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SEOと認知バイアス: 検索ジャーニーの心理学+検索クエリ編(確証バイアス)

SEOが複雑になるにつれ、基本の「オーディエンス理解」が重要になる。でも、具体的にどうすればいいのだろうか? この記事では、検索ジャーニーの心理学として、僕たちに影響を与える認知バイアスの一部を、SEOに使える戦術と併せて掘り下げる
この記事の内容はすべて筆者自身の見解であり(ありそうもないことだが、筆者が催眠状態にある場合を除く)、Mozの見解を反映しているとは限らない。

SEOが複雑になるにつれ、基本の「オーディエンス理解」が重要になる。でも、具体的にどうすればいいのだろうか? この記事では、検索ジャーニーの心理学として、僕たちに影響を与える認知バイアスの一部を、SEOに使える戦術と併せて掘り下げる。

検索ジャーニーの心理学: 認知バイアスとSEO

人間の脳はおかしなものだ。僕たちに錯覚を起こさせる。SEO担当者は周りが見えなくなる。聞き取りをして、データを見て、自分だけのデジタル世界から抜け出さなければ、人々がどのように検索しているのか忘れてしまう。

検索行動は、現代社会で最も興味深い行為の1つだ。君の検索履歴は、見事なまでに平凡なものか、あるいは決して人に見られたくないような奇妙なものばかりか、そのどちらかだろう。それでいい。僕の検索履歴も奇想天外だ。小さな子どもの遊びからエジソン電球、ギャレット・サスマン(筆者自身)まで、あらゆるものが表示される。その通り、僕だってエゴサする。君はしないのか?

だが、グーグルは今、アイデンティティの危機に直面している。人工知能(AI)に困惑している。AIによる概要(AI Overview、元SGE)の実験は、疑念を抱かせるものだ。グーグルはこれまで以上に多くのアップデートを実施し、グーグルのアルゴリズムを使って検索ユーザーを理解しようとしている。

過去10年におけるグーグルのアルゴリズムアップデート履歴を見たことがあるだろうか?(ドクター・ピートに感謝!)

検索順位の変動の激しさを表すMozCastの気温は、デスバレーのような暑さだ。

10年間におけるグーグルのアルゴリズムアップデートのMozCastヒートマップ。

MozCastは、検索順位の変動を「天気」という形で表すツール。検索順位の変動が大きかったタイミングを「気温が高い」というように表現している。気温は摂氏(℃)ではなく華氏(℉)表記で、標準を華氏70度(摂氏約21.1度)としている。

図では赤色に近いほど順位変動が大きかったことを示している。

一方、米司法省とグーグルの訴訟では、ユーザーの行動が検索順位に影響を与えることがわかっている。

SEOはリコリス菓子のようにねじれており、オーディエンスを理解するという基本に立ち返る必要がある。

では、オーディエンスを理解するには、どうすればいいのだろうか。そこで必要になるのが、検索ジャーニーの心理学だ。

厄介な現実として、オーディエンスにはそれぞれ多くの背景情報(コンテキスト)がある。たとえば、次のような要素のどれもが、どのように検索して情報を選択するかに影響を及ぼす:

  • 経験
  • 生い立ち
  • 社会生活
  • 信条
  • などなど

この記事では、僕たちに影響を与える認知バイアスのほんの一部を、SEO担当者がビジビリティを獲得してオーディエンスに選ばれるために使えるいくつかの戦術と併せて掘り下げる。

認知バイアスを理解する

脳のトリセツがあればいいのだが、僕たちの脳は目まぐるしく働いている。

物事がうまくいっているとき、僕たちは安らいでいる。脳はリラックスしている。

考えなければならないとき、決断したり、注意を払ったり、タスクを切り替えたり、ネットで検索したりしなければならないとき、僕たちの脳はストレスを感じる。

スマートフォンをなくしたときや、ランチに何を食べるかを選ばなければならないときと同じだ。ストレスを感じることが好きな人などいない。

脳が何をしているかといえば、それは近道だ。適応上のちょっとしたトリックであり、目的は脳の処理を少しでも簡単にすることだ。時に、こうした近道によって、あまり影響を与えずに時間や手間を省けることがある。日々の生活のありふれた細部まで詳細に調査するために脳を使うわけにはいかない。誰にもそんな時間はない。

