上場企業の広報力、全般的に向上。業種別では「食料品」が1位に【電通PR調べ】

電通PRは上場企業を対象とした「第3回 企業広報力調査」の結果を発表した。

電通パブリックリレーションズ(電通PR)の企業広報戦略研究所は、日本における企業の広報活動の実態や課題を探ることを目的に、上場企業3,651社の広報担当責任者を対象に調査を実施。回答を得た518社のデータを独自の「広報オクトパスモデル」で分析した。

「広報オクトパスモデル」の8つの「広報力」、全項目が前回調査と比較して伸長

同研究所が開発した「広報オクトパスモデル」は、以下8つの「広報力」を評価するもの。

  • 情報収集力:自社や業界・競合に対するメディアの評判や、ステークホルダーの動静などについて収集・把握する能力
  • 情報分析力:収集した情報に基づき、自社の経営課題・広報課題を洞察する力と、それを組織的に共有する能力
  • 戦略構築力:経営課題に対応する広報戦略の構築と、ステークホルダー別の目標管理、見直しを組織的に実行する能力
  • 情報創造力:ステークホルダーの認知・理解・共感を得るために、メディア特性に合わせたメッセージやビジュアルなどを開発する能力
  • 情報発信力:マスメディアや自社メディア、ソーシャルメディアなどさまざまな情報発信手法を複合的にタイムリーに駆使する能力
  • 関係構築力:重要なステークホルダーと、相互の理解・信頼関係を恒常的に高めるための活動と、実行する組織能力
  • 危機管理力:自社を取り巻くリスクの予測・予防や緊急事態に対応するスキルを維持・向上する組織能力
  • 広報組織力:経営活動と広報活動を一体的に行うための意思決定の仕組み、体制、システム整備などの水準

今回の調査結果では、前回(2016年)と比較して、8つの広報力すべてが伸長した。特に点数が高かったのは「情報発信力」(56.9点)、「情報収集力」(45.7点)、「広報組織力」(41.3点)で、これまでの調査結果と同様、「情報を収集して発信する」という広報の基本となる活動がメインである傾向は変わらないものの、今回は特に、その他の広報力が強化される結果となった。

前回からの伸びに着目すると、「広報組織力」(前回調査比+6.9点)のほか、「危機管理力」(32.6点、前回調査比+5.0点)も高い伸びを示した。前回最も低いスコアだった「関係構築力」が+5.2点と強化され、「情報分析力」は前回の+2.3点につづいて今回も+5.3点となり、さらに伸長した。

この結果をもとに同研究所では、“組織全体としていかに正確な情報を集約し伝えるかという昨今の情報環境変化に対応するために、これまでの広報活動のメインだった「情報を収集して発信する」活動に加えて、「組織全体として広報を意識したリスク予測/予防(防御)をする」活動と「正確な情報を確実に伝える」活動も強化されている”と分析している。

業種別比較:「食料品」が1位に。「電力・ガス」「運輸・倉庫」が続く。「サービス業」が5位に躍進

8つの広報力および総合評価を業種別に比較した結果は以下のとおり。

2014年実施の第1回、2016年実施の第2回と連続で1位だった「電力・ガス」が2位となり、前回3位だった「食料品」が1位となった。「食料品」は前回よりも18.4点伸長した「危機管理力」をはじめ、「戦略構築力」「関係構築力」「広報組織力」で大幅な増加がみられた。一方、「電力・ガス」は「情報分析力」「情報発信力」が前回よりも大きく低下している。

前回の結果から躍進し5位となった「サービス業」は、「情報発信力」「広報組織力」が10点以上伸長。また、「建設」は、「戦略構築力」「情報発信力」「関係構築力」「広報組織力」と4つの広報力で10点以上伸長した結果、大きく順位を上げている。

ステークホルダーの多様化に伴い、広報の業務テーマに広がり

企業の広報活動にとって重要なステークホルダー(利害関係者)が誰であるかを、複数回答可で聞いた結果は以下のとおり(上段の青が今回2018年、下段のオレンジが前回2016年。以下同じ)。

重要なステークホルダーとして「株主・投資家」と「顧客」がそれぞれ9割前後でトップ2という構図は変わらない。前回からの伸びに着目すると、「就活生・学生」が+18.4ポイントと大きく伸長。他に「メディア」(+8.9ポイント)、「ソーシャルメディア利用者」(+5.6ポイント)。前回最も伸長した「従業員とその家族」は今回も+4.9ポイント伸長した。

「広報担当部署の業務テーマ」としては、「トップのメッセージ、企業ビジョン」が85.5%で首位を維持。新設項目の「企業ブランディング」が78.2%で2位に入った。前回との比較では、「経営戦略・事業戦略」が+16.8ポイント、「リクルーティング」が+16.5ポイント、「CSR」は+10.6ポイントとなり、いずれも大きく伸長している。

同研究所では「ステークホルダーの多様化がより一層進むことに伴い、広報担当の業務テーマも広がっており、組織のあらゆる活動における広報の重要性が年々増している」と指摘している。

強化したいのは「戦略構築力」「情報創造力」「危機管理力」

今後、強化したい広報力としては「戦略構築力」「情報創造力」「危機管理力」が上位を占めた。最も低かったのは「関係構築力」。

また、8つの広報力を細分化した80の広報活動のうち、今後強化したい上位10項目は以下のとおり。

「中・長期的広報戦略・広報計画を作成している」「広報戦略に沿ったPRメッセージ・ストーリーを策定している」「広報戦略は、経営戦略とリンクしている」などが挙げられており、『戦略・企画フェーズ』の項目が上位を占めている。

今後強化したい広報力と広報活動、いずれにおいても前回調査(2016年)から大きな変化がないことから、同研究所では“依然として『戦略・企画フェーズ』を課題とし、強化したいと考える企業が多い”と見ている。

調査概要

  • 【調査対象】『会社四季報』に掲載された、東証一部・二部、東証マザーズ、ジャスダック、札証、名証、福証に株式上場している企業(3,651社)
  • 【有効回答サンプル数】518社(回収率14.2%)
  • 【調査方法】郵送・訪問留置調査
  • 【調査時期】2018年4月30日~7月13日
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