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システムを活用してミスのないオペレーションを
コンテンツが良くてもそのメールが届かなければ意味がない
この記事では、特集の第2章で取り上げたPDSサイクルの中の、PlanからDoフェーズにかかる「オペレーション設計」「配信オペレーション」に該当する内容を含んでいる。理想としては、戦略の設計のうえに成り立つ作業フェーズのため、連載の始めから記事を読み進めてほしい。
![図1 クリエイティブ企画・制作](https://webtan.impress.co.jp/sites/default/files/images/blank.gif)
メール配信の許諾を得たリストを揃え、ユーザーにとって有効な情報となるコンテンツが用意できたのなら、次はいよいよ配信作業のフェーズとなる。メールアドレスという個人情報を含んだ重要なデータに対して、確実かつ不備のないようにスムーズな作業を心がけたい。今回はメール配信設定時の流れに沿って、いくつかの注意点を順にみていくことにしよう。
1.メール配信に必要な情報が揃っているかを確認する
メール配信に必要な情報は以下の3点である。安定的にメール配信業務を遂行するには、メール配信時までに、以下3点が揃っているか、事前に確認しておくことが重要となる。
- メール本文
メール本文は、前節「読みたくなるようなメール作りのためのコンテンツ作成ポイント」を参考にチェックをしておこう。また、配信対象者に対して、適切な内容であるかについても確認したい。
メールヘッダー情報について、件名はユーザーが読むか、読まないかを判断する最も重要なものとなる。“どこ”からのメールで、“どんな”内容が書いてあるのか一目でわかり、かつユーザーに興味を持ってもらえる内容であるかどうか確認する。
- メールヘッダー情報(件名、Fromアドレス、Reply-toアドレス、Fromコメント)
Fromアドレス、Reply-toアドレスとは、それぞれ「送信元アドレス」「返信先アドレス」のことを指す。ユーザーが受信したメールマガジンへ返信をする場合、多くのメールソフトでは、Reply-toアドレスに返信がされるが、メールソフトの仕様によっては、Fromアドレスに返信されることもある。そのためユーザーのことを考慮し、Fromアドレス、Reply-toアドレス共に実際に存在するメールアドレスにする必要がある。
Fromコメントとは、メールソフトの差出人欄にFromアドレスと共に表示されるコメントのことである。メール配信システムによっては、指定できない場合もあるが、記載することで“どこ”からのメールであるかがすぐにわかり、ユーザーにとってわかりやすいメールとなる。
- 配信対象リスト
配信対象リストが、これから配信しようとしている“正しいリスト”であるかを確認する。たとえば、PC向けのメールを配信しようとしているのに、配信リストがモバイルではないかなどをチェックするのだ。どのようなメール配信を行うのかにより、確認すべき項目は変わってくるが、送ろうとしているメールと配信リストが正しいかは必ず確認する。
2.メール配信システムの設定とテスト配信を行う
次に(1)で準備した配信メールの情報を、メール配信システムへ設定する。
ヘッダー情報、メール本文を入力し、その後テスト配信を行い、テスト配信された原稿をチェックする。テスト配信を確認する際には、多くのユーザーが使用しているOutlook ExpressやOutlookなどのメールソフトとWebメール(Yahoo!メール、Hotmailなど)での表示を最低限確認する。
特にHTMLメールの場合は、デザインが崩れていないかを確認する。Webメールでは、各サービスのCSSが適用されるため、意図した表示とは異なる場合が多々見受けられるからである。代表的なWebメールでの表示確認は、必須といえる。
以下に、テスト配信時にチェックすべき項目を挙げてみた。チェックリストをもとにテスト配信結果を確認することで、正しい配信を行えるようにしたい。
- 件名があっているか。
- Fromアドレスがあっているか。
- Reply-toアドレスがあっているか。
- Fromコメントがあっているか。
- 氏名などの差し込み設定を行っている場合、差し込み位置・差し込み内容があっているか。
- 表示の崩れはないか。
- メール本文があっているか。
- メールに記載されているリンク先につながるか。
- メールに記載されている文言とリンク先の文言があっているか。
- HTMLメールの場合、開封確認の有無。
テキストメールの場合には、ユーザーの使用しているメールソフトの設定が等幅フォントかプロポーショナルフォントかによって表示が変わってしまう点に注意が必要だ(図1)。文字フォントには、等幅フォントとプロポーショナルフォントがあり、この2つのフォントの属性の違いのために、しばしばメールにおいて文字が「ずれる」ということが起こる。