しかし、脳のそうした近道の仕組みが、僕たちをトラブルに巻き込むこともある。そこで顔を出すのが認知バイアスだ。しかも、その数は膨大にある。

この認知バイアス体系図のスクリーンショットでは、脳を取り巻く数百種類もの認知バイアスが4つのセクションに分類されている。
ウィキペディアに掲載されている、180以上のバイアスをまとめた図
The Cognitive Bias Codex: Wikipedia's complete (as of 2016) list of cognitive biases, beautifully arranged, and designed by John Manoogian III (jm3). Categories and descriptions originally by Buster Benson. CC BY-SA 4.0

脳にとって認知バイアスは、手っ取り早くうまくやるための手法だ。心理的なプロセスであり、次のような状況につながることがある:

  • 記憶が混乱する
  • 目の錯覚が起きる
  • 人・ブランド・状況について必ずしも公平または正確でない判断を早急に下す

SEO担当者として、潜在的なバイアスを学ぶことには価値がある。オーディエンスが検索して、コンテンツを解釈して、メッセージの評価する際に、こうした潜在的なバイアスを用いるからだ。SEOやコンテンツ戦略に役立てられる。

認知バイアスは、検索ジャーニー全体を通して2つの異なるシーンで現れる可能性がある:

  • 検索の仕方で現れる認知バイアス
  • 検索結果からの選択で現れる認知バイアス

検索の仕方で現れる認知バイアス

キーワードは重要だ。トピックも重要だ。関連性も重要だ。

検索にBERTやMUMといったアルゴリズムが組み込まれるのに伴い、グーグルは自然言語を理解する能力を高めている。シノニム、エンティティ、配置やコンテキストに基づくキーワード間の関連性を理解している。検索意図を満たす、より微妙な意味合いを含む結果を提示できる。

だがそれでも、僕たち検索ユーザーがクエリを入力するときに、独自のコンテキスト、先入観、バイアスが入らないようにできるわけではない。

人類史上、意見が最も大きく分かれる例を考えてみよう。それは、次の問いだ:

ペットにするなら、犬と猫のどちらがいいか

僕が犬派だとして(実際、そうだ)、グーグルに「Why dogs are better pets than cats?」(ペットとしてが猫より優れているのはなぜか)と尋ねると、次のような素晴らしい結果が返ってくる。

「ペットとして犬が猫より優れているのはなぜか」というクエリに対するグーグル検索結果のスクリーンショット。

「ペットとしてが猫より優れているのはなぜか」というクエリに対するグーグル検索結果では、「訓練できるから」「飼い主に忠実だから」「飼い主を守るから」「紳士的だから」など、犬の良い点を表示する(「From sources across the web」というSERP機能、日本語環境では表示例を見つけられなかった)

もし僕が混乱してひどく誤解してしまい、「Why cats are better pets than dogs?」(ペットとしてが犬より優れているのはなぜか)と尋ねたら、次のような誤った(!?)結果が返ってくるだろう。

「ペットとして猫が犬より優れているのはなぜか」というクエリに対するグーグル検索結果のスクリーンショット。

「ペットとしてが犬より優れているのはなぜか」というクエリに対するグーグル検索結果では、「高額ではない」「清潔である」「自立している」「長生きする」など、猫の良い点を表示する。

検索の仕方で現れる認知バイアス
確証バイアス

ここでは、確証バイアスと検索エンジンのバイアスが働いている:

  • 確証バイアス ―― 既存の信念を裏付ける情報を好むこと。

  • 検索エンジンのバイアス ―― 上位の検索結果はクエリに対する最善の回答だと見なされることが多いが、実際にはさまざまな編集上のバイアスの可能性がある(例:要因の重み付け、検索品質評価者向けガイドラインの記述、検索品質評価者の評価結果、その他の多くの複雑な理由に基づくバイアス)。

