慮する

  • ④Credible 信頼できる

    ≪会社やサービス概要などの基本的情報を明記≫

    □会社概要/サービス概要情報の明記
     会社やサービスに関する情報を明記することで、
     情報やサービスに対しての信頼性を確保する
    □情報を引用した場合は参照元の明記

  • ⑤Accessible アクセスしやすい、誰もが見られる

    ≪アクセシビリティに配慮した設計≫

    様々な状態のユーザーにとってアクセスのしやすさを確保する

  • ⑥Desirable 好ましい・魅力的

    ≪企業VIだけでなく、ユーザーの趣向に沿ったクリエイティブを創る≫

    □企業VIに沿ったデザイン設計
    □ユーザーの趣向を踏まえ、分かりやすく使いやすいデザインを設計

  • ⑦Valuable 価値がある

    ≪ユーザーに新たな価値を提供する(差別化)≫

    新たな価値提供(案)
    □スマートフォンやタブレットなどの新デバイスの特性を活かしたO2O施策
    □レコメンド/キュレ―ションサービスなど、ユーザーの潜在ニーズを引き出す施策
    □ソーシャルメディア活用

 

上記に上げているのは基本的施策も多く対応済みのものもあるかと思います。 ただ、UXの概念を元に再考すべき事項としては、それぞれを単一的に行うだけではなく、Web領域にとどまらずユーザーのリアルな「体験」とリンクしたサービスを創り出すために、全てを総合的に考え実行していくことが重要となるのです。

今後は、UXへの対応が成功のポイントとなるでしょう。

 

【参考】
(※1) hcdvalueにより日本語訳・校正された「UX白書の翻訳と概要」参照
(※2) Semantic Studiosの記事「User Experience Design」参照

 

■本コラムの元記事はこちら
Webサイトにおけるユーザーエクスペリエンス(UX)とは?

 

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