Webサイトリニューアル特集

「withnews」大リニューアルの舞台裏――朝日新聞CMSへ移行した狙いとショート動画への期待

朝日新聞社の「withnews」が、2026年3月、大規模なリニューアルを敢行した。

柏木恵子[執筆], 佐々木雅久[撮影]

7:05

広告モデル主体のニュースサイトは、今後どうすれば生き残れるのか。

朝日新聞社の「withnews」は、2026年3月、大規模なリニューアルを敢行した。

ドメイン名の変更、広告収入モデルからの脱却、CMSの変更、そして縦型ショート動画への取り組み。

レガシーな大企業の中で、withnews編集部はいかにしてこのドラスティックな方針転換を社内に認めさせ、プロジェクトを完遂させたのか。

リニューアルの舞台裏と今後の戦略について、朝日新聞社の水野梓氏(前withnews編集長)と河原夏季氏(withnews編集長)に話を伺った。

独自CMS運用の限界

Webサイトのリニューアルは、5年程度の周期で行われることが多い。その背景にあるのが、システムの更改だ。

CMSをオンプレミス環境で運用している場合、OSのサポート終了やハードウェアの陳腐化に伴い、5〜7年ごとにシステムを更新する必要が生じる。

そのタイミングに合わせてWebサイトを一新するのは大企業では珍しくなく、withnewsも基本的にはこのケースに当てはまっていた。

2014年の立ち上げ以来、withnewsは独自に構築したCMSで運用してきた。しかし、主に朝日新聞のデジタル版へ出稿する記者にとっては、普段利用しているCMSとは操作方法やUIが異なるため、使い勝手が良いとは言えず、withnewsに記事を出してもらううえでのハードルになっていた。

しかし、withnewsが直面していた課題は、システム面だけではなかった。

無料広告モデルの限界と「Webメディアが厳しい時代」

システム更改の時期を迎えた2024年末、withnews編集部はビジネスモデルそのものの見直しも迫られていた。

テキストが読まれづらくなり、Webのテキストメディアには厳しい時代が訪れました。かつてのように、「ヤフトピに入ればこれくらい流入が見込める」という勝ちパターンが通用しなくなりました(水野氏)

流入が伸び悩めば、PVを広告収益につなげる広告モデルも成り立ちにくくなる。社内からは、「高コストな独自CMSを更新し続ける意味はあるのか」といった声も上がった。

水野 梓
朝日新聞社 デジタル編成本部次長(前withnews編集長)
2008年入社。地方総局の記者、紙面編集、科学医療部を経て2022年6月よりwithnews編集長を務め、現在はデジタル編成本部にて無料コンテンツの発信や編集を担当。新聞になじみの薄い層へのアプローチを模索中。関心分野は医療、ダイエット、ジェンダー、選択的夫婦別姓。

広告メディアからプロモーションメディアへ

そこでwithnews編集部は、メディアの役割を見直した。

ネット上のほとんどの方は無料の領域にいます。その方々に朝日新聞のコンテンツへ触れてもらい、親近感を持ってもらう。そして、できれば有料のデジタル版にも来てもらう。withnewsは、そのための媒介として役に立ちます、と社内に猛アピールしました(水野氏)

この結論に至った背景には、収益性とは別の危機感もあった。

朝日新聞を知らない若い世代が多くなっているという現実に気づいたのです。これは非常にまずい。そうなる前に、まず朝日新聞という存在を知ってもらわなければなりません(河原氏)

河原 夏季
朝日新聞社 デジタル編成本部 withnews編集長
2010年入社。記者や紙面編集を経て2018年よりwithnewsに所属。自身の出産経験をベースとした「低出生体重児」「子育て」に関する取材や、SNSで話題のトレンド取材を担当。現在は編集長を務めながら、ショート動画やポッドキャスト、ニュースレター(theLetter)など、多角的なメディア発信に力を入れている。専門・関心分野は低出生体重児、早産、子育て、AED。

独自ドメインをやめ、本体CMSへ一本化

システム面の課題を解消するため、リニューアルではCMSを朝日新聞のデジタル版と一本化した。

朝日新聞が採用しているのは、デジタルと紙面の素材を一元的に作成・配信できる「統合編集システム(愛称:マルシェ)」だ。

CMSの統合に合わせて、サイトの構成も大きく見直した。

独自ドメイン「withnews.jp」をやめ、朝日新聞の「asahi.com」配下へ移行した。

ロゴには「by 朝日新聞」を追加。朝日新聞社が運営するメディアであることを、よりわかりやすく打ち出した。

CMSを共通化すれば、朝日新聞のコンテンツをwithnewsで活用しやすくなり、逆にwithnewsのコンテンツも朝日新聞で使いやすくなります。そうしたWin-Winの関係になれると伝えました(水野氏)

