モバツイッター開発者が取り組む携帯アクセシビリティ。だれもが使えるウェブコンクール中間発表レポート

モバツイッター開発者の藤川氏が講演。コンクール審査の状況、審査感想の発表も行われた

2月24日、みんなの声で選ぼう!だれもが使えるウェブコンクール実行委員会が主催する、だれにとっても使いやすいウェブサイトを表彰する「だれもが使えるウェブコンクール」の審査中間発表、および「モバツイッター」のアクセシビリティ対応について紹介するセミナーが東京、毎日新聞本社で開催された。

らくらくホンを基準にアクセシビリティに対応

セミナーでは、まずモバツイッター開発者の想創社 代表取締役 藤川真一氏が講演。携帯電話からTwitterを利用できるクライアントとして、日本で初めて作られたモバツイッターがどのようなアクセシビリティ対応を行っているのか紹介した。

モバツイッターは、携帯電話ならではの機能として、写真投稿、位置情報の投稿、メール投稿ほかの機能を備えたTwitterクライアント。Twitterはそのときどきの感情など、ちょっとした心の変化を投稿すると楽しいサービス。感情の動きは、外出時や歩いているときの方が多く起こる、それならばいつでもどこでも投稿できる携帯電話で使えるほうが楽しいと、藤川氏はモバツイッターを開発したという。現在、累計40万人が利用しており、1日約10万人がアクセスしているという。

株式会社 想創社
代表取締役
藤川真一氏

もともとWebサイト制作に携わっていたという藤川氏。140文字で手軽に投稿できるTwitterだが、WebのPC向けTwitterはAjaxを利用しているためアクセシビリティには不適切、「人が利用するのであればアクセシビリティに対応するのは当然」と藤川氏は話し、「一番の興味はWeb屋として当たり前のことをやってみたかったこと。私は携帯屋でもなく、ユーザーインターフェイスの専門家でもない。けれども好きに作れる、これはやるしかない」と、Web制作者として当たり前のことをやってみたかったのが、一番のきっかけだったことを語った。

モバツイッターのアクセシビリティ対応は、視覚障害者のデファクトスタンダードである「らくらくホン」を基準にされている。ドコモが発売するらくらくホンは、テキストの音声読み上げ機能に標準対応しており、その対応へ向けて開発されている。また、NPO法人ハーモニー・アイの協力によるユーザーテスト結果をもとに、健常者が資格に依存している機能を改良する形で、すべての機能が使える「フルモード」に加えて「シンプルモード」を設置している。

具体的にシンプルモードでは、「広告の削除」「画面上部にあった投稿フォームの削除」「つぶやきの改良」などを行っている。音声読み上げソフトは通常HTMLの文章を上から順に読み上げていくので、広告やフォームが画面上部にあると、それらを読み上げるまでに時間がかかるのでこれらを改良した。つぶやき表示の改良では、音声読み上げがリンクの部分で止まらずに、つぶやきをスムーズに読めるように文章内のリンクをはずしている。ただし、つぶやきへのリプライができるように、リプライのリンクは最後に加えている。

HTMLの質に関しても、W3CのWCAG(ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン)目を通して知識の範囲で対応をしてはいるが、基本はらくらくホンの読み上げ対応を前提に改良を進めているという。

一方、実際にシンプルモードを設置してみたことで、フルモードで利用したいという声があることもわかったという。「身体の障害はあくまで行動の制約であって、その人の行動特性を示すものでもない。らくらくホンはシンプルモードにしようと思ったが、RTがしたいなど、削除された機能についてクレームがありました

視覚障害とは関係なく、ヘビーユーザーはフルモードを利用したいということがわかり、らくらくホンでは現在、登録時はシンプルモードだが、フルモードの切り替えができるようになっている。

最後に藤川氏は、Webにアクセスする週間のない人へどうやってリーチするかと、現状の問題点について説いた。「卵と鶏の関係になりますが、たくさんの環境を作っていくことが必要。モバツイのようなコミュニケーションを軸に楽しさを訴求していく」と話し、使う側も作るがわもチャレンジしてみること、それが、だれもが使えるウェブにつながっていくと語った。

31サイトをユーザーと専門家がチェック

今回初めて開催されるコンクール。会場では、応募サイト数は31サイトで、50歳以上の市民モニター102名(うち視覚障害者29名)、技術審査員10名、音声チェックリードユーザー8名によって行われた審査の中間結果が審査委員長であるアルファサード 代表取締役社長の野田純生氏が発表。

今回、十分な評価者が集まったことから一次審査に予定していた技術審査は実施せずに、二次審査から実施。審査の実施感想として野田氏は、50歳以上とはいえ、かなり使い込んでいるユーザーも多く専門的指摘も多数あったこと、厳しい意見、好意的意見など、さまざま声があり制作者にとっても有益だったのではないかと話した。

一方で、アクセシビリティのコンクールなので当然と思っていたが、alt属性なしのimg(画像)だらけのサイトもあったという。これには、広告配信やアクセス解析など外部サービスが提供するimgタグをそのまま埋め込んでいるケースなど、ツールが原因のケースも多かったという。

また、クリエイティブ表現と配色コントラストに関しては、制作者向けのアクセシビリティチェックツール「aDesigner」でロービジョンユーザーのシミュレートをしてチェックしたところ、クリアできるサイトは皆無であり、まだまだ問題があることを指摘した。その他にも、CSSレイアウトで文字サイズを拡大すると文字が重なるケース(テーブルで組んだサイトの方が綺麗な場合も)、JavaScriptやCSSをオフにした際に弱いケース、全体的に良くてもシステムの絡んだページなどで対応できていないといった課題が紹介された。

セミナーでは、「視覚障害者のケータイ活用」と題したトークセッションも開催。乗り換え案内や天気情報など、普段の生活で携帯電話をどのように活用しているのかが話された。

最終結果は3月26日の表彰式&シンポジウムで発表

コンクールの最終結果は、3月26日開催の「だれもが使えるウェブコンクール表彰式&シンポジウム」で発表される。中間発表では、サイトを審査した審査員のコメントは集計中ということで紹介されなかったが、3月26日の授賞式では審査員の意見が含まれた小冊子が配られる。参加費は3,500円で定員150名、公式サイトのフォームから申し込む。

表彰式とシンポジウムの詳細、参加申し込みは公式サイトを参照。

だれもが使えるウェブコンクール表彰式&シンポジウム 詳細・参加申し込み
http://daremoga.jp/ceremony/event-0326.html

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