職場で新しいメールマーケティングツールを探すよう指示された場合でも、コーディングの勉強を何から始めたらいいかわからない場合でも、グーグルでの検索ジャーニーをどう始めるかは、僕たちの個人的な経験によって決まる。

僕たちが検索で使うキーワードは、表示される結果に影響を与えるヴァロル・オヌール・ケイハン氏による最近の研究では、人がいかに既存の信念を検索に影響させていくかのプロセスを確認できる。

※サーバーが重くてアクセスできない場合はWayback Machineを参照
ユーザーがすでに持っている考え方をクエリに取り込んで情報を探す過程を視覚的に表現したグラフィック
確証バイアス: 検索エンジンと検索コンテキストの役割
問題設定
親近性
検索クエリ
検索コンテキスト
検索結果
選択的検索
解釈バイアス
決定

僕たちの考え方が、探している情報に影響を与えるのであり、グーグルはその信念を補強する情報を提供する。

グーグルは、検索ユーザーが使うキーワードによってどういった検索結果を好むかが変わる場合があることを発見した。僕たちは、自分自身のコンテキスト、信念、個人的な経験を検索に取り入れている。世界に対する自分の見方が正しいことを確かめたがっている。なぜなら、その見方を変えることは自らのアイデンティティに影響を与えるからだ。人は自分のアイデンティティが脅かされることを好まない。

SEO担当者は、この研究から何が学べるだろうか?

特定のトピックに焦点を当てているとしても、キーワードの選択は重要だ。僕たちはSEO担当者として、最大限のトラフィックを獲得するために、「検索ボリュームの多いキーワードをターゲットにしたい」と考える。しかし、オーディエンスに対する理解が深まるほど、より焦点を絞って、エンゲージしたいユーザーに共感してもらえるコンテンツを作れるようになる。

SEOでやるべきことのヒント: 確証バイアス

顧客や市場内のオーディエンスに対する聞き取りや調査を実施して、使われているキーワードを特定しよう。具体的なワードを明らかにするのだ:

  • フレーズ
  • スラング
  • 専門用語

グループ属性によってワードの傾向は異なるかもしれない。たとえば次のようなグループが考えられる:

  • 教育レベル
  • 人口統計(性別や年齢など)
  • 企業特性
  • 地域

ところで、お腹がすいたという人はいるだろうか。ホーギーをおごるよ。え、ホーギーを食べたことがない? ああ、君はサブと呼んでいるのか。それともグラインダー? ポーボーイ? ヒーロー?

多くの日本人が「サンドイッチ」と呼ぶこの食べ物を意味するこれらの言葉のうち、最も使われているのはどれだろうか? 地域ごとの知見を得るためのすばらしい情報源が、Googleトレンドだ。

hoagies(ホーギー)、grinders(グラインダー)、subs(サブ)、heroes(ヒーロー)というキーワードに関するGoogleトレンドの折れ線グラフのスクリーンショット。長期的に見ると、subsに対する関心が最も高い。

君が間違っていると言うつもりはない。しかし、僕はニュージャージー出身だ。小さな州かもしれないが、ホーギーという呼び名は浸透している。

hoagies(ホーギー)、grinders(グラインダー)、subs(サブ)、heroes(ヒーロー)というキーワードに関するGoogleトレンドのスクリーンショット。米国の地図で、地域別の内訳が示されている。

これらのフレーズをコンテンツに組み込めば、オーディエンスの言葉を話すことになり、つながりやロイヤルティを高められる。

誰かの考えを変えることは難しいが、オーディエンスが使っているキーワードを使わなければ、確証バイアスによってコンテンツが表示されず、そもそもオーディエンスの目に触れることさえないかもしれない。

ただし、仮に表示されるとしよう。同じようなコンテンツがあふれている中で選ばれるには、何が必要だろうか?

この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回は、SEOに関係するいくつかの認知バイアスと、そのバイアスをSEOで活用するためのヒントを紹介する。→後編を読む

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