もっとも、このシステム統合は簡単なものではなかった。

新たにwithnewsのページを制作し、マルシェを使ってそこへ記事を出し分ける必要があった。そのため、システム部門には大規模な改修を依頼することになったという。

「システム部門には、本当にかなり工数をかけてもらいました。足を向けて寝られません。おかげで予定どおり2026年3月にリニューアルを終えられました」(水野氏)

なぜ新聞社がショート動画に力を入れるのか

今回のリニューアルで、特に力を入れているコンテンツがショート動画だ。

普段は朝日新聞のコンテンツに触れていない人にもニュースを届ける。そのためには、リニューアルを検討した当時、朝日新聞がまだ十分に取り組めていなかったショート動画の発信を強化することが重要だと考えました(水野氏)

リニューアル後のトップページ。ショート動画が最上部にレイアウトされている

もっとも、ショート動画は新聞社にとって開拓が不十分な領域でもある。試行錯誤の連続で、制作に時間をかけても期待したほど再生されないことも少なくない。

そこで、リニューアルに合わせてショート動画の制作予算を確保した。

朝日新聞社への入社が内定している学生にインターンとして参加してもらい、記者が取材先で撮影した素材を編集してショート動画を制作している。

普段ショート動画を見る人に近い感覚を持つ学生に参加してもらうことで、自分たちだけでは気づけない視点も取り入れられます。まずは数多く挑戦しながら、ショート動画づくりの知見を積み重ねていきたいと考えています(水野氏)

リニューアルによって起きた変化

2026年3月のリニューアルから約3ヵ月。定量的な効果も少しずつ見え始めている。

特に、Google Discoverから大きな流入を獲得する記事が増えてきたという。

マンガ記事だけでなく、ライフ系やエンタメ系の記事でも、Googleからの流入割合が大きく増えています(河原氏)

リニューアルに合わせ、朝日新聞のアプリ内でもwithnewsの記事を読める導線を構築した。

この狙いは見事に当たり、さらには嬉しい副次効果をもたらしている。アプリをきっかけに、従来の朝日新聞の読者がwithnewsの比較的ライトな記事にも日常的に触れるようになり、編集部へ熱心な感想が次々と届くようになったのだ。

取材コンテンツの多角化とテキストの価値

今後、withnewsがさらに力を入れたいと考えているのが、取材コンテンツの活用方法を広げることだ。

記事に掲載できなかったエピソードを取材後記として公開したり、取材時に撮影した映像をショート動画として活用したりすることで、一度の取材から複数のコンテンツを生み出していきたいという。

一方で、河原氏はショート動画の重要性を認めつつも、テキストコンテンツの価値は変わらないと話す。

ショート動画で認知を高められたとしても、朝日新聞のデジタル版へ読者をつなげるためには、やはりテキストコンテンツが欠かせません。これまでwithnewsが積み重ねてきた取材やテキストの強みは、そのまま大切にしていきたいと思っています(河原氏)

「動画の時代になっても、読者と深くつながるためにはテキストが欠かせません」(河原氏)

「宣言すること」が組織を動かす

立ち上げ以来の大規模リニューアルを振り返り、水野氏は「改めて、自分たちの価値を言語化することの重要性を実感した」と話す。

リニューアルの過程では、withnewsは何のために存在するメディアなのか、これから何を目指すのかについて、何度も議論しました。

その内容を社内のさまざまな関係者と共有していくことで、少しずつ同じ思いをつくることができたと思います(水野氏)

システムの刷新やデザイン変更以上に、メディアの役割を改めて整理し、組織として共通認識を持てたことが、今回のリニューアルの大きな成果だったという。

中でも象徴的だったのが、トップページの先頭にショート動画を配置するという大胆な判断だ。

社内外から「思い切ったことをしたね」と驚かれました。でも、そのおかげで「withnewsはこういうメディアです」と、一目で伝わるサイトになりました。名刺代わりとしての役割は、以前よりずっと果たせるようになったと思います(河原氏)

一方で、新たな課題も見えてきた。

「withnewsって動画をやっていたんですね」と言われることが、まだ少なくありません。せっかく取り組んでいても、知ってもらえなければ意味がありません。やはり継続的に発信し、繰り返し接触してもらうことが大切だと感じています(水野氏)

最後に、リニューアルを検討しているメディアや企業の担当者へ向けて、水野氏と河原氏はこうメッセージを送る。

まずは社内に味方をつくることから始めてみてはいかがでしょうか。今回リニューアルを進める過程で、社内に応援してくれる味方が増え、新しく生まれ変わったwithnewsのビジネスモデルを、一緒に応援してくれる仲間が増えました。諦めずに対話を重ねれば、味方は必ず見つかりますし、意外なところに、あなたの味方はたくさんいるはずです(水野氏)

迷っているなら、やらないよりやった方がいい。もちろん不安はありますが、「こういうリニューアルをします」と宣言してしまえば、もう後戻りはできません。そのこと自体がプロジェクトを前に進める力になりますし、結果は必ず後からついてきます(河原氏)

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