「等幅フォント」は、どの文字に関しても同じ幅を使用するため、たとえば「i」と隣の文字との間は隙間があいているように見え、「w」と隣の文字との間は詰まったように見える。反対に「プロポーショナルフォント」は、文字そのものの大きさを考慮して幅を変化させるため、隣の文字との間には大きな差は生じない。ただし、使用する文字により幅が異なるため、上下の行を比較すると桁がそろわなくなる(上の図を参照)。原稿制作時には、なるべくこの「ずれる」という現象が起きにくいレイアウトを考慮しつつ制作するのが望ましい。たとえば、見出し全体を四角で囲ってしまうと四角囲いの右側がずれる可能性が高くなる。そのため、この右側の閉じをなくすることで、ずれは目立ちにくくなる。
また、Outlook ExpressやOutlookなどでは、受信メールで自動的に改行される設定がされていることもあるため、意図した箇所での改行ができないケースがある(図2)。すべてのユーザーにその設定を変更してもらうのはなかなか難しいため、テスト配信時には、このポイントにも注意する必要があるだろう。
![図2 Outlookで改行が削除されるケース](https://webtan.impress.co.jp/sites/default/files/images/blank.gif)
![図3 削除された改行を復元した場合](https://webtan.impress.co.jp/sites/default/files/images/blank.gif)
HTMLメールの場合は、メールソフトによってはHTMLメールの表示が対応していない場合もあるので、その点に注意が必要だ。メールソフトのバージョンによっても、表示のされ方が異なって見えることがあるため、現在主流となっているメールソフトについては、表示の確認をすることが望ましい。
モバイルメールの場合、必ず実機での確認が必要である。意図した絵文字が表示されているかなど、最低でも3キャリア1機種ずつ確認をする。最近よく見かけるモバイルHTMLメールでは、各キャリアによって文字の大きさが異なったり、リンクに文字色をつけた場合やアクティブになった際のリンク色が異なったりするといった現象があるため、細かいチェックが必要になってくる。
3.配信リストの設定を行う
事前に用意しておいた配信リストの情報を、メール配信システムへ設定する。
決められたコンテンツが用意された最適な配信リストに対応しているか最終確認を行う。セグメント配信を行うような際には、細心の注意が必要である。
配信リスト設定時には、必ず以下の点に留意したい。
- 配信対象者と配信するコンテンツはあっているか(モバイルアドレスかPCアドレスかの確認含む)。
- リスト件数はあっているか。
4.本配信設定を行う
テスト配信、配信リスト共に問題がなければ、本配信の設定を行う。
この際注意すべきことは、配信時刻、配信速度の2点である。
PC向けの配信であれば、それほど時間を気にすることはないが、モバイル向けの配信では配信の時間帯に気をつける必要がある。モバイル向けの配信を早朝や深夜に行うことは、クレーム発生の原因となるので気をつけたい。特に朝9時前、夜8時以降のモバイルメール配信には注意が必要である。
配信速度は、何時までに配信を完了したいのかということを考慮するのはもちろん、メール配信直後はウェブサイトへのアクセスが集中しやすいため、リンク先の受け側ウェブサーバーの状況も考慮して考えるべきである。
5.配信完了を見届ける
予約まで行えば自動的にメール配信システムから本配信が開始される。ただし、通信の状況によっては予定通りに配信が完了しない場合がある。大量の配信リストに対して、高速の配信を行った際などには、受信サーバーからブロックされてしまい、配信がうまくいかないというようなケースも存在する。そのため、スムーズに配信されているか、また予定時刻までに配信が完了しているかを確認するようにしたい。
1つ1つは単純な作業であるが、冒頭に述べたように確実かつ不備のないようにスムーズに遂行することが最も重要となってくる。一度配信してしまったメールはやり直しがきかないため、社内でのチェック体制やテスト配信を駆使して確実な配信作業を心がけたい。
それでも、万が一誤配信があった場合には迅速な対応が肝要である。細心の注意を払いメール配信設定を行っていたとしても、やはり人間が作業を行う限り、ミスは発生してしまうものだ。誤配信には様々なパターンが考えられる。
- 件名や内容に誤りがあった場合
- メール中のリンクが繋がっていない(リンク切れ)場合
- 配信リストを取り違ってしまった場合
リンク切れや個人情報の流出など、内容や被害の範囲は様々であるが、大事なことは事前に作成した事故対応マニュアルに従い迅速な対応を行うことに尽きる。社内にそういったマニュアルが存在しなのであれば、今一度、配信オペレーションを見つめなおしながら事故対応のフローを確立しておく必要があるだろう。
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