「大人の学び直し」ブーム到来!? 30のパターンで学ぶ意欲を高める「まなパタ」

「リスキリング」「大人の学び直し」に役立つ! 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が制作した学び続けるためのヒント集「まなパタ」を紹介する。
  • 「スキルアップしたいけど、何をどう学べばいいのかわからない」
  • 「資格取得のために勉強したいけど時間がない」
  • 「40代からのキャリアってどうすればいいの?」

こんな悩みを抱え、悶々としている人も多いのではないだろうか。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行っている「スキル変革調査」などによると、諸外国に比べて、日本人は学んでいないという結果が出た。業務改善のための学びはあっても、自分の将来のための学びがないという。

こうした大人の学びに関する悩みを解決するヒントとなるのが、「まなパタ」こと「大人の学びのパターン・ランゲージ」だ。

これはいったい何なのか? どう活用すればいいのか? IPA人材プラットフォーム部の東澤永悦氏に話を聞いた。

IPA人材プラットフォーム部 東澤永悦氏

30のパターンに集約した「学び続けるためのヒント」

「まなパタ」とは、学びの実践者や有識者12名にインタビューをし、大人の学びに必要な要素750個を抜き出し、30のパターン・ランゲージとして集約したもの。30パターンにまとめるために何度も議論を重ね、制作には3か月以上を要したという。

※パターン・ランゲージ: 成功している事例や熟練者にくり返し見られるパターンを抽出し、言語化したもの。元々は建築・都市計画に関わる理論として生まれた。

この記事では、勉強会やワークショップなどのツールとして使いやすい「まなパタ」スライド版を紹介する。より詳細なパターンについて解説したバージョンも用意している。

「まなパタ」の構成

次の画像は、「まなパタ」の全体像を表している:

まなパタ全体像

「まなパタ」は、次の4つのカテゴリに分けられる:

  • A: 出会いや気づきを楽しむ(マインド)
  • B: 自分を大切にしたデザイン(学び方)
  • C: 自分と学びのブラッシュアップ(実践)
  • D: 知のシェアリング(コミュニティ、社会)

各カテゴリから、さらにグループ、パターンと分かれている。次の画像では、各パターンの記載例を紹介している:

まなパタ[スライド版]記載例

いくつか例を紹介しよう。

何か始めようとしても、自分のやりたいことを見つけるのが難しい……。
そんなときは、とりあえず何かしら行動を起こしてみる!
具体的に何を学べば良いかわからず一歩踏み出せないでいる……。
そんなときは、現時点の自分を知ってテーマを設定する!

「まなパタ」の活用方法

では、どのように「まなパタ」を活用すればいいのだろうか? 東澤氏によると、次の3つの活用方法があるという:

  1. 読んで実践してみる ―― 必ずしも最初から最後まで読む必要はなく、気になるところだけを読むのでもいい。読んだら、解決法を実践してみる。

  2. アセスメントツールとして使う ―― まなパタをグラフ化し、自分にはどんな思考や行動が足りないのかを確認する。

  3. ワークショップで活用する ―― 勉強会やコミュニティの場で、「学び」に関するディスカッションの材料にする。社員研修に使うのも◎。

たとえばAのカテゴリが示しているのは、簡単に言えば『なんでも学びになる』ということ。散歩をしていても、寝ていても学べる。学びが始まりさえすれば、火を消すことなく学びを継続できる方法はいくらでもあります。だからまだ学びの入口に立てていない方は、最初の着火のために活用してほしいです(東澤氏)

「学び」は中年以降の世代にとってこそ重要

日本におけるデジタル領域の人材不足は近年問題視されており、たとえば2025年にはIT人材が43万人も不足するという報告があるなど(2025年の崖)、日本全体の課題になっている。

また「従来型のIT人材」から、新たな領域である「デジタル人材」へのシフトについても、多くの人が行動できていないこともわかってきた。デジタル人材とは、AIやIoT、データサイエンスに詳しいテクニカルな人だけではなく、ビジネスデザインができる人も意味する。

こうした課題に対し、IPAは「ITSS+」(ITSSプラス)というツールを通して、IT人材のスキル強化や学び直しの指針を提供してきた。経済産業省もリスキリングを推進している。

しかしいくら制度やツールを整えても、それを利用して成長しようという気持ちがないと、なかなか人間は動きません。ですから、マインドやカルチャー面で何かメッセージを発信することができないかと考え、「まなパタ」を制作するに至りました。日本のデジタル国際競争力は非常に低く、デジタル領域に関しては発展途上国だと言えます。そこをなんとか先進国レベルにしたいんです(東澤氏)

IPAの人材プラットフォーム部が理想とする社会は、デジタル人材の適材化・適所化だという。「適材化」とは求められる人になることで、「適所化」とは人々から選ばれる場になること、さらに必要な場所に必要な人が配置され、そこで価値発揮している状態を指す。

一度誰かをどこかに当てはめたらそれでおしまい、という固定化された世界ではなく、常に適材化・適所化がうまく回り続けるような世界をめざしています。場合によっては、今までの学びを一度捨て、新しいことに取り組んでいかないといけないこともあります。そういう場面に出会うのは、20代よりもむしろ40代以上の方々でしょう。つまり、若者よりも中年以降の世代にとっての方が、学びは重要なテーマなんです(東澤氏)

自分のこれからを考えている……。
そんなときは、人生の節目で学びの目標も考え直してみる!

大人の学びとは何か?

学習には「ペタゴジー」と「アンドラゴジー」の2種類がある。

「ペタゴジー」は子どもの学びを意味し、誰かに教えてもらったことを丸ごと覚える学びである。一方「アンドラゴジー」は、大人の学びを意味する。誰かに教えてもらうのではなく、自分でテーマを設定して、試行錯誤しながら解に向かって進んでいくジャーニー的な学びだ。

「何をどう学んでいいのかわからない」と悩んでいる方は、まずは「まなパタ」を読んでみてはいかがだろうか。

ちなみに「トランスフォーメーションに対応するためのパターン・ランゲージ(略称トラパタ)」もある。急速に変化する社会において、デジタルに限らず、さまざまなトランスフォーメーションに、組織や個人がどのように取り組めばよいのか、考えるヒントを24のパターンでまとめたものだ。「まなパタ」とあわせて読みたい。

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